内定者インタビュー
博士課程(理論物理系)の就職活動~研究との兼ね合い~
コンサルティング系企業 内定
研究分野 理論物理系
博士課程
T. K.さん
就職活動を始めたのはいつからですか?
エントリーを2月頃から少しずつ書き始め、企業を受けはじめました。
2月頃は主に外資系の企業を受け、4月以降は内資系企業の選考を受け、8月上旬まで就職活動に研究より多くの時間をかけました。その間、3月と、5月中旬から6月中旬までの計2ヶ月は国内外の学会で発表があったこともあり、研究のため就職活動を全く行わなかったです。
業界研究等をこの時期から始めた、という記憶は特にありません。というのも自身の研究分野以外の工学や人文社会科学系の友達と密に交流していたため、友人らが注目を集めていたり、関心があったりする事業や企業の情報は自然と見聞きし、収集できていたからです。ただ就職活動を始めてからも、私自身が応募したいと考えていた企業の同業他社や競合相手となりうる企業の情報は、より意識して収集するようにしていました。
どのような軸で企業を見ていましたか?
事業内容が面白いか、経験や能力が寄与しうる業務であるか、博士卒の初任給が書いているか、の3点です。
発案は自分でなくてもいいから何か新しいことを行っている事業に携わってみたい、という気持ちが昔からありました。加えて、今までにない事業は世の中に新しい価値を生み出し、きっと企業収益にもつながっていると考えていました。
志望する企業の事業・業務について、私自身の経験・能力が活かせるかという観点では、就職活動を始めてすぐに意識するようになりました。私は○○を提供できます!と言うように具体的な例を面接で言えた場合は、やはり面接を受かる率が高く、逆の場合は最終面接で落ちるケースが多くありました。 博士卒の初任給については、博士卒を採用しない企業は、とことん採用しない傾向があることを就職活動以前から聴いていたので、博士卒を採用する見込みがあるかどうかの判断をする材料としていました。
就職活動と研究の両立はどのようにされましたか?
就職活動は研究の合間の時間に行いました。
3月に日本物理学会、6月に国際学会の口頭発表があり、その直前は解析結果を出すことと発表の準備に専念していたため、発表が終わると暫く研究から離れて、と言う様に研究の合間で就職活動に専念しました。就職活動が終了した8月上旬には、まだ博士論文に必要な解析が終わっていませんでしたが、踏ん張れば何とか年度内に解析等が間に合う目処が立ったので、就職活動を終えてから再び研究及び博士論文の執筆に専念しました。
また、指導教員に内定の報告を行ったとき、「もうD4コースかと思っていたけど、就職が決まったのであれば、博士論文頑張るしかないね。兎に角おめでとう。」といった独特の励ましの言葉が印象深かったです。
就職活動の中で、一番努力したことはどんなことがありましたか?
数を打つことです。
就職活動も含めて研究以外にも「研究は何が当たるかは分からない」という言葉は、当てはまると考えていました。
目に付いた企業を手当たり次第に受けた訳ではありませんが、自分が働きたいと感じた企業には可能な限りエントリーをしました。実際に興味を持った企業でも、博士卒の初任給が記載されていない企業では、博士課程は学校推薦を持って応募しても受かる見込みがない、あるいは応募できないといった所も多く、単純に数を増やすことには手間と時間がかかりました。専門分野とは全く関係ないけれども、興味深い事業をこれから展開しようとしている企業を見つけ応募する際には、研究から派生的に身に付いた能力が、受けようとする企業の事業に具体的にどういった貢献ができるかを熟考することにも務めました。
どのような内容で企業へ自己アピールをしていましたか?
