大学から大学院へ進学するタイミングで、年金を自分で支払い始めようと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、このような状況で正しい年金の知識を持たずに判断してしまうケースも目立ちます。
そこで今回は、
- 年金追納が可能
- 3年以内の未納に関しては加算金がない
- 年金の加算金はそこまで高額ではない
などの年金の仕組みをご紹介します。
学生が使える制度も十分に検討してから支払いのタイミングを判断しましょう。
国民年金とは
国民年金は、老後に備えて国民が国民健康保険料を拠出する年金制度であり、日本年金機構が運用しています。
令和4年度の国民年金第1号被保険者および任意加入被保険者の1カ月当たりの保険料は16,590円となっています。
参考:日本年金機構「国民年金保険料」
ここでは、大学院生を含む学生が知っておくべき「学生納付特例」について解説します。
大学院生も「学生納付特例」を利用できる
「学生納付特例」とは、学生が申請することで保険料の納付が猶予される制度です。
日本国内に住む人であれば、20歳から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務となりますが、この特例を利用すれば支払いが猶予されます。
学生納付特例を利用するには、以下の条件をクリアする必要があります。
- 所得が一定以下であること
- 大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校などに通っていること
ここで言う「所得が一定以下」とは、「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」以下であることを指します。
また、学生納付特例の申請は、
- 住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口
- 最寄りの年金事務所
- 在学中の学校等
で手続きが可能です。
学部時代から特例を受けているケースも多いですが、大学院へ進学する際にも学生納付特例制度を継続するかどうか検討しましょう。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」
学生納付特例の申請方法
学生納付特例を申請したい場合は、以下のいずれかで手続きができます。
- 住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口
- 最寄りの年金事務所
- 在学中の学校等
申請用紙(A4版)は、日本年金機構の国民年金関係届書・申請書一覧からダウンロードできます。
また、添付書類として以下の書類が必要です。
- 基礎年金番号通知書のコピーまたは年金手帳(氏名の記載ページ)のコピー
- 学生であることを証明する書類
日本学術振興会(学振)の特別研究員も自分で加入する
日本学術振興会の特別研究員は自分で年金に加入し、支払いを行う必要があります。
日本学術振興会の公式ホームページでは、振興会と特別研究員は雇用関係にはないため、独自に手続きをしなければならない旨が記載されています。
参考:日本学術振興会「よくある質問(令和4年度版) 設問4」
大学院生が知っておくべき年金「追納」のしくみ
年金には「追納」という制度があり、保険料の学生納付特例の承認を受けた学生は後から納付する手続きを行うことができます。
大学院に進学すると、その分学生である期間が延長されるため、追納期間を延ばす方も多いはずです。
ここでは、日本年金機構のホームページを参考に、追納の仕組みについて解説します。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」
年金追納は10年前の納税分まで可能
年金は10年以内であれば追納することができます。
つまり、学部4年、修士2年の計6年間学生納付特例を利用していた場合でも、社会人になってから余裕を持って追納することが可能です。
焦って生活が苦しい学生時代から年金を納めるより、社会人として経済的に安定してから追納するのも一つの手です。
3年以上前の年金追納には加算金がかかる
年金は10年以内であれば追納が可能ですが、3年以上前の追納には加算金が発生します。
そのため、少なくとも追納期間の2年以内に支払っておいた方がお得だと思われるかもしれません。
しかし、年金追納は、最長である10年前の分であってもわずかに5,000円程度です。
この程度の加算金であれば、あまり負担を気にする必要もないかもしれません。
現在の経済状況に合わせて支払うかどうかを判断してください。
年金を支払わないと老後の給付が減る
当然ですが、年金を支払わないと老後に受け取る給付が目減りします。
学生納付特例を利用していても、10年を超えた未納分はその後支払うことはできなくなってしまうので注意しましょう。
また、年金の給付額は年金を納めた額や納めた年数によって変動します。
「今は働けるから」といって将来のリスクを過小評価せず、納付できる年数を無駄にしないようにしましょう。
年金追納に関する検討事項
年金の追納をするかどうかは、大学院に進学する前後で検討事項が異なります。
ここでは、それぞれのパターンで検討すべきことを解説します。
大学院進学前の場合
大学院進学前であれば、進学後の経済状況を考えて学生納付特例を受けるか、学生納付特例を受けずに年金を支払うか検討しましょう。
上述のとおり、追納はそこまで大きな負担増とはなりません。
10年間の猶予があるので、修士課程・博士課程修了後などでも問題なく支払うことができます。
大学院修了後の場合
大学院を修了する場合は、学生納付特例期間も終了となり、通常は年金の支払いが開始されます。
学生納付特例期間が終了したら、滞納せず、スムーズな支払いを心がけましょう。
ただし、年金の支払いを開始したからといって、すぐに学生納付特例期間中の年金も追納しなければならないわけではありません。
特に社会人1年目は、新生活による出費などで、経済的に安定した暮らしをすることが難しいかもしれません。
学生納付特例期間中の年金を支払う余裕がない場合は、10年経過しそうな分だけ追納し、その他の分は社会人2年目以降に支払うなどの対応をしてもよいでしょう。
大学院修了後も年金の支払いができない場合
大学院を修了した後も経済的な理由などで保険料が支払えない場合は、「保険料免除制度」・「納付猶予制度」を活用しましょう。
それぞれの制度では条件や免除・猶予される額が異なります。
年金の支払いに悩んでいる方は検討してみましょう。
ここでは、日本年金機構のホームページの情報をもとにこれらの制度について紹介いたします。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
保険料免除制度を活用する
保険料免除制度は、所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や、失業した場合などに保険料を一定額免除してもらえる制度です。
年金を納めることが経済的に困難な場合、決められた申請書を日本年金機構に提出し、承認されると保険料の納付免除が受けられます。
免除される保険料の額は、「全額・4分の3・半額・4分の1」の4種類で、経済的に困難な度合いによって適用される免除の種類が異なります。
大学院修了後に就職したが失業してしまった場合や、働いていても収入が少ない場合は、本制度を検討してみましょう。
保険料納付猶予制度を活用する
保険料納付猶予制度は、20歳から50歳未満までで、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合に保険料の納付に猶予期間が与えられる制度です。
本人が日本年金機構に申請書を提出し、承認されると保険料の納付の猶予が受けられます。
なお、本制度はあくまで「猶予」であり、支払いが免除されるわけではありません。
猶予期間は「老齢基礎年金」、「障害基礎年金」、「遺族基礎年金」を受け取るために必要な受給資格期間にカウントされるものの、追納しないと老齢基礎年金額の受給額が増えず、通常通りに支払った場合より受給額が減ってしまうので注意が必要です。
まとめ
年金の支払いは学生にとって負担が重いため、「学生納付特例」を利用するケースが目立ちます。
年金は追納制度があるため、仮に大学院生活が長引いてしまっても、10年以内であれば遡って追納することが可能です。
年金は支払い額や支払い期間に応じて将来の給付額が大きく変わる制度です。
制度をよく理解し、未納のまま長期間放置しないように計画を立てておきましょう。