採用活動の一環として、ヘッドハンティングを検討する企業が増えてきました。
しかし、実際にどのような方法が効率的なのか、わからない人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ヘッドハンティングの基本情報から、実際に行うまでのフロー、メリットデメリットをまとめて解説します。
ヘッドハンティングに関する疑問が解決できるはずです。ぜひご覧ください。
目次
ヘッドハンティングとは
ヘッドハンティングとは英語でhead huntingと表記します。もともとは外部のハイクラス人材をスカウトして、自社に入ってもらう手法のことを指していました。
しかし近年では、経営層や幹部層だけでなく、専門性を持っている人材、優秀なITエンジニアなど、能力があれば一般社員に対してもヘッドハンティングが行われるようになっています。
ヘッドハンティングと引き抜きとの違いは?
引き抜きとは、他社から対象となる人材を自社にスカウトする行為をいいます。これだけを聞くとヘッドハンティングと同じように思えますが、仲介会社を利用するかどうかが大きな違いです。
ヘッドハンティングでは、専門のサービス会社や転職エージェントが優秀な人材をリサーチし、スカウト活動を行います。その点、引き抜きではサービス会社を利用せず、社員や社員の家族、友人などが特定の人物に直接声をかけ、打診するのが特徴です。
ヘッドハンティングが注目されている理由
ヘッドハンティングが盛んに行われるようになった背景にはどのような理由があるのでしょうか。
その2つの要因について解説します。
最新技術を活用できる人材ニーズが高まっているから
近年ではIoTやAIなどの発展に伴い、企業は最新技術に対応する人材の確保が不可欠になりました。
各業界ではエンジニアをはじめ、最新分野の専門スキルを持った人材が重宝されています。
しかし、そのような高スキルを有している専門職の人材は少数であり、採用が難しい現実があります。
そこで企業は、優秀な人材へできるだけ多くアプローチする機会を求めて、自社から条件にコンタクトが取れるヘッドハンティングを活用しています。
人手不足が加速しているから
また、そもそもの人手不足が加速していることも背景にあります。
昨今では少子高齢化の影響から人材確保が難しく、人手不足に悩まされる企業が増えてきました。
そこで、転職サイトなどの媒体に登録されていない「転職潜在層」の人材にもアプローチができるとヘッドハンティングが注目されるようになりました。
企業は転職希望者からの応募を待つだけではなく、攻めの姿勢で人材を確保できることから、ヘッドハンティングの活用機会が増えています。
ヘッドハンティングの種類
ヘッドハンティングとひとくちに言っても、実は複数の種類があります。
ここでは、ヘッドハンティング会社の種類別に3つ解説します。
エグゼクティブサーチ
エグゼクティブサーチでは、管理職や役員といった企業の上級管理職についている人物に対してヘッドハンティングを実施します。
ヘッドハンティングが盛んに行われている欧米では、ハイクラス人材へのヘッドハンティングは頻繁に行われていました。そのため、エグゼクティブサーチは「欧米型」とも呼ばれています。
現在でも、外資系企業を中心に欧米型のヘッドハンティングは広く利用されています。
フルサーチ
フルサーチを得意とするヘッドハンティング会社では、ハイクラスの人材だけでなくミドル層を含めたあらゆる人材とのマッチングサービスを提供しています。
部長や課長、特別なスキルを保有する人物が対象です。今の日本企業では即戦力となるミドル層が不足していると言われています。その理由は、ミドルプレイヤーになる前に社員が早期離職してしまったり、ミドル層は子育て世代が多く転職市場に現れなかったりするためです。
フルサーチでは、エグゼクティブサーチと比較して対象人数が多くなり、リサーチに時間がかかるのがデメリットです。しかし、中長期間にわたって活躍が期待できるミドル層の獲得ができる優れたサービスと言えるでしょう。
業界特化
業界特化型では、特定の業界で活躍する人材のヘッドハンティングを専門とします。
金融、IT、医療、エネルギー、商社、建設、機械など各業界に精通した担当者が、これまでの人脈や経験を通じて必要なスキルを保有する人材にスカウトするサービスです。
自社に不足しているノウハウを他社から取り入れ、事業を強化し競争力をつけたいときに利用されます。
ヘッドハンティングを行う流れ
「ヘッドハンティングを活用して人材を確保したい」と思っていても、実際にどう動き出していいかわからない方もいるのではないでしょうか。
そこでここでは、3つのケースでヘッドハンティングを行う際のフローを解説します。
ヘッドハンティング会社へ依頼する際のフロー
専用の会社にヘッドハンティングを依頼する場合、自社側が行う内容は複雑ではありません。
