分野を問わず、長い間日本製の製品や商品は、品質が高いとして国内外から素晴らしい評価を受けてきました。この高い品質は日本の技術力はもちろん、細やかで正確な品質管理によって実現されてきました。今回は品質管理に関わる仕事について、紹介していきます。
品質管理とは
品質管理とは、製品を生産する際に、一定以上の品質を備えているかどうかを検査し、品質を保証することです。品質管理というと、工場などものづくりの現場を思い浮かべる方も多いと思いますが、実際はそれにとどまらず、食品・家電・科学・医療などあらゆる分野の製造現場で厳しい品質管理が行われています。また、製造されるもの自体が、IoTと組み合わせたスマート家電などのように、時代とともに進化しており、さらにその品質管理や検査の方法も人間の目視から、デジタル化へと移行している時期にあります。そのため、やりがいやご自身の技術の新たな活かし方として品質管理の仕事を希望される方も年々増加しています。
この記事では、品質管理と品質保証の違い、品質管理の仕事内容について説明を行います。
品質管理と品質保証の違い
品質管理とよく混同される職種に品質保証があります。品質管理は製品が完成するまでの工程を担当し、問題の予防や対処、改善を行います。それに対し、品質管理は製品が完成してからの品質チェックや改善を担当します。万が一、不良品があっては企業イメージを大きく傷つけます。そのため、どちらの仕事も責任の重く、緊張感のある職種だと言えるでしょう。
品質管理の仕事内容
品質管理の仕事は、厚生労働省が提供する「職業情報提供サイト(日本版O-NET)によると、”生産・品質管理技術者の仕事内容は、製品の生産について具体的な生産計画を立案し、生産工程や品質の管理を行う”と紹介されています。品質管理技術者は専門的知識と経験に基づき、生産計画の大枠に沿って、短期・中期・長期の生産計画を立案し、生産工程や品質の管理を行います。この生産計画の立案にあたっては、営業・技術・製造・資材・人事など関係部門との間で合議し、人員、製造設備の手配などについて調整します。このように、品質管理の仕事には専門知識やスキルだけでなく、他職種との間で調整を行う高いコミュニケーション能力が求められます。
製造中は、生産が計画通りに進んでいるか、品質は安定しているかなどを管理し、問題がある場合は、関係部門と協力して速やかに原因を調べ、対策を立てて計画通りに進むように修正をします。
品質管理の転職事情
次に、品質管理の転職事情について解説を行います。ここでは主に、
・異業種間での転職可能性
・品質管理は未経験でも転職しやすいのか
・40代でも転職できるのか
・品質管理の年収
についてみていきます。
異業種間での転職も可能
現在、品質管理の求人件数は転職市場において、増加しています。大手自動車メーカーの品質問題が大きく報道され、品質管理に対する国民や企業の目が以前より厳しくなったことや、品質管理に対するニーズの高まりから、様々な企業において品質管理人材の需要が高まったためです。
このような需要の高まりや経験のある人材不足を背景に、品質管管理の経験者であれば、異業種や異業界への転職も以前よりハードルが低くなってきました。
品質管理が未経験でも転職しやすい
前職で品質管理の経験がない、いわゆる未経験でも品質管理職に転職できる場合があります。それは、大学・大学院で理工系を専攻していた場合です。一般に、食品・化粧品・化粧品メーカーの場合、生物系、化学系の知識、医療・分析機器などを扱う機器メーカーでは工学系の知識が歓迎されます。文系の場合は、その業界で働いていて知識がある、高い英語力を生かして外資系で品質管理アシスタントから始めるなど、何かプラスアルファの強みがあれば、未経験からの品質管理への転職も不可能ではありません。
もちろん、未経験からの転職は経験者より難しいものですが、品質管理の仕事に転職するために関連スキルを高めたり、資格を取得したりなどの事前準備をしっかりすることが成功のためのキーポイントになってきます。
40代でも転職できる
