研究活動を行う中でResearchGateというサービスを利用したことはありますか。
ResearchGateというサービス名を聞いたことはあっても、英語のサービスであることから、実際に手を伸ばせていない方は少なくないかもしれません。
本記事では、ResearchGate を使用するメリットや具体的な機能、使用上の注意点などに触れながら、ResearchGate について解説しています。
本記事を通して、是非ResearchGateについての知識を深めていきましょう。
ResearchGateとは
ResearchGateとは、世界中の研究者が研究結果を共有したり質問・議論を行ったりすることの出来るSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のことです。
ResearchGateはオープンサイエンスを掲げて、2008年にサービスを開始しました。2021年11月現在では、190以上の国から集まった約2000万人の研究者から使用されています。
ResearchGateには、研究結果の共有や資金調達を、様々な利権や国境を超えて気軽に行える環境が整えられています。
参考:ResearchGate「Find and share research」
参考:ResearchGate「About Us」
ResearchGateを使用するメリット
ResearchGateでは、他の研究者の研究を見つけたり、自分の研究を発表したり、人脈を広げたり、求人を探せたり等、研究者が欲しい機能や環境が非常に整っています。そのため、大学院生にとっても使用するメリットが高いサービスです。
ResearchGateを使用するメリットを、一つ一つ詳しく見ていきましょう。
参考:ResearchGate「Find and share research」
新たな研究を見つけられる
ResearchGateは、2000万人以上の科学者が利用し、1億3500万以上の研究にアクセスすることが出来ます (2021年11月時点) 。
論文がアップロードされている場合はダウンロードが可能です。
また、アップロードされていない場合も、著者に論文のリクエストを送ることが出来ます。
また、フォロー機能があるため、気になる研究者をフォローして、研究を含む最新の動向をチェックすることも出来ます。
人脈を広げられる
ResearchGateを使うことで、他の研究者に質問することができます。
そのため、同分野の専門家に技術的なことを質問したり、他分野の専門家に自分の専門外のことについて質問ができるなど、世界的に人脈を広げることが可能となります。
また、様々なテーマについて、国や分野の境界を超えて研究者と議論を行うことも出来ます。
さらに、質問や議論、論文へのコメント等を通して、同じような興味関心を持つ研究者をお互いに見つけることが出来るため、共同研究のきっかけになることもあります。
自分の研究を広めることができる
ResearchGateでは、世界中の科学者の研究を閲覧するだけでなく、自分の研究をアップロードし発表こともできます。
研究といっても、必ずしも査読付き論文ほどの完成度である必要はなく、気軽に研究結果を共有することが出来ます。
ResearchGateには、以下のようなものがアップロード可能です。
- 査読付き論文(査読審査を経て雑誌に掲載された論文)
- 査読前の論文(まだ査読審査を受けていない論文)
- プロシーディング (学会等の講演要旨集、査読がある場合でも雑誌論文よりは厳しくない)
- 学会で使用したプレゼンテーションやポスター
- 研究データ(図表など)
- その他(方法、提案、プログラミングコードなど)
気軽に質問しあえるシステムとなっているため、自分の研究を見た他の研究者から質問をもらえることもあります。
さらに、自分の論文の読者についての詳細な統計、例えばどの分野の人が何人くらい読んでくれたのかを見ることが出来たり、自分の論文が誰に引用されたのかという追跡機能もあったりと、研究者をサポートする機能が充実しています。
求人情報を確認できる
ResearchGateでは、研究の検索・閲覧や発表だけでなく、アカデミアのポストや企業の求人を見つけることも出来ます。
事前にプロフィールを登録しておくと、希望する条件とマッチした求人が出たときに通知をもらえる機能があります。
ResearchGateの具体的な機能
ResearchGateの具体的な機能について見ていきましょう。
ResearchGateには大きく分けてHome / Questions / Jobs / Profileという4つの機能があります。
Home
Homeには、フォローした研究者の新しい研究が表示されています。
フォローした研究者の論文や研究データをダウンロードしたり、自分専用のSaved Listに保存したりすることで、関心のある研究者たちの最新の研究成果を入手することが出来ます。
オープンアクセスでないために論文が手に入らない場合も、Request full-text というボタンを押すことで、著者にリクエストを送ることが出来ます。
また、自分のフォロワーに記事を共有したり、研究者にコメントを送ることも出来ます。
Questions
Questionsでは、主に質問や回答を行います。
