就活や仕事について、修士1年の4名に自由に語っていただいているこの座談会。
4回目は修士課程に進んで続けてきた研究への思いについてお聞きします。
研究への思いは就職とともに消えてしまうのでしょうか?それとも…?
会計さん(男性) 修士課程1年
知能システムさん(男性) 修士課程1年
生物・食品さん(男性) 修士課程1年
総合化学さん(女性) 修士課程1年
アカリクA(男性) 人文社会科学博士
アカリクB(女性) 生命科学系博士
もし宝くじが当たったら就職はする?研究は?
アカリクA:ここで少し角度を変えた質問をします。もしも宝くじで高額当選したら、就活を続けますか?
総合化学さん:就活を続けますし、就職もします。博士課程に残って研究は、しません。
アカリクA:どうしてでしょうか?生活費は十分にあるわけですが。
総合化学さん:生活費があっても、これ以上働かずに研究を続けるのは親に申し訳ないという思いがどうしても残ってしまいます。それに、私はとことん基礎研究をするよりも、研究を製品として世に送り出すような研究開発をしたいです。
生物・食品さん:私も宝くじが当たっても就活をします。でも大金があるなら、汗水垂らして毎日終電まで働く、という働き方は選ばないかな。
会計さん:私の場合、アカウンティングスクールなので、そもそも研究をするという選択肢はないですね。
知能システムさん:私も就活をするつもりでいますが、実際は当選した宝くじの金額によると思うんです。一億円以上が当選していたら、働く気がなくなったときには迷わずやめられるので、そこまで真剣に就活しないかもしれません。。でも当選金額が一千万円程度だったら、将来のために貯蓄して当選しなかったときと同じように就活をします。
アカリクA:現実的ですね!
知能システムさん:実際に当たったわけではないですから…。そして私は今、ちょっと廃人気味なんですよ。そのことと関係しているかも。
生物・食品さん:廃人?どういうことですか?
知能システムさん:今、研究室に行くように義務づけられているのが週2日。残りの日々で説明会に行ったり、アルバイトをしたりしています。しかし、気がつくと昼まで寝てしまう日があったりして、生活全般が緩んでしまっているのが現状です。
宝くじに当たったとしても、働かなかったらこのまま廃人になってしまいそうだから、ちゃんと仕事はしていたい。でも当選していたら、仕事をやめたいときにやめられるという安心感はある(笑)。
アカリクA:博士課程に進学しようという気持ちはありませんか?
知能システムさん:私は進学してみたいです。でも今、博士課程までいってしまうと就職できない気もしますし、大学1年の時に数学の単位を落として以来、このまま博士課程へ行くのは無理かなと思うようになったんです。でも研究をしたいという気持ちはあるので、研究職というのが一番の希望なんです。
生物・食品さん:あっ、それは違うかもしれませんよ。いろいろな参考書など見ていると有名な先生のプロフィールって、意外とストレートで大学院を修了しているわけではないんですよ。「え、この先生が博士課程中退なんだ!」とか、「この先生は着任年度と年齢から考えると、どう考えても留年しているよな」という風に。大学時代に単位を落としていても博士課程に進むには影響しないと思いますけどね。
でも理系だと、社会人になってから博士課程に進学する人も結構いますよね。
知能システムさん:そうできたらと思っています。また、仕事をしながら趣味として英語の論文を読んでみたいとも思っています。これは経済学部出身の祖父の影響で、祖父はいまでも論文を読んでいるんです。
総合化学さん:そうなんですね。私は多分、就職したらオフタイムに論文を読んだりはしないと思います。住宅建材や壁塗装の材料などに興味があるので、お店に入ったとき、「この壁材は何を使っているのかな?」、「どうやって作っているんだろう?」と考えたりはすると思いますけれど。
会計さん:私は漠然とですが、宝くじが当たったら海外の大学院に行ってみたいという思いはあります。企業で海外に赴任して、そこで大学院に行けたらいちばんいいなと思ってはいます。
ただし、前回(第3回)でお話ししたように、就職して1〜2年後に結婚を考えているので、彼女の意向を尊重したいですね。
生物・食品さん:彼女はなんて言っているんですか?日本で待っているとか、それとも海外についていくとか?
会計さん:まだ真剣にこのことを話したことはないですが、ちらっと「海外にも行ってみたい」と話したときの反応は微妙でした。もし行くことになったら彼女にはついてきて欲しいのですが、どうしてもイヤだといったら、私の中では彼女の方が優先順位は高いので、海外には行かないでしょう。
就職はお金が目的ではない
アカリクA:「宝くじが当たったらどうしますか?」という質問をしたのは「もしそうなったら研究を続けるのか?」ということと「なんのために働くのか?」ということをお聞きしたかったからです。皆さんは宝くじが当たっても就活をするということは、研究を続ける訳でもなく、お金のために就職をするわけでもないということですね。
生物・食品さん:はい。私の理想像は社会人の先輩方のように、いい仕事をして趣味も充実しているような自分なんです。だから宝くじが当たっても、ちゃんと働いて世間の荒波にもまれて磨かれるステップが必要だと思っているんです。それでこそ、理想の自分像に近づいていけると思っています。
私には「なりたいカッコいい自分像」があるんですね。残念ながら研究者の大先輩に会っても「こんな人になりたい」と思える人には出会えませんでした。しかし社会人の先輩に会うと「なんてすばらしいんだろう、自分もこうなりたい」と思える方がたくさんいたんです。
アカリクA:そういえば生物・食品さんは、第1回目の座談会の時に「研究はもう十分です」といったことをおっしゃっていましたね。それはなぜですか?
生物・食品さん:それはですね、私は研究で失敗したときにすごく心が折れるんです。時間をかけて、夜遅くまで残って研究をして、結果として失敗したとき、「もう、オレ、ほんとうにバカじゃないの!?」と思いました。研究は自分との戦いなので、失敗するとモチベーションを保てないんです。だから、私は研究職に向いていないのかなと思います(笑)。ビジネスの世界であれば、自分が関わったものが直接人に喜ばれる場面が多くなりますよね?それであれば心が折れることはないですね。
知能システムさん:あ、それ分かります。私も似ています。私は周囲からは「研究者向きだから研究職を目指した方がいい」と言われたことがあるし、自分でもそう思っていました。でも本当は私も研究職には向いていないんじゃないかなって。
でも会計さんがしている勉強は、やればやるほど知識が蓄えられるから違いますね。
会計さん:いや、勉強していれば自分の知識は増えますが、それは社会に貢献しているということではないですからね。
私には、「仕事はしたくない、研究ももういい、ニートがいい」なんて考えがある一方で、辛い思いをして一生懸命にがんばって初めて人生が楽しくなれるという思いがあるんです。働いているからこそ、休みも楽しくなるだろうと思うし。
宝くじで大金が得られても、研究ではなく社会で活躍したいという意見が多かった今回の座談会、読んでいるあなた自身はどう考えますか?
次回はついに最終回。座談会に出席してくださった4名それぞれがいま就活の中で感じている不安や疑問を話し合い、お互いのやり方をシェアし合います。テーマは「本音で語る就活」です。