20代前半の第二新卒と呼ばれる世代は、比較的異業種に転職しやすいと言われていますが、それでは40代はどうでしょうか。品質管理は現在、非常に人手不足の職種になっています。また、若者の理系離れ傾向が以前から続いており、理系の人材を見つけるのが難しい状況にあります。40代でも理系のバックグラウンドがしっかりあれば、他職種からでも転職できる可能性があります。また、品質管理の職務経験がなくても、食品メーカーで長年働いていて業界の知識が豊富であることを見込まれ、食品メーカーの品質管理で採用されるなど、これまでの豊富な職務経験が生かせる場合もあります。
品質管理職の年収
平成30年度「民間給与実態統計調査結果」を参考に品質管理の平均年収を算出しました。その結果、平均年収は約494万円で、日本全体の平均年収と比較すると高い傾向が見られました。正社員では、329万円から405万円のレンジの年収を得ている人が最もボリュームが多い層となりました。
品質管理に向いている人
それでは、品質管理に向いているのはどんな人なのでしょうか。
ここでは、
・コミュニケーション能力
・観察力や分析力
・リスク管理能力
の3つの視点から解説していきます。
コミュニケーション能力が高い
品質管理の仕事では、生産計画を立てるために各部門との調整を行ったり、材料の購入や製品の納品、品質について、それぞれのメーカーの担当者と協議をするなど、内部、外部の人とコミュニケーションをする機会が多く求められます。また、トラブルが起きた際には説明を行ったり、クレームに対処することもあります。このように、様々な立場の人と関われる、高いコミュニケーション能力が必要です。
観察力や分析力に優れている
扱う製品にもよりますが、多くの場合、製品の品質を目視で観察したり、データで見て評価、管理しますので、観察力や分析力は生産管理には必須の能力であると言えます。高い品質を保持し、品質の低下や生産の遅れ、事故などを未然に防ぐためには、ささいなことでも見落とさない観察力が必要です。また、製品や工程に問題が生じた場合、どこがボトルネックになっているのか、何が原因なのかと分析して改善する能力が重要になってくるでしょう。
リスク管理能力が高い
品質管理の現場では、様々なトラブルやアクシデントがいつ起こるかわかりません。不測の事態にも慌てず、問題に対処するリスク管理能力が求められます。
品質管理に転職するために有利な資格やスキルを紹介
ここでは、他業種や未経験から品質管理へ転職する際に有利な資格について説明します。この資格がないと品質管理として働けないというような免許や資格はありません。さらに、品質管理になるには、資格よりも実績のほうが重視される傾向があります。しかし、未経験から品質管理を目指す場合は、やはり資格があった方が転職には有利になると言えます。また、このような資格を取得するために学ぶことで、品質管理の仕事内容や必要なスキル、本当に自分が品質管理を目指したいのか、向いているのかなどもわかってくるという意味もあります。
統計に関する知識
特に製造現場の品質管理においては、品質を管理するために、様々なデータを取得しています。そのデータを分析して、解決するべき問題の原因を探ったり、相関関係を分析したりするのですが、その際に役立つ代表的な手法が「QC7つ道具」と呼ばれています。QCとはQuality Control つまり品質管理のことです。
QC7つ道具
・パレート図
・特性要因図
・グラフ
・ヒストグラム
・散布図
・管理図
・チェックシート
これらの基本的な統計に関する知識は最低限身に付けておいた方が良いでしょう。
ISOに関する知識
ISO(International Organization for Standardization;国際標準化機構)とは、「サービスや製品を、世界中どこでも同じ品質で提供できるようにすること」を目指している国際的な非政府機関です。
ISO規格には様々なものがありますが「品質管理に関するISO9001」という規格が、品質マネジメントに関連しています。認証を取得することで、業務効率改善や、コンプライアンスの推進、リスクマネジメント、海外企業を含む取引要件の達成などの効果があります。品質管理への転職を考えている方は、ISO9001について一通り学んでおくと、強みになる場合があります。