サーチ会社へ人材要件を伝えれば、後はサーチ会社がその内容にマッチする人材を探して紹介してくれます。
ターゲットは転職市場だけに限らず、ビジネスパーソンとして働く全ての社会人が対象です。
これまでは経営層や管理職といったハイクラスな人材をターゲットにしたサービスが中心でしたが、最近はITエンジニア等の業界など、特定の職種に特化したヘッドハンティングサービスも登場しています。
契約金の支払いは、一般的に前課金、もしくは一部徴収する会社が多く見られます。
また、金額面としては、700万円以上の高額な費用となるケースが多いことが特徴です。
人材紹介会社へ依頼する際のフロー
人材紹介サービスも、基本的にはヘッドハンティング会社へ依頼する場合と同じような流れになります。
依頼主は人材紹介会社へスキルやキャリアなど、希望する人材像を伝えます。
人材紹介会社は、登録している求職者データベース内から要件にフィットする人材を検索。
当てはまる人材がいれば、人材紹介会社と候補人材で面談を行い、募集企業の紹介へとつなげる流れです。
異なる点としては、検索対象が人材紹介会社のデータベース・DB上になるという部分です。
成功報酬型を採用する会社が多いため、例えば年収600万円の人材を採用したい場合は、最低でも年収の35%(210万円)はかかると考えましょう。
自社でヘッドハンティングを行う場合のフロー
自社でヘッドハンティング、つまり引き抜きを行う場合、着手から完了までのフローは最もシンプルです。
求めている人材の条件を整理して、その要件に合う候補者を探し出してアプローチするという、自社完結型になります。
候補者を探し出す手法は企業によって異なり、SNSを活用したアプローチや、スカウトに強いLinkedIn(リンクトイン)のようなサービスを採用する企業も少なくありません。
前述した2つの手法と大きく異なるのは、採用コストが大幅に抑えられる可能性があるという点です。
ただし、こまめな連絡やフォローが必要となるので、工数が増えてリソースが嵩むという注意点があります。
また、人材発見までに時間がかかることは避けられないので、急を要する企業には不向きだと言えるでしょう。
ヘッドハンティングの対象となる人材とは?
ヘッドハンティングにはさまざまな種類や手法がありますが、誰に対してもアプローチを行うわけではありません。
自社で必要となす人物像を整理することは必須ですが、どのような人材を選ぶのが良いか、ここでご紹介します。
豊富な実績や高いスキルがある
当然ですが、ヘッドハンティングの対象者はこれまでの実績に信頼のおける人材が対象となります。
前述の通り、経営層や管理職層で活躍していた人材はもちろん、売上に貢献できる営業担当者や、優れたスキルを持ったITエンジニアなどは、多方面からのニーズが高いと言えます。
最近はリモートワークが増えていることもあり、「遠隔業務でも実績・成果を出せる」というスキルも重要視されています。
将来的なビジョンがある
そして、実績やスキル以外の部分では、「その人が将来のビジョンを持っているか」という点もポイントになっています。
「将来このような姿になっていたい」という目的を持っている人は、それまでの過程にこだわらず合理的な思考を持っていることから、もし職場が変わったとしても即戦力として活躍してくれる可能性が高いと言えます。
この要素を持っているかどうかを確認するためには、将来的なビジョンを語ってもらうことが有効です。
特にミドル層には、経営目線のビジョンを行動に落とし込むことが重要になります。
これまでどのような仕事をしてきたのかを測るためも、ビジョンについての質問してみると良いでしょう。
ヘッドハンティングのメリットとデメリット
ヘットハンティングを検討するうえでは、利点だけでなく懸念点もしっかり把握しておく必要があります。
そこでここでは、ヘッドハンティングのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット:業績向上が期待できる
そもそもヘッドハンティングを検討する理由は、自社のリソースや人手不足を解消することが最大の目的です。
ヘッドハンティングを活用することにより、リソース不足を補うだけでなく、自社のピンチをチャンスに好転できる人材に出会えることも珍しくありません。
待つだけの採用と違い、攻めの採用はもとから欲しい人物像へアプローチをするので、足りていない能力をピンポイントに解消できる可能性があります。
外部から必要な即戦力を探し出し、現状から脱するための力を得ることができます。
メリット:転職市場で出会えない人材にアプローチできる
転職市場では出会うことができないような、優秀な人材に対してのアプローチが可能になることもメリットです。
働き手の減少によって人材獲得競争はますます激化の一途を辿っており、従来の採用方法だけでは大きな採用改善は難しいでしょう。
