「AJ出張版」は、株式会社アカリクが発行する「大学院生・研究者のためのキャリアマガジン Acaric Journal」の過去の掲載記事や、WEB限定の新鮮な記事をお送りするカテゴリです。今回はvol.3の掲載記事をお届けします。
アカリク社員からの電話によって参加することになった逆求人イベント。これがきっかけとなり、2011年にIT系企業へと就職した深谷氏。その後、様々なサービス開発に携わる傍らで「esa」の開発を進め、今では数多くのユーザを抱える情報共有サービスとなっています。この10年の社会経験で、学生の頃には曖昧だった自分の適性が分かってきたと語る深谷氏に、アカリクとの出会いを振り返っていただきました。
ー お仕事の内容についてお聞かせいただけますでしょうか
合同会社esaという会社で「esa」の開発をしております。会社には3人の社員がいまして、僕も含めてエンジニア2人と、デザイナー1人という体制です。僕とデザイナーが共同創設者で、2014年に始まった会社です。僕は普段、「esa」の開発や運用、ユーザサポート、そのほか会社の雑務なども行っています。
ー 小規模でなさっているとは伺っていたのですが、3人なのですね。恐らく、ユーザ数が運営の人数の何千倍といる状況ですよね
最初は2人だけで、2017年頃に1人エンジニアが入って、それ以降は変わらず3人ですね。esaユーザは、エンジニアさんやデザイナーさんなどの技術寄りの方が多いので、ほかのサービスと比べるとユーザサポートがそこまで大変ではないという点があるかもしれません。
ー サービスを立ち上げられた経緯を教えていただけますか
元々「esa」の原型のようなものを、趣味で作っていました。それをどんどん便利にしていったら、その噂を聞きつけた周囲の人が「使ってみたい!」という話になりました。それで実際に使ってもらっていたら、だんだんユーザが増えていったのですね。それで、これはもう仕事としてやっていけるんじゃないかなと思い、2015年から正式サービスとしてリリースしました。当時はフルタイムで別の仕事をしていたので、正式リリースの後に会社を辞めて、「esa」をメインでやることになり、今に至ります。
ー サービス名の「esa」は、餌ですか?
昔、ブラウザのブックマークバーにTwitterのアイコンがあって、そのブックマークの名前を「エゴサーチ」の略で「エサ」にしていたのです。それを見たデザイナーが面白がって、サービス名を決めるときに「じゃあesaにしようぜ」という話になりました。たまたまドメインも空いてたので、そのままesaという名前になりました。
ー 大学院生の頃のお話も伺えますか
昔、アカリクさんの逆求人イベントに参加したことがあり、そのときの資料を発掘しました。インタビューに関してメモ書きがあるので、もし良かったらそちらも見ていただけますか。
ー すごい!メモが「esa」にまとめられていますね
久しぶりに見返すと恥ずかしいですね。学部は機械系で、加速器に興味を持っていて、加速器や原子炉関連の研究をしていました。研究内容よりも、付随するプログラミングであったり、研究に関係のないプログラミングへも興味が出ていたころで、就職先はメーカー系かIT系かで悩んでいました。
そんなタイミングで、アカリクの畠野さんから電話をいただき、IT系の逆求人イベントに誘われて参加しました。そこで面白そうな会社に色々出会いまして、結果的にサイバーエージェントに内定をいただいて入社することになりました。修士2年が始まる直前に、大学院を休学して上京し、サイバーエージェントで内定者アルバイトとして雇っていただけるということで、週5日でアルバイトをするのですが、上京した次の日に東日本大震災があり色々バタバタとしました。大学も被害を受けてしまい、研究装置が壊れたりして、引き続きサイバーエージェントでアルバイトをさせていただいていました。2011年の8月頃、本来であれば修士2年の夏くらいだと思いますが、正社員として雇っていただけることになり入社し、後で大学院を退学しました。
ー メーカー系も選択肢として考えていたのですね。所属は情報系ではなく、研究の手法としてプログラミングを扱っていた深谷さんが、イベントに興味を示してくださって参加して、サイバーエージェントさんと出会い、震災のこともあってなかなか研究もできない中、そのご縁で休学中にサイバーエージェントさんに就職されたのですね。
まとめていただいてありがとうございます。あのとき、イベントへのお誘いの電話をいただけて本当に助かりました。ありがとうございます。イベントで使ったスライドのまとめのところに書いたのですが、「身の回りを便利に面白くしたい」「新しいものとか面白いことに積極的に関わっていきたい」「ユーザーと共に成長していけるようなサービスに携わりたい」とあって、それが今ほぼこのまま実現できているのがすごく嬉しくて、幸せだなぁと思います。
ー このときからやりたいことが決まっていて、ずっと変わらなかったのですね
そうですね。これが変わってないから良い、というわけではないかもしれませんが、幸運なことだと思っています。
ー 2012年の8月にサイバーエージェントからピースオブケイクに転職をされたのですね
Rubyで開発がしたいと思い転職しました。そこで初期のCakes(cakes.mu)や Note(note.com)、当初は note.mu だったと思いますが、その辺りに携わってました。
ー 深谷さんが携わったサービスの普及ぶりがすごいですね
当時とは人も入れ替わっており、システムも別物になっていると思いますし、たまたまですね。2年程働いて、また転職するのですが、ピースオブケイク にいるときに「esa」の原型を作り始めました。 当時は、Qiita Teamが出始めたあたりで、そちらも使いつつ、同じようなものを自分でも作れるんじゃないかな、ということで作り始めました。
ー このときはまだお1人でしたか
そうですね。このときはまだプロトタイプでしたので、1人でマイペースにやっていて、開発を少し進めては、半年後に忘れてしまって、思い出してまた開発を進めたりするという感じでした。2014年にデザイナーやエンジニアが数人集まって開発合宿をする機会がありまして、そのときに今の「esa」にだいぶ近いものができて、 そこから一緒に開発しています。 またその当時、優秀な人がたくさんいるところで働いてみたいと、Kaizen Platform, Incに転職しました。その次の年には「esa」の正式サービスを開始していますね。2014年にオープンベータを開始したのですが、当時すでにある程度の企業さんなどに使っていただいていたので、これはいけそうだなと思い、2015年の元旦から有料化しました。
ー 新型コロナウイルス感染症後で、サービスニーズは変わりしましたか
ほとんど変わってないと思います。ただ、研究室からのアカデミックプランのリクエストが増えていて、さらに増えていくのではないかと思っています。やはり、コミュニケーションが希薄になっている状況で、必要なドキュメントやナレッジを研究室できちんとまとめて、またコミュニケーションを活発化させようとしているのかな、と思っています。
ー 大学向けのプランがあるのですね
アカデミックプランを申し込んでいただければ、簡単な審査はありますが、無料で1年間使えます。期間が切れたらまた申請していただいて、受理されればまた1年といった形で、基本的にはずっと無料で使えます。また、コミュニティプランというのもありまして、OSSやWeb関連のコミュニティ支援の一環として、ライブラリを作っているチームや、プログラミングを教えている団体などに「esa」を使ってもらおうというものです。こちらは技術コミュニティ支援として行っています。
プロフィール
深谷 篤生 氏
合同会社 esa 共同創設者。1987年5月生まれ。2011年東北大学大学院工学研究科を休学。2011年株式会社サイバーエージェントに入社。その後、企業に勤める傍らesa(esa.io)の開発を進め、2014年にベータ版をリリース。ユーザ数の増加に伴いデザイナーの赤塚氏と合同会社esaを設立し、2015年に有料化した正式版をリリース。以降、esaの開発・運用・ユーザサポートなどを担当する。