論文の「査読」とは?論文投稿のフローやレフェリーへの対応も解説

アカリクコラム
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「査読」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

論文投稿の関門といっても過言ではないので、論文投稿の経験がある方はご存じかと思います。

今回のコラムでは、査読の仕組みやその目的とともに、論文投稿のプロセスや査読者(レフェリー)への対応も含めて解説します。

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査読とは

そもそも査読とは何でしょうか。

また、査読は何のために行われるのでしょうか。

ここでは査読の意味や目的をご紹介します。

論文掲載の関門

査読とは、投稿された論文をレフェリーと呼ばれる第三者の専門家が読み、掲載にふさわしいかどうか判断する作業のことです。

多くの学術誌では査読が行われ、その後掲載となります。

論文の投稿から掲載までの一連の流れの中で、この査読が通るかどうかが最大の難関となります。

論文投稿プロセス

ここで、論文の投稿から掲載までの流れをご紹介します。

論文投稿のプロセスには大きく分けて「投稿」→「初回判定」→「査読」→「校正刷り」→「出版」という手順が踏まれます。

投稿

原稿を執筆し、投稿します。

執筆要領は多くの場合、ジャーナルのWebページに掲載されています。

どのジャーナルであっても、執筆要領を入念に確認して執筆要領を守った原稿を執筆することが求められます。

例えば、NatureではFormatting Guideが用意されており、論文のフォーマットや採用するべき命名法などが詳細に記載されています。

参考: Nature 「Formatting guide

原稿の他にもConflicts of Interest(COI)と呼ばれる利益相反についての告知書類や、「カバーレター」と呼ばれる、編集者に原稿の概要を説明する書類を作成し、原稿と同時に提出することを求められることが多いです。

また、ジャーナルによっては査読者の推薦や、競合研究者を査読者から除外するためのリストを提出しなければならない場合もあります。

最近では、投稿はWeb上のフォームから送信することが多いです。

執筆した論文を査読付きジャーナルへ投稿する際には、これらのことについても執筆要領で説明されていることが多いため、しっかり確認しておきましょう。

初回判定(First decision)

投稿された原稿を最初に読むのがエディター(編集者)です。

エディターは原稿を読んで査読者に回すかジャーナルにふさわしくない(Editor kick)かを判断します。

ハイレベルなジャーナルほど大量の投稿論文から掲載論文を選ばなくてはならないため、このエディターチェックが厳しく、例えばNatureに投稿される論文は200本/週とも言われますが、実際に掲載されるのはそのうち8%に過ぎません。

参考: Nature Japan 「投稿をお考えの皆様へ

査読

エディターがジャーナルにふさわしいと判断した論文は査読に進みます。

レフェリー(査読者)が3人ほど選ばれ、論文に対するコメントが付きます。

レフェリーがOKを出せば論文が受理されます。

逆に言えば、査読付きジャーナルにおいてはレフェリーたちのOKが出ない限り、投稿した論文がそのジャーナルに出版されることはありません。

校正刷り

原稿をもとに版組みが行われ、作成された紙面が著者に送付されます。

著者は誤字や図表などの参照番号に間違いがないかを確認します。

出版

校正で指摘された部分を修正したうえで出版されます。

最近では紙媒体での発行は行わないオンラインジャーナルも多くなっており、出版までの期間は1ヶ月程度というジャーナルも少なくありません。

査読の必要性

なぜ査読が行われるのでしょうか。

それは、投稿された論文が科学的に適切な論考を行っているかどうかを客観的に判断するためです。

ジャーナルの編集部は査読を行うことで、掲載された論文の質を担保しています。

逆に言えば、査読が行われなければ論文を出すことはさほど難しいことではないはずです。

国際会議のプロシーディングスなども同様に査読が行われることがありますが、こうした論文やプロシーディングスを業績リストに掲載する場合には、査読の有無を明記するよう求められることもあるほど、査読をクリアして発表された成果なのかどうかは重視されているのです。

査読つき論文の探し方や見分け方

ここで、査読付き論文の探し方や、ある論文が査読を受けたものかどうか判断する方法を紹介します。

査読が行われるかどうかはジャーナルごとに決まっており、査読が行われるジャーナルでは基本的に全ての論文が査読されています。

ただし、査読付き論文では「Peer Reviewed」という記述があることもありますが、ハゲタカジャーナルと呼ばれる一部の悪質なジャーナルでは十分な査読が行われていないこともあり、注意が必要です。

もっとも確実な方法はそのジャーナルが論文データベースでどのように扱われているかを調べることです。

論文データベースとしてはGoogle ScholarやCiNii Researchなどが知られていますが、例えばScopusは査読付きジャーナルのみを収録しているため、もし収録されていれば査読されていることが分かります。

参考:Google「Google Scholar

参考:国立情報学研究所「CiNii Research

参考:ELSEVIER「Scopus

査読の方式

ここで、査読の方式を紹介します。

査読者は一般的に匿名で行われますが、投稿者が匿名となるかどうかによって「シングルブラインドによる査読」と「ダブルブラインドによる査読」の2通りの方式があります。

シングルブラインドによる査読

シングルブラインドの場合、著者は査読者を知ることが出来ませんが、査読者には誰が書いた論文なのか知らされます。

査読者は誰が書いた論文なのか加味して査読を行うことができますが、差別によって不当に論文が拒否されたり、逆に著名な先生の論文が通りやすいということがあるかもしれません。

