研究者は結婚できない?結婚傾向と不安要素とは

研究・大学生活

同世代の友人が結婚するのを見るたびに、不安が募っている院生やポスドクの方は多いと思います。「自分はこのまま仕事が安定せず、結婚もできないまま過ごすのでは?」と憂鬱な気分になってはいないでしょうか。

研究者だからといって、結婚をあきらめる必要はありません。結婚して子どもを育てながら研究を続けている人はたくさんいます。

研究者が結婚するにはどんな問題があるのか、どうすればそれを乗り越えられるのかをみていきましょう。

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研究者の結婚問題とは

研究しながら結婚なんて可能なの?と不安に思っている方は少なくないのではないでしょうか。

研究者にとってどんな部分が結婚への不安材料になってくるのかを、具体的に掘り下げていってみましょう。

タイミングが難しい

大学院に進学すると、順調に進んでも学位をとれるのは修士で24歳、博士なら27歳。場合によってはもっと年齢を重ねることもあります。

よりよい研究環境を求めて留学したり、あちこちの研究室を渡り歩いたりしていると、すぐに何年も経ってしまいます。

好きな研究をするのは楽しくて仕方がなく、研究が恋人、となってしまうこともありますよね。

女性研究者の場合はさらに、研究の進捗状況と妊娠・出産というライフステージを考えると、結婚に踏み切るタイミングを見極めるのはとても難しいものとなってきます。

研究者として忙しい日々を送っていると、20代から30代の前半はあっという間に過ぎていってしまう。これがまず、第一の問題です。

給与面の心配

院生やポスドクが求めているのは「安定した仕事に就くこと」。しかし、国立大学は独立法人化に伴って教員定員を減らし、代わりに3~5年と任期を限った助教などを増やしています。

たとえば生命系のポスドクの場合、任期制の助教の職を得たとしても、そのうちの4割は年収400万円以下。さらに、退職金や住宅手当の支給もない人が多くを占めています。

ポスドクの4割は任期制の仕事を3回以上経験しており、任期が終わればまた別の仕事を探さなければなりません。それすら見つからなければ、生きていくためにやむを得ず研究職をあきらめる決断にも迫られます。

長年、研究の世界しか知らずに過ごしてきたポスドクが、一般企業での事務や営業などの仕事をしていくのは、簡単な道ではありません。

自分ひとりならなんとか暮らせるかもしれませんが、結婚相手や子どものことを考えると、心配になってきます。安定した仕事に就くまでは、相手の親から結婚を認めてもらえない、という人もいるでしょう。

研究者としてのポストが非常に少なく、安定した仕事に就くのは非常に難しいという現状が、研究者の結婚を妨げているのです。

参考:東大新聞オンライン「【優秀な若手を活かせ】ポスドク支援の課題を考える

結婚による苗字の変更

せっかくこれまで築いてきた研究者としてのキャリアが、結婚によって苗字を変えると崩れてしまうことを心配する人もあるかもしれません。

研究者の中には、早くに結婚して新しい苗字でキャリアを積む人もいます。また、すでにある程度のキャリアを積んでから結婚して改姓する場合には、通称として旧姓をそのまま使っている研究者も少なくありません。

事務的には少し面倒なこともあるかもしれませんが、通称を使用するのはよくあることです。

苗字変更のデメリットを心配して、結婚をあきらめる必要はありません。

研究者が結婚しづらい理由

研究者が結婚しづらいのは、仕事の忙しさや給与面の心配だけが理由ではありません。

学歴のわりに年収が高くない

世間一般には「学歴と収入は比例する」と思われています。研究者の年収は、実際、どれほどなのでしょうか。

国税庁の調査によると、30~34歳男性の平均年収は470万円ほどです。これに対して、自然科学系研究者の年収の平均は321万円。学歴のわりに、研究者の年収はそれほど高くありません。

