加速する産官学連携の拡大化の動き
わが国では、2016年に産学官連携の動きが本格始動(経済産業省『産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン』)しましたが、この数か月で加速しています。
この動きは、これからの企業のあり方や大学のありかた、研究テーマ等の多方面に影響を及ぼすことでしょう。特に、研究者のキャリアや求められるスキルは大きく変化していくかもしれません。
研究者のキャリアへの影響
文部科学省と経済産業省は、イノベーションを生み出すために、研究者がアカデミアと企業の組織の壁を超えて、流動化を促進する必要があるとして、「クロスアポイント制度」の導入を進めています。
クロスアポイント制度とは、複数の機関で「常勤職員」としての身分を持ち、業務に従事することが可能となる仕組み(経済産業省・文部科学省『クロスアポイントメント制度の基本的枠組と留意点』)です。この制度が活用されることで、研究者が組織の垣根を越えて活躍し、技術の橋渡し機能が強化されることが期待されています。
これにより、研究者は、各機関のリソースを最大限に活用できるようになったり、視野を広げて将来のキャリアの幅を広げることが可能になったりと、働き方が変わっていくことでしょう。同時に、求められるスキルも変化していくと思われます。
求められるスキル
アカデミアと企業の垣根がなくなることで、研究者には産学の視点をもつことが求められます。具体的には、「意思決定や研究のスピード」「計画性」「独自の研究視点」「ボトムアップからのアプローチ」などが挙げられており、(みずほ情報総研株式会社
2019)、専門分野に限らず経済学、心理学などを含めた、ビジネスを総合的に捉える姿勢が求められています。
また、大学では、知的財産をマネジメントできる人材の育成が急務とされており、大学組織内からだけではなく、外部からの人材登用する動きが広がっています。
学生への影響
アカデミアと企業の共同開発に、若手研究者や学生を参加させる動きも活発化しており、通常の大学カリキュラムでは体験することの難しい、貴重な機会として、実践的な学びの場が創出されています。
共同研究の実施に当たっては、学生を参画させる場合は、適切な対価を支払うことで、研究成果へのコミットや情報漏洩の可能性軽減など、大学と企業双方にメリットがあるとされています。「知」の蓄積そのものであり、価値創出の源泉である人材に対して、対価を共同研究の料金に含める事の重要性が示されています。
博士後期課程学生やポスドクの処遇が社会的な問題となっている中で、産学連携の動きは、将来研究者を目指す学生らが経済的な状況に左右されず、挑戦的な研究に取り組むことを支えながら人材育成することに大きく寄与することでしょう。
まとめ
産学連携に伴い、研究者はアカデミアと企業間での横断的な活躍が期待される。また、アカデミアに従事する研究者にも産業的な目線とスキルが必要になり、学生の実践的な学びの場が増え、経済的処遇の向上も期待できる。
こうした組織の枠を超えた人材の好循環は、弊社がコーポレート・ミッションである”「知恵の流通」の最適化”にも通ずるところがあり、今後のイノベーションの源泉となるでしょう。
(文責・高谷翔太)
参考文献
■経済産業省『産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン』
■経済産業省・文部科学省『クロスアポイントメント制度の基本的枠組と留意点』
■みずほ情報総研株式会社 (2019)『クロスアポイントメントの推進に係る調査等』
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