新型コロナウイルスに関する様々な予測をビッグデータを用いて分析する新聞記事や報道を見たことがあると思います。
このようなデータ分析を通じて、消費者の行動や、好みに合うサービス、市場分析、将来予測などを行うデータサイエンティストという職業が、今、全世界的に高い注目を集めています。この記事では、未経験からデータサイエンティストへの転職を考える方に向けて、
・データサイエンティストの将来性
・データサイエンティストとして必要なスキル
・データサイエンティストになるためにお勧めの資格
・未経験からデータサイエンティストへの転職は可能か
・データサイエンティストを募集している業界
・データサイエンティストに転職する方法
について、解説を行います。
データサイエンティストの将来性
最近はビッグデータブームと呼べるほど、多様な分野で多くの企業がビッグデータの活用を行ったり、検討しており、それを解析するデータサイエンティストの人手が足らない状況に陥っています。そのため、データサイエンティストの求人の増加傾向は今後も続くと予想されており、将来性は十分にあります。
経済産業省からの委託で、みずほ情報総研株式会社が2019年に行った試算によると、日本においてデータサイエンティストのような先端IT人材は、2030年には55万人の不足が予測されています。
参照:みずほ情報総研株式会社(経済産業省委託事業)「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT人材等育成支援のための調査分析事業)-IT人材需給に関する調査-調査報告書」2019年3月
アメリカの大手求人検索サイト、Glassdoorでは、毎年独自の基準でその年のアメリカでもっともよい職種ベスト50を選んでいます。
データサイエンティストは2019年1位、2020年3位、2021年2位と、3年連続で安定した順位に選ばれており、2021年のベースサラリーの中央値は$113,736USDであり、日本円にすると基本給だけで年収1200万円という統計が紹介されています。
参考:50 Best Jobs in America for 2021
このように、データサイエンティストの需要は日本だけでなく、世界的に高まっており、給料や将来性の点から見ても高く評価されていると言えます。
データサイエンティストで必要となるスキル
それでは、データサイエンティストとして必要なスキルとはどのようなものでしょうか。
ここでは
・統計及び分析の知識
・プログラミング技術
・ITスキル
・コミュニケーション能力
の4つについて説明を行います。
統計及び分析の知識
データサイエンティストとして働くには、当然ですが分析や統計学の知識が必要です。
SPSSやRなどの統計パッケージが使いこなせることはもちろん、データの性質や種類、行いたい分析に合わせてどのような統計処理手法を使用すべきか、統計処理ソフトで出てきた結果がどのような意味を表しているのかを正確に読み取るスキルが必要とされます。
プログラミング技術
データサイエンティストは上記のような統計パッケージを使用するほかに、自らコーディングをして統計ツールを作成することもあります。使用されるプログラミング言語はPythonやR言語が主流になっていますので、これらの言語を用いて、コードが書けるスキルを持っている必要があります。
ITスキル
データサイエンティストはビッグデータを扱うことが多いため、SQLやBIツールなどのデータベース操作に関するIT関連スキルも必要です。他にも分野によってはセキュリティやクラウドの知識、機械学習やディープラーニングの知識が求められる場合もあります。
コミュニケーション能力
データサイエンティストの仕事は、企業に蓄積されたデータを分析し、クライアントのビジネスに役立つ知見を見出すことです。
そのため、クライアント企業にとってどのような分析や情報が有用なのかをヒアリングで明確にする必要があります。
また、結果についてクライアント企業の担当者や経営陣に説明を行ったり、プレゼンテーションを行って新たなサービスの提案を行うのもデータサイエンティストの業務の一環ですが、クライアントは統計分析の知識がないことがほとんどです。
統計分析で得られた結果を、クライアントの知識や理解度に合わせてわかりやすく伝える、コミュニケーション能力が求められます。
データサイエンティストになるためのおすすめの資格
他の多くのIT職種同様、データサイエンティストも、資格がなくてもスキルと経験があれば転職・就職は問題ありません。
しかし、未経験からデータサイエンティストを目指す場合や、ITの他職種からデータサイエンティストへの転職を目指す場合は、やはり資格があった方が転職には有利になると言えます。
