本記事は、大学院生や研究者向けの就職支援サービスを提供するアカリクが、事業活動を通じて得た知見をもとに作成しています。現在の就活スケジュールを企業タイプ別に紹介し、どのように対策していくかまとめています。基本的に大学院生を念頭に置いていますが、対策の仕方や姿勢は学部生でも大きく変わりません。
※本記事に記載されている数値やスケジュール情報は、すべて2025年7月17日時点の調査・公開情報に基づいています。
一般的な就活の年間スケジュール
就職活動は「3月から始まる」というイメージが強くあるものの、実際はそれよりも早いタイミングから動き出している学生も少なくありません。特に理系の大学生や大学院生は、研究との両立が求められるため、早めに準備することが大切です。
就職活動の開始時期は人によって異なるものの、 一般的には「学部3年生」や「修士1年生」、博士課程では「D2」から準備を始めるのが望ましいとされています。
理系学生が意識しておきたい就職活動の年間スケジュールは、次のとおりです。
| 時期 | 主なアクション |
| 4・5・6月 | ・自己分析 ・研究概要の整理 ・夏インターンの情報収集・応募 |
| 7・8・9月 | ・夏インターン参加 ・企業理解の深化 ・早期選考の布石づくり |
| 10・11・12月 | ・冬インターン参加 ・ES・研究概要準備 ・OB・OG訪問 |
| 1・2月 | ・本選考対策(面接・ES) ・エントリー準備 |
| 3・4・5・6月 | ・本選考本番 ・内定獲得フェーズ ・研究との両立 |
理系学生のスケジュールは、研究との両立を前提にしながら計画的に進めていきましょう。
大学院生・ポスドクの就活はいつ始めるべき?
理系の大学院生やポスドクの場合、研究や学会、論文執筆などに追われるケースも多く、就職活動を後回しにしがちです。しかし、修了や任期が迫ってから本格的に就職活動を始めたとしても、希望の進路に進めない恐れもあります。
ここでは、大学院生やポスドクの方たちの立場別に、就職活動のスタート時期の目安を詳しくみていきましょう。
修士課程:「M1の夏から」が理想的
修士課程の就職活動は、「M1の夏」のタイミングで準備を始めるのが理想的です。
特に、技術職や研究職を目指す場合、夏のインターンシップへの参加は、事実上の必須条件といえます。インターンシップへの参加は、本選考への移行をスムーズにし、内定獲得の可能性を高める重要な要素です。
M2の時期になると、修士論文の準備や中間発表などで忙しくなり、就職活動のために十分な時間を割けなくなる恐れもあります。そのため、M1のうちに自己分析や企業研究などをM1のうちに進めておくことで、後の就職活動がスムーズになります。
また、早いタイミングで企業と接点を持つと、自分の研究がどのような業界・職種に活かせるかを考えるいいきっかけにもなります。就職活動に苦手意識がある方であればあるほど、余裕のある時期に少しずつ始めておくのがおすすめです。
博士課程:「D2の春〜夏」が理想的
博士課程の就職活動は、「D2の春から夏頃」にかけて動き始めるのが理想的です。
博士向けの求人は、修士に比べて件数が少なかったり、選考期間が長くなったりすることもあるため、早めに情報収集する必要があります。
また、企業のなかには、「なぜアカデミアではなく、企業に進むのか?」といった志望動機を重視するケースも少なくありません。そのため、キャリアの方向性を明確にしておくことが選考対策につながります。
D3に在籍している方や単位取得退学を予定している方は、修了予定時期である「3月または9月」から逆算して、半年から1年前までには履歴書や研究概要の準備を始めるのがおすすめです。早い段階で就職活動を意識することで、研究との両立もしやすくなるでしょう。
ポスドクは「キャリアの選択肢」を早めに整理すべき
ポスドクの方の場合、任期付きの研究職に就いているケースがほとんどです。そのため、任期が終わる1年前くらいのタイミングから、次のキャリアをどうするか考え始めるのが理想的です。
ポスドクからのキャリアの選択肢としては、次のようなものがあります。
- 大学や研究機関などで研究を続ける
- 企業の研究開発職へ進む
- 研究以外の専門職に挑戦する
企業への就職を考えている場合は、任期が終わる時期に合わせて応募や選考のタイミングを調整する必要があります。修士や博士課程の学生のように「3月卒業」「4月入社」といった決まったスケジュールに沿って動くのではなく、自分の状況に合わせて個別に動く必要があるのがポスドク就活の特徴です。
ポスドクとしての豊富な研究経験は大きな強みです。ただし企業の選考では、「なぜアカデミアではなく企業を志望するのか」「企業でどのように貢献できるか」といった点が重視される傾向があります。これまでの研究内容をどう社会に活かせるのかを自分の言葉でしっかり説明できるように準備しておくことが就職活動を成功させるポイントといえるでしょう。
企業タイプ別|就活スケジュールの違いと特徴
