近年、採用市場での競争が激しくなるとともに「採用マーケティング」という考え方が浸透するようになりました。
採用マーケティングのさまざまな手法の中でも、セミナーは企業が自分たちの魅力を知ってもらう上で重要なプロセスです。
また、セミナーは採用候補者を集め、自社にマッチする人材を見つけ出す方法として役に立ちます。
本記事では採用マーケティングの考え方やセミナーの開催手順、セミナーを成功させるコツを解説します。
採用セミナーの事例もご紹介しますので、ぜひお役立てください。
目次
採用マーケティングとは何か
採用マーケティングとは、マーケティングの考え方やフレームワークを、採用活動に取り入れることです。
一般的なマーケティングと言うと、商品やサービスを売るために戦略を策定し、市場調査や販売施策を打ち出します。
その過程では、ターゲットの設定やさらに踏み込んだペルソナを設定し、商品やサービスが売れるようさまざまな施策を展開します。
ターゲット層へ効果的にアプローチし、販売目標の達成を目指すのが一般的なマーケティングです。
採用マーケティングは、こうしたマーケティングの考え方を採用活動に取り入れ、自社が求める人材を採用する一連の活動を指します。
採用で勝ち抜くための競争力をつけること、採用力をアップさせることが目的です。
採用マーケティングが重視されるようになった背景
採用マーケティングは、厳しい採用難の時代を勝ち抜くために欠かせない概念です。
「採用難」とは具体的に何を意味し、なぜ採用マーケティングが求められるようになったのでしょうか。
以下で3つの要因を解説します。
労働人口の減少
まず、現代の採用市場において「労働人口の減少」が指摘されています。
特に、少子高齢化で若手人材が減って新卒・若手の採用が難しくなっているのです。
人材獲得の競争は、今後もますます激しくなることが予想されます。
その中で自社が欲する人材を確実に採用し、企業の成長につなげていくために採用マーケティングが重要なのです。
仕事・働き方のニーズや価値観の多様化
時代や社会の変化にともない、「何のために働くか」「どのように働くか」といった、仕事に対するニーズと価値観が多様化しています。
採用市場にいる人たちが何を求めているかを知るには、入念なリサーチと多様なマーケティング活動が必要です。
候補者のニーズを汲み取って、企業自体のあり方も変化させていく必要があります。
インターネットやITの普及
インターネットが普及したことで、誰でも情報発信がしやすく、また情報へのアクセスがしやすい時代になりました。
「採用の透明化」という言葉がよく聞かれるようになったのも、ITの普及と深い関係があります。
就職・転職において、企業の内情がわからない状態は「ブラックボックス化」と言われ敬遠されます。
候補者が自ら企業の情報を探せる時代において、透明性を高めていけるような情報発信が大切なのです。
企業の魅力や実情をしっかりと伝えることも、採用マーケティングで重要な活動です。
採用マーケティングのさまざまな手法
採用マーケティングの戦略は、1つではありません。
本記事ではセミナーについて主に紹介しますが、他にもさまざまな方法があります。
複数の手法を組み合わせることで、候補者との接点の増加や相乗効果が期待できます。
自社の採用マーケティング戦略を考える上で、以下を参考にしてみてください。
セミナーの開催
採用マーケティングの手法として、セミナーが挙げられます。
セミナーには下記のような複数のジャンルがあります。
- 会社説明会
- 社員紹介
- インタビューや対談
- ノウハウ伝授型
- 情報提供型
密接な交流には対面が効果的ですが、オンライン開催(ウェビナー)も視野に入れてみましょう。
「興味はあるが、多忙なためオフラインの参加は難しい」「地方からでも参加したい」といったニーズに応えられ、採用候補者の母数増加につながります。
SNSマーケティング
近年では、「Linkedin」のようなビジネスSNSや「Twitter」「Facebook」など認知度の高いSNSを使ったソーシャルリクルーティングに注目が集まっています。
転職潜在層にもアプローチできる有効な手段であり、採用の場でも発信力の高い企業は注目されやすくなります。
採用広報としても機能し、企業の認知度がアップする点でもメリットのある方法です。
特に、若い世代では就職活動に使う場合も増えていると言われています。
企業のアカウントで情報発信することで、認知度アップやブランディング効果も期待できます。
採用動画の公開
動画コンテンツの流行にともない、注目されてきたのが採用動画です。
採用に特化したコンテンツとしては、会社説明として事業や仕事の内容を解説したものや、経営者のメッセージを伝えるものがあります。
職場の様子を撮影できれば、働く環境の雰囲気も伝えられるのがメリットです。
