自社にぴったりのエンジニアを採用するために、ペルソナ設計についてじっくりと考えてみませんか?
すでにペルソナ設計をしていても、採用が上手くいかないと感じている場合はペルソナの見直しが必要かもしれません。
また、そもそもペルソナ設計をせずに採用活動をしているなら、この機会にスタンダードな手順やコツについて学んでみましょう。
スキル面での優秀さだけでなく、自社のカルチャーにマッチするかを重視するのも、人材採用においては重要なことです。
ペルソナ設計を通して、求める人物像を明確にしてみてください。
目次
ペルソナ設計とは?
ペルソナ設計を進めるにあたり、まずは「ペルソナ」とは何かを知り、ペルソナ設計とは何を意味するのかを理解しましょう。
ペルソナとはサービスや商品のユーザー像のことで、ラテン語で「人格」を表す「Persona」に基づきます。
「典型的な顧客」のイメージとして、主にマーケティング用語として使われますが、採用においては「ほしい人材」の意味で用いられます。
ペルソナ設計とは、このような顧客のイメージを明確化することで、商品やサービスの特徴や訴求をより良いものにしていくために行う作業です。
採用の場では、「こんな人を採用したい」というイメージ像を明確にすることで、採用の手法やアピールポイントの見せ方などの改善に役立てられます。
採用時に設定したいペルソナ要素
ペルソナ設計を進める上で大切なのは、特定の人物を表すような詳細情報を具体的に考えることです。
たとえば、通常「ペルソナ」といえば以下のような項目を考えます。
- 年齢
- 性別
- 居住地
- 家族構成
- 趣味
- ライフスタイル
- 価値観
など
採用時のペルソナは、上記に加えて次のような点にも注目してみましょう。
一例として、ITエンジニアであれば次のとおりです。
- 学歴:大学を卒業、理系
- 業務の経験:プログラマー1〜2年
- 現在の勤め先:社員数30〜40名程度の中小企業
- 現在の業務:下請けの開発プロジェクト
- 年収:350万円〜
- 不満:社内でキャリアチェンジやスキルアップできる機会が少ない
- 希望:Web系エンジニアやSaaSの自社開発にチャレンジしたい、エンドユーザーを身近に感じられる業務がしたい
- 気質や行動のイメージ:明るく快活、自走力や好奇心がある、意見をはっきりと言うので風通しの良い環境を好む
特に、現状への不満や叶えたい希望について考えると、ペルソナに基づいた戦略を立てやすくなります。
ペルソナとターゲットの意味の違い
ペルソナについて理解を深める上で、「ターゲットと同じような意味なの?」と思うかもしれませんが、両者には少し違いがあります。
ターゲットは、大勢の中から特定の条件に合う人を絞り込む意味合いがあります。
たとえば、「この求人広告はエンジニアの経験がある20代の第二新卒に見てほしい」と考えるのはターゲティングです。
一方でペルソナは、大勢の中から絞られた何人かではなく、一人の人間をイメージしたものです。上記に近い例で言えば、「ペルソナのイメージ通りの人物なら、求人広告を見るとき何に注目するだろうか」と想像し、仮説をもとに戦略を立てていくときに使います。
ペルソナもターゲットも、採用においてはどちらも大切です。
それぞれの役割は違うため、採用プランを立てる上で正しく使い分けられるようにしましょう。
エンジニア採用でペルソナ設計が重要な理由
採用においてペルソナ設計は重要なものですが、エンジニア採用では特に重視すべきだと言えるでしょう。
なぜなら、エンジニアは近年で採用が難しい職種の1つとして挙げられることが増えており、採用コストの費用対効果やミスマッチの防止が重要だと言えるからです。
具体的にどのような理由や背景があるのかを見ていきましょう。
採用コストの費用対効果を高めるため
エンジニア採用は他職種よりも多くのコストがかかると言われています。
その背景として、近年での顕著なエンジニア不足が指摘されています。
一例として、ITエンジニアについて見てみましょう。
経済産業省の2019年の調査によると、2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると試算されています。
出典:平成 30 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (IT 人材等育成支援のための調査分析事業) - IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書
この調査で挙がっている「IT人材」とは情報システム部門などに所属する人材を指すため、一般的に言う「ITエンジニア」に該当します。
限られたエンジニアを激しい競争の中で取り合うことになれば、自ずと採用単価や採用のトータルコストは膨らんでいきます。
かと言って、むやみに採用コストを削っても競争力の低下が懸念されます。
また、人材不足を理由としてエンジニアの市場価値が高まっています。
優秀な人材ほど採用には多くの費用がかかり、特に内定者の初年度年収からフィーを算出する人材紹介では、年収が高いエンジニアほど紹介料が高くなります。
高いコストが目に見えていて、かつ削減が難しいのであれば、費用対効果を高めるのが得策です。
ペルソナ設計を正しく行うことで候補者の質と精度を上げましょう。
採用後のミスマッチを防ぐため
入念なペルソナ設計は、ミスマッチの防止にも役立ちます。
たとえば、エンジニアの技術力は、一緒に業務をしてみないとわからないこともあります。
エンジニアが携わる業務は幅広いため、十分なペルソナ設計をせずに履歴書や面談の表面的な印象だけで判断すると、ミスマッチに繋がる恐れがあるのです。
また、カルチャーマッチも重視すべき点です。
「スキルは十分だが企業風土に合わない」といった問題があると、優秀な人材でも力を発揮しにくくなったり、早期退職のリスクを高めたりする懸念があります。
自社はもちろん、採用したエンジニアが働く部署やチームのカルチャーも理解し、ペルソナに落とし込むことが大切です。
エンジニア採用のペルソナ設計の手順
では、実際にペルソナ設計の手順を見ていきましょう。
「今までペルソナ設計をあまりしてこなかったため、やり方がわからない」「ペルソナ設計をしているけれど、正しい手順なのか自信がない」と感じてはいませんか?