ここ数年は、経団連(日本経済団体連合会)が設けた就職活動に関する「倫理憲章」に基づいたスケジュールを参考に、多くの企業が採用活動を行ってきました。現在は政府主導のスケジュールへ移行されているものの、これまでの流れを理解したうえで、自分に合った対策を講じる必要があります。
倫理憲章を基準としたスケジュールの基本は、次のとおりです。
- 入社13ヶ月前の3月1日に採用情報の告知を開始
- 入社10ヶ月前の6月1日に採用選考を開始
- 入社6ヶ月前の10月1日に採用内定の告知を開始(企業によっては事前研修などを実施)
- 翌年3月末に卒業して4月1日に入社
このスケジュールの場合、入社の1年以上前から採用活動が始まり、就職活動もそれに合わせて早期に動き出す必要があります。
ただし、実際にはこのスケジュールを厳密に守っている企業は少数派です。たとえば、3月の時点で実質的な面接を行ったり、8月頃に「内々定」として内定を事実上通知したりする企業も多く見られます。
そもそもこの倫理憲章は、あくまで性善説に基づいた「紳士協定」であり、守る義務も罰則もありません。また、経団連に加入していない企業にとってはこのスケジュール自体が無関係です。
経団連には、歴史ある大手の製造業を中心に多くの企業が加盟していますが、IT業界やスタートアップ、外資系企業などは非加盟の企業が多く、独自の採用スケジュールを採用しているケースが大半です。そのため、就職活動を始める際は、企業ごとのスケジュールの違いを把握し、志望する企業タイプに合わせて戦略的に準備を進めることが、成功への鍵となります。
ここでは、企業のタイプ別に採用スケジュールの傾向について詳しくみていきましょう。
早期先行タイプ
夏・冬のインターンや職種説明会を通じて早期に学生と接触し、通常より早いタイミングで内定を出すタイプの企業です。
特に、IT業界ではこの傾向が顕著であり、1月あたりに内定が出ることもあります。長期インターン(アルバイト)を提案してくるケースも多く、製薬会社やコンサルティングファームなども、この早期選考タイプに該当します。
倫理憲章(一応遵守)タイプ
広報は3月に入ってからスタートするものの、ジョブマッチング面談などの名称で実質的な採用選考や面接を実施する企業です。面接の形を取らない選考が進み、6月以降に行う「面接」が実質の最終面接であるケースもみられます。製造業やSIerなどで多くみられるタイプです。
倫理憲章(厳格遵守)タイプ
3月に広報開始、6月以降に選考開始という倫理憲章のスケジュールを比較的忠実に守る企業タイプです。このタイプは、短期間で一気に選考が進む傾向があり、8月中旬までに内定が出ることが多くみられます。求職者が企業の選考スケジュールに対応できないと、選考から外れるケースも少なくありません。製造業のトップ層に多いタイプといえるでしょう。
通年採用タイプ
「優秀な人材がいればいつでも採用する」というスタンスで、一年を通して柔軟に採用を行う企業です。ポジションが充足すると募集が終了するため、チャンスを逃さないことが重要です。IT系やベンチャー企業に多く、中途採用の一部枠を博士新卒向けに開放しているケースも多くみられます。
データから見る早期化の傾向
実際のデータからも、採用活動が年々早期化していることが分かっています。次のグラフはHR総研が発表したもので、2018年新卒および2019年新卒の採用に関して、企業説明会を実施した時期を表したものです。グラフは各月に説明会を実施した企業の割合を示しています。
出典:HR総研/2025年&2026年新卒採用動向調査(6月)結果レポート【図表5-1】
説明会のピークが4月から3月へと前倒しになっていることが顕著ですが、注目すべきは「2月以前」にも説明会が行われているという点です。これは早期先行タイプと通年採用タイプの企業が増えてきていることを示唆しています。
さらに、面接時期のグラフを参照すると、1,000名以上の大企業の場合は2月実施が、そして1,000名以下の企業の場合は「3月」実施が顕著に伸びており、「4月後半以降」は昨年よりも割合が減っていることが分かります。これまでの流れとは明らかに異なる様相を表していますが、今後の可能性としては「通年面接化」が進むものと予想されます。ただし偏りは発生すると考えられるため、例年と同様に夏以降の採用活動は二次募集などが中心で下火となるでしょう。
出典:HR総研/2025年&2026年新卒採用動向調査(6月)結果レポート【図表6-1】
内定出し(ジョブオファー)の時期に関しても全体的に前倒しが進んでいます。
大企業では、2024年12月にすでに15%の企業が内定出しを予定しており、この時期から本格化すると見込まれます。さらに、2月までには46%が内定出しを開始予定であり、約半数が年明け早々に動き出すことが理解できるでしょう。
一方、中堅・中小企業ではスケジュールがやや分散する傾向にありますが、それでも2025年2月までに内定出しを開始する企業の割合は、中堅企業で42%、中小企業で37%と、いずれも4割前後に達する見通しです。中堅・中小企業も、大企業のスケジュールに近づきつつある状況といえるでしょう。