技術的な質問をして専門家からの回答を得たり、逆に自分から他の質問に回答することも出来ます。
また、科学的なディスカッションを始めたり、参加したりすることも出来ます。
自分が答えられそうな質問や興味のありそうなディスカッションをおすすめで出してくれるので、積極的に参加してみると良いでしょう。
Jobs
求人の出ている地域や分野を絞って探すことが出来ます。
Viewボタンを押すと、求人の詳細を確認できます。
また、気になる求人をブックマークしておくと、期限切れが近づいたときに通知してくれます。
プロフィールを最新にしておくことで、求人を探している側から連絡をもらえるため、プロフィールはこまめに更新しておきましょう。
Profile
Profileは、すべてのページの右上にある人型もしくは写真のアイコンをクリックすることで編集することが出来ます。
Profileには、Research上での自分の活動の振り返りや、他の研究者に自分のことを詳しく知ってもらうきっかけになったりする情報が多く掲載されており、Overview、Research、Experience、Stats、Scores、Following、Saved List という7つの機能があります。
- Overview では、Business Card (いわゆる名刺) や、現在の研究テーマ、使用言語、専門分野、スキル・専門知識、現在の所属先、フォローしている人など、自分に関する研究者としての基本的なデータがまとめられています。
また、自分の論文や研究データなどをアップロードしたものが、どれだけ読まれたかなどの簡単な統計を見ることが出来ます。詳しくは、Statsで確認出来ます。
- Research では、まず、自分の行っているプロジェクトを追加することが出来ます。プロジェクトのタイトルと、説明を2~3行記入しておくと、自分の研究に興味を持ってフォロワーになってもらえるきっかけになります。
また、論文などの出版物やその他の研究データをアップロードすることが出来ます。さらに、過去に行った質問や回答を確認することもできます。
- Experience では、雇用の機会を促進するために、職歴や学歴、受け取った助成金・賞・奨学金、所属学会、指導教員、Emailアドレスや住んでいる地域などを記入したり閲覧したりすることが出来ます。
- Stats では、自分の論文や研究データなどのアップロードしたものが、どれだけ読まれたかなどの統計を見ることが出来ます。
論文への引用数や他のフォロワーによって共有された回数、読まれた回数だけでなく、これらの数値から独自に算出された研究への関心度数も確認することが出来ます。
- Scores では、RGスコアを確認できます。RGスコアとは、ResearchGate上で研究成果を共有したりProfileに情報を追加したりなど、ResearchGate上での活動に基づいて計算された値です。
- ResearchGateを使用している他の研究者の活動やスコアから、どの程度ResearchGateに貢献しているかという相対的な値が算出されます。
また、研究への関心度数やRGスコアを高めるために、研究を追加するボタンも設置されています。
- Following では、フォローした研究や質問、プロジェクト、トピックなどを確認することが出来ます。
- Saved List では、後で確認するためにHomeで保存しておいた研究を確認することが出来ます。
自分の研究に興味を持ってくれた他の研究者に、さらに自分について詳しく知ってもらうためにもProfileはこまめに更新したり確認したりしておきましょう。
参考:ResearchGate「Find and share research」
参考:ResearchGate「RG Score」
ResearchGateにおける著作権の問題
ResearchGateを利用する上で注意すべき点として公開されている論文の著作権の問題があります。
2017年に、学術ジャーナルの出版社が、ResearchGateに対して著作権侵害に該当する論文の削除を求めました。
現在は、ResearchGateのホームページによると、出版後の論文をアップロードするか、もしくはリクエストされたときに提供するかどうかは、出版元への確認をとった上で、研究者個人の判断に委ねるとされています。
オープンアクセス版の論文の場合は、ResearchGate上へのアップロードや他の研究者への提供に問題はありません。しかし、そうでない場合はアクセス制限されることがあるので注意が必要です。
引用:ResearchGate 「Copyright and ResearchGate」
参考:Royal society of chemical「ResearchGate bows to pressure from publishers on copyrighted material」
まとめ
ResearchGateは、論文の著作権問題をしっかり気をつけておけば、自分の研究を広く知ってもらえたり、他の研究者の研究を手軽に入手できたり、人脈の広がるきっかけになったり、仕事のポストが見つかったり等、積極的に使用することで研究者が非常に多いメリットを享受できるSNSとなっています。
是非この機会に登録し、実際に利用を開始してみてはいかがでしょうか。