仮面座談会 Season3 Vol.2

インタビュー

就活や仕事に関する仮面座談会2回目は、院生としての経験やスキルを就職にどう活かしたいかというテーマです。院生1年、まさに就活中の4名に話を伺っていきます。

会計さん(男性) 修士課程1年
知能システムさん(男性) 修士課程1年
生物・食品さん(男性) 修士課程1年
総合化学さん(女性) 修士課程1年

アカリクA(男性) 人文社会科学博士
アカリクB(女性)  生命科学系博士

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企業が院生に対して望むことは?

アカリクA:第1回目の最後にアカリクBより「企業は院生に対しては即戦力を求めている」という言葉がありました。
実際に企業の方々と話をしていて、具体的な能力を求められた経験や、即戦力を求められていると感じた経験はありますか?

会計さん:企業の人と話をしていて感じるのは、専門性を求められているのかなと言うことですね。聞かれる内容も研究内容について尋ねられることが多いです。

生物・食品さん:アカリクBさんが第1回目でおっしゃった「企業の求めているスキルとポジションが自分と合えばあっさり決まる」というのは、その通りだと思います。私の先輩に実際にそういう人がいます。企業側でHPLC(高速液体クロマトグラフィー)が使える人が欲しいと思っていたらしく、先輩が面接で「HPLCができます」と言ったら、「ちょうどいい、じゃあHPLCを使ってうちの会社で研究をしてよ」となり入社が決定しました。
こういう事例から考えても専門性、スキルは学部生より求められているでしょうね。

総合化学さん:そうなのでしょうか。どうも先輩や周囲の方たちの話を聞いていると、大学で求められる研究と、企業で求められる研究は違うような印象を受けています。

アカリクB:確かに、企業での研究は大学での研究と比べて短い期間の中で成果を出さなければならないという違いはありますね。

総合化学さん:そうですよね。だから企業が求めているのは研究そのものではなく、研究を通じて得た「考え方」では無いかと思っているのですが、違いますか。

アカリクA:そうですね、「××を使える人が欲しい」というときにそれを使える技術があるというのは有利でしょうが、企業としてはまず社風のような、自分たちが大事とする「考え方」を見ると思いますね。まずは「考え方」であり、次に「××を使える人」という技術がくるという順番だと思います。
どんな企業でも自分たちが大事とする考え方と異なる人と働くのは大変でしょうから。

大学院での経験を仕事でどう活かしたいか

アカリクA:研究以外のことも含めて、大学院での経験をどう仕事の中に役立てたいと思っていますか。
また理系の方は専門から離れた、いわゆる文系就職をすることは選択肢として考えていますか?

総合化学さん:私は専門性を活かした仕事をしたいと思っています。自分の経歴が必要ない仕事にはできれば就きたくないです。せっかく理系の大学院まで進んだので、文系就職をするともったいないというか、親に申し訳ないという気持ちがあります。

生物・食品さん:それはどうでしょう。親御さんは子供にはやりたいことをやって欲しいと願っているのではないでしょうか?

総合化学さん:実際、親には理系と関係ない総合職になっても「理系の大学院まで出したのに!」などとは思わないから、好きなことをやりなさいと言われているんです。ただ、自分の中でそうなってしまっては申し訳ないという気持ちがどうしてもあるんですよね。

会計さん:あの、アカリクのお二人にお聞きしたいのですが、お二人は院では何をされていて、アカリクにはどのような経緯で働くことになったのですか?どこかに就職してから入社したのですか?

アカリクA:そうですね。折角の機会ですし、少しでも皆さんの参考になれば…
私は考古学を専攻していて遺跡の発掘をしたり、古代の文献を原語で読んだりしていました。狭い世界ですが研究は面白かったですし、もっと研究や大学院へ進むことにみんなが興味を持って欲しいなという思いがあって博士まで進みました。自分が研究の魅力を伝えていくことで、周りには遺跡の発掘に興味を持ってくれる人も増えましたが、日本全体ではまだまだ研究が一般的ではなくて、院に進む人も少ないですよね。だから、自分の研究をそのまま仕事にするというより、研究者をサポートする方向に進もうと思って、文科省のインターンシップに参加しました。

総合化学さん:文科省に入って、研究の支援をするような方向性を考えたと言うことですか?

