仮面座談会4回目は、恋愛において院生という立場を分かってもらえないジレンマや悩みがテーマです。
恋人が研究室や大学院と接点がない場合でもある場合でも、忙しさや立場についてなかなか分かってもらえず、交際にすれ違いが生じるという悩みがあるのではないでしょうか。その実態を4人の院生の方に話していただきました。
材料・物質さん(女性) 博士課程1年
人文科学修士さん(女性) 修士課程2年
経済さん(女性) 修士課程1年
人文社会科学博士さん(男性) 博士課程3年
(人文社会科学博士さんは社会人になったばかり)
アカリク司会(女性) 生命科学系博士号取得者
社会人には分かりづらい?大学院生という立場
アカリク:大学院生って、大学院生や出身者以外には説明しにくいですよね。何をしている人か、なかなか分かりづらいと思います。そのことが、恋愛の中で問題になったりすることもあるのではないでしょうか。特に相手が院卒ではない社会人の場合、話がかみ合わないこともあるのでは?
人文社会科学博士さん:私の相手は研究とも大学院とも関係ない女性なので、時々やりとりがかみ合わないことはありますね。
例えば、修論を書くときに「卒論がんばってね!」というメールが来たりして。「うーん、違うんだけど…」と思いつつ「ありがとう」というメールを返したんですが、提出後に今度は「修論がんばってね!」というメールが来ました。基本、分かってないんです(笑) 向こうは人文社会科学とも関係ない学部でしたし、院には進まずに就職したので、研究のことを話し合うことはないですね。
アカリク:私は修士だったときに相手は社会人一年生でした。派手めの営業パーソンだったんですが、価値観が合わないし、大学院生の忙しさも全然分かってくれなかったですね。「俺も仕事は忙しいけど金は稼いでる。でもお前がやってるのは忙しくても遊びだろ?」などと言われてよくケンカしていました!
材料・物質さん:でも、大学院生同士でも相手の忙しさが理解できないケースってあると思います。
私は3月までつきあっていた前の彼は研究室の先輩ですが3年つきあっていたので、結婚もお互い考えていたんです。
私も向こうも激務で、同じ学校にいるのに1,2ヶ月も会えない状態が続いていたとき、極めつけに私が研究室に1週間寝泊まりしなければならないことがあったんですが、向こうが研究が忙しくて1,2か月会えなかったことや私が泊まり込んで研究をすることに対して文句を言ってきたんですね。その瞬間、別れようと思いました。研究のことを理解してくれない相手とはつきあえないですね。
アカリク:材料・物質さんは研究を選んだんですね!研究者同士でもそういうすれ違いは起きるんだから、相手が社会人だとより理解しあえない部分もあるのかもしれません。人文社会科学博士さんのように、それを理解した上でおつきあいを深めていけると良いですね。
研究と恋愛、その両立は可能?
アカリク:院生の忙しさを理解してもらえない場合、研究を優先するか、恋愛を優先するかという難問に突き当たると思うのですが、みなさんはどのように両立させていらっしゃいますか?
人文科学修士さん:私は文系だから研究室じゃなくても研究できるし、電話をかけながらでも研究できるのであまり両立に悩むことはないですね。遠距離恋愛なので毎日電話をしているんですが、電話しながらパソコンを打って研究の続きをしています。向こうも話しながらテレビ見たりしているみたいなので、気を遣わないでもいいし。
人文社会科学博士さん:私も文系で、研究で本を読まないとならない時でも、彼女の家や私の家で一緒にいるときに本を読んだりすれば研究と恋愛は両立できるので、そのことで特に問題はなかったですね。遺跡の発掘で1、2ヶ月離れているときは、Skypeで話をして2人の時間を作っていました。
経済さん:でも、理系だとまた違うのでは?
材料・物質さん:そうですね、実験中はなかなか時間の確保も大変です。でも今やっている実験では、たとえば炉に入れてしまえば12時間放置ということもありますし、彼氏と会う日に合わせて研究のスケジュールを変えたりしてなんとか時間を確保しています。
アカリク:ストレスなくそれができているのはすばらしいですね。私は相手に合わせるのがストレスでした。大学院生時代は、「研究したいのに、もうレストランを予約してあって、絶対時間に行かなければならない」でも研究が立て込んでしまって間に合わない!となって、研究室の後輩に「お願い!これやっておいて!」と頼んだりして凌いでいました。彼からは「2人の食事の方を選ばないなんてあり得ないでしょ?」と言われ、後輩からは「またですか?」と言われ、間に挟まれて辛かったです。
経済さんは研究者同士のカップルですが、どうでしょうか。
経済さん:私の相手は研究にとてもストイックな人なので、触発されることがあります。家が近いので夜一緒にご飯を食べたあとに、「じゃあ、研究室に戻るから」と言って帰っていく姿を見て、自分も研究室に帰ってがんばろう!と思うようなことが多いです。
アカリク:お互いを高め合う感じでいいですね。
経済さん:でも、デートらしいデートを全然していません。ファミレスに行っても2人でお互い研究していることも多いんですよ。2人ともまず、研究しなきゃと思っているので、遊びに行こうということがなくなっています。
人文科学修士さん:大学院生と社会人のカップルで、何件かうまくいかなくなった話を聞いたことはあります。
もともとはお互いに院生だったのが、相手が社会人になったとたんに会える頻度が下がってきたとか、反対に毎週末に必ず泊りに行かなければならなくなったとか、これまでの距離感が崩れたことで精神的にも肉体的にも辛くなってしまったそうです。だったらお互いの環境に合った人とつきあった方がいいだろうということで別れてしまった。
アカリク:そういう悲しい例もよく聞く話ですが、今日の皆さんうまくいってらっしゃるみたいで、いいですね。もちろん、理解してもらうためのコミュニケーションをしっかり取っているんだと思います。
相手を理解し合うことこそ大切
人文社会科学博士さん:研究者や院生ではない相手大学院出身者以外とつきあうときには、お互いの立場や状況を理解し合う努力は必要ですね。立場が違えば価値観も異なってくるかもしれませんが、価値観を否定し合ったら続かないと思います。
人文科学修士さん:聞いた話では、こんなパターンもありました。学生同士のカップルだったのですが、結婚を意識した彼が博士課程をあきらめて就職してから関係がぎくしゃくしたという例です。
女性は研究や勉強に切磋琢磨できる関係が好きだったんですが、社会に出た彼は研究や勉強に興味も理解もなくしてしまった。結局、これでは長く続かないだろうと、別れてしまったという話です。
材料・物質さん:私は研究に理解がない相手は最初から選ばないです。いずれ結婚することになっても同じですが、研究や仕事など、自分が取り組んでいることに理解がない相手とはおつきあいできないかな、と思っています。
アカリク:材料・物質さんのビジョンは明確ですね。やはり院生なら研究をまず優先したいはずですよね。相手がそのことを分かってくれるかどうかがポイントになってきますね。
大学院生同士でもそうでなくても、環境のギャップを埋めるのは相手を理解しようとするかどうかですね。 さて、交際が深まれば当然出てくる話は結婚と出産。座談会最終回では研究と結婚の両立はできるのか? 社会に出た場合のキャリア形成についても話を伺います。