修士まで進学した学生の多くは研究職に憧れますよね。
しかし、実際に企業の研究職の仕事に就くには、募集人数が少ない割に希望者が多く高倍率の就活を突破しなくてはいけません。
そのため、企業が研究職に求める人材や、どのような就職先に就職しやすいかを事前に知った上で早い段階から対策を行っておく必要があります。
そこで今回は、企業が研究職に期待していることや文系・理系がそれぞれ就職しやすい業種についてなど、院卒が研究職になるにはどのようなことが必要かを踏まえた上で解説していきます。
今回の記事の内容で選考のポイントなども分かってきますのでぜひ参考にしてください!
研究職についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
研究職は理系学生に人気で内定者も多い
研究職は理系学生に人気で内定の獲得は至難の業であると言えます。一方で、その難関を突破した学生も当然数多くいます。
大学院生・理系学生の就職をサポートする「アカリク」のアンケート調査結果(2022年7月時点)によると、民間企業で志望する職種として研究開発職が人気で、実際に内定した職種としても研究開発職は大きな割合を占めることが分かります。
- 調査対象:大学院生・理系学生に特化した就活サイト「アカリク」会員のうち、2023年新卒の理系学生168名
- 調査期間:2022年7月8日~7月15日
よって、このように志望者の多い研究職の内定を勝ち取るためにはどのような人材が求められているか把握し、戦略を綿密に立てることが大切です。
企業が即戦力として求める人材
まずは企業が求める人材について見ていきましょう。
学士は若さやポテンシャルが武器になる
研究職になる方の多くは院卒です。しかし、少数派ですが学士で研究職として働く方もいます。
学士の武器は若さやポテンシャルです。その企業の業種や業務内容をしっかり理解した上で志望していること、入社後にも専門性を高めていくモチベーションの高さや、研究職として働く上での強みをアピールし、入社後に活躍することを期待させることで内定を勝ち取って研究職になります。
また、修士や博士号取得者より若いので入社後に成長するためにかけられる期間が長いです。
このように学士では就活の段階で身に付けている能力だけでなく、熱意や将来性も評価されるウエイトが大きいという点がメリットです。
しかし、就活の段階ではどうしても土台となる基礎能力や専門性において不利になることがあります。
また、研究職は高い専門性を用いた職種なので、就活時点で基礎能力が既に備わっている修士や博士号取得者のみを募集するケースもあります。
そのため、研究職として働くことを目指す場合は大学院に進学して専門性や基礎能力を身につけることをおすすめします。
修士には土台となる基礎能力が求められる
一方で、修士には研究職として土台となる基礎能力がより重要視されるようになってきます。
この基礎能力とは、単純に知識や技術だけでなく他部署と連携して業務を行う上でのコミュニケーション能力、市場のニーズを理解して臨機応変に行動する能力などのことを指します。
研究職として働くための基礎能力が証明できないと、入社後に成果を上げることができるかどうかを採用側が判断が難しいことや、学士卒よりも少なくとも2年遅れての就活になるので、学士卒のように将来的な成長に時間とお金を投資してくれる期間が短くなり基礎能力があらかじめ身についていることは学士以上に重視されます。
したがって、スケジュール管理が大変だからという理由で就活に割く期間を短くすることはせずに、しっかりと基礎能力をアピールできるように自己分析などを進めて準備していきましょう。
研究と就活を両立するためのおすすめの方法は2つあります。
1つ目が学校推薦を利用することです。
学校推薦は、一定レベル以上の専門性やスキルがある学生が学校の推薦枠で就活をすることができます。
その理由は、推薦後にその学生の持っている専門性が企業で求められているレベルにまで達していない場合に推薦した大学の評価が悪くなるだけでなく、来年度から企業側がその大学の推薦枠を用意しない可能性があるためです。
学校推薦は大学内で選考があり、その後の採用試験もあるためメリットがないのではないかと思われがちです。
しかし、学校推薦に合格するということは、企業から見た場合「一定レベル以上の専門性やスキルを持っている」と判断されるため、学校推薦を受けた学生はフローが短縮された選考を受けることができるケースが多いです。
学校推薦についてはこちらの記事にて詳しく解説しています。
2つ目は就活エージェントを利用することです。
就活エージェントは、ES対策や面接をしてくれるだけでなく、個人の適正にあった求人まで紹介してくれる就活のプロです。
また、就活エージェントは非公開の求人情報を教えてくれる場合もあります。
これは、企業側が採用コストを抑えるためやミスマッチを防ぐためにあえて非公開にして選考する人数を絞るという目的で、就活エージェントが選んだ学生を採用しているためです。
プロのチカラを借りることで就活を効率的に進めることができるだけでなく、自分が本当に活躍できる職場を見つけやすいので今後の自分のキャリア形成にも役立ちます。
アカリクの運営する就活エージェントは大学院生(修士・博士)、ポスドクに特化していて、「院生就活のプロ」がサポートしてくれます。ぜひ活用していきましょう。
博士は専門性や即戦力が重要視される