真面目に研究活動に取り組んできたことが伝わる様な経験を伝えるようにしました。
面接場面において多くの場合、学生時代に最も打ち込んだことを聞かれるので、「研究活動、特に論文執筆」という返答をした上で、コツコツと研究活動に取り組んできたことが伝わる様な経験談でわたし自身の長所でもある真面目さを主に伝えました。研究の進捗はどうしても結果が出るか出ないか、研究分野によっては結果が画期的かそうでないかに大きく左右されるため、研究に時間をかけただけ見返りがある性質のモノではないと思います。しかし、そうは言っても成果を出すには小さなことを一つ一つ丁寧にこなしていくことが大切です。そのため私はこの点を特に強調しました。
すなわち自発的かつ、時には指示されたことを素直に取り組んだことの両方を交え、研究をしてきたことを伝えました。
内定先への決め手は何でしたか?
事業内容が面白く、かつ理論物理系の大学院で身に着いた価値観、理論物理系の学生が興味を持ち易い対象を知っていることが何らかの形で貢献できると感じたからです。
わたしの専門は理論物理学ですが、ここ数年理論物理学を学んで民間の企業に就職する学生が増えてきていて、その人たちの就職活動支援事業は成長しそうで面白そうだと感じました。
また、大学院の5年間、一つの分野の研究集団に所属して生活していますと、同じ学問に関心を持った人々が集まっているので、多かれ少なかれ議論の構築法や言葉遣い、果ては雑談の対象などの趣味趣向が程度の差はあれ似る部分ができてきます。その一方で、世の中には多種多様な興味関心、考え方や表現手法を持った人々がいて、背景の異なる人々と交流したときには、摩擦やチグハグさはどれほど小さくても意思疎通をする際に発生するものだと思います。
特に理論物理系の学生は日常で企業の方と接触する機会が少ない傾向にあり、就職活動という限られた時間の中での分野外の人との意思疎通にかかる労力が大きくなりがちと感じました。 そこで、お節介と思われるかもしれませんが、理論物理の研究に精を出して来た学生の本心や就職活動で伝えたいことを引き出すことは、理論物理を研究する集団に所属して生活してきた私にできうることと考えます。
このお節介を通して同じ分野の人達の就職活動での苦労を減らすことで、リクルーティング業に貢献できると考え内定先を決めました。
就職活動の中で最も印象的なエピソードを聞かせてください。
「お互いの思考のプロセスが違ったこと」を面接が終わって実感したことです。
戦略コンサル企業での面接で論文執筆の話になりました。「執筆が行き詰まったときどのように(どんな戦略で)執筆を進めましたか?」と質問され、「(下準備を全て行って)行き詰まったら、もう俺が書くしかない!と覚悟を決めて何としても書きます」と返答しました。面接官が相当困惑した顔で「それっておかしくないですか」と返されたことが印象に残りました。もう少し丁寧に、別の角度から「先程も述べたようにAという手法を使ってBをすればCなので執筆が進みました」と機転が利けば良かったのですが、「(苦しくても何とかして書くのが、結局論文が一番早く終わったからなぁ)」と本音が前面に出てしまいました。その面接の帰りの電車内で自分の返答が経験則であることを「認識」しました。この経験から、時には相手に寄り添うことも大切だと学びました。
就職活動をしている大学院生へのメッセージをお願いします。
強かに生き抜いてください。
あくまで個人的な意見なのですが、「まず生き残る。大きな仕事だとか、社会貢献とかはそれからでいい」と考えています。就職活動に限らず、院生生活しているだけでも色々な理不尽なことに遭遇して来たかもしれないし、これから遭遇するかもしれません。一歩研究室の外に出れば「研究が何の役に立つの?」や「いつまで学生しているの?」みたいな研究に対する不躾と思えるような質問や、研究の話をしているのに研究とは全然噛み合っていない質問に度々遭遇します。それらを淡々と処理し、逞しく、就職活動で遭遇するかもしれない自分自身には理不尽に感じることや、噛み合わない会話のストレスにもうまく対処してください。
就職活動の大変さは、研究活動の大変さとは質的に異なるので一概には言えませんが、私が思うに論文執筆の方が確実に大変です。なので、きっと何とかできるので、強かに生き抜いてください。
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