採用広報にはKPIが必要!具体的な指標や選び方のポイントを解説

近年、よりよい人材を確保するために、採用広報に取り組んでいる企業が増えてきています。

しかしいざ取り組んでみると、なかなか成果が見えづらいと思いませんか?

ひたすらSNSに投稿したり各メディアへの掲載を依頼したりと、漫然と採用広報をしていてもあまり効果は感じられないでしょう。

そこで、採用広報にKPIを設定することをおすすめします。

この記事では、

  • 採用広報にKPIが必要な理由
  • KPI指標の具体例
  • 適切なKPIを設定するポイント

などを紹介しています。

この記事を読めば、採用広報におけるKPIを具体的にイメージできるようになり、採用広報の目標や目標達成に必要なことを整理できるでしょう。

デジタルネイティブの新卒就活生にとって、インターネットからの情報収集は日常となっています。

さまざまな媒体を効率的に活用して、実のある採用広報を行いましょう。

すでに採用広報に取り組んでる企業も、これから取り組む予定の企業も、ぜひご一読ください。

近年注目されている採用広報

まずは採用広報とは何なのか、あらためて押さえておきましょう

採用広報とは

採用広報とは、企業が自社を就職先や転職先として選んでもらうために自ら行う広報活動です。
採用マーケティング、採用ブランディングと呼ばれることもあります。

採用広報の目的は主に3つ挙げられます。

  • 応募者数を増やす
  • 選考中の離脱を防ぐ
  • 入社前後のギャップを軽減する(離職率を下げる)

採用広報では、自社のコーポレートサイトやオウンドメディア、採用サービス、SNSなどさまざまな媒体を使って、自社について発信していきます。

具体的な発信内容の例としては下記の通りです。

  • 各部署の社員インタビュー
  • 具体的な仕事内容や働き方
  • 職場の雰囲気
  • 事業内容
  • 企業理念
  • 制度…など

現場の雰囲気や文化などを伝えることで求職者のイメージとのミスマッチを防いだり、企業理念に共感してもらうことで心強い仲間を採用したりできるのです。

さらに自社の採用チャネル効率をアップすることで、採用コストを下げられるといったメリットもあります。

採用広報を通して自社について深く知ってもらい親しみを持ってもらうことで、企業と求職者の本質的なマッチングが図れるでしょう。

採用広報が注目される背景

近年、採用広報を始める企業が増えています。
その背景には、売り手市場、求職者の多様化、デジタルネイティブの増加などがあると考えられています。

昨今では労働人口の減少などにより、採用の売り手市場化、すなわち求職者に有利な状況となっています。

そこで転職活動中の求職者だけでなく、「いいところがあれば転職したい」という潜在的な求職者にもアプローチする必要性も高くなってきました。

このような状況の中、企業は求職者からの応募を待つだけでは良い人材を獲得できません。
企業自ら発信し認知度アップを図り、自社で働くメリットや具体的なイメージを伝え、就職先として選んでもらう理由を作ることが重要なのです。

就職先を選ぶ際の基準が多様化していることにも注目しましょう。
さまざまな情報を簡単に手に入るようになった現代では、価値観も多様化しています。
従来の給与・報酬・福利厚生に重きを置くだけが基準ではなくなっているのです。

したがって企業は募集要項だけでなく、企業理念・貢献度・現場の声や雰囲気などさまざまな情報を発信していく必要があります。

さらに、2000年前後生まれが多い新卒就活生は、幼少時からインターネットやスマートフォンが身近にあり自然と駆使してきたデジタルネイティブです。

日頃からインターネット上の情報に触れているため、同じくインターネット上での採用広報は新卒就活生に効果的だと考えられています。

採用広報にはKPIを設定しよう

KPI(Key Performance Indicator)とは、業務のパフォーマンスを計測・監視するために置く指標のことです。
日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。

KPIを設定するためには、先にKGI(Key Goal Indicator)を設定しなければなりません。
KGIは「重要目標達成指標」と訳され、最終目標について、何を・どれくらい・いつまでに達成するか等を数値で指標化したものです。

KPIとKGIの関係を端的に表すと下記のようになります。

  • KGI…最終目標
  • KPI…最終目標を達成するために必要なマイルストーン

すなわち、KGIに基づいてKPIを設定します。

採用広報においてKPIを設定すれば、KPIの数値を確認することで、目標までの進捗や達成度合いを把握できます。

採用広報にKPI設定が必要な理由

採用広報にKPIが必要な理由は下記の通りです。

  • 定量的・客観的に管理できる
  • 社内での協力を得られやすくなる
  • 採用広報の課題を明らかにできる
  • 効率的な採用広報ができる
  • 採用広報のモチベーションアップを図れる

それぞれ詳しく解説します。

定量的・客観的に管理できる

KPI設定をしていれば、採用広報の最終目標と現状の差を数値で比較できます。
つまり「何となく」という感覚ではなく、客観的な数値で進捗状況を把握できるのです。

数値であれば、チーム内や他部署との共有の際、認識違いが起こる心配も少ないでしょう。

「あと少しで目標達成です」と言われても「あと少し」には個人差があります。
一方、「あと応募者20人で目標達成です」と数値を用いれば、誰もが等しく理解できますよね。