しかも、研究職は時間が不規則だったり、あるいは研究のために長時間拘束されたり。労働時間のわりに、そして学歴のわりには、収入は高くないのです。

参考:国税庁「民間給与実態統計調査」(令和元年度)

参考: 厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 職種・性、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値(自然科学系研究者(男)~航空機客室乗務員(女)

奨学金の借金がある

大学院の5年間、奨学金を借りている人も多いでしょう。院生にとって、奨学金は学費や生活のために必要なお金です。しかし、借りたお金は返さなければなりません。返済額がどれだけになるか、正確に把握しているでしょうか。

たとえば日本学生支援機構から、修士課程(または博士前期課程)の2年間に毎月50,000円、博士後期課程の3年間に毎月80,000円の奨学金を借りた場合、貸与総額は4,080,000円です。

修士課程分を月額8,333円ずつ返済すると12年、博士後期課程分を月額15,000円ずつ返済すると16年かかります。つまり、12年間は毎月計23,333円ずつ、その後4年間は毎月15,000円ずつを返済することになります。

毎月の負担額で考えるとそれほど大変ではないと感じるかもしれませんが、もしも奨学金を借りていなければ、この金額を貯蓄に回せたはずです。

奨学金の返済は、家計にとって大きな痛手となることを意識しておいてください。研究者の家族が、ようやく返済を終えて貯蓄を増やせるようになるのは、40歳を過ぎてから、というのが実態なのです。