博士号取得後に研究職になる場合は、修士よりも高い専門性と基礎能力を備えていることが重要です。
博士号を取得して研究職を目指す場合、修士よりさらに年齢を重ねています。
そのため、修士と同じような専門性や基礎能力では企業にとって博士を研究職として採用するメリットがなくなります。
したがって、高い専門性や基礎能力を有しており修士や学部卒より早く戦力になることをアピールする必要があります。
専門性や基礎能力の高さをアピールするために、希望業種に生かすことができるような実験の経験や実績のエピソードを作ることが重要です。
しかし、専門性や基礎能力の高さをアピールできるほどのエピソードは一朝一夕ではできません。
早めに志望業種を決めて、意識的にアピールできるようなエピソードとなることに取り組んでいきましょう。
また、博士号取得者が就活をする場合であっても学校推薦や就活エージェントを積極的に利用して効率的な就活を行うことで学問との両立がしやすくなっています。
修士から研究職になる際の就職先
次に、修士から研究職になる際の就職先を見ていきましょう。
企業
企業は他の就職先に比べて修士から研究職を採用するケースが多いです。
企業の研究職は、営利目的の研究であるため市場の様子や競合他社の動向、ニーズによって研究内容が変わりやすいという特性があります。
また、基礎研究で新たな製品やサービスの元となる知識や仮説の立証を行うだけでなく、基礎研究の成果を実用化につなげる応用研究も行います。
さらに、実用化に向けて安全で安定的に生産することができるかを検討するための現場視点、ニーズのあるものかどうかを知る市場把握力、他部門と連携するためのコミュニケーション能力が求められます。
自分の研究成果が実際に形となって世の中に広まっていく可能性が高い点が魅力的です。
公的機関・大学(アカデミア)
一方で、アカデミアと呼ばれる公的機関や大学では、博士号取得者が研究職として採用される場合が多いです。
企業の研究職は基礎研究や応用研究等様々な業務を行うのに対して、公的機関や大学では基礎研究を主に行います。
企業に比べて長い期間、同じテーマを研究する機会が多く根気が必要です。
しかし、自分が追い求めていることをとことん研究できる点や、未知の発見によって世の中を大きく変える可能性を秘めている点が魅力的です。
大学教員に興味がある方はこちらの記事もご覧ください。
理系や文系の修士が研究職に期待されていること
理系や文系の修士が研究職として期待されていることについて、より詳しく見ていきましょう。
基礎能力
この基礎能力とは、前述の通り知識や技術だけでなく他職種と連携を取るためのコミュニケーション能力や、市場でのニーズや実現可能性など様々なことを加味しながら研究を行うことができる柔軟性も含まれます。
企業での研究の目的は、利益を生み出す商品やサービスを世の中に出すことです。
そのためには研究以外にも行わなければならないことや、求められることが多くなります。
様々な能力を総合的に見て、研究職として活躍できるかどうかを見られているという点を意識しましょう。
専門性
研究職として働く以上、高い専門性があることは前提となります。
この専門性があらかじめ身に付いていないと、研究職として働くにあたって研修にかけなければいけない時間やお金が多くなります。
そのため、企業側から見ると他の専門性が高い修士や年齢が若い学士を採用した方がコストが安くすむので、専門性が企業に求められているレベルに達していない場合に圧倒的に就活で不利になります。
実際にアカリクが23卒理系学生168人に調査した就活動向調査レポートでは、研究職以外の職種に採用された場合も含みますが、7割を超す学生が「内定した企業から自身の専門性を評価された」と回答しています。
博士号取得者の研究職希望者と同じく、具体的エピソードを用いて自身の専門性をアピールできるようにしておくことが望ましいです。
ここまで、理系や文系の研究職が求められていることについて解説しました。
ここからは文系と理系を分けて、それぞれどの業種の研究職に就きやすいか見ていきましょう。
文系の修士が研究職に就きやすい業界
まずは、文系の修士の研究職についてです。
文系の修士が研究職に就きやすい業界は4つあります。
金融
金融と一口に言っても、銀行や信託銀行、証券会社、保険会社など様々な業種が存在します。
そのいずれの研究職も過去の統計やデータから今後の動向やサービスを研究することを行います。
一見、統計やデータというと理系のイメージがありますが大学院で金融や経済学の専門性を高めた修士も重宝されるため、文系も研究職として就きやすい業種です。
司法
司法関係では、法律事務所や企業の法務部で研究職として働くことができます。文系の修士ならではの法律の専門的な知識を活かすことができ、理系のライバルが少ないので文系の修士が就きやすい就職先となります。
また、72期司法修了者のうち89%は裁判官、検察官、弁護士の法曹三者へ就職しています。
このため、企業の法務部への就職は倍率が低いと思われがちですが、どの企業も法務部の募集人数は毎年少ないため油断せずに就活の準備を進めましょう。
小売り
経営学や経済学ではブランド戦略や小売業の国際比較等小売り業の販売拡大に直結することについて研究職している場合が多いため、重宝されます。
このように、研究職というと一見、理系が就く仕事と捉えられがちですが、文系も研究職として様々な場面で活躍することが可能です。
