アカリクコラム特別編 :東大院生も悩んでいる?就活インタビュー

インタビュー
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東大院生も悩んでいる?就活インタビュー

はじめに

— 本日はよろしくお願いします。
まずは皆さん修士2年目ということですが、どのような研究をされていますか?自己紹介をお願いします。

薬学さん:僕は薬学系ですがどちらかというと生物化学の分野で、天然の生理活性物質の合成に関する研究を行っています。化合物の合成経路を確立した上で創薬の種になるような新規化合物への構造展開を期待しています。

情報さん:僕は元々学部では電気自動車のモーターについて研究していました。環境問題に興味があったのですが、大学院では分野を変更して、現在は情報系の研究室に所属しています。都市空間とデジタル空間が交差した領域を対象に、より良い都市空間を実現させるための研究を行っています。

生物さん:僕は農学系の研究室で、ある昆虫の研究をしています。その昆虫は毒を持った植物を食べるのですが、何故その毒に抵抗性を持っているのかを、関連のありそうな遺伝子に変異を入れた変異体を作出して調べています。

— ありがとうございます。皆さん面白そうな研究をされていますね。 早速ですが、現在の就職活動の状況をお教えいただけますか?

薬学さん:就職活動は3月から始めていて、今(※2015年5月)は、エントリーシートを出し終わった段階ですね。それから、8月スタートでないところの面接を3社程度受ける予定です。

情報さん:自分は学部2年の頃から就職活動を始めました。

— 学部2年!?かなり早いですね!

情報さん:そうですね。かなり早いと思います。学部のころから合説(※編集注:合同企業説明会。以下同じ)に潜り込んだりして、企業研究していました。早く動いた方がいいかなと思って。ちなみに、行きたい企業はもう一つに絞ってあります。

生物さん:そうなんですか、すごいですね。実は自分は行きたい企業を絞り切れていないところがあります。先輩から、大卒基準の公務員を受けておくと楽だと研究室で良く聞いていて、2014年の春、公務員を受験して合格しました。ですがその後も就職活動を続けて、2014年の夏以降、複数の外資系戦略コンサルティングファームのインターンシップを経験しました。インターンシップの内容が難しくて、インターン中もよく勉強をしていたのが印象深いです。インターンの後はIT企業にも興味があり、2015年春から某IT企業の早期選考を受けて、内定を持っています。

— 公務員合格に、さらにもう内定を持っていらっしゃるんですね!おめでとうございます。やはり内定をお持ちですと、気持ちの余裕はありますか?

生物さん:そうですね、もし本命がどこも受からなかったら…という心配がないのが大きいですね。内定を出してくれた企業の方には申し訳ないのですが…。

薬学さん:やっぱり本命は他にある感じなんですか?

生物さん:そうですね、いろいろ考えた結果、自分の専門を少しでも活かせる食品・化粧品などのメーカーが本命ですね。

情報さん:自分は既にある一社に絞っていて、そこ以外はあまり行く気はないです。

— なぜそこまで惚れ込んでいらっしゃるんですか?

情報さん:自分は学部2年から色んな企業を見てきて、インターンも両手で数えられるほど行って、そこで感じたのが、そこの企業の人は本当に誠実な人ばかりっていうことです。そこに惹かれました。

— その会社は8月選考スタートだと思うのですが、もし受からなかったら…という不安はないのですか?

情報さん:もう企業の人と何度も話していて、「あんたなら大丈夫でしょ」と言われているので、そんなに不安はないですね。絶対受かってやろうという気持ちです。

薬学さん:すごい情熱ですね…!

— 薬学さんはどんな業界を志望していらっしゃるんですか?

薬学さん:もともと薬を作りたいと思っていて、製薬はもちろん志望ですがそれ以外でも「人の健康にかかわるところ」というのが企業選びの一つの軸になっていますね。特に「予防」に興味があって、機能性食品や健康食品、OTC医薬品(※編集注:一般医薬品、俗にいう市販薬のこと)に興味があります。

— ありがとうございます。さきほど、情報さんから学部2年生の冬から就活をしていた、そしてインターンを両手で数えられるほど行ってらっしゃったという刺激的なお話があったのですが、皆さんどうやって就職活動されていましたか?

