前回に続いて、実際に海外ポスドクに応募する際の書類の準備について説明します。前回は履歴書(CV)についての内容でしたが、今回は推薦状とカバーレターについての経験を共有します。
推薦状の機能
推薦状は「申請者はこういう人です。だからこのポストには適していると思うので、わたしからおすすめします」の内容を、A4の紙1枚に収まる程度の長さにまとめたものです。
日本でも就職や奨学金申請などで推薦状を要求される場面が多々ありますが、筆者個人の感覚では欧米の方がより推薦状を重視する傾向があるように思います。
以上の内容からもわかると思いますが、推薦状は「情報」と「保証」の二つの機能を持っています。
前者は他人の視点から「客観的に」申請者の能力・人柄についての情報を採用側に提供する機能を指します。
後者は推薦人の評判が、被推薦人の身元保証となることを意味しています。そのため、十分に情報と保証を提供できるような人に推薦人になってもらうことが重要です。
誰に推薦状をお願いするか
第三者の視点から申請者の能力と人柄に関する情報を提供するための推薦状ですから、書き手はこれらの情報をちゃんと把握しており、かつ評価できる立場にある人でないといけません。
つまり、仕事上の繋がりがあり、日常的に頻繁にやりとりする相手が望ましいでしょう。例えば指導教員や直近の上司、同僚などが良い候補者になります。
共同研究者でもよいのですが、その場合は十分なやりとり(時間や頻度)があったことをアピールした方がよいでしょう。
これらに加えて、なるべく社会的地位が高い方が良いという考えもありますが、この条件の優先順位は少し低くなります。例えば大学の学長に書いてもらえるとしましょう。それはもちろん良いことですが、学長とは日常的な接点が全くないなら、この推薦状の説得力はあまり高くないといえます。
さらに推薦者は一定の社会的地位を持つ者である必要はあります。アカデミックのポストの場合は、独立して研究を行っている研究者が推薦人になるのは望ましいと思います。
推薦状に何を書くか
推薦状の内容については、十分かつ具体的な情報を提供することが望ましいでしょう。
まずは推薦人と申請者の関係性や、申請者についてどの程度よく知っているかについてふれ、次にどのような立場からみて、申請者のどのような能力について、どのような評価ができるかについて述べるのがよいでしょう。
そしてこれらの研究能力はなぜ今申請しようとしている職の役に立つと思うか、そして申請者の人格面からもおすすめできる理由、などといった情報が盛り込まれていることが望ましいでしょう。
フォーマットについては、基本の英文レター形式で十分です(「Letter of recommendation format」と検索すると具体例が出てきます)。通常、自筆のサインも必要です。もし大学などの公的機関の名前とロゴが入っているレター用紙を使用できるなら、より信頼性の高い推薦状になります。
推薦状は自分で書くもの?
そもそも申請者である自分が推薦状の書き方について知っても仕方がないではないか、と思う方もいるかもしれません。
しかし「推薦人の負担をなるべく減らしたい」、「申請者を一番わかっているのは申請者自身」などの理由から、申請者が自ら推薦状のたたき台を書き、推薦人に加筆・確認してもらった上サインをもらうことは少なくありません。
ただし、代筆を極端に嫌う人もいますので、必ず事前に推薦人になってもらえることや、どのように推薦状を用意すればよいかについて、相手と確認してください。
いずれの場合でも、「このポストではこういう人が求められているため、私のこういう特徴を強調すると良いかもしれません」という情報を推薦人に伝えておく方が、相手も書きやすいでしょう。
カバーレター
カバーレターは書類セットの一番上に付ける「表紙」のようなものです。日本でも書類のやりとりをする際に、最初の一枚を使って簡単な挨拶や要件の内容を伝える「一筆状・書状」が含まれることがありますので、それをイメージしてください。
日本の一筆状は事務的な定型文が多いですが、欧米におけるカバーレターは少し異なり、「個人的な手紙」の側面が強いです。そのため、自由度が比較的高く、感情や主観を含むことが一般的です。受取人の第一印象を決めるという重要な役割を果たしますので、カバーレターを重視することをおすすめします。
カバーレターも英文レター形式のフォーマットを使います。宛先については公募に書かれている連絡先を使います。個人が明記されていなければ、宛名は「To whom it may concerns」もしくは「Dear Sir/Madam」でも構いません。以下では筆者自身のカバーレターの内容を例に書き方を述べます。人それぞれのスタイルがありますので、あくまで一例として読んでいただければ幸いです。
本文の最初の段落では自分がなぜこの書類を出したのか、つまり「〇〇の公募に応募したくご連絡しました」ということを述べます。ここでは公募を読んだことだけではなく、「自分はこの公募に適任であると強く思った」などと、自分のモチベーションを強調することも必要になります。
次に、自己紹介も兼ねてなぜ自分が適任であるかについて、簡単に紹介しましょう。公募に出されている要求(Criteria)それぞれに対応して、自分にどんな能力があるかについて一言ずつ紹介するのがよいでしょう。詳細はもちろん履歴書を確認してもらう必要がありますが、読み手が詳細を確認してみたくなるような「掴み」をうまく提供することが重要です。
最後に、自分がなぜこのポストのどんなところに惹かれたかについても簡単に書きましょう。例えば機関ポスドクなら、研究機関が世界最先端な研究環境を提供している点、プロジェクトポスドクなら、責任研究者や研究チームが素晴らしい研究をしている点などについて述べるとよいと思います。もちろん機関ポスドクでも同僚の素晴らしさを褒めてもいいですし、プロジェクトポスドクでも機関や環境を褒めてもかまいません。重要なのは、第2段落では「相手にとって自分が魅力的な候補者であること」、第3段落では「自分にとって相手がいかに魅力であるか」をそれぞれ述べることです。
最後に、自分がこのポストにつくことで互いに高め合うことができると信じている、といった締めの言葉を入れ、定型文として「I thank you in advance for considering my application.」などでレターを締めます。
なお、ここでも最後に直筆のサインを入れるのが一般的だと思われます。
以上でポスドクに応募する際に一般的に提出する書類である履歴書・推薦状・カバーレターについて、簡単に紹介しました。次回では、実際に出国手続きを準備する際の経験などをシェアします。
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[文責・LY / 博士(文学)]
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