特任助教が抱える任期切れ問題とは?仕事内容及び年収とともに解説

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特任助教とは

「特任助教」の職務や年収を考えるにあたり、まず似た職種である「助教」や「テニュア制助教」との違いを明確にとらえる必要があります。

 任期の定め予算区分
特任助教任期の定めあり(1年~数年)外部研究費
助教大半の場合、任期の定めあり(数年)大学の基盤運営費
テニュア制助教数年の任期の後、審査で任期なしへ大学の基盤運営費など

まず、助教とは多くの場合“任期の定め”がありますが、大学の基盤運営費により雇用される教員です。なお、近年テニュア制助教と呼ばれる職種もあり、数年(5年程度)の任期を経たのち、審査を受け、任期なしの教員として登用される制度を利用したものになります。

一方で、特任助教は、外部研究費の獲得などにより募集される“任期の定めのある助教職”のことをさします。このことから、雇用される予算が違うという点が最も大きな違いと言え、職務内容にも違いが出てきます。

特任助教の仕事内容

特任助教は、外部研究費により雇用される職種であることから

  • 外部研究費のプロジェクトに関係する研究を行う

ことが仕事内容の中心になると考えられます。

その一方で、特任助教も大学教員というように扱うことができることから、常勤の教員(教授・准教授・講師や助教など)と同様の職務に従事することが求められる場合もあり

  • 学生への教育・研究活動

も仕事内容となる可能性あります。

なお実際のところは、大学法人ごとの就業規則にのっとり予算を獲得し特任助教の募集を行った研究室の主宰者(PI)との相談の上、細かな仕事内容が決められていくものと考えられます。

特任助教になるには

特任助教の募集情報などは一般に

  • JREC-IN Portal
  • 学会のホームページ

などに公開されることが多いです。

なお、特任助教は特定のプロジェクトのために雇用されることが多いことから

  • プロジェクトを推進するための専門知識
  • 上述の内容に関連する博士号もしくはこれに準ずる資格

が必須となっている事例が大半です。

これらの資格に加え

  • これまでの業績(論文、著書や学会発表)
  • 職務に対する抱負
  • 応募者の研究内容や人物照会に係る推薦者の連絡先

などの応募書類をまとめ公募に応募するのが一般的です。

なお、他の大学教員や研究員の公募同様、公募情報が公開されるとともに事前に適任者に声がかかっている場合もあることから、特任助教になるにあたっても

  • コネクションがあると有利

であると考えられます。

特任助教の年収はどのくらい

特任助教の給料に限って年収が調査された例は見当たりませんが、多くの場合400万円~500万円程度と言われています。

なお、学校教員統計調査(平成28年)によれば助教の給料(月額)は、平均35万円程度とされています。これに、各種手当を含めた額が支給される場合が大半です。

また個々の公募における特任助教の給料については

  • 公募資料上の記載
  • 公募を行っている大学の就業規則

を確認することで、大まかな額を確認することができます。

他にも

  • 各種手当の有無
  • 社会保険の取り扱い

についても多くの場合、公募資料上に記載があるため、これらの情報を確認することで大まかな年収や雇用条件を知ることが可能です。

参考:文部科学省(平成28年度)「学校教員統計調査

特任助教とポスドクの違い

特任助教とポスドクは、どちらも外部研究費により雇用されることから、外部研究費に関連する研究プロジェクトの推進に携わることになる点は共通しています。

一方、これら特任助教とポスドクの違いとしては、特任助教の場合

  • 学生を教授し、その研究指導を行う可能性があること
  • 特任助教が所属する組織の大学教員と同等の職務も従事可能であること

という点が大きな違いと言えます。

すなわち

ポスドク:研究プロジェクトの推進する

特任助教:研究プロジェクトの推進のみでなく、大学教員としての職務を行う場合もある

という違いがあるものと考えられます。

特任助教問題とは

任期切れによる雇用不安

1990年代の大学院重点化以降、博士人材の増加に対しパーマネント職(任期の定めのない職)は増加せず、若手研究員が任期の定めのある職に長期間就かざるをえない状況になっています。任期の定めのある職では

  • 雇用が1年単位の短期間である
  • 短期間のうちに成果が求められる

など、若手研究員の雇用不安へとつながっているのが現状です。

なお、任期の定めのある職種の代表例として、ポスドク研究員と呼ばれる職種があり、短期間の任期のポスドク研究員を繰り返さざるをえないポスドク問題が生じていますが、この問題はポスドク研究員のみではなく、同様に任期の定めがあり任期切れの心配がある特任助教でも生じており、特任助教問題とも呼ばれています。

参考:ポスドク問題とは?仕事内容や給与・課題

特任助教問題の背景

特任助教問題の原因である、アカデミアポストにおける特任助教をはじめ“任期の定めのある職”が増えた理由は

  • 大学の運営費交付金の減額

が1つの要因であると考えられています。

大学の運営予算となる国立大学法人運営費交付金の予算額は、平成16年の1兆2415億円から、令和2年の1兆807億円へ減額され、そのあおりをうけ常勤教員の人件費が減少、任期付き教員の増加につながったと考えられています。

