修士論文はこれまでの研究成果の集大成となりますが、やってきたことをただ闇雲にまとめれば良いというわけではありません。修士課程を修了するためにはそれなりの成果を教授陣にアピールしなければなりません。
その際に重要なこととして、修士論文には「新規性」が求められます。
新規性とは「この研究には〇〇という新しい要素があるから行う必要があります」という研究の意義を明示するため要素となります。
修士論文執筆の段階で研究の新規性が見いだせず悩んでいる場合でも、視点を変えることできちんと新規性のあるものとして研究を発表することができます。
そこで、この記事では自身の研究に新規性が見出せていない場合の具体的な解決策について紹介します。修士論文提出を目前に控えている方や、これから修士論文の研究テーマを考える方もぜひ1度ご覧ください。
研究における新規性とは?
修士論文の研究に限らず、研究という名のつくものには必ず新規性が求められます。
新規性とは具体的には今までに発表されている研究と比べて「どこが違うのか」「どこが新しい試みなのか」という部分です。新規性のない研究には研究費が下りなかったり、学会誌に論文を投稿しても受理されない可能性が大いにあります。
そのため、研究の新規性を自分で説明できるようにすることが重要です。
修士論文でも研究の新規性を見出すことは大学院を修了するためにとても重要な要素となってきます。
新規性のある研究をするためには先行研究の調査が不可欠
新規性のある研究を行うためには先行研究の調査が不可欠です。
これまでにどのような論文が発表されているかを把握していなければ、自分の研究のどこに新規性があるのかを説明することはできません。
そして研究分野の全体像を把握するためには国内のみならず海外の論文を調査する必要があります。
なぜなら最新の研究成果は全世界の人に向けて発信するために国際雑誌に掲載されることが殆どだからです。
なお、英語の文献を読むことに抵抗がある場合は以下の記事をご覧ください。
卒業論文で求められる新規性のレベル
学部の卒業論文においてはどの程度のレベルの新規性が求められているのでしょうか?
卒業論文では、研究の”目標”に新規性があり、その目標に向けて適切な実験を組み立てることができていれば十分合格となります。
卒論研究ができる期間が短い場合、夏に研究テーマを決めて、その年の冬には論文を完成させなければならないので、本格的な実験に向けての準備や土台作り、背景を固めることが卒論の中心になります。
ここで注意したいのは、研究室の先輩などの先行研究者の研究を引き継ぐ場合です。前任者の研究の再現を行っただけで、その結果がほぼ同じだった場合では、新規性が全くない状態になってしまいますので要注意となります。
とはいえ、卒論では研究への取組み方が重要視されるため、1年間真面目に取り組むこと、研究目的のコンセプトに新規性をしっかり持たせることを意識できれば充分でしょう。
修士論文で求められる新規性のレベル
修士論文に求められる新規性はどのぐらいのレベルなのでしょうか?
修士論文では、卒業論文の研究を土台にして2年間研究を進めることも可能なため、当然求められるレベルも高くなります。学会発表が必須となる大学も中にはありますが、一般的には学内の修士論文審査会で合格か否かが判定されます。
その際に重要となってくるのが、テーマの研究目的に対する実験の質と検討の過程です。
必ずしも学会誌に投稿できるような成果が求められているわけではないにせよ、研究目的に向けてどのように検討を行ったか、それは適切な方法であったか、そこに新規性はあるか、改善を繰り返しているか、など卒業論文の時よりも実験の質も重要視されます。
そのため教授や大学院の先輩とディスカッションを重ねながら、目的に対して適切な順序で実験が行えるよう努めることが求められます。
以上をまとめると、修士論文ではある程度の成果は必要ですが、具体的な改善策の検討や今後発展させるために必要な点を考察できれば充分合格の範囲内です。自分なりに実験結果をじっくり考えることで、新規性のある論文に仕上げましょう。
新規性を考える上での4つの視点
ここまでは論文においていかに新規性が重要となってくるか、また卒業論文や修士論文ではどの程度のレベルが求められているのかについて述べてきました。
以下では新規性を考える上での4つの視点について紹介していきます。
既存の研究の問題点を洗い出しそれを解決する
問題点を洗い出してそれを解決する、というのは研究において基本的な考え方となります。
一般的な論文では「考察」や「今後の展望」の部分でその研究における課題が記述されています。
先行研究の問題点や課題を自身の研究の新規性にすることも可能ですので、これから研究テーマを考える方は先行研究の問題点や課題からヒントを得るということも検討すると良いでしょう。
評価方法を変える
先行研究と評価方法を変えることで、新たな発見が得られる可能性があります。
評価方法を変えたことにより、例えば、「〇〇という現象を解明するためには⬜︎⬜︎という評価方法が適性している」という風に結論づけることもできるかもしれません。
先行研究の評価方法に偏りがある場合の新規性の見出す視点の1つとして先行研究の評価方法に注目してみると良いでしょう。
対象者を変える
研究においては何もかもが新しい要素である必要はなく、対象者だけを変えるということも場合によっては可能です。
例えば医薬品の効果を調べるといったテーマでは「他の疾患にも応用できる」という仮説を立てて対象者を変えて検証してみることで有益な結果が得られる可能性があります。
ただし、対象者を変える際には、その研究の新規性として「なぜその対象者を変える必要があるのか」という理由付けも必要になるので、これが明確に答えられるよう実験や調査を組むようにしましょう。
既存研究の効率化・再現性を向上させる
先行研究者のデータがあまり良くない場合や実験における工程の効率が悪い場合、あるいは結果の再現性が低い場合にはこれらの課題の改善を目的とすることも新規性のある研究の1つと言えます。
先行研究の結果の追試がうまくいかない場合などはこの点に注目して考えてみるのも良いかもしれません。
まとめ
本記事では研究における新規性の重要性や、その見い出し方についてご紹介してきました。
論文を執筆していく中での方向転換は良くあることです。
新規性の観点から修士論文の執筆が難しいと感じた場合は、この記事で紹介した4つの視点を参考にテーマの方向転換も視野に入れることも検討してみてはいかがでしょうか。
修士論文は研究室生活の集大成とも言えるものです。
多くの教授や同期にも自分の研究成果を見てもらうことのできる絶好の機会なので、これまでの研究をより魅力的に伝えることができるよう論文執筆に励みましょう。