大学院生だからこそ気をつけるべきポイント

就活ノウハウ

この記事は大学院生や研究者の就職支援に特化したサービスを提供しているアカリクが事業活動の中で得た知見をまとめたものです。初めて就職活動に挑む大学院生を念頭に置いた概論的な内容になっています。まだ具体的に就活をしない方にも、既に就活が進んでいる方にも、就活の要点について予め学んだり現状を振り返るのに最適です。

就活市場における大学院生という存在

政府統計の学校基本調査によると、平成30年3月に学部を卒業して就職した方は436,097名(全体の約86.8%)でした。これに対して、同年3月に修士課程を修了して就職した方は55,877名(全体の約11.1%)、博士課程を修了して就職した方は10,577名(全体の約2.1%)でした。調査に回答していない方も存在することを考えると、実際にはそれぞれもう少し多いかと思いますが、以下の円グラフで視覚的にも圧倒的な比率であることがわかるでしょう。

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[平成30年度学校基本調査を基にして作成]

同じく学校基本調査によると、平成30年3月に高校を卒業して就職した方は185,780名となっています。これは大学院を修了して就職した人数の合計の約3倍です。これらの数値から、社会全体の中、特に就活市場の中で、大学院生という存在は数の上では大きくないということがよく分かるでしょう。

全員が同じ業界や職種に応募するわけではないため偏りは発生しますが、学部生との違いを理解していない採用担当が存在することは想定しておきましょう。今では修士は問題なく受け入れられていると思いますが、それは接する機会が増えただけであって、相手は大学院について全く知らないという前提で心構えしておくと良いですね。

大学院生に対する誤解や迷信

今でこそ減少していると思いますが、大学院に進んだ人はみんな大学教授を目指すものだと誤解されることがあります。また、事実として大学教員の道を諦めたり、途中までは大学に残ろうと考えていたという方も多いはずです。大学院生の応募者があまりいなかった企業の視点から見ると、「仕方なく企業に就職しようと考えているのではないか」とか「冷やかしで社会見学として応募したのではないか」と見られてしまうことがあります。

他にも「行動することよりも、考えることを重視するので、フットワークが重い」という声を聞くことがあります。「自分なりに理屈を考えようとするため、組織の理屈に納得しない」という意見や「人との関わり方や時間の使い方が独特なためビジネスの世界に適応しにくい」といった話も色々な企業から聞こえてきます。

こうした誤解や迷信をすぐに振り払うことは難しいので、自ら払拭するような言動を示していくことが一番有効です。もし「大学院生は使えない」という思い込みが強い企業だとしても、「こいつは違う」と思わせることができれば評価は逆に高まります。大切なのは相手の思い違いを正そうとせずに「それとなく気付かせる」という点です。親しくない人から面と向かって「それは間違いだ」と言われると、正論でも印象はよくありませんよね。

先輩たちが悩んできた自己PR

私たちアカリクのコンサルタントが就活している大学院生からよく質問されるのが「自己PR」の対策方法です。内容は個人ごとに異なるのは当然ですが、そもそも企業が何を求めているのか分からないという悩みが深刻です。

具体的には「自分が何者なのか説明できない」という質問が多く、「何が評価の対象か分からない」「自分なんて周りに比べたら大したことない」「研究以外でやりたいことが分からない」という声もよく聞きます。

「自分が何者なのか説明できない」という方は大きく分けると二つのパターンがあります。一つは無意識に「自分=研究」となっているパターン、もう一つが「客観視できていない」というパターンです。

「自分=研究」というのは特に博士課程の大学院生に多く見られる傾向で、研究という要素が自分のアイデンティティの重要な一部となっていることが原因です。そして「客観視できていない」というのも、組織や社会の中での自分の立ち位置をイメージできていないことが原因であると考えられます。

この二つを解決するのが「自己分析」という過程です。様々な就活ガイドが自己分析を重要視して取り上げているのは、実際に分析すると空間軸と時間軸で情報が整理されるからです。

他者との比較によって自分がどの位置にいるのか空間軸で測り、過去から現在までどのように成長したのかを時間軸で辿るのが、自己分析です。

自己分析には色々な方法があるかと思いますが、ここでは樹形図をイメージした方法を紹介します。まずは最初の取っ掛かりとなるキーワードを挙げていきます。例えば、研究、実験、サークル、アルバイトのような単語で構いません。ここから各キーワードを構成する要素を書き出して樹形図にしていきます。

掘り下げると具体的な例が出てくると思いますが、概ね4段階ほど掘り下げると抽象的なワードへと分解されていきます。例えば実験や研究室運営を掘り下げていくと「管理」や「調整」といったワードが現れることが多いかと思います。これらのワードがあなたの能力や実績の根源にある要素であり、あなたの強みであり、自己PRの鍵となります。

自己PRは文章でも口頭でも共通して「相手にとって分かりやすい」という点を意識しなければなりません。最も効果的なのは「一番最初に一言で結論を述べる」という学術論文と同じ原則を使うことです。就活は研究と違う世界のように思えますが、どちらも社会的活動の一部であり、自己PRと論文発表は人に伝えるというアウトプットであることは同じです。

口頭での自己PRを想定すると、最初に一言で結論を述べた上で、補足情報を一言二言ほど付け加えます。もし「◯分間でお願いします」と指定されていたり、面接官がその先を促すような素振りや続きを待っているようであれば、より具体的なエピソードを話します。全体の量としては相手の想定する90%から110%に留めるように意識すると良いでしょう。