ペルソナ設計自体のやり方は、エンジニア以外の職種でもほとんど同じです。
考え方がわかれば他職種の採用にも活かせるので、ぜひチェックしてみてください。
1. 採用背景を整理する
そもそも、なぜエンジニアを採用したいと思ったのでしょうか?
エンジニアが必要だと感じた理由が必ずあるはずです。
そのような「採用背景」を言語化し、人事や社内で共有して共通認識を持ちましょう。
採用背景を整理すれば、求める人材のイメージが湧いてきて、ペルソナが少しずつ明確になることでしょう。
実際に選考をするタイミングで悩んだときにも、「なぜ採用をするのか」という原点に戻って考えることが大切です。
2. 募集するポジションの要件を定義する
募集するエンジニアのポジションは、どのようなものでしょうか?
新たにリーダーに昇格した社員の部下、マネージャー、将来のCTO候補など、エンジニアにはさまざまなポジションがあります。
それぞれどのような資質が必要とされるのか、どのような適性を持った人材が望ましいのかを考えて、妥当なペルソナを設計する必要があります。
3. カルチャーフィットする人材について考える
自社のカルチャーについて、言葉で言い表せますか?
「会社の雰囲気」「企業風土・環境」「カルチャー」など、抽象的なものに思えるかもしれませんが、定着して成果を上げてくれるエンジニアの採用には欠かせない要素です。
ペルソナ設計をする上では、「こんな人ならフィットしそう」という人物像をできるだけ多く考えましょう。
いま活躍している社員を何人か思い浮かべて、性格や価値観、仕事の取り組み方、趣味や特技などを言語化していくと、共通するポイントが見つかるかもしれません。
4. 採用の条件を考える
1〜3までのペルソナ設計を進めたら、採用の条件について考えましょう。
エンジニア採用の条件としてよくある例は、次のとおりです。
- エンジニア業務の経験年数
- 使用言語
など
条件面から先に決めたくなるかもしれませんが、ペルソナはあくまでも人物像を意味します。
ベストマッチな人材採用のためには、人物像を設定した上で条件を絞り込んでいくほうがベターです。
5. 項目ごとに優先順位や実現性を考える
ペルソナの項目が定まってきたら、優先順位や実現性を考えましょう。
実現性に関しては特に重要です。
ペルソナを設計していくと、つい理想像になってしまいがちですが、「はたして現実的なのか?」と立ち止まって考えることが必要です。
また、ペルソナを構築するいろいろな要素のうち、100%を兼ね備えた人材はなかなか見つかりません。
採用ペルソナと候補者の人物像を照らし合わせたときに、何の要素を重視するのかを決めておくと混乱がありません。
悩んだときは、競合と自社とをよく比較しながら考えることも一つの手です。
エンジニアを採用するためのペルソナ設計のコツ
エンジニア採用を成功させるためには、コツをしっかり押さえた上でペルソナ設計をすることが重要です。
特に、人事だけで完結させることなく、現場や役員なども巻き込んで採用に取り組むことが成功の鍵となります。
周囲のスタッフにも意見を求める
社内にいる人事以外のスタッフにも意見を求めると、意外な視点を見出せるかもしれません。
IT部門の現場スタッフやマネージャー
中でも、エンジニア社員には積極的に協力を仰ぎましょう。
エンジニア業務は専門性が高いため、人事だけでは判断や検討が難しい部分も少なくありません。
現場からの目線を反映させれば、ペルソナの精度や質はアップするでしょう。
責任者の意見も重要です。
上位職・管理職のエンジニアには、ペルソナ設計だけでなく選考そのものを任せることでペルソナとの一致度合いも判断できるでしょう。
CEOや経営部門
選考では、最終面接を経営層が行う企業が多いのではないでしょうか。
CEOや役員クラスのメンバーにも、ペルソナ設計から携わってもらうことで判断基準に一貫性を持たせましょう。
とりわけ、ベンチャー企業やスタートアップ企業では、経営者の思いや理念が選考にも大きく関わる場合がよくあります。会社としてどのようなビジョンがあり、どのようなプロダクトを世に送り出したいのかといった要素に照らし合わせれば、自社に共感してくれる人物のペルソナを上手に設計できるでしょう。
経営層は、人事や現場とは違った視座から意見をくれることもあります。
ぜひ積極的にコミットしてもらいましょう。
採用手法や募集文に反映させる