博物館・美術館
博物館や美術館の学芸員として就職する人もいます。
学芸員とは、博物館や美術館で展覧会の企画、広報活動、資料の収集・整理・保管、研究まで幅広く担当する仕事です。欧米ではキュレーターと呼ばれています。
学芸員になるには専門知識が必要です。大学院で博物館や美術館に関する科目を学び、学芸員の資格の修得が必要になります。
学芸員の募集は非常に少ないため、はじめは学芸員のアルバイトとして入社し、正社員を目指すことが必要になってきます。
理系の修士が研究職に就きやすい業界
続いて、理系の修士が研究職に就きやすい業界について見ていきましょう。
自動車
自動車メーカーの研究職は消費者ニーズや製品化の実用可能性だけでなく安全性に配慮した研究を行います。
また、一つの車が出来上がるのに非常に多くの部品と作業工程が必要となるため関係部署との連携が多いという特徴があります。機械や電気電子の研究を専攻していた方が特に業務に生かすことができる職種です。
他のメーカーより多くの連携が必要となるのでチームで仕事をしたい方に向いていると言えるでしょう。
製油
製油業界は多くの家庭が料理する際に使う油について取り扱っている業界です。
新型コロナウイルスの影響による自炊の増加によりニーズが伸びてきています。
健康ブームによる需要の変化で、より安全で健康にいい油の研究により人々の生活を支えることに直結する業界です。
生物学専攻や食品生産学専攻の方の多くが活躍している職種になります。
食品
食品業界は人々の生活になくてはならないものですよね。
また、人の体は食品からできているものなので食品業界は人の生活を支えることに直結しており非常に人気の職種です。
一口に食品業界と言っても、飲料水や冷凍食品、お菓子、製粉、調味料、パン、加工食品など様々な業種があります。
いずれも、安心安全であることは言うまでもなく健康を意識したものが多くなっています。
例えば、飲料水では黒烏龍茶、お菓子ではカロリーメイトやプロテインバーなどです。
また、冷凍食品やパンも女性の社会進出により忙しい社会人が増えたため、時間がなくても食べられることで需要が増加して、より栄養価があるものが求められています。
つまり、食品業界の研究職になるということは多くの人々の健康を増進するという社会的役割が非常に高いものとなります。
医療系に興味がある方も、予防医療という観点を考えて食品業界にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
農学系や生物系、化学系の研究を専攻した方が多く活躍している業種になります。
食品メーカーの研究職についてはこちらの記事にて詳しく解説しています。
電気
電気業界は、今や世界中の全ての産業だけでなく人々の生活になくてはならないものになっていますよね。
この電気の安定供給が止まってしまえば世界中の産業が停滞し世界中の人々が生活できなくなってしまうほど重要な業種です。
電気化学、材料化学、電気電子系の専攻の方が多く活躍しています。
ソフトウェア
ソフトウェア業界もあらゆる産業を発展させてきた業界で、これから先も非常に重要です。
ソフトウェアとはコンピュータ上で様々な処理を行うプログラムです。
例えば、セキュリティソフトや経営管理ソフト、顧客情報管理ソフトなどがあり、ソフトウェアの品質が高くないと多くの企業が機能停止したり社会的信用が損なわれることにもつながります。
また、新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの人々はこれまで以上にプライベートでもITを駆使するようになりました。
具体的には、ZoomやGoogle meetsなどを使ったオンライン飲み会や、在宅時間が増えたことによる通販や動画サイトの使用などは、全てソフトウェアがなければできません。
つまり、ソフトウェア業界はこれまではツールの側面が強かったですが、現代ではインフラ産業といえるでしょう。
電気やガス、高速道路などの人々の暮らしを支えるインフラ業界を志望している方は視野を広げてソフトウェア業界も見ていきましょう。
情報工学系や数理工学科などの専攻の方が多く活躍しています。
その他にも理系の場合、家電メーカーや博士号取得者が多い製薬業界など多岐にわたる選択肢があります。
このように、人々の生活の根幹を支える業界が多くなっています。
研究職は修士を採用したい企業が多い
今回は、研究職が期待されていることや文系・理系が就きやすい業種についてご紹介しました。
最後に記事の内容をおさらいしましょう
1.研究職になるには、基礎能力と専門性の高さが重要
2.研究職は、特に理系に人気で内定者の数も多い
3.文系の研究職は金融や司法、小売業が就きやすい
4.理系の研究職は自動車業界や食品業界、電気業界やソフトウェア業界など多岐にわたる
企業の多くは、学士より基礎能力や専門性が高い修士を採用したいと考えています。
ぜひ学校推薦や就活エージェントを利用して研究と両立しながら早い段階で就職活動を進めていきましょう!
アカリクには様々な企業の求人が掲載されている
これまで修士の研究職について解説してきましたが、日々の研究と両立させながら、様々な業界や企業の求人を独力で探すのは難しいかもしれません。
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