文章の場合も基本的に同じですが、読み返すことができるので論理的な説明になっているかチェックすることを怠らないようにしましょう。可能であれば専門が違う友人や家族に読んでもらいましょう。就職エージェントなどでコンサルタントと相談しながら就活をしている場合は、添削を依頼すると適切なコメントが得られるはずです。

大学院生のコア能力と基礎的な教養について

皆さんは自分自身の能力について考えたことはありますか?大学院生は自分自身の研究テーマが自分のアイデンティティだと考えてしまいがちな傾向にありますが、これは非常にもったいないことです。専門性を支える基礎も含めた全体が大学院生・研究者の能力だと捉えることで可能性を広げることに繋がります。

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①大学院生のコア能力
図の最下段にあるのが、様々な事象に取り組むために必要な「コア能力」です。課題設定能力、課題解決能力、論理的思考能力、アウトプット能力、調査能力、評価能力、自己管理能力、思い、粘り強さなどを指します。仕事をする上で、分野や職種にかかわらず最も応用の利く能力がここです。
②基礎的な教養
コア能力の上にあるのが、基礎的な教養としての知識です。例えば、科学的なものの見方、考え方、基礎的な知識、文献の探し方、データの取り方・扱い方などを指します。
③専門分野
大学院生のコア能力や基礎的な教養を土台としてその上に乗るのが、専門分野に関する知識や技術です。大学院での研究科/専攻にあたる部分になります。
④自身の研究テーマ
最も上の階層にあるのが自分自身の研究テーマと、その研究テーマに関する知識や能力となります。

重要なのは「自身の専門分野」は自分自身の一部であるが全体ではないということです。大学院生の有する能力は「基礎+専門」で全体なのです。ここへさらに「個人的な経験・スキル・人格を含めた人間性」が加わり形成されるものが「自分自身」であり、専門性にのみに価値があるわけではありません。むしろ社会で活躍するという観点では、一番下の土台部分に当たる「コア能力」が最も重要な能力です。

また、自分自身の大学院生・研究者としての広範な能力を理解することで、それぞれの能力を活かした複数のレベルでの就職活動にチャレンジすることが可能になります。

コア能力を生かした「能力応用就職」と専門分野での知見を生かした「専門就職」という幅のある選択肢を持てることは大学院生ならではの特権です。大学院生活で身につけた自身の能力の多様性を認識し、戦略的に就職活動を行うことをおすすめします。

「能力応用就職」
仮説検証能力、論理的思考力など、大学院生のコア能力を活かした就職。専門分野と関係なく、コンサルタントとしてクライアントニーズを把握して問題解決を図るような就職。生産トラブルを解消する生産技術職や、システムエンジニアなども該当する。

「専門就職」
自身の専門分野と研究科/専攻レベルでの専門分野の能力と技術を活かした就職。専門分野飲みを活かした就職活動に限定すると応募先が狭まり、苦戦することが多い。専門分野と合致する職種の募集が毎年あるとも限らない。また、採用する側も専門性の合致度や客観的に判断できる実績を求めるため、即戦力のキャリア採用に近い基準を設ける傾向にある。

特にコア能力についてまとめると、
◆物事を筋道立てて論理的に考察することができる
◆他者と協力して研究や作業を進めることができる
◆自分の考えを相手に伝わる方法で表現できる
という特徴があることが見えてきます。

企業から求められている能力や技術について

日々の研究を通じて常に思考が鍛えられており、課題解決を実践する過程でチームワーク、マネジメント、リーダーシップの経験を積んでいる大学院生は、実は企業からの期待に応えられるのです。

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[出典:科学技術・学術政策研究所(2017)『変革期の人材育成への示唆~新経済連盟との共同調査結果に基づく考察~』]

また、企業の経営層が求める人材像は「高い専門性を利用して戦略的に行動できる人物」であると言えます。これはビジネスの世界に既にいる即戦力を除いた場合、現役で研究活動に従事している方がフィットするのではないかと考えられます。

大学院生を採用した企業から評価される点について

最近では修士課程だけでなく博士課程の大学院生を採用する企業が徐々に増えていることもあり、大学院生に対するポジティブな評価も頻繁に聞くようになりました。

企業の採用担当から聞いたポジティブな話の一部
◆上っ面ではない社会貢献の意識があるため、理念や事業内容に深く共感してもらえる(特に博士)
◆針の先のような尖った狭い専門性だけでなく、関連分野までカバーする幅広い知識がある(特に博士)
◆仮説を立てて色々なアプローチを考えられる
◆壁にぶつかった時のリカバリーが異常に速い
◆思考する体力があるので知的労働に向いてる
◆意外と仕事のプロセスに適応するのが早い

博士課程の大学院生を実際に採用した企業は、その価値を理解できるようになります。企業へ就職する際、特に博士課程の場合は「特別に優秀な」大学院生である必要なんて実はありません。企業の視点からすると修士課程を修了している時点で既に能力についての不安は少なく、むしろ本当にアカデミックポストではなくビジネスを選んで良い人物かどうかを重視しています。

自分の気持ちを整理して、切り替えることがうまくいけば、博士課程の大学院生であることは全く不利になりません。しっかりと研究活動に従事した上で、企業に対して真摯な姿勢で対峙しましょう。

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著者プロフィール
アカリクお役立ちコンテンツ編集部

株式会社アカリクの15年以上にわたる大学院生・ポスドク・研究者のキャリア支援活動の中で得た知見やデータをもとに、編集部員が記事を執筆しています。

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