「就職四季報2021」からみえてくること

はじめに

　2023年度の就職活動がいよいよ本格化しようとしています。

　そこで今回は、「就職四季報2021」に掲載されている情報をもとに、大学院生の就職活動に関する情報をご紹介したいと思います。

　皆様が就職活動を進めるうえで、参考になれば幸いです。

「就職四季報」とは

　「四季報」というと、まず「会社四季報」を思い浮かべる方が多いかもしれません。会社四季報は、日本の上場企業の業績や財務内容、株価の動きをまとめた雑誌です。「投資家のバイブル」とも呼ばれており、国内市場全上場企業の配当予想や、株価推移なども網羅されています。

　今回扱う「就職四季報」は、その名の通り就職に関する情報が掲載されている、就活のハンドブックのようなものです。各社の就職先としての情報が掲載されており、採用試験やインターンシップの情報、給与体系や福利厚生などといった情報が揃っています。

　就職四季報は毎年出版されているので、過去のものと比較しながら企業がどのような歩みをしてきたかを知ることで、これからの動きを予測することができます。ページをめくって眺めるだけでも、様々な気づきがあると思います。ぜひ一度、手に取って読んでみてください。

「就職四季報」から見えること

　ここからは、就職四季報に掲載されている2019年～2021年度の3年間の情報から読み取れることをご紹介します。

大学院採用実績数ランキング

2019年度

2020年度

2021年度

　各年ごとに大学院生（修士）の採用実績数の上位15社をランキング形式でまとめてみました。日本生命保険相互会社は3年連続で1位、本田技研工業株式会社は3年連続2位を獲得しています。2019年度は上位15社のうち10社がメーカーであり、2020年度は9社、2021年度は8社と各年において上位15社の半数以上をメーカーが占めていることが分かります。採用実績数が多いということは、大学院生を積極的に採用している企業といえます。気になる企業が毎年どのくらい大学院生を採用しているのかを知ることで、内定獲得の難易度などがイメージしやすくなるかもしれません。

大学院生採用実績数の推移（3年間採用実績数掲載企業のみ抜粋）

大学院生採用実績数の推移（全業種）

　この表は、大学院生数の採用実績数について2019年～2021年度の3年間すべての実績を掲載している企業を選定し、その推移を表したものです。「2019年度」は17446人、「2020年度」は17592人、「2021年度」は16377人となりました。

大学院生採用実績数の推移（業界別）

　業界ごとの大学院生の採用実績の推移をみてみると、「コンサル等」「通信・ソフト」「エネルギー」業界においては3年間増加傾向にあります。一方で「メーカー」「小売」業界は減少傾向にあります。「メーカー」の大学院生の採用実績数は他の業界に比べて多いですが、2020年度の11881人から2021年度は10736人（マイナス1145人）となっており、その減少数も大きいことが分かります。

大学院生採用実績数上位５企業の採用数推移

　この表は、2021年度の大学院生採用実績上位5社の3年間の推移を表したものです。「株式会社NTTデータ」と「株式会社野村総合研究所」は採用数が増加傾向にあります。また、「日本生命保険相互会社」「本田技研工業株式会社」は2021年度の採用数が過去３年間で最も低くなっています。「キオクシア株式会社」は2020年に採用数が一度落ち込んだものの、2021年度は過去３年間で採用数が最も多い年度となっていることが分かります。

大学院生の採用割合

大学院生採用割合の推移（全業種）

　この表は、採用実績（大卒以上）のうち大学院生の占める割合の３年間の推移を示したものです。「2019年度」は21.79%、「2020年度」は22.4%（前年比＋0.61%）、「2021年度」は25.36%（前年比＋2.96%）と増加傾向にあることが分かります。大学院生の採用実績数自体は減少傾向にありますが、割合としては増加しています。

2019～2021年度合計 採用実績（大卒以上）のうち大学院生が占める割合

　2019年度～2021年度の3年間における、各業界ごとの採用実績（大卒以上）の大学院生の占める割合をみてみると、最も高いのは「エネルギー」業界で48.21%と、採用実績の半数近くを大学院生が占めていることが分かります。次いで「コンサル等」が43.85%、メーカーが43.54%と、これらの業界でも4割以上を大学院生が占めています。一方で、「小売」業界は1.92%と最も低く、全企業では22.93%となりました。就職したい業界や企業が、どの程度の比率で大学院生を採用しているのかを把握することで、入社後のイメージが湧きやすくなるかもしれません。

エントリーシート（ES）設問項目

　この表は、企業のエントリーシート（ES）で問われる項目において、問われる頻度が高い順にまとめたものです。最も割合が高いのは「志望動機」で全体の60.76％に上ります。次いで「学生時代に力を入れたこと」が42.59%、「自己PR」39.3%となっています。また、「入社後にやりたいこと」18.84、「研究内容」15.19%とこれらの項目も1割を超えている。就職活動の準備をする上で、これらの項目は問われる確率が高いので、自分なりの答えを早いうちから言語化して準備おくと良いでしょう。

インターンシップ実施時期

　この表は、企業のインターンシップの実施時期を表したものです。最も多かったのは「9月」で693社が実施すると回答しています。次いで、「8月」569社、「2月」534社となりました。一方で3月から6月頃までの期間は、インターンシップを実施する企業が少ない事が分かります。

まとめ

　いかがだったでしょうか。今回ご紹介した内容は、「会社四季報」から読み取れる情報の一部です。読み取り方を工夫することで、まだまだ大学院生の就活に役立つ情報を引き出すことができます。皆さんも、これから本格化する就活に向けて、就活四季報を覗いてみてください。