研究費獲得の不安が「Research Fund 2.0」という企画を生み出した【後編】 #博士の選択

インタビュー

※記事の内容は掲載当時(2016年)のものです。

筑波大学主催シンポジウム「Tsukuba Global Science Week 2016」で学生企画セッション「Research Fund 2.0」(参加レポートはこちら)を企画実施した牧野美咲(まきの みさき)氏(筑波大学大学院数理物質科学研究科・後期博士課程3年、専門:無機化学)にお話を伺いました。(前編はこちら

終盤のパネルディスカッションでは「ベンチャースピリット」が文化的にあわないという話がありましたね

日本人もベンチャースピリットは持っているっていうのが私の考えです。資金調達を専門で扱う人があまりに少ないというのが実は問題点だと思っていて、環境がちゃんと整えばベンチャースピリットを持った研究者たちが表に出てくると思います。現 にIT系のスタートアップ企業だったら投資家の方の援助を受けて今いっぱい出てきてますし、ベンチャースピリットが文化と合う合わないというより、そうい う仕組みが認知されていくことが重要ですね。資金調達の専門家が大学の研究室にいるような支援環境が整えば、今よりももっと若手が活発に動けるんじゃない かと思います。

起業家の方々も、やっぱり資金に強い人や技術に強い人、そういう助けてくれる人がいてようやく成り立っていると思うんです。でも研究者にはマネージャー役の人が不足していると感じます。大学のURA(リサーチ・アドミニストレーター)が本来そういう役割なんでしょうが、まだ日本だと取り組みが始まったばかりなので、これからかなって思いま す。最近は「独立系研究者」が注目を浴びていますが、彼らは自分で資金調達しているし、周りにそういった「支援者」がいるんです。

インターンシップでの経験が企画に大きな影響を与えているようですね

そうですね。もし将来に不安を抱えている方
がいたら、インターンシップに行くことをおすすめします。インターンシップってそもそも普段チャレンジできないことにチャレンジするものだと思うんです。 通常の採用とは違ってインターンだと企業も色んな人をとりたいっていう思惑があるんです。
それから、あえて自分のフィールドじゃない ところにも、絶対に行った方が良いと思います。専門に固執しすぎてはいけないです。私の専門は無機化学、特に錯体化学なんですが、そうすると化学メーカー でもかなり絞られてしまうんです。私は先輩からのお誘いもあってインターンシップに参加してみることにしましたが、企画職のインターンシップだったので専 門性とは繋がりはないと思っていました。

実際に参加して一番衝撃的だったのは、実は 『企画のお仕事って非常に研究に似ている』ということですね。ビックリしました。インターンシップの優勝特典としてシリコンバレーに行かせてもらった時に も、起業家の方々とお会いして仕事と研究って実はかなり似ているって実感しましたね。そういう気付きとの出会いがありました。

研究者と社会人って、求められるもののコア の部分は同じなんですけど、やっていることが違うから、研究ばっかりやっていると「社会人として自分のどんなことが売りになるのか」っていうのが分からな いと思うんですよね。自分の良さに気付くためにもインターンシップって大事だと思います。

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シリコンバレーにあるfacebook本社のキャンパス入口にて撮影(提供:牧野美咲氏)

牧野さんご自身はこれからどのようなキャリアパスを歩もうと考えていますか?

私自身が好きなもの・好きな研究を人に発信
していくよりも、『純粋に研究が大好きな研究者の皆さんを応援していく』、そんなキャリアパスを歩みたいと考えています。そのソリューションの一つとし て、ITがあると考えていて、まずは企業でウェブサービスの構築に携わるエンジニアをやります。自分がいつか独自のサービスを立ち上げたいという思惑があ ります。常に色んな業界のアンテナを張って、キャリアパスを開発していきたいと思います。

研究者って縦のつながり・分野のつながりは 大事にするんですけど、大々的に他の分野の人と交流する機会って、あまりないじゃないですか。そこに疑問を感じていて、もっと他の分野の人と積極的に関わ る機会があったら、実は違う分野でも同じことに問題意識を持ってる人がいて、面白い出会いがあるんじゃないかと思ってるんです。私はそういう出会いを加速 するサービスを作りたいなって思っています。

あと、基礎研究に特化した民間の研究所を作りたいという野望もあります。

同じく博士課程の学生や若手研究者に向けてメッセージをお願いします

研究室によると思いますが、ドクターはアカ デミックな道しか無いという考えしかないところもありますよね?学生は論文さえ書ければ、研究さえできればいいと考えている先生もいます。でも、年齢相応 な社会人としての知識や経験が獲得できない研究室だったら、「みんなバイバイしていいよ」って私は思います。

大学院生も、卒業後は『研究者である前に社会人』なんだということを伝えたいです。

ありがとうございました

(「博士の選択」記事より転載)

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