「研究室に行くのがつらい」、「行きたくない」、と悩んではいませんか?
研究室内の人間関係や、研究が思うように進まない、研究室がいわゆる放任系だったなど、大学の研究室にはさまざまな悩みが生まれる理由があります。
卒業・修了するまでじっと耐えるべきなのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
あなたのあとに続く学生のためにも、そして何よりあなた自身のためにも、我慢しないでください。
この記事では、研究室がつらいと感じたときにはどう対処すればよいのか、紹介します。
研究室に行くことがつらいのはあなただけじゃない
研究室に行くのがつらい人は世の中にたくさんいます。
ためしに「研究室 つらい」と検索してみてください。
膨大な数の情報が表示されることに驚くかもしれません。
2019年の全国大学生活協同組合連合会の調査報告によれば、「研究活動」に何らかのストレスを感じている大学院生は45.0%にのぼります。
研究室は、次のような背景がある極めて特殊な環境です。
- 指導教員、大学院生、学部学生のみで構成されていることが一般的である。
- 指導教員が卒業や研究に関する大きな権限を握っている。
- 長時間過ごす場であり、人間関係の影響を受けやすい
一言で言えば、風通しが悪くなりやすい環境です。
研究室に行くのがつらくなる理由をいくつかに分類し、ひとつずつときほぐしてみましょう。
参考:全国大学生活協同組合連合会「第10回全国院生生活実態調査 概要報告」
うまくコミュニケーションができない
研究室では、指導教員と学生、先輩と後輩などの間でコミュニケーションが必要になりますが、それがうまくいかずに悩む人は少なくありません。
実は、大学の教員というのは自身の専門分野については膨大な知識を持っていても、「教育」について学んだことのない人も多いです。
教員免許がなくても大学教員になれることができるため、大学での講義がはじまったとき、高校までの教員とのギャップを感じた人も多いのではないでしょうか。
そのため、指示があいまいでよくわからない、人の好き嫌いが激しい、学生のためと称して厳しすぎる指導をするなど、コミュニケーションが上手とは言えない教員も存在します。
研究室の先輩はそんな教員のもとであなたよりも長い時間を過ごしてきた人たちです。
そのため、共感して相談に乗ってくれる場合もあるかもしれませんが、その教員のやり方を見てきているため、同じような態度であなたに接する可能性も少なからずあります。
研究室のコミュニケーションがうまくいかないのは、あなたのせいではない場合が多いのです。
自主性を重視される
大学や大学院では、塾や予備校のように教えられて学ぶ環境ではありません。
学生が自らの探求心に基づき自主的に学ぶことが、大学の学びの本分です。
しかし、学生の自主性を拡大解釈して適切な指導を行わない、「放置系研究室」と呼ばれる研究室も、残念ながら存在します。
教育に対する意識が欠けた教員が、研究の進め方の相談や分析のディスカッションに応じない、論文を見ない、等の問題が発生しているのが放置系研究室の特徴です。
研究室という閉鎖的で特殊な環境では、学生自身もそれが異常だと気づくのに時間がかかります。
放置系研究室はアカデミックハラスメントのひとつであることを知っておきましょう。
適切な指導が受けられないままでは、研究ノウハウを学ぶ機会が失われます。
その結果、研究者として通用しない人材となってしまうケースも出てきています。
学生にとって、それは大きな問題なのです。
予定通りに研究が進まない
卒業論文や修士論文などを書くためには、研究の結果やデータが必要です。
しかし、予定したように進まないのが研究でもあります。
こつこつと集めてきたサンプルをうっかりこぼしてしまった、1週間もかかる実験に失敗した、アンケートの回答データが集まらなかった、計画していたフィールドワークが中止になった、など、研究中は思わぬ事態に振り回されます。
研究が順調に進まないと、やる気を失ったり、不安になったりして、つらいですよね。
しかし、周りの学生と話してみると、意外にみんな同じような状況だったりもするのです。
簡単には成果が出ないからこそ、まだ知られていない研究データを得られる可能性があるというものです。
拘束時間が長い
研究室によって、規則はさまざまです。
理系の研究室には、とにかく拘束時間が長いところも多くあります。
ほぼ毎日、朝から晩まで実験の繰り返しばかりで、家には着替えに帰るだけ、アルバイトはもちろん、就活で研究室を離れることにさえ嫌な顔をされる、というケースも耳にします。
研究一筋の教員の場合、今の学生の生活や就職活動の実態を十分に知らないまま、自分が学生時代にやってきたやり方に固執してしまっているということも考えられます。
時代とともに世の中は大きく変わっていきます。
また、すべての大学院生が研究の道に進むわけでもありません。
自分自身がどのようなキャリアを歩んでいきたいかを考え、ある程度は割り切ることも重要です。
研究室に行くことがつらいときの対処法
研究室に行くのがつらいなら、じっと我慢してつらい研究室に行き続ける必要はありません。
ストレスはあなたの心身を静かに蝕んでいきます。
体調を崩してしまう前に、できることをやってみましょう。