ペルソナを設計したら、採用プランや戦略に活かしましょう。
(例1)
【ペルソナ】情報感度が高く、SNSをよく活用している
【採用手法】ソーシャルリクルーティングの実施、採用広報の強化など
(例2)
【ペルソナ】ルーティンワークばかりでエンジニアとして成長が見込めない
【募集文】研修の提供や新しいプロジェクトへ挑戦できる機会を訴求する
ペルソナがしっかりと定まっていれば、ブレのない採用活動の展開にも繋がります。
採用が上手くいかないと感じたらペルソナを見直す
「採用が思い通りに進まない」「採用できたけどすぐに辞められてしまった……」と感じるときは、ペルソナの見直しを始めることも一つの方法です。
ペルソナにマッチしない採用活動になっていないか、そもそもペルソナ自体が適切かどうかなど、考えるポイントはいろいろあります。
候補者の人物像として基礎になる部分のため、ペルソナの見直しによって改善が期待できるかもしれません。
ペルソナと合致するエンジニア採用に繋がる採用方法
最後に、ペルソナと合致するエンジニア採用ができる手法をいくつかご紹介します。
採用方法はさまざまですが、ペルソナと一致しているかどうかを見極める手法や、ペルソナに近い人材を多く集める手法は、積極的に活用しましょう。
エンジニア特化型の採用媒体
採用媒体を使ってエンジニアを探すなら、開発職だけをターゲットとしているものや、理系人材を集めているものがおすすめです。
母集団を絞りこむ手間がなくなり、ペルソナとの重ね合わせにより多くの検討時間を割けます。
一例として、理系学生・大学院生・ポスドクをターゲットとしたダイレクトリクルーティングサービス「アカリク」を見てみましょう。
ペルソナに「大学院を修了した新卒」「理系」といった要素があるなら、求める人材と媒体が集客している人材が一致しています。
また、アカリクには次のような特徴もあります。
高マッチング率の実績があるのは嬉しいポイントです。
- スカウト開封率80%以上・返信率約40%とアクティブな人材が多い
- 採用イベントや人材紹介(新卒・中途)も行っている
- イベント参加者の選考希望率は平均60%
- 人材紹介の書類通過率は80%以上
求人広告を出すと同時にスカウトもでき、必要に応じてエージェントにも相談できる充実したサービスが魅力的です。
企業向けサイトURL:https://biz.acaric.jp/
リファラル採用(紹介採用)
リファラル採用は、社員や関係者から候補者を紹介してもらう手法です。
エンジニアは専門知識が必要となるので、特定のスキルを持つエンジニアを見つけにくいことが多々あります。現在働いているメンバーを通じた紹介だからこそ、必要なエンジニアスキルやカルチャーフィットの面でも確実性が期待できます。
社員にも採用の背景をしっかりと共有できているなら、推薦の信頼度も高くなるでしょう。
リファラル採用についてもっと知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
リファラル採用は社内告知が重要|社員の協力を促進して採用に繋げるコツを解説
インターンシップ採用
インターンシップ採用は、就職前の学生と一緒に仕事をする過程で、良い人材にオファーする方法です。
一緒に働くことで個性や人柄がわかり、仕事の進め方や価値観、エンジニアとしての素養も見極められます。
カジュアル面談や面接では、実際に働いたときのイメージまでは湧きにくいこともあるため、インターンシップが役に立ちます。
インターンシップについてもっと知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
インターンシップの成功事例3選と動向、成功させるための4ステップ
まとめ:エンジニア採用はペルソナ設計が重要!適切なステップを踏んで成功させよう
ペルソナを定めて求める人物像を明確化することが、エンジニア採用を成功させる近道です。
正しくペルソナ設計ができていれば、採用戦略や合否の判断にも1本の軸ができ、何を目指すべきかがわかりやすくなります。
エンジニアは採用コストが高い職種ですが、1回の採用を成功させることで費用対効果がアップし、退職リスクの少ない人材を採用できればミスマッチによる損失も防げます。
自社で活躍するエンジニアを採用するために、ペルソナ設計は基礎としてしっかりと行いましょう。