また、このような資格取得するために学ぶことで、データサイエンティストの仕事内容や必要なスキル、本当に自分がデータサイエンティストを目指したいのか、向いているのかなどもわかってくるという意味もあります。
統計検定
統計検定とは、一般財団法人 統計質保証推進協会が主催する資格試験で、統計に関する知識や活用力を評価する全国統一試験です。
4級から1級まで段階的に学べることが特徴で、初めて統計を専門に学ぶ方にも向いています。データサイエンティストへの転職活動に役立つのは、準1級からだと言われています。各種統計解析法の使い方や統計結果の正しい解釈について出題されます。
参考:統計検定とは
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は、(独)情報処理推進機構が主催する国家資格であり、合格すると「情報処理技術者試験合格書」が発行されます。
高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能と実践的な活用力についての試験ですので、ITスキルの証明になります。
情報処理技術者試験はIT分野では基礎的な資格ですから、データサイエンティストとしてIT業界で活躍することを目指すのであれば、この資格があることで転職が有利になります。
データスペシャリスト試験(DB)
データベーススペシャリスト試験は、同じく(独)情報処理推進機構が主催する国家資格であり、こちらはデータベースの知識とスキルが問われます。
OSS-DB技術者認定資格
OSS-DB技術者認定資格とは、オープンソースデータベース技術者認定資格のことで、特定非営利活動法人エルピーアイジャパン(LPI-Japan)がオープンソースデータベース(OSS-DB)に関する技術力と知識を公正に中立的な立場で認定する資格です。
ビッグデータを扱う場合、オープンソースデータベースの知識とスキルが必須になってきますので、この資格を取得すれば、その知識とスキルを証明することができます。
データベースの設計や開発スキルを認定する「Silver」と、大規模なデータベースの改善や運用管理のスキルを認定する「Gold」の2種類があります。
参考:OSS-DB
オラクルマスター
オラクルマスターとは、データベース管理ソフトウェア、オラクルデータベースに関する知識を証明するための資格です。ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4つのレベルがあり、初めての場合はブロンズから順番に取得していくことになります。こちらも、データベースについての知識とスキルを証明するのにお勧めの資格です。
未経験者でもデータサイエンティストに転職可能?
IT未経験者はなりにくい
データサイエンティストは需要が高く、募集件数も多いため、未経験であっても研修を行うことが前提で応募可能な求人案件も中にはあります。ただ、全くの未経験からデータサイエンティストになるにはハードルが高く、準備期間中も採用されてからも自分で積極的に相当の努力を行うことが必要です。
そうはいっても、未経験からデータサイエンティストになるのは狭き門です。データサイエンティストとして活躍するためには、Pythonなどのプログラミング知識や、データベースに関する知識を持ち合わせていることが理想とされます。
そのため、IT未経験者がいきなりデータサイエンティストになることは難しいと言われています。IT業界で経験を積み、スキルや知識を高めながらデータサイエンティストを目指すというキャリアパスが、より現実的で確実性の高い方法だといえるでしょう。
周辺職種から転職しやすい
データサイエンティストの仕事において、データ分析にAIを活用する場面が増えています。そのため、エンジニア系のキャリアを積んでデータサイエンティストになることを考えるのであれば、下記のような周辺職種につくことをまず考えても良いでしょう。
・Webプログラマー
・データベースエンジニア
・データマイニングエンジニア
・Pythonエンジニア
これらの周辺職種で、データベースやデータ分析基盤技術、データマイニングの知識が身につきやすい職種をまず目指しましょう。その上で、業務外の時間に自主的にWeb教材やオンラインスクールなどを活用して、機械学習や統計学について学び、資格の取得を行いましょう。
データサイエンティストになるためのおすすめの勉強方法
未経験から独学でデータサイエンティストを目指すのは非常にハードルが高いものです。プログラミングスクールや通信教育を上手に利用して、時間を有効に使いながら、系統だった知識を身に付けることがお勧めです。
例えば、以下の3つの講座がお勧めです。