このようにKPIを設定すれば、進捗状況を定量的・客観的に管理できます。

社内での協力を得られやすくなる

KPIを用いて採用広報の進捗状況を客観的な数値で示せるので、採用広報とは直接関わりのない他部署や社内全般からの理解も得やすくなります。

好ましい成果や進捗状況を示せれば、社員インタビューや現場の撮影などの協力も得られるでしょう。

コンテンツ発信は採用広報の重要な活動のひとつなので、さまざまなコンテンツを作成するために社内からの協力は欠かせません。
社内共有の手段としてもKPI設定は有用なのです。

採用広報の課題を明らかにできる

KPI設定をすると進捗状況や成果を把握できるだけでなく、ボトルネックとなっている課題を明らかにすることも可能です。

KPIが伸び悩んだら、その項目が課題だとすぐに気づけます。

課題が数値として可視化されるので、目標まで何があとどのくらい足りないのかがわかりやすいでしょう。

効率的な採用広報ができる

実施している施策をKPI数値で評価できるので、効果の薄い施策は再検討したり新しい施策を打ち出したりして、スピーディに効率アップを図れます

課題共有も容易なので、すぐに採用広報のメンバーで話し合えます。

改善策や新しい施策を打ち出したら再度KPIで評価する…これを繰り返してPDCAを回すことが可能です。

採用広報のモチベーションアップを図れる

KPI設定をすることで、目指すべき目標が具体的になり、モチベーションアップを図れます。

最終目標はあくまで最終的に到達したい目標なので、現状からは少しイメージしづらいことが多いです。
人は現状から遠い目標にはあまり意欲的になれません。

そこで最終目標のマイルストーンであるKPIを設定すれば、採用広報メンバーのモチベーションアップを図れるのです。

「それならできそうだ」
「頑張れば達成できるぞ」
「こうすればいいかも」

このように思えるKPIを設定することで意欲を掻き立てます

そして、その進捗や成果を数値で表すことで、メンバーの努力や業務を評価し、さらなるモチベーションアップや維持ができるでしょう。

まずは採用広報のフェーズを押さえよう

採用広報におけるKPIを設定するためには、まずは採用広報のフェーズを理解する必要があります。

なぜなら、採用広報のフェーズによってKPI設定は変化するからです。

自社がどのフェーズにいるのかを確認し、フェーズごとにKPIを振り返って目標までの達成具合を把握するために、あらためて採用広報のフェーズについて押さえておきましょう。

採用広報のフェーズは、就活生が応募に至る前後の大きく2つに分けられます。

  • 認知~応募までのフェーズ
  • 応募~採用までのフェーズ

それぞれについて詳しく解説します。

認知~応募までのフェーズ

前半のフェーズは、自社の存在を知ってもらうことから始まり、興味を持って就職先として検討され、最終的に「応募する」という行動に至るまでを指します。

  • 認知
  • 興味
  • 比較検討
  • 行動(応募する)

顧客が商品やサービスを認知してから購入するまでの流れを表す「マーケティングファネル」の考え方と基本的に同じです。

応募後~採用までのフェーズ

後半のフェーズは、応募後から選考を経て採用に至るまでを指します。

  • 応募
  • 選考
  • 採用

このフェーズは、従来より採用において重視されていた領域なので、すでに何らかの施策を行っていたり、データを計測したりしている企業も多いでしょう。

フェーズごとのKPIの具体例は、次から詳しく解説します。

採用広報におけるKPIの具体例

採用広報においてどの指標をKPIに置くべきなのか、正解はありません
多くの企業で、独自で設定したKPIをもとに採用広報を行っているのが現状です。

このような状況で重要なことは「採用広報のフェーズによってKPIは変化する」ということです。
自社の採用広報の現在のフェーズを把握し、より適した指標をKPにI設定しましょう。

ここでは、各フェーズごとにKPIの例をご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。

認知

認知フェーズでは、「まずは自社を知ってもらうこと」が目的です。
オウンドメディアやSNS、各メディアなどを積極的に活用し、自社と自社コンテンツの存在を知ってもらいましょう。

認知フェーズにおけるKPI指標の具体例はこちら。

  • コンテンツの月間配信数
  • メディア掲載件数
  • オウンドメディアのPV数
  • オウンドメディアの滞在時間
  • SNS投稿のインプレッション数

採用広報のスタートラインなので、忍耐強く長期的に取り組む必要があります。
定期的にKPIの達成状況を確認し、改善と効果判定を繰り返しましょう。

興味

興味フェーズでは、「自社に興味を持ってもらうこと」が目的です。
もう少し具体的に表現すると「この会社は自分に合うかもしれない」と思ってもらうことです。

興味を持ってもらえているかどうかがわかる指標をKPIに設定しましょう。

興味フェーズにおけるKPI指標の具体例はこちら。

  • いいねやシェアなどのリアクション数
  • SNSのプロフィールアクセス数
  • SNSのフォロワー数
  • SNSからオウンドメディアへの流入数
  • 採用動画の視聴回数