出典:HR総研/2025年&2026年新卒採用動向調査(6月)結果レポート【図表10-3】
採用選考の時期には企業ごとの違いがあるものの、新卒採用の進行パターンは大きく3つに分かれます。
- 夏までに採用活動を終える企業
- 年末を一区切りとする企業
- 年度末(3月)まで採用活動を続ける企業
このように、選考時期には大きな幅があります。研究の都合で、夏以降から就職活動を始めた場合でも、チャンスは残されていることが多いため、決して焦らずに準備を進めることが大切です。
一方、博士課程の方で修了時期が3月以降にずれ込む場合は、次のような選択肢が考えられます。
- 次年度の新卒枠として応募する
- 中途採用枠に応募する
ただし、中途採用枠は原則として即戦力となる経験者を対象としているため、選考のハードルは高くなると理解しなければなりません。
企業タイプ別の対策
ここではさらに企業タイプ別の動き方と対策について詳しくみていきましょう。
早期先行タイプ
M1またはD2の夏から秋に一般的な履歴書を作成し、現在の研究分野について非専門家に説明するための資料をA4用紙1枚以内で用意しましょう。各社の説明会開催やエントリー開始についてはばらつきがありますが、製薬会社や外資系コンサルティングファームであれば10月から12月がピークです。夏休みが終わったら情報収集することをおすすめします。
大学院生の採用に意欲的な企業の一部は、「アカリクイベント」にも特設ページを用意してエントリーを受け付けています。
11月から1月までに最初の面接を行うケースが多いため、いつでも予定を入れられるように空けておくか柔軟に変更できるように調整しておくとよいでしょう。順調に進んだ場合は2月から3月頃に最終面接まで進むため、4月までに内定が出るケースが多くなります。
3月以降に動き始める企業にも応募を希望している場合、まずは早期先行タイプに集中して取り組み、よそ見をしないように心がけましょう。内定獲得後に他社を受けて内定を蹴るまたは決断に時間がかかる恐れがあるとみなされて、途中で落選するケースも考えられます。これは入社予定人数をコントロールしてコストを確定する必要があるため、不確定要素や不安要素の多い人物が序盤から中盤のスクリーニングで弾かれてしまうためです。
倫理憲章(一応・厳格)遵守タイプ
採用情報が公示される3月1日からプレエントリーという名称で受付開始する場合が多々あるため、忘れずに登録しておきましょう。
正式な面接を開始する6月までの期間に採用担当から「カジュアル面談」や「ジョブマッチング面談」などのお誘いを受けるケースが非常に多いので、メールや通知は無視せずに確認しましょう。
これらの「面談」は実質的に選考の一部となっているので、服装や会話内容が堅苦しくなくとも、発言内容や態度には気をつけましょう。こうした面談でポイントとなるのは、会社や仕事について深く理解しようとする姿勢です。企業の人と話すのに慣れていない最初の頃は、間合いが取れずにストレートな表現の質問をぶつけてしまって失敗しがちなので、福利厚生や給与待遇については迂闊(うかつ)に触れないほうが賢明です。
最初の正式な面接が役員や社長との面接となり、そのまま最終面接となるケースも珍しくありません。人事や現場社員では専門や実績などが話題となりますが、役員や社長との面接では「会社文化との相性」を見るために人物評価のウェイトが非常に大きくなります。大学院生の勝ちパターンとしてよくあるのが「会社理念へ心から共感」です。日頃から社会に対する問題意識や理想を持っているとよいでしょう。
通年採用タイプ
このタイプの企業だけを狙っている場合は、応募を焦らずに、即戦力に準ずる評価が貰えるような実績を作ることを念頭に研究に専念するとよいでしょう。変則的な中途採用という形で実施している企業が多いため、実績や能力でシビアに評価されるためです。
もし他のタイプの企業も同時に検討している場合は、他社のスケジュールに合わせて同時並行で進めることをおすすめします。通年採用タイプの場合は企業側が急いでいないので、もし他社選考が早く進んでしまいそうな場合は状況を伝えておくと、スケジュールを合わせてくれることも多いので試してみましょう。
基本的には何度でも受けることができますが、概ね半年経過しないと再挑戦できないケースも多いため注意が必要です。ただし、人物面ではなく実績不足が原因で一度落選していて、その後に企業に関係する分野で非常に大きな成果を上げた場合は、半年経過していない場合もチャレンジしてみるとよいでしょう。
以上のパターンを基準として把握しておき、特定の企業を狙っている場合は情報を逐一チェックして、修正しながら対応するのがおすすめです。
大学院生・ポスドク向けキャリア支援サービス
最終年度も実験や論文で忙しいという方は、アカリクが提供している「就職エージェント」をご利用いただき、コンサルタントとともに進路を考えることもご検討ください。各種サービスはクライアント企業からのコンサルティング手数料などで運営しているので費用はかかりません。ぜひお気軽にご相談ください。



