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ノーベル賞の立役者:酵母

2016/11/21 掲載

大隅教授がノーベル医学・生理学賞を受賞

こんにちは、アカリクの前窪です。先日はノーベル賞の発表がありましたね。

大隅教授がノーベル医学・生理学賞を受賞

今年は東京工業大学の大隅良典栄誉教授が医学・生理学賞を受賞し、日本人としては昨年の大村智教授に続きこの分野で4人目のノーベル賞受賞者となりました。日本人が受賞するとニュースで取り上げられる機会も多くなり、興味を持たれる人も増えるので、元々この分野で研究していた身としてはとても嬉しく思います。

さて、今回の受賞テーマとなった「オートファジー」については、様々な場所で非常に分かりやすい説明がされていますので、ここではオートファジー研究の立役者である「酵母」に着目したいと思います。

モデル生物としての酵母

「酵母」と聞くと皆さんは何を想像するでしょうか。お酒やパン、味噌といった発酵食品を想像する人は多いと思います。パンやお菓子を作る人には英語名の「イースト」の方が馴染みがあるかもしれませんね。酵母は普段あまり意識しませんが日常生活において欠かせない存在です。

そんな酵母ですが、実は研究者にとっても非常に重要な役割を担っています。それは「モデル生物」としての役割です。2016年現在、100万種以上の生物が発見されていますが、その中でモデル生物と呼ばれるのは酵母の他はマウス、ハエ、シロイヌナズナなどわずか10数種程度です。

モデル生物とは、その名の通り生物の体の仕組みを知るためのモデルとなる生き物のことで、研究を進める上で便利な特徴を備えています。その例として「飼育・繁殖が容易」「ライフサイクルが短い」「卵・体が透明で生きたまま内部を観察しやすい」などが挙げられます。さらに、こういった利点を兼ね備えているため古くから研究に利用されており、様々な知見が蓄積されているという点も挙げられます。

オートファジー研究のブレークスルー

よく勘違いされがちですが、マウスなどの高等生物を扱った研究の方が、酵母などの下等生物を扱った研究よりも優れているということはありません。モデル生物の中にも得手不得手があり、モデル生物の選択が研究の進捗に大きく影響することもしばしば起こり得ます。

オートファジー研究のブレークスルー

大隅教授の研究成果はその代表的な例と言えます。大隅教授は酵母を用いてオートファジーの分子機構を解明しましたが、実はオートファジーは哺乳類の細胞で初めて発見されました。しかし発見当時の1960年頃は電子顕微鏡による観察以外に研究手段がなく、以降長きに渡りオートファジー研究が停滞していました。

そんな状況に一石を投じたのが大隅教授です。哺乳類細胞でのオートファジーの発見からおよそ30年後の1992年、酵母でも同様の現象が起こることを見出しました。哺乳類細胞と異なり酵母は遺伝子に変異を起こしやすいことに加え、すでに分子生物学的な手法も確立されていたこと、さらにはゲノム解読が進められていたことなどから、酵母を用いることで急速にオートファジーの解析が進みました。

このあたりの詳細については以下のレビューに詳細に記載されておりますので、興味のある方はぜひご一読ください。
荒木保弘・大隅良典:オートファジーを長き眠りからめざめさせた酵母. 領域融合レビュー

そして、酵母で得られた知見を元に哺乳類でのオートファジーの解析が進められ、ガンや免疫、さらには老化や寿命にも関わっていることが明らかとなりました。

基礎研究あっての応用研究

酵母のような単純な生物を用いた研究は基礎研究に分類され、その多くは我々の生活の向上には結びつき難いのは事実です。しかし、基礎研究の成果があるからこそ応用研究が発展することもまた事実です。

今日では、オートファジーは我々の体において重要な働きをしていることが知られていますが、大隅教授がノーベル賞受賞インタビューでも述べられていたように、研究当初はオートファジーがそのような機能を持っているとは誰も想像しなかったと思います。

どんな基礎研究が応用研究の発展に寄与するのかは誰にもわかりませんし、今は見向きもされていない基礎研究の成果が、数十年後に脚光を浴びるということも間々あります。2008年にノーベル化学賞を受賞した下村博士の緑色蛍光タンパク質(GFP)も現代の研究には必要不可欠ですが、発見当初は「綺麗なタンパク質」程度の評価で、脚光を浴びるには30年もの月日を要しました。

技術の発展のためには、応用研究はとても大切です。しかし、応用研究の発展を支えるのは他でもない基礎研究です。応用研究と基礎研究、どちらか一方に偏ること無く、バランス良く進めていける世の中になってほしいものです。

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