ここでは、以下の5点について紹介します。
- 一人で抱え込まずに周囲に相談する
- 研究室でのルーティンを変えてみる
- 2週間程度、研究を休んでみる
- 研究室を変更する
- 就職する
一人で抱え込まずに周囲に相談する
研究がつらい、なんだかこの状況はおかしいと感じたら、まずは誰かに相談してみてください。
研究室の教員に直接あなたの思いを伝えることが難しいようであれば、別の研究室の教員や先輩、友人などに話を聞いてもらいましょう。
人に話を聞いてもらい、あなたの状況を分かってもらうだけでも、気持ちが落ち着くものです。
相談することで具体的な対処方法が見つかれば、なおよいですね。
最近では、ハラスメントやメンタルケアの相談窓口を設けている大学も多くあります。
もしも、あなたが置かれている状況がアカデミックハラスメントにあたるのなら、大学のハラスメント相談室や学生課などに伝え、改善を図ることも必要かもしれません。
研究室でのルーティンを変えてみる
研究室での過ごし方を見直してみるのもひとつです。
例えば、研究室の日当たりが悪く、その中で一日を過ごしているのであれば、昼下がりに1時間だけ散歩してみるのはどうでしょうか。
研究室に不満がないという人にも、ちょっとしたリフレッシュの時間は疲れを溜め込まないために重要です。
可能であればコーヒーを淹れたり、お菓子をつまむ時間をとるのも良いでしょう。
実験がうまくいかないのであれば、狙っている研究結果から少し離れ、別の方向性で成果を出せないか考えてみてはどうでしょうか。
多くの場合、研究テーマにはいくつか成果を期待できるポイントがあるはずです。
狙っている成果を変えてみるだけでもちょっとした気分転換やモチベーションアップにつながるかもしれません。
あるいは、実験に費やしていた時間を、論文執筆に充てるのもよいかもしれません。
実験だけに集中していたときには気付かなかった発想によって研究が進展する、ということもよくあります。
2週間程度、研究を休んでみる
つらさをこらえて限界まで頑張ってしまった人が、ある日突然、頑張る力をなくしてしまうことがあります。
もし、研究がつらいと感じたら、教員や周囲と適切なコミュニケーションを取りながら一度研究を休んでみるのもよいでしょう。
休む期間は、短すぎず長すぎず、十分な休息がとれる2週間程度がひとつの目安です。
もちろん、出席に必要な日数や研究室の事情などに合わせて、期間を調整して構いません。
休んでいる間は、たとえば細胞や動物の世話など任せられている業務があったとしても、いったんは別の方に任せて、休むことに専念してください。
なぜなら、これは「休むため」のお休みなのですから。
今まで忙しすぎてできなかったことに挑戦するのも、気分転換になります。
キャンプに行ってみたり、読書や資格の勉強などをしながら、今後どうしていきたいのかを考えてみるのもよいですね。
研究室を変更する
あなたが求めているのは、今の研究室で研究を続けることでしょうか?
もしも、修了さえできればよい、学位が取れればよい、研究に向き合えればどこでもよい、というのであれば研究室を変えることも考えてみるとよいでしょう。
研究の本質は、どこの研究室であっても、本来同じであるはずです。
現在学部生の方や、修士課程から博士後期課程へ進学予定の方であれば、進学のタイミングで別の大学院を受験するのもよいでしょう。
また、同じ大学内であっても、研究の幅や視野を広げるため、学部と大学院では別の研究室を選ぶのも、珍しいことではありません。
進学時に限らず、どうしても現在の研究室がつらいときには、大学に研究室の変更希望の相談をしてみましょう。
いつまでも、つらい研究室に固執する必要はありません。
例え最終的には思い直して研究室を変更しないという選択をしたとしても、そのとき相談した教員はその後も気にかけてくれるかもしれません。
就職する
もしも研究が思うように進まなかったとしても、あなたの人生が否定されるわけではありません。
実際のところ、大学の研究室で研究したテーマを生涯続けることができる人は、ほんの一握りです。
大半の研究者は、進学や就職によって研究テーマや分野も大きく変えていますし、研究から離れて異なる分野の仕事に就く人も多くいます。
現在の研究室で過ごすことだけがあなたの生き方という訳ではないのです。
就職してその研究室から離れることも検討してみてください。
たとえ、現在の研究室がつらくても、研究そのものに大きな魅力を感じているのであれば、大学にこだわらずに企業で研究を続けてもよいはずです。
まとめ
この記事では、研究室がつらいと感じたときにはどう対処すればよいのかを紹介しました。
研究室がつらくなる原因として以下の4点が考えられます。
- うまくコミュニケーションができない
- 自主性を重視される
- 予定通りに研究が進まない
- 拘束時間が長い
研究室がつらい時の対処法としては以下の5点を紹介しました。
- 一人で抱え込まずに周囲に相談する
- 研究室でのルーティンを変えてみる
- 2週間程度、研究を休んでみる
- 研究室を変更する
- 就職する
研究室で過ごす期間は、長い人生の中のほんの数年にしかすぎないかもしれません。
しかし、その後の人生の方向性を決める非常に大切な時期です。
自分がどういったキャリアを歩んでいきたいかを考え、納得のいく選択をしてくださいね。