新規性は研究を進める上で必ず求められます。
しかし一方で、研究テーマを決める時期の大学生、大学院生の中には、新規性という言葉の意味や見つけ方が分からないという方がたくさんいます。
この記事では、そのような方に向けて新規性とは何か、どのように見つければよいかについて分かりやすく解説します。
研究の新規性とは
研究の新規性とは、これまでの研究と比較して「何が新しいのか」という要素です。
英語では「Novelty」といいます。
研究テーマを考える際には、必ず新規性、有効性、信頼性があることを確認しましょう。
新規性の見つけ方
新規性を見つけるためには、先行研究の調査が必要です。
これまでに発表された研究論文を読まなければ、自分がこれから行う研究に新規性があるかどうかが分かりません。
また、現在研究のアイデアがない場合も、先行研究の調査を行うことで、そこで得た疑問や発見をヒントにアイデアを得ることができます。
新規性を考える際のコツは、先行研究においてどこまでが解明されていて、どこからが解明されていないのか、その境界線を考えることです。
先行研究を行う際には、国内の論文だけではなく、国外の論文にも目を通しておきましょう。
研究のどこに新規性をもたせるか
新規性といっても何もかもが新しい要素である必要はありません。
例えば、研究の手順はそのままで研究の対象だけを変えても新規性があるということができます。
また、研究で利用するデータは変えずに内部の処理モデルだけを変えても新規性があるということができます。
すなわち、先行研究と比較してその一部の対象や手法などを変えることで、私たちは自分の研究に新規性をもたせることができるのです。
ここからは、近藤(2018)が挙げている7種類の新規性をもとに、具体的にどのようなポイントに注目することで新規性をもたせることができるのかを紹介します。
なお、以下に登場する「事象」と「トピック」の2つのポイントは似ているため、1つにまとめました。
参考:近藤克則(2018)『研究の育て方 ~ゴールとプロセスの「見える化」』医学書院 pp.26~27
「アプローチ」における新規性
先行研究と同じゴールを目指していても、そのゴールにたどり着くまでのアプローチの方法を変えることで新規性をもたせることができます。
物事を多角的に観察して、先行研究と異なる面から研究を行うということです。
例えば、物体検知に関する先行研究があったときに、それまでの研究では「形」から物体認識を行っていたとしたら、「色」から物体認識を行うということです。
このように、同じゴールに対してアプローチを変更することも十分に新規性があると言えます。
「事象」や「トピック」における新規性
先行研究において行われた研究の手法や発見を、現代の新しい問題に対して適応することで新規性をもたせることもできます。
例えば、現在になって注目、あるいは再注目されているトピックとして「第三次AIブーム」や「インターネットの台頭」、「IoT」などのテーマがあります。
それらの事象がなぜ起こったのか、これらの技術は今後もずっと使われ続けるのか、何か別の技術に代替されるのかなど、過去の歴史や法則から紐解いて予想すると非常に面白いテーマになるのではないでしょうか。
このようなやり方も新規性をもたせるための有効な考え方の1つです。
「理論」における新規性
近年になって発見された最新の理論を過去の事象や研究に適応するという方法もあります。
例えば、コロナ禍における株価高を説明する最新の経済理論を元に、14世紀にヨーロッパで大流行した「ペスト」や1918年に大流行した「スペイン風邪」などによる経済への影響を再度分析し直すことで新しい発見が得られるかもしれません。
「方法」における新規性
「方法」に注目して新規性を考えることもできます。
「アプローチ」における新規性と似ていますが、「アプローチ」における新規性は、ある対象を多角的に捉え、今までとは別の面に光を当てる考え方です。
それに対して、「方法」における新しさは、多角性とは関係なく、今までとは別の方法で研究に取り組むという考え方です。
例えば、今までは街頭インタビューでデータを集めていたところを、今回はインターネット上でデータを集めるなどの方法が考えられます。
「データ」における新規性
データを変えることも新規性をもたせるための有効な手段になります。
例えば、機械学習モデルを研究に使う場合には、利用するデータセットをオープンソースの無償利用可能なデータセットから自分で作成したオリジナルのデータセットに変えてみると新規性をもたせることができます。
また、他の分野においては、最新のデバイスを使うことで、これまでは取得できなかった脳波の動きや心拍数などを新たに研究材料にするなどの方法も考えられます。
「結果」における新規性
先行研究と全く同じ研究手法で、研究を再現した結果、結果が異なったということがあるかもしれません。
もちろん、これだけでは新規性があるということはできませんが、なぜ結果が異なったのかを考えてみることで新たな発見が得られる可能性があります。
先行研究とまったく同じ環境で実験をすることはできないので結果が異なった場合は先行研究と異なる条件がどこかにあるはずです。
それらを分析することで結果的に新規性をもたせることができます。
論文をたくさん読んでアイデアを得よう
とにもかくにも、新規性を見つけるためには先行研究の調査が必要不可欠です。
上述した「アプローチ、事象、トピック、理論、方法、データ、結果」による新しさを加えるためには、まず先行研究でどのような研究が行われ、どのようなことが明らかになっているのかを理解しなければなりません。
論文を調べるには、以下のような方法があります。
- 文献データベースを使って学術論文を探す
- 図書館に行って学術論文を探す
- インターネットの検索エンジンを使って学術論文を探す
以下、それぞれについて、簡単に紹介します。
文献データベースを使って学術論文を探す
まず文献データベースには、「J-STAGE」や「CiNii」などがあります。
J-STAGEは、文部科学省所管の国立研究開発法人科学技術振興機構が運営する電子ジャーナルの無料公開システムです。
また、CiNiiは、国立情報学研究所が運営する学術論文や図書・雑誌などの学術情報データベースです。
いずれの文献データベースでも膨大な量の学術論文を閲覧することができます。
参考:国立研究開発法人科学技術振興機構「J-STAGE」
参考:国立情報学研究所「CiNii」
図書館に行って学術論文を探す
市民図書館、大学図書館、国立国会図書館などいずれの図書館においても蔵書検索などを通じて、学術論文を探すことができます。
近年では、その図書館のウェブサイトから蔵書検索ができる機会も増えています。
ぜひ活用してみてください。
インターネットの検索エンジンを使って学術論文を探す
ウェブ検索サイトであるGoogleには、Google Scholar(グーグル・スカラー)というサービスがあります。
Google Scholarは、主に学術用途での検索を対象としており、学術論文、学術誌、出版物の全文やメタデータにアクセスすることができます。
Google Scholarの使い方については以下の記事で紹介しています。
「Google Scholar(グーグルスカラー)の使い方を解説!便利機能や注意点も紹介」
まとめ
新規性は研究において、必ず求められる要素の1つです。
自身の研究において、先行研究と比べて「何が新しいのか」ということを説明しなければなりません。
しかし、あなたの研究の何もかもが新しくなければならないという訳ではありません。
先行研究と比べて、どこか一部に「新しさ」があればよいのです。
具体的には、以下の要素から新規性を考えることができます。
- 「アプローチ」における新しさ
- 「事象」や「トピック」における新しさ
- 「理論」における新しさ
- 「方法」における新しさ
- 「データ」における新しさ
- 「結果」における新しさ
また、新しい研究アイデアを得るために学術論文をたくさん読みましょう。
学術論文を探すには、以下のような方法があります。
- 文献データベースを使って学術論文を探す
- 図書館に行って学術論文を探す
- インターネットの検索エンジンを使って学術論文を探す
研究テーマを決める時期の大学生、大学院生の方の参考になれば幸いです。