単に研究を進めるといっても、多様な手法があります。
なかでも、仮説を立て、この仮説の真偽を確かめる「仮説検証型」の研究手法と、データ解析などの手法により新たな知識や仮説を生成する「仮説生成型」の研究手法は、対比して考えられることが多いでしょう。
そこで今回のコラムでは、これらの研究手法の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
仮説検証型とは
仮説検証型の研究とは、先行研究などを参考に仮説を立て、この仮説が支持されるかを実験や観察を通して確かめる研究手法です。
このような仮説検証型の研究においては
- 過去の研究から仮説を立てる段階
- この仮説を検証するために必要な実験を組み立てる段階
が非常に重要となってくるといえるでしょう。
仮説のブラッシュアップを終え、必要な実験手法などが一度決まってしまえば、その仮説を検証するために実験を実施しデータを収集することになります。
この仮説検証型と呼ばれる研究のメリットや注意点を見ていきましょう。
仮説検証型のメリット
仮説検証型のメリットは、研究を始める前に実験の結果がある程度想定出来るという点と言えるでしょう。
仮説検証型で研究を進める場合、仮説に合わせて実験デザインをしていることから
- 明らかにしたい仮説(アイデア)が明確である
- 実験の結果がある程度想定できる
というような特徴があげられます。
そのため、想定通りの結果が得られた場合には、実験データを世に出す(学会発表や論文など)時、データの解釈なども比較的容易に行うことができると考えられます。
仮説検証型研究を行う上での注意点
一方、仮説検証型にも注意点はあります。仮説を重視するあまり、実験実施時に問題が生じる点です。
仮説検証型でデザインされている研究において最も困るのは
- 仮説にそぐわない結果
が出てきた時ではないでしょうか。このような場合、得られたデータをどのように解釈するかという点が問題となってきます。
仮説にそぐわない結果というのは「なぜ仮説通りの結果とならなかったか」という点を十分に検証することで、「新たな仮説」の生成へともつながることから非常に重要なものともいえるでしょう。
また、事前に仮説を立てているために生じる問題として
- 仮説に対する思い込み
が強くなりすぎた結果、重大な結果を見逃してしまうこともあるでしょう。このことから、仮説も重要ですが、時には仮説通りにいかないケースも予測しながら実験を実施することも大切だといえるでしょう。
仮説生成型との違い
仮説生成型は、まずデータの収集を行い、これらを解析していくことで新たな理論や仮説を構築していく研究手法といえます。
これまで紹介してきた仮説検証型の研究では、実験を始める前に仮説を立てたうえで、この仮説を検証するために必要な実験を行っていくというものでした。一方、仮説生成型の研究の場合、研究対象となるフィールド(分野)において、データを集めることから始まるという点が最大の違いと言えるでしょう。
それでは、仮説生成型のメリットやその注意点について見ていきましょう。
仮説生成型のメリット
仮説生成型の研究のメリットとしては、想定外(想定以上)の結果を得られることがあるという点ではないでしょうか。
仮説生成型の研究の場合、漠然としてつかみどころ無い課題やビッグデータなどの膨大なデータの解析から始めることが多く、研究を始める前には「どのような結果がでるかわからない」ことも多いでしょう。しかしながら、この仮説生成型の研究では、時に研究者の想像を超える
- 想定外(想像以上)の結果
を得ることができる可能性もあり、新たな研究課題の糸口を見出せるという点が仮説生成型研究の最大のメリットと言えるのではないでしょうか。
仮説生成型のデメリット
仮説生成型の研究では、いままで思いもよらなかった研究への切り口が見つかる可能性があるのは事実ですが、データ解析技術など必要な能力があるのも事実です。
まず、膨大なデータを解析するためにはこれらデータを解析するために必要な
- 解析手法
の知識が重要となるでしょう。さらに、解析を行っていく中で様々な仮説や結果を得ることができると考えられますが、得られた仮説や結果が全て意味のあるものであるとは限らないことから
- テーマとの関係性や収集したデータを分析する力
が必要となってくるのではないでしょうか。
まとめ:目的が違う2つの手法、研究の目的や進行度合いにより使い分けが必要
今回のコラムでは、「仮説生成型」と「仮説検証型」という2つの研究手法を見てきましたが
- 仮説生成型:特定のフィールドにおけるデータ収集・解析を通じ、新たな理論や仮説を生成する手法
- 仮説検証型:まず仮説を立て、仮説の検証のために研究・実験を行っていく手法
というような違いがあると言えるでしょう。
このように、2つの研究手法の違いを紹介しましたが、仮説生成型によって得た仮説とは多くの場合、検証が必要となることから「仮説生成」により仮説を生み出し、「仮説検証」により証明に必要な実験・研究を行うという2段階としてとらえることも可能でしょう。
なお、研究手法の違いに関わらず、テーマ設定や計画設計が、その後の研究の成否を分けるのはいうまでもため、十分な計画を組んだ上で研究を進めていくのが大切といえるでしょう。