薬学さん:去年の8月にいくつかインターンに参加しました。食品メーカーの研究所見学などはおもしろかったですね。ある企業のインターンは、とても長くて大変なんですが、企業側からのフィードバックがちゃんとしていたので役に立ちました。あと、ある1日インターンに出たのですが、おもしろくなくて本選考も受けないことにしました。就活が解禁になる前(※編集注:インタビュー時は経団連の広報解禁日が3月、選考開始日が8月)に企業選びを行うことができて、そういう意味ではよかったですね。3月1日からは学内の合説に参加しましたが、どの企業もホームページを見ればわかる情報しかなくて、がっかりしましたね。合説よりは個別の企業説明会に参加した方が良いと思いますよ。でも、個別説明会も研究職限定のものなどはもっと業務・研究に踏み込んでほしいと思いますね。

情報さん:先ほど話したように、学部2年から合説に潜り込んでいたので、もうお腹いっぱいという感じでしたね。でも、クオカード目当てに合説に出ていました(笑)「この企業のことまだよく知らないけど面白そうだな」、っていう所の話だけ聞いて、あとは本命の企業の採用担当の社員さんに会いに行って就活の愚痴を聞いてもらう、みたいなことをしていましたね。自分の就活で一番つらかったことはインターンですね。両手で数えきれない程の企業にインターンに行ったので。8月9月はインターン参加で潰れて研究はほとんどできませんでした。先生が就活に理解のある方だったので、秋以降もインターンに参加していました。

— それだけ参加されるということは、インターンが面白いものばかりだったんですね!

情報さん:いや、必ずしもそういう訳ではなかったです。もちろん面白い企業もありましたが、社員の方の学生への態度に疑問を抱く企業もありました。自分が行って良かったと感じるインターンは、参加した数の半数にも満たないですね。

— 本命の企業のインターンにも行かれたんですか?

情報さん:行きました。インターンというと、学生の囲い込みとか良い面しか学生に見せないとか、そういうイメージもあったんですけど、本命の企業のインターンでは良い面も悪い面も知ることができたと感じています。

— 生物さんは就職活動はかなり前から始められていたんですよね?インターンも参加されていましたし。

生物さん:はい。コンサルティングファームのインターンに参加していたんですが、あまり合わないなと感じましたね。就活は、まず就活ナビサイトに登録するところから始めました。とにかく研究が忙しかったので、自分に合った情報が欲しかったんですが、関係ないメールとかが多くて閉口しますね。合説にも行きましたけど、薬学さんのおっしゃる通り、微妙で、ホームページを見ればわかる内容が多かったので意味がないなと思いましたが、行かないと不安になるので行っていた感じですね。一学生としては、合説である必要を感じないですし、もっと現場の研究員に来てほしいなと思いますね。人事の方と話しても、わかっていないことが多くて…。

— 実際に現場の方にどんなことを聞きたいですか?

生物さん:どういう仕事をしているか、何をやってるのかを知りたいですね。
そういえば、ある企業がとても良い説明会をやっていました。研究職限定で説明会を開催してくれたため、事業や研究に興味をもつことができました。

薬学さん:ある消費財メーカーも個別説明会で研究所見学をやっていて、よかったと思いますね。

— ちなみに、業界研究はどうやってやってらっしゃいましたか?

生物さん:その都度Google先生に聞いていましたね。コンサルティングファーム、公務員、SIerと、すべてGoogleで業界を調べていました。

情報さん:業界地図と四季報をチェックしていましたね。オーソドックスですが。

薬学さん:自分は業界地図は使っていなくて、製薬の現状を書いている本を読んだんですが、それが参考になって、結果的に業界研究になっていました。

— エントリーシートはどうですか?

