「文系大学院生って普段何をしてるの?」
工学や理学といったいわゆる理系の大学院生と比較しても母数が少ないこともあり、何かと謎に包まれがちな文系大学院生の生態。
文学や歴史、心理学等を研究対象とする文系大学院生は、日頃どのような過ごし方をしているのでしょうか?
このコラムでは、文系の大学院修士課程に通う筆者の経験も交えながら、文系院生あるある10選をご紹介します。
(中には文系院生だけでなく理系の院生にも当てはまるものもあります。どうかご容赦ください)
文系の大学院に通っている・通った経験のある方なら、きっと共感できるものもあるはずです。また、これから文系院生になろうとしている方の何かの参考になればと思います。
文系院生あるある10選
文系大学院生あるあるを語り始めればきりがありませんが、筆者の独断と偏見とスペース上の都合により、ここでは以下の10個に絞ってご紹介していきます。
- 「大学院生ってことは、理系?」と言われる
- 「大学の先生になるの?」と言われる
- 大学院に入学することを「入院」と呼ぶ
- 交友関係は「狭く深く」
- 暇にしていると思われがちだけど忙しい
- 研究室派と自宅派に分かれる
- 課題や進捗発表前は、PCとお友達
- 就職活動で珍しがられる
- 変わった人が多い
- 社会人あるあるについていけない
それぞれ一体どういうことなのでしょうか。これから詳しく見ていきます。
「大学院生ってことは、理系?」と言われる
世間一般では「大学院=理系」のイメージが強いのが現状で、初めて出会った人に「大学院生です」と自己紹介をすると「ってことは……理系?」と聞かれることが日常茶飯事です。
実際に以下の記事でも紹介されているように、全国に約6万人いる理系の大学院生に対し、文系の大学院生は修士と博士合わせても約1.5万人しかいません。
ここまで少なければ、大学院に通った経験がない方からすると、大学院に進学している=理系かなと思われてしまうのも仕方ない気がしますね。
「理系?」「いや、文系です」のやり取りに疲れてしまったという人は、「文系の大学院で、○○について研究しています」と先手を打つようにするのがいいかもしれません。
「大学の先生になるの?」と言われる
文系の大学院生であることを明かすと、「何のために大学院へ進学したのか」と疑問に思った相手が「大学院→研究者→教授」というイメージから「大学の先生になりたいの?」と聞いてくることも多々あります。
実際に、科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2020」のデータによると、2019年度の大学院修士課程修了者の博士課程進学率は、全体が9.2%なのに対し文系分野の1つである人文科学系の大学院修了者は17.6%と高い傾向にあります。
しかし、博士後期課程への進学率が高いからといって文系大学院生の多くが大学の先生(教授)を目指しているというわけでは決してなく、民間企業や公務員などへ就職する文系大学院生も多いです。
参考:科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2020」
大学院に入学することを「入院」と呼ぶ
これは文理問わずですが、大学院に入学することを俗に「入院」と呼ぶことがあります(修了のことを「退院」と呼ぶこともあるようです)。「大学院に入る」ことをそのまま略しただけなのか、大学院が病院のように「できるだけ早く出ていきたいところ」だからなのか…真意は不明です。
筆者の実感としては大学院生や修了生以外の人に言われることよりも、大学院生が自ら自虐的に言う場面に遭遇することのほうが多い気がします。
ちなみに、英国科学雑誌Natureは、2018年に「世界中の博士や修士課程の学生は、一般の人の6倍のうつ病や不安を抱えています。助けるために何をするべきですか?」とツイートをし、大学院生の精神状態の悪さについて問題提起を行っています。
参考:nature (2018) 「More than one-third of graduate students report being depressed」
交友関係は「狭く深く」
こちらも文理問わずですが、サークルに所属していたり、同じ授業を受講する仲間が多かった学部生時代と比べ、交友関係の幅が限られるのが大学院生。
普段関わるのがゼミや研究室の仲間などの、数名もしくは十数名程度に限定されてしまいがちです。
しかしその分、ゼミや研究室の仲間とは親密な関係を築くことができますし、たまに連絡を取り合う学部時代やそれ以前の友人をより大事にするようになった気がします。
ゼミや研究室の仲間としか関わらないのは息が詰まりそう、もしくはゼミや研究室に同年代が全然いないという場合は、学生が多く所属する場所でアルバイトを始めたり、学内外問わず趣味のサークルや団体に所属してみたりして、息抜きをできる場を確保するようにしてみてください。
