研究できる「場」の多様性を知ろう!ライフサイエンス分野の博士が語るベンチャー企業の面白さ【後編】

インタビュー

ご自身の専門分野を活かし研究を続けるためには、「アカデミック・ポスト」か「大手企業の研究職」しかない、なんて考えてはいませんか? 基礎研究(ライフサイエンス分野)のバックグラウンドを活かし、高校教員からバイオベンチャーへと転職され、研究員として活躍中の髙山和也様に「博士の視点から見たベンチャー企業の面白さ」についてお話を伺いました。

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髙山和也氏プロフィール:広島大学 博士(理学)。熊本信愛女学院高校 常勤講師を経て、Craif株式会社(当時、Icaria株式会社)に入社。現在はライフサイエンス分野での研究員とラボマネージャーを兼務している。

今回の取材にご協力いただいた、髙山様のご所属先であるCraif株式会社https://craif.com/)は「疾患を早期発見し、治療を最適化する」事をミッションに掲げており、尿中エクソソームをバイオマーカーとしたがんの早期発見事業、並びに患者層別化による創薬支援を主力事業とする企業です。

後編では髙山様ご自身の就職や転職を振り返って、大学院生や若手研究者の皆さんにお伝えしたい想いを語っていただきます。(前編はこちら

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就職や転職を振り返って

ご転職活動で現在のCraif様と出会ったときは、どのような印象を受けましたか

転職するならベンチャーだと思って、基本的にはベンチャー企業の求人紹介を受けていました。研究職だけではなく、開発職や営業職、それからベンチャーキャピタルなどの求人も見てきました。その中でも、Icaria(現Craif)はものすごく面白そうなことをやっているし、さらに自分のバックグラウンドを使える研究ができるんじゃないかなと思いまして、すごく興奮したというか、ワクワクしたのを覚えています。

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研究をやりたいという気持ちはずっとあったんですが、高校の先生をやるにあたって、自分のバックグラウンドの魅力を次世代に伝えたいとか、生徒たちの可能性を伸ばしていきたい、という気持ちが芽生えたんです。そこから、学校教諭以外にも身近な形で世の中にそういった還元ができる場を探していて、ベンチャーはかなりスピードが求められるので、色んなことを幅広く多くの面で還元できるのではないかと。

もちろんベンチャーという選択肢は、少しハードルが高いとも思いましたし、特に当時のIcariaは設立されて1年経っていない会社だったので、「大丈夫かな」という不安はありました。でも、それよりも中身が面白そうだし、やってみたいという思いが勝ちました。

学生時代に「やっておいてよかった」という事はありますか

ふたつあります。ひとつは、色んな人と積極的にコミュニケーションを取るよう心がけながら学生生活を送っていたことです。英会話、サークルなどに顔を出しながら、勉強会の開催など、多くの異なるコミュニティに属するようにしていました。それが今、様々な専門分野の方とやり取りをしていく際に大きな自信につながっています。

またもうひとつは、博士課程のとき、学生のうちに「ベンチャー」について知る機会を得ようと思って、そうした講義へ積極的に参加していました。全学年向けの教養科目的な位置づけの講義で、起業家やベンチャー企業で実際に活躍されている方々が講師でした。もちろん研究のことをメインに授業を履修していましたが、気分転換じゃないですが、視野を広げるためにも良いかなと。

逆に「これをやっておけばよかった」ということは?

実は、博士課程在学中に就職活動をした際は「忙しそうだな、色々やるから大変そうだ」と思って、ベンチャーは全く受けていなかったんです。それに関連して、やっておけばよかったと思うことは、新卒の就活の段階で、もっと中小企業やベンチャーも視野に入れておけばよかったという点です。

「研究ができる環境は大手やアカデミアだけ」というバイアスがかかっていました。今思うと、一部の大企業やアカデミアだけではなくても研究のできる場というのはたくさんあるので、ベンチャーやスタートアップ、中小企業とも実際に会って話をきいておけばよかったなと感じます。

研究以外の活動への接点をどのように掴んでいくと良いのでしょうか

ずっと実験をしてきて、確かに実験は楽しいものの、物の見方や視野が狭まるとも思っていたんです。だからこそ自分でどうにかしたいという気持ちがあって、色んな人の意見を聞きながら研究室内外の友人たちと、研究以外の話をしてきました。

アカデミックに残るときに心配になっていたのは、基礎研究は自分の興味だけで研究を進めることができます。それはそれで楽しかったんですけど、自分の好きなことしか知らない、というのも私としてはすごく気持ちの悪い状態でした。そこは積極的に改善しようと、自分なりに動いていましたね。もう少し違う世界もみてみたいなと。

博士課程に進むと毎日実験が忙しくてはやく結果を出したいというように実験のことだけしか考えられない状況になると思うんです。ただそこで、少しそこで自分自身を見直して、これだけじゃない、その研究以外にも自分のやりたいことなど視野を広げようとする意識を持てたとすると、また動き方は変わってくると思います。研究したいけどベンチャーは不安だとか、違うんじゃないかと感じている方々には、良い面と悪い面を見てもらいたいです。

ベンチャーという点に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、研究の自由度が高いので面白いです。「研究ができる」と言っても、大手の民間企業では、自分のやりたいと思うこととは違うことをやらなければならないこともあります。それに対してベンチャーではまだ出来上がっていないもの、開発段階のものがたくさんあります。自分なりに解釈をして実験を組み立てて研究ができる。またそうして自分がやってきたことが、すぐに結果としてみえていく企業に還元されることは面白いと感じる人もいるのではないかと思います。

確かにすぐにサービスを出せないときは、もどかしさを感じることもあります。ひとつサービスを出すにしても申請や施設の準備が必要であったり、自分自身の結果も大事ですが色々なところとの連携が必要だと感じています。

髙山様ご自身の今後の展望について教えてください

一度は研究から離れましたが、今こうしてCraifで研究者として仕事ができていることにとても充実感を感じますので、今後も研究者として活躍していきたいと思っています。エクソソームはとても面白い物質で近年注目を浴びていますが、まだまだわからないことが多い未知なる物質。これをどうにかして自分なりに明らかにし、世の中に報告・発信していきたいなというのが今後の展望です。なぜ、がん細胞がエクソソームを出しているのかという点など、私の興味でもありますし、それが会社の研究の根幹にもつながっていくと思います。

大学院生や若手研究者へのメッセージ

 私の周りにおいては、大学院を出ても研究職につくことは難しいという勝手な思い込みから、早々と研究職以外で仕事を探す人が多かったように覚えています。確かに私自身も学生時代はそうでした。ただ調べていくと大学や大手企業だけでなく、研究できる場は実はたくさんあると思います。やはり研究をしたいのであれば、そうした「場」はたくさんあることを知ってほしいしですし、それに向かって皆さんに頑張っていただきたい、と思います。

(インタビューアー:株式会社アカリク 大山未方・吉野宏志)

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