参考:日本学生支援機構「大学院・返済例

ポスドクの場合、将来が不安定

前述のとおり、ポスドクの地位は安定していません。

国立大学の本務教員のうち若手の割合は大きく減り、代わりに任期制雇用教員の数が増えています。

大学教員の非正規雇用率は、25~34歳で50%を超えているのが現状です。

そもそも「常勤で任期のない正規雇用の研究職」のポストは非常に少なく、任期制の非正規雇用から正規雇用へと移行できる割合は、平均で6%。

正規雇用の研究職は、本当に狭き門となっています。

参考:小林淑恵(2015)「若手研究者の任期制雇用の現状」日本労働研究雑誌

共働きによる結婚

研究者は安定した収入の目処がなかなか立たないので、結婚に向かう勇気が出てこないかもしれません。

しかしポスドクの中には、公務員や会社員などの職業に就いている相手と結婚して共働きで生活している人もいます。

今は共働きが主流ですし、経済的に自立している者同士の結婚であれば、安心して研究に打ち込むことができます。

出会いがない

研究に没頭して、自宅と大学や研究所とを往復するだけの日々。

このような環境では出会いのチャンスが少なく、ただ時間だけが過ぎていきます。

自分の好きな研究をしている間は、それで十分に楽しくて寂しいと感じる間もないのですが、ふと、周りを見渡したときに友人たちとの溝の大きさに気がつくこともあります。

研究者と結婚するメリットとは

今度は、研究者を結婚相手に選んだ相手には、どんなメリットがあるかを考えてみましょう。

あなたが結婚するときの参考になるかもしれません。

性格は真面目な人が多い

コツコツと研究を続けられる忍耐力、持久力、真面目さを持っているのが研究者であるあなたの強みです。

それに加えて、研究者特有の発想の柔軟性、好奇心の強さ、鋭い分析力、論理的なモノの見方、膨大な知識などもあなたには備わっています。

そんなあなたと一緒に過ごす相手の毎日は、刺激的で面白いものになる可能性が高いです。

比較的自由に自分の時間を使えるあなたなら、パートナーと家事育児をしっかりと分担することも可能です。

子供を保育所に送り届けてから出勤している大学教員や、パートナーとアプリでスケジュールを共有している研究者もいます。

キャリアアップによって、収入は安定していく

あなたが大学の教員や一般企業の研究員など、正規の職に就けた場合には、収入はそれなりに高めで安定し、落ち着いた生活を送ることができます。

よりよい条件で研究できる場所を求めたり、キャリアアップのために新しい仕事を見つけることもあるでしょう。

大きな発見や発明をしたり、たくさんの本を書くかもしれません。あなたの未来には、大きな夢と可能性があります。

仕事で海外に行くチャンスも

優秀な研究者には、国境など関係ありませんね。

国際学会での発表、あるいは海外の大学や研究所との共同研究など、あなたにはどこででも仕事ができるチャンスがあります。

あなたの相手となる人が、海外に行きたいと考えているのであれば、あなたと結婚するのは悪い選択ではないと伝えましょう。

研究者と結婚するデメリットとは

では逆に、研究者と結婚するデメリットも考えてみましょう。事

前に懸念点を知ることができれば対策をとることも可能です。

研究第一だと家事分担が難しい

長時間研究室にこもりっきりで研究を行っていると、自宅での家事分担が難しくなることがあります。夫婦どちらかに家事の負担が重くのしかかると、家庭不和の原因になることも……。

家事については、時々家事代行業者にお願いしたり、食器洗い乾燥機やロボット掃除機を使用するなどして上手に負担を減らしていきましょう。

転勤の可能性がある

たとえば関西の仕事に就きたいと思っていても、そのときあなたの専門分野で研究職を募集している大学や研究所は東北にしかない、というケースもあり得ます。

あるいは、あなたのキャリアを買って新しい仕事のオファーが、もっと遠くや海外からくることも珍しくはありません。よりよい環境で研究するために、あなたには転勤の可能性があることを相手に知ってもらっておく必要があります。

場合によっては、あなたは単身赴任となるかもしれません。もしそうなったら、夫婦でどのようなライフスタイルにしていくのかを、あらかじめ十分に考えておくことも大切です。

研究者が結婚するにはどんな行動をすればいい?

ここまで、研究者が結婚しづらい理由、研究者と結婚するメリットやデメリットについてみてきました。

では、研究者が結婚するためには、これからどんな行動をとればいいのでしょうか?5つ挙げてみました。

友人に紹介してもらう

友人の紹介で出会った相手と結婚するという研究者も多くいます。あなたのことをよく知っている友人だからこそ、あなたによく合う相手がどんな人だか、よくわかっています。

結婚したいと思い始めたら、友人に「誰かいい人いない?」と、勇気を出して聞いてみては?

何か新しいことを始めてみる

テニスサークルに入ってみる、山登りをしてみる、初めてのお店に入ってみるなど、どんなことでも構いません。何か新しいことを始めてみましょう。新しい場所には、新しい出会いがあるかもしれません。

新しい体験が、研究漬けだったあなたに別の魅力を付け加えてくれることもあります。そうすると、これまで近くにいた人と話が弾んで、仲よくなれるかもしれません。その人の新しい魅力に気がつくのかもしれません。

まずは、新しい一歩を踏み出してみてください。

婚活マッチングアプリに登録する

手軽にインターネットで相手を探せるのが、婚活マッチングアプリです。検索機能を使って、自分の好みの条件にマッチする相手を探せます。会員数の多いアプリなら、理想の相手に巡り合う可能性も高くなりますね。

相手探しも効率よく進めたい、忙しい研究者のあなたなら、まずはアプリに登録してみることから始めるのがよさそうです。

研究者だからといって、すごく結婚しづらいわけではない!

研究者だって普通の人。研究が恋人、研究さえしていれば幸せ、研究が人生の喜び、とはいえ、結婚したい気持ちをあきらめることはありません。

好きな相手がいて、その人と結婚したいと思っているのなら、目の前にある問題を一つずつクリアして、ぜひ2人で幸せをつかんでください。

今は相手がいないけれど、結婚したいと思っている人は、積極的に出会いを探しに行ってみましょう。

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著者プロフィール

アカリクリポーターズとは、大学院生としての経験や知識を「リポート」するライター集団です。全員大学院在籍経験があり、これまでの研究経験や知識を活かして、大学院生の皆様に役立つ情報をお届けしています。専門分野は工学・化学・生命科学・心理学・社会学等様々です。

【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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