暇にしていると思われがちだけど忙しい
理系の研究室のように朝から晩まで研究をしているというイメージが少ないからか、「暇なんだろう」と思われることが多々あります。筆者は、平日休みの社会人の友達に「来週の火曜日空いてる?」と急に遊びに誘われたり、家族に雑用を押し付けられたりしたことがあります。
連絡してもらえること自体は非常にありがたいのですが、特に沢山の授業をとっていた修士課程1年の頃は、平日3日間授業+2日間研究+土日で集中講義、空いた時間で就職活動をするなど、社会人並みかそれ以上に忙しい生活を送っていたこともありました。
研究室派と自宅派に分かれる
研究室や実験室にいないと研究を進めることができない場合が多い理系と比較して、文系の研究はあまり場所を選ばずに進められることが多いのが特徴です。
そのため、研究室に週7日のペースで入り浸る院生が出てくる一方で、研究室にはほとんど姿を表さずに自宅にこもって研究を進める大学院生も出てきます。
そのほかに、カフェで作業をする大学院生や、開館から閉館まで図書館に閉じこもる大学院生など、人それぞれです。
ちなみに筆者は自宅での作業がメインですが、時々カフェに行ったり、コワーキングスペースに課金したりして気分転換をしています。
自分に合った研究スタイルを見つけていきましょう。
課題や進捗発表前は、PCとお友達
課題や進捗発表の締め切りが近くなってくると、朝から晩まで(場合によっては晩から明け方まで)PCの前で作業をすることになるのは、文理問わず大学院生の常の姿といってもよいかもしれません。
学部生とは異なり、大学院生は学期末にテストを課されることがほとんどなく、多くの授業でレポートによる評価が行われます。
そのため、特に修士課程の学期末は必然的にレポート提出に追われることになってしまいます。
大学院生であるからこそ、また、教授に顔が割れているからこそ、質の低いものは提出したくない。一方で提出までの時間も短い。大学院生はレポート提出の時期になると、自分の中でそのせめぎ合いが行われることになります。
ゼミや研究室のメンバー、もしくは専攻のメンバー全員の前で進捗発表を行う前も同様です。大学院での研究活動は正解や終わりがないからこそ、いくらでも作業し続けてしまいがちですが、体もPCも酷使し過ぎると不調につながります。計画的に進めましょう。
就職活動で珍しがられる
就職活動の場においても、やはり珍しがられるのが文系大学院生。
企業の採用担当の方も、文系大学院生という存在に興味を持ってくれることが多いです。
筆者自身は、文系学部生だった頃と文系大学院生になってからの2度就職活動を経験していますが、学部生の頃より大学院生になってからのほうが採用担当の方の印象に残りやすく、思ったより就職活動はやりやすかったと感じています。
内定先は研究内容と直接関係はありませんが、内定先の企業の方も「へ~面白い研究してるね~!」と大学院での研究や経験をポジティブに評価してくださいました。
変わった人が多い
これは、もしかすると世間のイメージ通りかもしれませんが、文系大学院には変わった人が多いのは否定できません。何かを「究める」ために大学院に来ているため、いわゆる「オタク」的な人も一定数存在します。
専攻によっては、社会人大学院生(働きながら大学院に通う人)や社会人経験者(会社を辞めて大学院に入学した人)が複数いることもあります。
筆者の同期は某有名企業を辞めて大学院に進学した経歴の持ち主ですが、入学前の研究室訪問で先生に「その企業辞めちゃって良いの?!」と聞かれたそうです。
学部の頃と比べ、よい意味でも悪い意味でも「生き急いでいない」人が多いという印象です。
社会人あるあるについていけない
出身学部にもよりますが、文系の学部生の多くは卒業後に就職しているため、学部時代の同期のほとんどは社会人です。
そのため、学部時代の友人らがする
「新入社員研修が終わった」
「営業で初めて契約が取れた」
「新人教育を任されることになった」
「転職を考えている/転職した」
「結婚を考えている/結婚した」
という話題に、正直にいうとついていけないことも多々あります。
数年後の自分に降りかかるかもしれない未来として、参考にしておこうという気持ちで聞いています。
まとめ
ここまで、文系大学院生あるある10選をご紹介してきました。文系大学院生のあなたにとって、共感できるものはいくつあったでしょうか?
文系大学院生以外の方々にとっても、文系大学院生の状況や心情を少しでも知る機会となっていれば幸いです。
大変なことも多い文系大学院生活ですが、その分良いことや面白いこと、充実感を得られる瞬間もたくさんあります。文系院生あるあるをネタとして楽しみながら、大学院修了を目指して頑張りましょう。