薬学さん:すごい量があるので大変です。20~30エントリーシートを出さないといけないのですが、企業のニーズと自分のスキルに乖離があると平気で切られるので、精神的に参ってきますね。自分は研究室の友人もドクターに進んだりするので、就活は孤独です。研究との両立も難しいですね。ただ、自分はすでにそこそこ良いジャーナルに論文投稿できたので、そのことを押してます。就活本の真似をせず、自分のことを書いています。エントリーシートは書けば書くほど自己分析になるという意味ではいいですね。

生物さん:僕はあまり自己分析はしていないですね。エントリーシートは最難関であると感じています。今日もお祈りメールがきました…。通過したところとの差がわからないので、あまり気にしないようにしています。良く書いているのは、困難を乗り越えたエピソードですね。ただ、エントリーシートでモヤモヤするのは、建前を書かなければならないところ。例えば「企業の知名度」や「給与額」などの本当の志望動機を書くと落ちてしまう。もちろん、嘘を書いても落ちてしまうので、うまい建前を探さないといけない。そこがなかなか難しいです。

情報さん:自分は夏のインターンから数えてエントリーシートを50は出しました。50も出すとある程度ストックができているので、設問の指定文字数に応じて文章を変えたりしつつ、内容をどんどんブラッシュアップしながら提出しています。中には話をちょっと盛っているような友達もいますが、嘘はすぐバレるので自分はそういうことはしないですね。それから、外資系企業や日系大手企業よりもベンチャー企業の方が選考が難しかった場合もあったので、本当に内容も難易度も企業によるので一概には言えないと思いました。

— では、第一志望が決まっている情報さん以外のお二人は、第一志望はどこですか?

薬学さん:やはり薬学なので製薬ですね。薬は長く研究してもできないこともあり、ギャンブル性が高いので、豊富なパイプラインと高い研究力に裏打ちされた業績ある企業に魅力を感じます。

生物さん:うーん、正直なところ、製薬は収入が良いので気になりますね。「会社の選び方」みたいなものを読んだことがあるのですが、年収で選んだ方がいいという統計もあるみたいです。

— じゃあ皆さん、もしもいっぱい内定が出たらどうしますか?

薬学さん:第一志望群、第二志望群と分けているので、まず群で選んで、群が重なったら社風や給料、安定性で選びますね。

生物さん:社風、和気あいあいとしたところがいいですね。殺伐としたところは無理です…。あとは待遇がいいところがいいです!

情報さん:本命の企業一筋です。とにかく皆さん誠実で素敵な方々なので。

— 内定が出た企業が研究と関係のない部署であったとしても受諾しますか?

情報さん:研究と仕事は別ですね。自分は環境に興味があるんですけど、本命の企業で何らかの形で携わることができればと思っています。

生物さん:同じ研究ができる訳ではないので、全く変わっても構わないですね。

薬学さん:僕は大学受験の時から薬を作りたかったので、薬は大学では作れないし、やはり就職先では薬にこだわりたいですが、自分の研究はリンクしているくらいでもいいですね。

— 正直なところ、就職活動で違和感を覚えていらっしゃることってありますか?

薬学さん:自分は推薦がない研究室なので、推薦があれば悩まなくていいし入社後のキャリアも想像しやすいのに、とは正直思ってますね。研究室単位の推薦はやめてほしいです。
あとは、経団連によって広報開始が3月、選考が8月開始になりましたが、正直学業との両立が難しいのでやめて欲しいです。

生物さん:そうですね。しかも、単純にこれまでのスケジュールより1か月遅くなっていますし。
やるなら短期決戦でお願いしたいです。まず学生が暇だという前提はおかしいと思ってます。大学院生の研究の忙しさをちゃんとわかってほしい。実験があるので、毎日本当に暇なんてないんです。忙しい学生がいることを踏まえたうえで、就活の仕組みを作っていってほしいと思いますね。

情報さん:自分は10月に修論の中間発表があるので、8月はその準備で忙しいこともあって本当にやめてほしいですね。しかも、企業によっては裏でこそこそ選考進めたりしてますからね。こそこそやるんじゃないよっていってやりたいです。
自分の理想の就活は、ドイツみたいに大学4年間の後一年間休みがあってそこで就活する、みたいな感じですね。みんな既卒でいいじゃないかと。

— 皆さん、参考になるお話をありがとうございました。

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