品質管理検定(QC検定)
QC検定とは、日本規格協会グループ(JSA GROUP)が行っている、品質管理に関する知識をどの程度持っているかを問う検定です。基本的な知識を問う4級から、品質管理部門のスタッフとして業務に携わる人向けの1級まで5段階の検定があるため、初学者でも段階を踏んで学習しやすい内容となっています。1級に合格すると、品質管理全般についての幅広い知識を有する証明になるため、1級取得を目指して勉強することで、体系的な知識が身につき、転職にも有利になります。
https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/qc/
転職を成功させるためにはエージェントを活用しよう
最後に、品質管理に転職する方法について解説を行います。前の章でも見てきたように、品質管理の需要が多く、人材の供給が少ないため、求人広告もよく見かけるようになりました。
しかし、情報収集や応募先とのやり取りをすべて一人で行うと多くの時間と労力がかかってしまいます。
品質管理への転職活動には、情報収集、キャリアの棚卸し、目標設定、転職準備など、様々な準備が必要になり、それに必要な時間と労力はかなりのものになります。そのため、一人で全部行うのではなく、転職エージェントの利用がお勧めです。転職エージェントには、これまでに転職活動をされた方の情報がどんどん登録されていきます。キャリアカウンセラーに相談することで、例えば、品質管理への転職活動において、面接ではどのような質問をされたかの情報などを得ることができます。また、求人情報の方も日々アップデートされていき、最近品質管理に良く求められるスキルのトレンドの移り変わりなどもエージェントは把握しています。
転職エージェントには様々な会社がありますので、自分に合った会社を選ぶことが重要です。アカリクキャリアは、大学院卒の就職支援・転職支援を専門に行う転職エージェントです。社員の多くは大学院卒であり、大学院卒の就職支援・転職支援に関するノウハウがしっかりと蓄積されています。また、10年に渡る就職支援の中で、企業との結びつきを深め、非公開求人の依頼も多数保有しています。初回のキャリアカウンセリングから最後まで、一人ひとりに担当キャリアカウンセラーがつき、支援を行うため、きめ細かい対応が可能です。これまで多くの方の転職をサポートしてきた経験から、現在はどのようなスキルがあれば品質管理への転職で高く評価されるかという理解や、5年後、10年後のキャリアプランを含めたコンサルティングなど、将来を見据えた支援を行えることも、アカリク転職サービスの大きな強みとなっています。このような転職エージェントを利用することで、時間と労力のコストが大幅に削減でき、転職活動の心強い味方が得られます。また、自己分析について客観的な意見が得られることも重要なポイントです。
今すぐに転職したいという方以外でも、品質管理への転職可能性を知りたい方、長期的なキャリアに関する相談、自分のスキルや経験が生かせる職種にはどんなものがあるか知りたいなどの理由で登録される方も多いものです。ぜひ、アカリクキャリアに登録し、転職活動の一歩を踏み出しましょう。
まとめ
この記事では、品質管理に転職を考えている方に向けて、品質管理の仕事内容や、年収、未経験から品質管理への転職可能性と身に付けるべきスキルなどについて解説してきました。
様々な業界で品質管理の需要が高まっていますので、今後もまだまだ求人数が増えることが予想されます。一方で、市場価値の高い品質管理になるには、プラスアルファの強みを身に付けることが重要です。例えば、今後さらに需要が高まっていくグローバルな事業展開に向け、海外でも働ける語学のスキルや、IoTと組み合わせた製品展開に向け、IoTやAIに関する知識なども積極的に日々アップデートし、時代の要請に対応できる品質管理を目指す必要があります。現在のご自身の状況から、今後どのように品質管理を目指す準備を行い、どのようなキャリアデザインを描くのかも含め、アカリクのキャリアコンサルタントにぜひご相談ください。