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色覚多様性から見る大学院生のキャリア選択

2017/10/26 掲載

先日、日本遺伝学会が「色覚異常」や「色盲」という用語を「色覚多様性」と改めるというニュースがありましたね。私は生物系の博士課程出身で、修士課程では少し遺伝学をかじったことがあるため、非常に興味深いニュースでした。そのため今回は、「色覚」に着目してみたいと思います。

先天色覚異常は珍しくない

先天色覚異常は珍しくない

初めに、色覚異常には遺伝子の変異よる先天性のものと病気や怪我による後天性のものがあります。今回の用語改訂では先天性のものだけを指すのか、両方共を指すのかについて明言はされていなかったのですが、遺伝学用語の改訂なので本コラムでは先天色覚異常のことを「色覚多様性」であるとして、話を進めたいと思います。

今回の提案に至った背景として、先天色覚異常は日本人男性の20人に1人(日本人女性では500人に1人)が相当する病だからということがあるようです。あまり珍しいものではなく、また日常生活においてそれほど不便さもないため、「異常」という用語は適さないと判断され「色覚多様性」への改定に至ったようです。

しかしながら、「多様性」という名称が実態を正確に表現しておらず分かりにくい、という否定的な意見も散見され、用語の定着には少し時間がかかってしまいそうです。

色覚多様性は進化における試行錯誤のひとつ

そもそも色覚とは色を認識する能力のことですが、私たちが色を認識できるのは、網膜に視細胞と呼ばれる光を感じる細胞があるからです。ヒトにおいては光の三原色である赤、青、緑の3色を認識する視細胞がありますが、色覚に関わる遺伝子が変異することで、視細胞の光を感じる能力が低下したり、視細胞自体が失われたりしてしまいます。

通常であれば持っている機能を欠損しているために、「色覚異常」や「色盲」といったネガティブな名称が用いられていたのですが、生物学的な面からすればまた違った意味があります。

本来、遺伝子に変異が生じて通常と異なる形質が現れるのは生物にとって自然なことです。そうして様々な形質を獲得し、より環境に適応した形質が多数派となることで生物は進化してきました。

私たちは得てして進化とは新しい形質を獲得することを指し、形質を失うことは退化であると考えがちですが、必ずしもそうではありません。余分なものを無くすことによりエネルギーを節約することができ、他の部分にエネルギーを費やすことで結果として環境に適応できるようになることもあります。

例えばヒトを含む霊長類は赤、青、緑の光を認識できる3色型色覚を持つのですが、それ以外のほとんどの哺乳類は2色型色覚です。元々哺乳類の祖先である原始哺乳類は霊長類よりもさらに多くの色を認識できる4色型色覚だったのですが、原始哺乳類が過ごした暗闇の世界では色を認識する能力が不要だったため色覚が失われた結果、すべての哺乳類が2色型色覚になりました。霊長類もかつては2色型色覚だったのですが、生活の場が昼の森林に移り、熟した果実や若葉をエサとするようになった結果、それらの色を見分けるために進化の過程で色覚を再獲得し、3色型色覚になったそうです。

つまり、遺伝子の変異により生じる「通常と異なる形質」は環境に適応するための試行錯誤であり、先天色覚異常もその試行錯誤の一つとして生まれる「多様性」であるという考えのもと、今回の提案に至ったのではないでしょうか。

人それぞれ見えている色は違う?

人それぞれ見えている色は違う?

また、別の観点ではどうでしょうか。光を感じる能力が同様だったとしても、本当に「同じ色」として認識しているのでしょうか。

例えば日本には「和色」と呼ばれる伝統的な色があるのですが、その数はなんと1000色におよぶそうです。その中には「桜色」や「桃色」、「小豆色」など今も日常的に使用されている色もあれば、「御召御納戸(おめしおなんど)」という一見すると色の名称には見えないようなものまで含まれています(御召御納戸は灰色がかった暗い青色です。ぜひ調べてみてください)。

「和色」は1000色もあるため、当然のことながら非常に似通っている別の色もあります。色が似ていたとしても両方の色を知っていれば見分けることができますが、知らない場合はどうでしょうか。恐らく自分の知っている中で最も近い色として認識するのではないでしょうか。その場合、同じ色を見ていたとしても、同じ色として認識しているとは言えないのではないでしょうか。

他の例として、虹といえばどういう色を想像するでしょうか。日本では7色を想像する人が多数派だと思いますが、アメリカでは6色が主流です。日本では藍色と青色を区別しますが、アメリカではこの2色を区別せずまとめて青色としているため、このような差が生じています。

キャリア選択の際は「色眼鏡」を外しましょう

このように、光を感じる能力が同様でも、知識・文化の違いによって認識できる色が異なることがあります。また、先入観を持つことを「色眼鏡で見る」と表現することからも、同じものを見ていてもその見え方はその人の知識や関心によって異なると言えます。

同じ日本人であっても、家族、親しい友人、研究室の同期でも、みんな少しずつ違う「色」が見えています。まずはその「多様性」を認めることが、異なる文化を理解する一歩になります。さらに、コミュニケーションを通してお互いの見えている「色」を照らし合わせることで、認識の違いを無くすことができます。

それは就職活動においても同様です。面接を通して自分の「色」を伝え、相手の「色」を理解することが入社後のミスマッチを避けるためには非常に重要です。

研究で忙しい大学院生ですが、時には立ち止まって自分の「色」の見え方を確認し、ご自身のキャリア選択の参考にしていただければと思います。

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