ダブルブラインドによる査読

ダブルブラインドの場合、著者も査読者もお互いを知ることはできません。

この場合、論文はその内容によってのみ審査されることになります。

論文はその内容によってのみ審査されるべきであり、著者によって左右されるべきではないという考え方によるものです。

しかしながら、原稿の文体や引用している文献などによって誰が書いた論文なのかなんとなく分かってしまうということも少なくないようです。

ちなみに、最近ではblindという単語が視覚障がいに対する差別を助長するということでdouble-anonymizedといった表現に置き換えられつつあるようです。

参考: Copsey, M., Allen, J., & Cooper, A. I. (2021) 「Double-anonymised peer review: a new option for authors at Chemical Science」Chemical Science

査読をめぐる最近の動向

査読は古くから存在する論文出版の仕組みであり、既に述べたように論文の信憑性を担保する重要なものですが、最近の動向もいくつかありますのでご紹介します。

査読プロセスの透明化

これまで、査読は匿名で行われることが一般的であり、誰がどの論文を査読したのかは不透明でした。

これは査読者を守るための仕組みであり、匿名だからこそ忌憚のないコメントができるわけです。

一方で、査読者が掲載前の論文のアイデアを盗用したり他人に話してしまうといった問題もあり、責任と保護のバランスは難しい問題といえます。

その意味では、査読プロセスが透明化されることで、読者は査読が適切に行われているかどうか判断することも出来るようになると言えます。

参考: STM Publishing News (2016)「Transparent peer review at Nature Communications is a clear success

参考: John Maddox (2003)「How genius can smooth the road to publication」 Nature

「ハゲタカジャーナル」問題

最近ではオープンアクセスという形式を取っているジャーナルも存在しております。

オープンアクセスの形式を取っているジャーナルは購読料を読者に課さない代わりに論文の著者が掲載料を負担することで運営されています。

注意すべき点として、オープンジャーナル誌の中にはハゲタカジャーナルと呼ばれる、まともな査読を行わずに質の低い論文を受理し、著者から掲載料を巻き上げる悪質な雑誌も存在します。

ハゲタカジャーナルに執筆した論文が掲載されるということは、研究者として読者や他の研究者からの信用を失うことになりかねないため、投稿する際には、投稿予定のジャーナルの信頼性を確かめましょう。

参考: 奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構 研究推進部門「ハゲタカジャーナル

査読による判定と求められる著者の対応

査読が終わるとレフェリー(査読者)からコメントと査読結果が返ってきます。

リジェクト(掲載拒否)となれば投稿プロセスはそこで終了となりますが、大抵の場合には論文を改訂することが求められます。

ここでは、レフェリーからの返答とそれに対する対応をご紹介します。

リジェクトとなった場合

投稿した論文がリジェクトとなった場合、投稿プロセスはそこで中断となります。

リジェクトとなった場合はレフェリーや編集者のコメントを読んでみましょう。

問題点を修正して投稿すれば再度検討するという記述があれば、もう一度査読を受ける必要がありますが、論文のコンセプト自体は悪くなく、書き直すことでそのジャーナルに掲載されるチャンスが残っています。

一方、論文の内容がジャーナルの基準に達していない、ジャーナルには相応しくないなどといった記述があった場合にはそのジャーナルへの再投稿は難しいと考えるべきでしょう。

内容を根本的に見直してまとめ直すか、別のジャーナルへの投稿を検討しましょう。

別のジャーナルへ投稿しなおす場合は、改めて投稿先のジャーナルの執筆要領を確認し、原稿を修正する必要があることに注意してください。

条件付きアクセプトとなった場合

論文がアクセプト(受理)される場合でも、投稿した原稿がそのまま掲載されることは極めてまれです。

実際にはレフェリーから付いたコメントに対応し、それらの懸念がクリアされた場合に論文が掲載されるということが多いです。

こういった場合、ジャーナルにもよりますが「minor revision」または「major revision」といった判定となる場合が多いです。

これらは求められる改訂の規模を示しており、軽微な修正で済む場合にはminor revision、大幅な改訂が必要な場合にはmajor revisionとなります。

特に明確な線引きがあるわけではなく、担当編集者によってどちらを付けるかは曖昧ですが、major revisionの場合は追加実験を要求されたり、ディスカッションの内容を見直すことが要求されることもあります。

一方、minor revisionの場合でも油断するとリジェクトの判定となる場合もあるため、レフェリーのコメントには誠実に対応しましょう。

参考: 田中勇樹(2019-12)「条件付き採録をクリアするには: 適切な回答書の書き方

アクセプト

アクセプトの返事は投稿論文が受理されたことを示しています。

その後、校正刷りの対応などを経て正式に出版されます。

まとめ

今回のコラムでは論文投稿の際に乗り越えなければならない査読について解説しました。

また、査読の目的や査読者への対応についてもご紹介しました。

投稿する側としてはひと仕事となる査読対応ですが、論文の正当性を証明するための重要な仕組みです。

これから論文執筆に挑戦しようとしている皆さんの後押しになりましたら幸いです。

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