大学で働いている先生は、全員“教授”というように思っている方もいるかもしれませんが、すべての大学教員が教授という役職に就いているというわけではありません。
まず、大学教員にはどのような役職があるか解説していくとともに、大学における教員のなかでも、若手教員にあたる“講師”という役職に着目して、講師になるために必要な資質、その後のキャリアパスや給料水準について紹介していきます。
大学での役職の違いは?
大学教員にも多くの役職があり、今回紹介する“講師”以外にも講師よりも上の役職として、教授や准教授と呼ばれる役職があります。
さらにこれら以外にも、助手や助教といった役職もあります。まずそれぞれの役職は大学においてどのような立場にあたるのか、もっとも下の役職にあたる助手から順にみていきます。
助手とは
助手とは、学校教育法上“教授や助教授(現在の准教授)の職務を助ける”立場であると定められています。
しかしながら、助手仕事は多岐にわたるのが実情であり
- 講義や演習の準備
- 実験や演習における実演
- 学科における事務
といったような教育研究を補助する立場の助手もいれば、独立した若手研究者として位置付けられている助手もいます。
さらに、大学ごとの制度として大学院博士後期課程の学生が就くポストとして助手という役職が設けられている事例もあります。
助教とは
上述のように、助手と呼ばれる役職は雇用形態により業務内容が大きくことなることが問題となっていました。そこで近年新設されたのが、助教とよばれる役職です。
助教は“自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者”と定義されています。
そのため、助教が行うことが想定されている業務としては大学における授業科目の担当
学生への研究指導などが挙げられており、助手との違いとしては授業科目を担当できるといった点になってくると考えられます。
講師とは
大学設置基準上、講師とは教授や助教授(いまの准教授)に準ずる職務に従事することが求められ、“教授や助教授(いまの准教授)となることができる者”もしくは“大学教育を担当するにふさわしい能力を有する者”が就ける職種とされています。このことから講師には大学における授業科目を担当でき、将来的には准教授や教授になることのできる人材が求められていると考えられます。
さらに講師のなかでも専任講師の場合“任期の定めのない職”であることが特徴です。一方、上述の助教の多くは”任期の定めがある職”であることが多く、この点が大きな違いと考えられます。
准教授とは
准教授は“学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する”ことが主な職務であるとされています。そしてさらに研鑽を積み、昇進して教授となることが一般的です。
教授とは
教授とは、“学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する”ことのみでなく、大学や学部全体における教学面の運営についても行うこととされていることから大学における授業科目の担当、学生への研究指導のみでなく
・大学や学部の運営
にも関わっていく役職であると考えられます。
なお、教授に至るまでの一般的なキャリアパスとしては、博士後期課程修了後ポスドク期間を経た後
- 講師→准教授→教授
というように昇進していくのが一般的です。
講師と非常勤講師の違いとは
ここまでは、大学教授に至るまでのキャリアパスに含まれる“講師”を例に解説してきましたが、講師以外にも似た呼称の役職として“非常勤講師”と呼ばれる役職があります。しかしながらこれらの役職は全く異なるものです。
講師はフルタイムの仕事
まず“講師”とは、場合によっては“専任講師”とも呼ばれ、フルタイムの教員となります。多くの講師の場合大学における授業科目の担当のみではなく
- 学生の研究指導
- 大学や学部の運営に関わる仕事
まで幅広い業務を行うことになるのが一般的です。
非常勤講師はパートタイムの仕事
一方“非常勤講師”とはパートタイムの教員であり、一般的に授業の担当数に応じ給料が支払われます。そのため“講師(専任講師)”とは異なり、大学における授業科目のみを担当します。
講師になるには
どのようにして大学における講師になるのでしょうか。フルタイムの職である“講師(専任講師)”を例にとって紹介します。
必要な資格
講師として大学で採用されるにためには、文部科学省による大学設置基準により定められている資格が必要となります。
一般的には、教授や准教授になるためのキャリアパスである講師は、大学設置基準では教授や准教授になることができる者が講師になれるとされています。
実際に、教授や准教授になるための資格として代表的なものとしては
- 博士の学位を有し、研究上の業績を有する者
- 研究上の業績が博士の学位に準じると認められるもの
- 専攻分野について、優れた知識及び経験を有すると認められる者
などが挙げられています。
専門性や実績が必要
講師になるためには専門性や実績が重要視されており、必要な資格でも明らかなように、大学院博士後期課程を修了し博士の学位を取得するか、これに準ずる研究業績が必要になってくるものと考えられます。
また、大学で教育・研究活動を行うにあたっては、学生への研究指導を行う必要があることから、次世代を育成できるだけの専門性がなければ大学講師としては務まらないでしょう。
応募方法
大学の講師は、一般に公募により採用が行われます。この公募の多くは
- JREC-IN
- 学会のホームページ
- 大学のホームページ
に掲載されることが多いです。
また、応募要項にもよりますが
- 業績を証明する書類や主要論文の複写
- これまでの教育歴を証明する書類
- 教育を行うにあたっての抱負をまとめた書類
を専用書式にまとめ、大学や公募担当の部署に書類を送付することで応募できるのが一般的です。
社会人からなれるのか
専攻分野について、優れた知識及び経験を有する場合、社会人が大学の講師になることも可能でしょう。また、公的研究機関や企業における研究所での成果を論文として学会誌などに公表、この論文をもとに論文博士の学位を取得し、大学の講師として着任した事例も多くみられます。
コネクションがあると有利
また大学の講師になるにあたっては、コネクション、すなわちコネは採用にあたり有利に働きます。講師を採用する際、公募を行いますが知り合いの研究者に“公募案内を直接送付する”というように、事前に適任者に声をかけていることはよくあることです。このように声をかけてもらったうえで公募に応じた場合、選考において有利であることは間違いないでしょう。
昇進はあるのか
また大学の講師は、特任講師や非常勤講師を除いて、いわゆるパーマネント職(任期の定めのない職)です。そのため着任後、一定の成果(論文数など)をあげるに従い、准教授や教授へと昇進していくのが一般的です。
講師の給料はいくらか
大学の講師の給料はどの程度なのでしょうか。給料は、年齢や雇用形態(常勤(専任)や非常勤など)により大きく変わってきます。
常勤講師の月収
大学における常勤講師の月収は、40万円程度と言われています(手当など含まず)。また所属する大学にもよりますが、この金額に加え通勤手当や所定の講義数を超え講義を担当した場合の手当などが加わった額が給料となります。この数字だけをみると、月収は多いように見えるかもしれませんが
- 常勤講師は40代がもっとも多いこと
- 常勤講師になるまでは、収入が安定しないこと(ポスドク問題)
を含め考慮すると、給料が高額な職とは言えないかもしれません。
参照:学校教員統計調査
非常勤講師月収
非常勤講師の月収は、担当講義数により大きく異なります。また、勤務する大学にもよりますが、非常勤講師の給料は1講義あたり月額数万円程度と言われています。
そのため、非常勤講師のみで生計を立てるためには、複数の大学で非常勤講師の掛け持ちが必要となるでしょう。そのため常勤の講師に比べ、さらに給料の水準は低いのが現実です。
講師に向くのはこんな人
大学における講師は、自分自身の研究を行うのみではなく
- 大学における講義を担当
- 常勤の場合、学部・大学院学生の研究指導
も行う必要があります。
さらに教授へと昇進した場合には
- 大学や学部の運営
にも関わることが求められる人材です。
すなわち、研究者でかつ教育者であることが求められる職となります。
このことから
- 研究を続けたい
- 次世代の人材育成にも携わりたい
という人におすすめの職種と言えるでしょう。