アカリクA:インターンシップをするまではそう考えていました。文科省で、研究支援みたいな仕事ができないかな?と。しかしインターン中に文科省の事業と自分が行いたいことがちょっと違うなと思ったんですね。例えば、研究費を国としてもっと増やそうとしても、研究費をたくさん採れる大学と採れない大学の二極化が激化するだけなのかなと思いました。それは、研究者の人数を増やしたいという思いとは異なってしまいます。

そこで、日本で大学院へ進学することが広まらないのはなぜだろうと改めて考えてみたところ、その理由の一つが就職に対する不安ではないかと思いました。欧米のように修士だからこそ、博士だからこそ就ける職業や社内のポジションを作り出すことができれば、世の中が変わるのではないかと思っていたときにアカリクと出会ってそのまま就職したという感じですね。

生物・食品さん:研究と全く違う分野への就職だと思うのですが、院生の時に培った能力で役に立ったことはありますか?

アカリクA:プレゼン能力と方法論ですね。特に研究の根本的な方法論については、基本が変わらないので、その方法論を活かして様々な分野の方とお話をすることができるということでしょうか。
アカリクBはどうですか?

アカリクB:私は博士号取得後に就職したのがこの会社です。私はライフサイエンス系の研究をしていました。修士の時にも就活をして、食品系のバイヤーに内定をいただいたのですが、ちょうど研究費が取れたので大学に残りました。私は基礎研究が好きで、開発など発展性がある研究には興味がありませんでした。
当時のモチベーションは、基礎研究を重ねて論文を出したら、10年20年後、誰かが出した論文に私の論文が参考として記載されるかもしれないということでした。縁の下の力持ちみたいなことが好きなんです(笑)

生物・食品さん:企業で求められる、成果を出す研究とは違う部分ですね。

アカリクB:まさにそうですね。学術的な基礎研究は企業には求められないのでメーカーへの就職は難しい。博士を取った後、大学に残る話もあったのですが、ぶっちゃけますと、飽きてしまったんです(笑) 研究もできて、論文も出せて、自分の思う成果はある程度出せた、そう思ったので、修了しました。そしてしばらくニート生活をしていました(笑)。

知能システムさん:アカリクさんとの出会いはいつ、どんな風に訪れたのですか。

アカリクB:ニートしつつも、そろそろ就職しようと思っていたときにアカリクを知って、コンサルタントに相談に行ったのがきっかけでした。今となっては手前みそですが、そのコンサルタントは地頭が良くて、賢いという印象を受ける人でした。その後もいろいろな社員に会ったのですが、自分のやるべきことを自分で考えてやることができる、賢い人が多い会社という印象を持ちました。
こういう人たちと一緒に働いたら充実した会社生活が送れると思ってそのまま入社したという感じですね。

知能システムさん:その時に、これまで行ってきた研究や専門性が仕事に活かせてないことで無駄になったと思ったことはないのですか?

アカリクB:研究そのものではなくても、院生時代の経験が普段の業務で他の院生の方々の役に立っているので、研究が無駄になったとは思っていません。
例えば複数の研究を同時進行で行わなければならなかったのですが、そのマルチタスクの経験は今の業務でも活用できていますね。

会計さん:研究内容と直結していなくても、院生時代の経験を活かして社会に役立てる道もあるのですね。


院生として、専門をそのまま活かす道に行くかどうかという悩みは皆さん共通のものだと思います。アカリク社員2名は研究と直結しない進路を選択しましたが、参考になりましたでしょうか? さて、実際に就職したとしたらどんな働き方をしたいと現在考えているのか。 次回は院生が考える理想の働き方についてです。

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