データサイエンスオンライン講座
総務省が提供している「データサイエンスオンライン講座」は受講料無料で、データ分析や予測の概念、手法、活用場面などを学習することができます。基本的な内容ですが、無料ですので、未経験からデータサイエンティストを目指す方にお勧めです。
参考:総務省統計局:データサイエンス・オンライン講座「社会人のためのデータサイエンス演習」
UdemyはデータサイエンティストやITエンジニア向けの講座だけでなく、幅広い分野で100,000以上の講座を提供しているオンラインプラットフォームです。動画コンテンツを使用して自分の都合のいい時間に、自分のペースで学ぶことができます。
講座の動画コンテンツを購入すればいつでも見られるというシステムですが、料金は一講座1万円前後のものが多いです。
ただ、頻繁にセールや大幅な割引を行っているので、そのようなタイミングを狙って利用すると良いでしょう。ITだけでなく、ビジネス関連の講座も多数ありますので、データサイエンスやデータベースとともに、統計やビジネスに関する知識も学ぶことができます。
現代統計実務講座
現代統計実務講座は、一般社団法人実務教育研究所が運営している通信講座で、文部科学省によって認定されている通信講座でもあります。統計学を専門にしたカリキュラムで基礎から応用まで8ヶ月程度で体系的に学ぶことができます。
データサイエンティストを募集している業界
それでは次に、データサイエンティストを募集している業界や企業にはどのようなものがあるのでしょうか。
不動産業界
賃貸物件や売買物件の価格の査定にビッグデータの活用が注目されています。賃料や物件の売却価格は、立地や間取り、築年数などをもとに算出されています。
例えば、不動産売却のウェブサイトを訪れた見込み顧客が、ビッグデータを活用した精度の高い自動査定価格をすぐに知ることができるサービスなど、データサイエンティストの需要は不動産業界で年々高まっています。
金融業界
金融業界では、近年、金融(Finance)とIT(Technology)を掛け合わせた「Fintech」という言葉が良く聞かれるようになりました。金融サービスと情報技術を結び付けた様々な革新的なサービスを指し、例えば、スマートフォンのアプリを使った送金もその一例です。
最近では人工知能を活用したAI投資が注目を集めています。また、POSのデータやクレジットカードの決済データなど、利用価値のあるビッグデータを保有している業界ですから、今後これを活用し、新しいサービスを作ったり、マーケティングに利用しようとしている企業も多いようです。
製造業界
ものづくりの現場でも、データサイエンティストの活躍が見込まれています。品質管理ではこれまで人間が目で品質を確認することが多かったのですが、それを画像認識を利用し、AIに読み取らせて品質管理を行う技術が開発されています。
また、サプライチェーンの分野でも物流の最適化を行うのにデータサイエンティストが活躍しています。
このようにデータサイエンティストは、様々な業界で活躍の幅が広がっています。
データサイエンティストへの転職方法
最後に、データサイエンティストに転職する方法について解説を行います。前の章でも見てきたように、データサイエンティストの需要が多く、人材の供給が少ないため、求人広告もよく見かけるようになりました。
ここでは転職サイトを使用した転職活動と、SNS等を利用したダイレクトリクルーティング、転職エージェントを利用した転職活動について解説を行います。
転職サイトを利用
インターネットなどで求人広告を検索し、それに応募するというのが、最も一般的な方法です。最近は多数の就職・転職サイトがありますし、人材派遣会社などでもデータサイエンティストの募集を請け負っているところがありますから、幅広く探してみましょう。
SNS等を利用したダイレクトリクルーティング
最近はダイレクトリクルーティングと呼ばれる、企業が直接人材へアプローチをして採用活動を行うスカウト型も増えてきています。
特に、データサイエンティストなどの、特定の知識やスキルを求めている場合、SNSで発信している内容から、その会社で求めている人材であるかどうかを判断してからアプローチすることができるため、企業にとってはダイレクトリクルーティングのメリットは十分あると考えられます。
ダイレクトリクルーティングで声をかけられるためには、データサイエンティスト転職活動用のアカウントを作成し、日々の学習状況や、気になる関連ニュースなどについて発信することが良いでしょう。
Kaggle枠を利用
もう一つ、データサイエンティストの採用について注目されているのがKaggle(カグル)です。Kaggleとは、世界中の機械学習・データサイエンスに携わっている約40万人が集まり、繋がるオンライン上のプラットフォームです。