ヘッドハンティングを活用すると新たな市場を開拓できるので、今まであまり出会うことのなかった人材に接触できるようになります。
メリット:水面下で採用活動を行うことができる
競合他社に知られず活動できることもメリットの一つです。
ヘッドハンティングは採用手法の中でも特に内密に行われるケースが多いため、どのような人材を欲していて、どのような活動をしているのか、他の企業に察知されてしまうリスクを低減することができる特徴を持っています。
ヘッドハンティングは従来の採用活動では出会える可能性が低い人材にもアプローチができて、なおかつ水面下での活動を進めることが可能です。
このような部分にメリットを感じるケースでは、積極的に検討してもいいかもしれません。
それでは続いて、デメリットになりえる部分についてもご紹介します。
デメリット:採用までの期間が長くなってしまう
短期間での採用が見込めないことはデメリットになる点と言えます。
ヘッドハンティングは、転職活動者と企業求人のマッチではなく、要件に合う人材を探し出してアプローチする採用手法です。
リサーチ対象となるのは非転職活動者も含みますので、非常に広い範囲から本当に必要な人材を選び出すことになります。
そのため、最初のアプローチから内定が決まるまでには、平均で4~6ヶ月程度の期間を要すると言われています。
急募のポジション採用や、緊急の人員募集の場合には適さない採用手法なので注意が必要です。
デメリット:担当者の手間がかかる
時間がかかることに加えて、作業の工数が多くなることも認識しておく必要があります。
人材のサーチや紹介に関してはヘッドハンティング会社の担当になるので手間はかかりませんが、実際の面談を行う際に移動時間が多くなるケースがあるのです。
ターゲットの中にはもともと転職を考えていなかった人もいるため、そのような場合は自社に足を運んでもらうのではなく、対象者の都合の良い場所まで担当者が出向くケースが多くなります。
このような物理的な移動に伴う時間は、通常の採用よりも多くかかってしまう傾向があります。
しかし昨今ではコロナ禍の影響もあり、オンライン面談が増えてきていることもあるので、必ずしも時間がかかるというわけではありません。
可能性の一つとして、担当者の手間が増えることもあると認識しておくのがよいでしょう。
デメリット:登録型の人材紹介サービスに比べて採用コストがかかる
実は、場合によっては採用コストが高くなってしまう可能性もあります。
ヘッドハンティングは採用する人材が決まるごとに発生する「成功報酬」の他に、「リテーナーフィー」と呼ばれる契約金が発生します。
このリテーナーフィーの多くは、ヘッドハンティング会社の活動費として使用されるため、ほぼ必ず発生する費用になります。
また、ヘッドハンティング会社の活動内容が多岐にわたることも、採用コストが割高になる要因です。
ヘッドハンティングは会社はクライアントが求める人材を探すために、全労働市場の中から条件に合う人材を見つける必要があります。
一般的に公開されている情報はもちろん、独自のネットワークも駆使して人材を探し出します。
そしてターゲットにコンタクトを取り、クライアントに引合せ、移籍を促すのです。
このように、ヘッドハンター、人材をサーチするリサーチャー、その他にもプロジェクトに携わる多くの人の活動費がリテーナーフィーにあてがわれるため、結果的にコストが嵩んでいく傾向にあります。
このように、場合によっては時間がかかる・手間がかかる・コストがかかるという可能性を考えたうえで、ヘッドハンティングを行うか検討することをおすすめします。
まとめ:ヘッドハンティングを理解して効率的に活用しよう
今回は、ヘッドハンティングの種類や、採用までのフロー、メリットとデメリットなどについて解説しました。
もしヘッドハンティングを検討されているのであれば、多くの場合は時間を要するため、急募のポジション採用などには向いていないという認識が大事です。
逆に、中長期的な採用活動をする計画があれば、ヘッドハンティングを行うメリットが考えられます。
ヘッドハンティングには、競合に知られずに水面下で採用活動を進められたり、従来の採用活動では出会えないような人材にアプローチをすることができるメリットがあります。
ヘッドハンティングを行う際は自社が必要としてる人物像を整理する必要がありますが、どのような人材であっても、将来のビジョンを明確に持っている人をターゲットにするのがおすすめです。
ビジョンが明確にある人は、目的までのプロセスを合理化できる思考を持っている可能性が高いため、環境が変わっても高いパフォーマンスが期待できます。
ヘッドハンティングのメリットデメリット、自社が求めている条件などをしっかり整理したうえで、効率のいい採用活動をご検討ください。