はじめに
こんにちは。
「知恵の流通の最適化」を掲げるアカリクの山さんです。
大学院博士を満期退学し、現在は人事として、労務や制度周りの仕事を行っています。
さて、今回は11月24日(日)に関西(大阪)で実施しました『アカリクゼミ』の様子をご紹介したいと思います。
そもそもアカリクとは?
株式会社アカリクは大学院生(修士/博士)、院卒社会人、ポストドクター、研究者の採用支援事業を行っている会社です。
身近に大学院進学者、特に博士課程(後期)出身の方がいらっしゃる方はご存じかもしれませんが、大学院生が就職活動を行う際には、院生の強みを自分自身でも分析し企業にアピールする必要があります。
それはなぜかといえば、大学院で行う研究は基本的には実用化される前のことを取り組んでいるが故に、研究をした経験をそのまま活かすことができる職場が非常に限られているためです。加えて、民間就職を考える大学院生は、忙しい研究生活と並行して、新卒一括採用のスケジュールに則って就活を行わなくてはいけません。
実際、先日11月27日には、八大学工学系連合会会長の東北大学大学院工学研究科長教授の長坂徹也氏より、大学院生の就職・採用活動問題について声明が発表されました(出典:「深刻な理系大学院生の『就活疲れ』 募る不安、長期化・消耗に歯止め」、日経XTECH、最終参照日:2019-12-05)。
そうした中、アカリクでは、大学院生のキャリアを活かしつつ、その研究活動の課程で得た知見や習慣が、十分に専門外の事業を扱う企業においてもコンピテンシー足りえるとの信念のもと、2006年より大学院生のキャリア支援を行って参りました。
『アカリクゼミ』はそうしたコンテンツの中の一つで、昨年までは『アカリク式PBL』という名称で運営しておりました。
PBL(Problem-Based-Learning)とは?
旧名『アカリク式PBL』に含まれているPBLとは、Problem-Based-Learning(課題解決型学習)の略称で、教育方法の一種です。問題と答えの組み合わせを暗記するのではなく、答えのない課題の解決を通じて、論理的な思考力を磨くことに主眼を置いています。
このPBLは、平成28年に閣議決定された第5期科学技術基本計画において日本の将来像として提唱されたSociety5.0(超スマート社会)を実現するうえで重要視されている方法の一つです。アカリクでは、このPBLに2年前から着目し、『アカリク式PBL』として実在する企業様のリアルな経営課題を題材に、大学院生の皆様が実践を通じてビジネスリテラシーを高めていただくことを目指しました。
また、普段接することのない異分野を研究している大学院生との交流を通じて、新たな視点や仲間を見つけていただくことを併せて目指しております。
今回、装いを新たにした『アカリクゼミ』では、前半2時間を座学に、後半5時間をチームに分かれてのワークとし、アカリクの採用課題をテーマに解決策をご提案いただきました。
全7時間の長丁場となりましたが、当日は、日々の研究活動でお忙しい中、関西から計5名の大学院生(博士課程3名、修士課程2名)にお集りいただき、『アカリクゼミ』を実施いたしました。
以下に、更に当日の詳細な様子をご紹介いたします。
①『アカリクゼミ』前半:座学パート
今回の座学では、まず最初に博士のキャリア戦略として、「研究成果」という目に見えるアウトプットだけではなく、その根底にある価値観や習慣といった、いわゆる「コンピテンシー」の考え方をお伝えしました。
次に「コンピテンシー」をビジネスでも展開するために、現在の自分の状態を客観視するためのツールとして、元ハーバード大学教育大学院のカート・フィッシャーが提唱されたDynamic Skill Theoryを用いたワークを実施いたしました。
同理論によれば、個人のスキルは「環境」や「課題」によって変化するとされています。この例として私がいつも挙げるのは映画の字幕です。日本語字幕がある場合は洋画を理解できるものの、字幕がないと何もわからないといった経験をしたことがある方は、私以外にもいらっしゃると思います。この場合「字幕」のおかげで個人のスキルが実際以上に引き上げられた、と考えることができます。このように、ダイナミックスキル理論では、私たちは普段、周囲の方々の支援や制度、あるいは自身の得意・不得意によって、本来の力以上のパフォーマンスを発揮したり、できなかったりする、と考えます。
そしてまた、大学院学生のコンピテンシーをビジネスで発揮するためには、この「課題」の差を乗り越える必要があると考えられます。そこで、今回実践したワークでは、①「ご自身の研究分野でのスキルの高さ」と②「ビジネス分野でのスキルの高さ」にどれだけ乖離があるかを体験していただくことを目指しました。
ワークの内容を簡単にだけ説明いたしますと、①「ご自身の研究分野」と②「興味関心のあるビジネス」を、具体的なものだけを用いた説明から抽象的・俯瞰的な説明へドンドン引き上げる、といったものです。序盤のうちは、「パン屋さんではパンを売っている」、「生物学では生物について研究している」といった回答で良いのですが、レベルが上がるにつれて、その事業や研究が目指している将来像や内に秘めた信念を想像できなければ答えることが難しくなる仕組みです。
今回ご参加された5名の大学院生も、ご自身の研究分野については次々と課題をクリアできるものの、こと希望する企業・業界の説明となると、苦戦してしまったようです。10分間のワークの後、一例として模範解答を例示させていただきました。研究分野を深く説明できる能力は企業分析にもきっと応用できると思います。今回のワークを是非プライベートでも活用して、今後の就職活動に活かして頂けましたら幸いです。(次回は、ワークやフィードバックのお時間をもう少し長くとりたいと思います!)