Kaggleでは企業や政府がコンペ形式で課題を提示し、提案された中で最も精度の高い分析モデルを賞金と引き換えに買い取るという制度があります。また、成績が上位だった人に対してメダルが与えられ、メダルを多く獲得すると、MasterやGrandmasterなどの称号が贈られます。
Kaggleに参加している人は無料でこのコンペに参加することができます。未経験でも、このKaggleで実績を積むことで、データサイエンティストとして転職することが可能になります。
企業の中にはKaggleに参加している人を対象にした採用活動が行われています。データサイエンティストの募集をしている企業はKaggleについて認知していることが多く、Kaggleに参加している人「Kaggler(カグラー)」を求めていることがあります。
Kaggle枠では、条件によってはデータサイエンティストの実務経験がなくても応募できます。KagglerはKaggle内での実績があればスキルを持っていると判断されるため、企業からも採用されます。
また、Kaggleの実績は就職してからも重要です。企業によっては昇格や昇給に関わり、優秀な実績をおさめると、重要なポストに就くことができます。国内企業でもそれだけKaggleの価値が高いということでしょう。
転職エージェントを利用
以上、様々な転職活動の方法を見てきましたが、情報収集や応募先とのやり取りをすべて一人で行うと多くの時間と労力がかかってしまいます。
データサイエンティストへの転職活動には、情報収集、キャリアの棚卸し、目標設定、転職準備など、様々な準備が必要になり、それに必要な時間と労力はかなりのものになります。
そのため、一人で全部行うのではなく、転職エージェントの利用がお勧めです。転職エージェントには、これまでに転職活動をされた方の情報がどんどん登録されていきます。
キャリアカウンセラーに相談することで、例えば、データサイエンティストへの転職活動において、面接ではどのような質問をされたかの情報などを得ることができます。
また、求人情報の方も日々アップデートされていき、最近データサイエンティストに良く求められるスキルのトレンドの移り変わりなどもエージェントは把握しています。
転職エージェントには様々な会社がありますので、自分に合った会社を選ぶことが重要です。アカリクキャリアは、大学院卒の就職支援・転職支援を専門に行う転職エージェントです。
社員の多くは大学院卒であり、大学院卒の就職支援・転職支援に関するノウハウがしっかりと蓄積されています。
また、10年に渡る就職支援の中で、企業との結びつきを深め、非公開求人の依頼も多数保有しています。
初回のキャリアカウンセリングから最後まで、一人ひとりに担当キャリアカウンセラーがつき、支援を行うため、きめ細かい対応が可能です。
これまで多くの方の転職をサポートしてきた経験から、現在はどのようなスキルがあればデータサイエンティストへの転職で高く評価されるかという理解や、5年後、10年後のキャリアプランを含めたコンサルティングなど、将来を見据えた支援を行えることも、アカリク転職サービスの大きな強みとなっています。
このような転職エージェントを利用することで、時間と労力のコストが大幅に削減でき、転職活動の心強い味方が得られます。また、自己分析について客観的な意見が得られることも重要なポイントです。
今すぐに転職したいという方以外でも、データサイエンティストへの転職可能性を知りたい方、長期的なキャリアに関する相談、自分のスキルや経験が生かせる職種にはどんなものがあるか知りたいなどの理由で登録される方も多いものです。
ぜひ、アカリクキャリアに登録し、転職活動の一歩を踏み出しましょう。
まとめ
この記事では、データサイエンティストに転職を考えている方に向けて、データサイエンティストの仕事内容や、将来性、未経験からセキュリティエンジニアへの転職を成功させる方法と身に付けるべきスキルなどについて解説してきました。
様々な業界でデータサイエンティストの需要が高まっていますので、今後もまだまだ求人数が増えることが予想されます。
一方で、市場価値の高いデータサイエンティストになるには、IT関連だけでなくビジネス関連の知識やスキルも積極的に日々アップデートし、データの表す意味をビジネスの文脈に則って、ビジネスで利用できる形で読み解くことができるデータサイエンティストを目指す必要があります。
現在のご自身の状況から、今後どのようにデータサイエンティストを目指す準備を行い、どのようなキャリアデザインを描くのかも含め、アカリクのキャリアコンサルタントにぜひご相談ください。