継続的な接触はもちろん、就活生の目を引くコンテンツを配信する必要があります。

入社した場合のベネフィットを伝えたり、新入社員が経験を語るインタビュー動画を毎月配信したり、就活生が自分の良い未来を想像できるようなコンテンツが良いでしょう。

比較検討

比較検討フェーズでは、「他社との差別化」が目的です。

このフェーズでは、就活生は自社のことを知っており興味を持っています。
就活生は「では実際に入社したらどんな風に働くことになるのか?」と現実的な情報を集めています。

比較検討フェーズにおけるKPI指標の具体例はこちら。

  • 採用サイトのPV数
  • 採用サイトの滞在時間
  • 採用サイトのユニークユーザー数

就活生の「この会社に入れば自己実現ができるのか知りたい」というニーズに応えるために、本質的なコンテンツを充実させることが肝要です。

応募

認知から比較検討フェーズを経て「応募する」という行動に至れば、応募フェーズです。
応募フェーズでは、「応募する」という行動に至った人数をKPIに置くことが圧倒的に多いです。

  • 応募者数

大事なポイントは、応募後にもその応募者に向けたメッセージ性のあるコンテンツを配信することです。
応募から選考までに見ておいて欲しい動画や記事などをメール配信する、といったものも効果的でしょう。

選考

選考フェーズでは、「選考離脱を防ぐこと」が目的です。

選考フェーズにおけるKPI指標の具体例はこちら。

  • 選考への参加率
  • 選考辞退率
  • 選考通過率

応募者ができるだけ選考を離脱しないようコンテンツを配信しましょう。

リマインドメールはもちろん、一次選考までの間や、選考と選考の間にも、興味を維持するコンテンツを配信すると効果的です。

採用

採用フェーズでは、内定決定後も内定者を逃さないフォローが重要です。

採用フェーズにおけるKPI指標の具体例はこちら。

  • 内定辞退率
  • 入社率
  • 定着率(早期離職率)

内定者限定の研修やイベントなども効果的でしょう。

適切なKPIを設定するポイント

多くの具体的な指標を挙げましたが、もちろん挙げられていない指標をKPI設定することも可能です。

ここでは、さまざまある指標の中から、より適したKPI指標を選ぶポイントを紹介します。

KGIを設定する

KPIを設定する際の前提となるのがKGI(最終目標)です。

KPIはKGIのマイルストーン、すなわち具体的な行動指標といえます。
KPIは、KGIに基づいて設定される必要があります。

採用広報事業や組織全体の目標を理解した上で、目指すべきKPIを決定しましょう。

フローを洗い出す

採用広報には、オウンドメディアやSNS、各メディアなど複数の媒体を活用する広報活動です。

就活生がどのようなフローで応募に至るのかは、それぞれの媒体で異なります

フローを洗い出し、各工程でどのような数値が適しているのかを明らかにしましょう。

SMARTの法則を満たした指標をKPIに設定する

KPIとして最適な指標は、下記の特徴を満たしていることが望ましいです。

  • Specific 具体的で分かりやすい
  • Measurable 数値として計測できる
  • Achievable 達成可能である
  • Relevant 関連性のある
  • Time-bound 期限が明確である

頭文字をとってSMARTの法則といいます。
KPIを設定する際には意識してください。

KPIを効果的に運用するには

KPIを設定した後に、実際にKPIを効果的に運用するためのコツを紹介します。

リアルタイムで数値を追う

採用広報の状況は常に変化しています。

変化を逃さないために、四半期や一ケ月といったスパンではなく、最新の数値を常にチェックしてください。

リアルタイムで現状と目標との差を意識しましょう。

スピーディにPDCAサイクルを回す

常に変化する採用市場において、スピードはとても重要です。

KPIを用いて効果検証と改善をスピーディに繰り返し、採用広報活動を最適化していく必要があります。

スピーディにPDCAを回すためには、メンバー間や現場と速やかに情報共有し協力を仰ぎましょう。

まとめ:適切なKPI設定で効果的な採用広報を

採用広報にKPIが必要な理由は、下記の5つでした。

  • 定量的・客観的に管理できる
  • 社内での協力を得られやすくなる
  • 採用広報の課題を明らかにできる
  • 効率的な採用広報ができる
  • 採用広報のモチベーションアップを図れる

採用広報においてKPIを設定することで、より効果的な採用広報を行えます。

ただし、どの指標をKPIに設定するのか正解はありません。

採用広報のどのフェーズにいるのかで適したKPIが変わる」ということは押さえておきましょう。

  • 認知
  • 興味
  • 比較検討
  • 応募
  • 選考
  • 採用

採用広報のフェーズごとに紹介したKPI指標の具体例から、イメージをつかんでくださいね。

適切なKPI設定で効果的な採用広報を進めましょう。