※画像は、当日活用したスライドから。画像の6~12は、ダイナミックスキル理論で提唱されているスキルのレベルです。
②『アカリクゼミ』後半:実践パート
前半のワークを終えた後は、実践パートです。
今回は、アカリクの採用課題をテーマに2つのチームに分かれ、それぞれ提案を出し合っていただきました。ワークに取り組んで頂く前には、「人事戦略の立て方」、「採用計画の立て方」、「採用手法の種類」などといった、手前の上流工程についてもじっくりとご紹介し、企業のロジックについてお伝えいたしました。
チームに分かれた直後は、前半のワークで作成した資料をもとに自己紹介が行われていました。今回ご参加された5名の院生は、全員初対面で、所属大学も専門分野も異なっておりましたが、同じフォーマットでかみ砕かれた各人の研究分野の説明を、お互い真剣に聴いていた様子が印象的でした。
中間発表を経て、18時以降の最終発表では、それぞれのチームから現役・大学院生という強味を最大限に活かして、アカリクもまだまだ気が付いていなかった視点から、採用課題解決に向けてご提言をいくつか頂くことができました。
それぞれのご提案を実行するためには更に具体的に落とし込む必要はあったものの、短期間の間、初めて詳細を知った企業・課題に対するアウトプットとしてはとても素晴らしかったです!
普段は東京・渋谷で活動していますので、関西での単独イベントに不安もございましたが、『アカリクゼミ』終了後には、5名それぞれが連絡先を交換しあったり、歓談されており、目標の一つでした「研究室を飛び出して異分野の博士・ポスドクに会いに行こう」を達成することができたのではないかと思います。
その一方で、日程都合が合わずご参加いただけなかった学生様も多数いらっしゃり、当日ご参加いただいた方々からは、大学院生の就職活動に関するご質問や不安も多数頂いたため、今後も継続して大学院生のキャリア形成に役立つ情報やイベントを届け続けていきたいです。
おわりに
『アカリクゼミ』について、いかがだったでしょうか。
今後も、引き続き大学院生の皆様のキャリア形成に役立つイベントを実施予定です。
『アカリクゼミ』次回は、12月14日(土)13時~開催予定です。
大学院生(修士課程在学者~未就業中のポスドク)の皆様で、ご興味ご関心お持ちの方がいらっしゃいましたら、是非「アカリクイベント」よりご登録くださいませ(お申込みはココをクリック)。
また、『アカリクゼミ』の趣旨にご賛同いただける企業様からのお問合せもお待ちしております。その場合には、是非saiyo@acaric.co.jp までご連絡くださいませ。
最後までご一読下さりありがとうございました。
今後ともアカリクを宜しくお願いいたします。
ご参考:過去の『アカリクゼミ』(旧名『アカリク式PBL』)については以下のページをご確認くださいませ。
株式会社アカリク(https://acaric.co.jp/)は「知恵の流通の最適化」という理念の下、大学院生やポスドクを対象とした求人情報の提供やキャリアセミナーを開催しています。また、現役大学院生から大学院修了者まで幅広く対応したエージェントサービスも提供しています。他にもLaTeXの環境をクラウド化できるサービスも運営しています。