さらに、大学院重点化以降の博士人材の増加に対し

  • 博士人材のキャリアパスの整備が追い付いていない

というのも原因の1つであると考えられ、民間企業への就職の道やアカデミアにおけるキャリアパスの整備などを行わないまま、博士人材が増加してしまったために、任期付きの職に就かざるをえない、特任助教問題やポスドク問題へとつながっているものと考えられます。

参考:国立大学法人の財務運営についての考え方 4ページ目参照
参考:国立大学法人運営費交付金を取り巻く現状について 3ページ目参照

特任助教問題への国の対応策

このように、博士課程を修了した若手の研究員が任期切れの心配のある特任助教のような職種につかざるをえない状況を変えるため、国もいくつかの対応策は打ち出し始めており

  • 卓越研究員制度
  • テニュアトラック制助教の導入

などがあげられるでしょう。

卓越研究員制度は、短い任期で不安定な雇用が問題となっている若手研究者が、自立して研究をできる環境整備を目的とした制度であり、文部科学省が中心に人材を必要とする研究機関と若手研究員のマッチングを行うことを目的としたものです。

また、テニュアトラック制助教とは、基本的には“任期の定めのある助教職”ですが、任期満了時の審査により“任期の定めのないポスト”に移行できるポストが用意されている助教職であり、若手研究員の雇用安定に寄与する可能性があるものとして近年導入が進められています。

しかしながら、どちらもまだ始まったばかりの対策であり、任期切れの心配のある特任助教のような職種をなくすには至っていないのが現実です。

参考:テニュアトラック制とは
参考:卓越研究員事業の目的・概要

特任助教の先のキャリアパス

特任助教は、“任期の定めのある職”であることに加え、任期の延長も予算の獲得状況に左右される不安定な身分です。そのため特任助教として雇用されているときに

  • 他の助教職や“任期の定めのない”大学教員職への応募
  • テニュアトラック制度を活用した職種への応募
  • 民間企業への就職

など、特任助教の次のポストを探し始めておく必要もあるでしょう。

大学・研究機関に残る場合

大学や研究機関に引き続き研究活動を続ける場合

  • “任期の定めのない”大学教員や研究機関の公募へのチャレンジ
  • テニュアトラック制度(将来的には“任期の定めのない”ポストへ移行可能な制度)の活用

を通じ、特任助教やポスドクなど“任期の定めのある職”から抜け出すことが、キャリアパスとしての目標となるのではないかと考えられます。

なお、これらのポストに応募し、採用されるようになるためには

  • 研究成果(論文の執筆など)をあげること
  • ポストを紹介してもらえるようネットワークを広げること

などが非常に大切になってくるものと考えられるため、日ごろの研究をこつこつと行うとともに、学会などに参加しネットワークを広げていくことが大切なのではないでしょうか。

参考:講師・准教授・教授の違いは?講師の種類と給料とは

民間企業への就職

また、大学や研究機関といったアカデミア職のみでなく、民間企業への就職も視野に入れることも大事であると考えられます。

近頃、博士人材を必要とする企業も増えてきており、博士課程やその後の研究生活で身につけた

  • 論理性や批判的思考力
  • 自ら課題を発見し設定する力
  • データ処理、活用能力

といったような「高度な汎用的能力」が実際の仕事でも役立つと言われています。

このような、博士課程やその後の研究生活で身につけた能力をもとに、民間企業に就職するにあたっては

  • 転職サイト

などに登録し、求職活動を行っていく必要があります。

参考:博士課程修了者が実際の仕事で役に立ったと感じる、大学院で得たものの筆頭は「高度な汎用的能力」

まとめ:特任助教在籍中に成果をあげ、先のキャリアパスに進んでいこう

特任助教は、特定のプロジェクトのために雇用されることから、任期の定めがあるのが特徴です。このことから、若手研究員が安定した雇用にたどり着けない“ポスドク問題”同様に

  • 特任助教問題

へとも発展しています。

そのため、非常に不安定な職種であることから、時には

  • 民間企業への就職

を視野にいれる方がよい場合もあるでしょう

一方、特任助教とポスドクの大きな違いとして

  • 研究のみでなく、大学における教育に携わる可能性がある

という点があります。教育にも携わる必要があることから

  • 大学講師などになるために必要な“教育歴”

を得ることができる場合もあるでしょう。

そのため、プロジェクト遂行に関わる研究のみならず、大学の教育にも携わる必要があることから多忙な職種ではありますが、安定した職種に就けるよう、特任助教在籍中に

  • 研究成果
  • 教育実績

を十分にあげ、パーマネント職(任期の定めのない職)に就けるよう努力を続けていくというのが大切であるといえるでしょう。

 

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【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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