採用動画について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
オウンドメディア運用
オウンドメディアを使った採用も、情報発信には最適な手法です。
採用サイトや自社オリジナルのメディアを立ち上げ、記事コンテンツを充実させることでSEO流入が期待できます。
また、インタビュー記事や社員ブログを公開するなど、幅広い用途に適したものです。
構築や運用には手間がかかりますが、セミナーのようなイベントや新作動画の告知など、広報的な役割も持たせられます。
オウンドメディア採用について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
Web広告の運用
リスティング広告や動画広告など、Web広告も採用マーケティングに活用しましょう。
ほしい人材のペルソナや広告の目的をしっかりと設定した上で、最適な媒体や手法を選んで配信すると効果が期待できます。
セミナー開催のようなイベント告知の方法としても有効です。
セミナー申し込みまでの導線を作れば、参加者の集客にも役立つでしょう。
採用マーケティングの一環でセミナーを開催するメリット
採用セミナーを開催することには、さまざまなメリットがあります。
イベントを実施することで採用候補者との接点を生み出せるとともに、採用市場に対するアピールにもつながります。
主なメリットについて、3つ見てみましょう。
採用の母集団形成に役立つ
採用セミナーでは自社にフィットする人材に出会いやすく、応募者の増加が期待できます。
セミナーに参加しているということは、少なからず自社に関心があるとわかります。
企画のやり方によっては、ほしい人材にピンポイントで狙いを定めることも可能です。
仮に候補者が選考に進まなかったとしても、採用の母集団を形成できることは大きな強みです。
参加者と密な関係性を築きやすい
採用候補者と直接的な接点を作れるのは、セミナーを開くことの大きなメリットです。
「Web説明会なんて、学生は視聴しているのか?」と疑問をお持ちの人事担当者もいらっしゃるでしょう。ディスコの2019年卒就活生モニター調査によると、43.5%の学生がWeb説明会の視聴経験があるそうです。学生にとっても、徐々にスタンダードになりつつあることがわかります。
Web説明会が注目されている背景として、Web面接でWeb上で面接をしたり、企業の情報を集めるために、スマホで口コミサイトを見たりと、Web上で就職活動するのが当たり前になりつつあるからでしょう。
Web説明会はオンラインで企業情報を発信できる重要な場です。「オフラインの会社説明会なら参加しないが、隙間時間で視聴できるWeb説明会なら見る」という学生の応募が見込めます。ほかにも、参加したくても「距離」が問題で参加できなかった地方学生も、Web説明会なら参加できるので、応募が見込めます。
対面のセミナーなら少人数と密に関われるため、実際に会って初めてわかる人柄や雰囲気もしっかりと感じられます。
オンライン形式でもビデオON設定にすれば候補者の印象がわかりますし、質問やコメントのやり取りでコミュニケーションも発生します。
候補者の目線では「セミナーに参加する」という体験を通して、会社・社員の印象が記憶に残りやすいはずです。
企業理念を伝える上でも適している
採用セミナーは、自社の魅力をアピールする上で最適な手段です。
例えば、自社の業務が複雑なものだとしても、セミナーで候補者の反応を見ながら紹介できればコミュニケーションの質が上がります。
加えて、会社の雰囲気やカルチャーといった抽象的な事柄も表現しやすく、企業理念やビジョン・ミッション・バリューといった価値観も社員が生の声で伝えれば、印象の度合いが変わります。
理念に共感してくれる人を集めたいと考えるなら、採用セミナーはぜひ開催しましょう。
積極的に自社のPRをすれば、採用ブランディングにもつながります。
採用マーケティングとしてセミナーを実施する手順
では、実際にセミナーを実施する手順を見てみましょう。
特に、採用マーケティングの一環としてセミナーを開催するときのポイントを交えながら解説します。
セミナーの目的を整理する
採用セミナー開催を決めたら、まずは開催の目的を整理しましょう。
なぜなら、適切な内容や集客方法を企画する上で、目的は重要な手がかりになるからです。
具体的には、「どのような人を採用したいか」「なぜ採用したいか」を言語化してみてください。
以下でポイントをお伝えします。
採用ペルソナを設定する
採用したいのはどのような人物か、具体的に考えてペルソナを策定しましょう。
人材ペルソナが定まれば、セミナーで何を訴求したら良いかが明確になります。
例えば、「エンジニアを採用したい」と思うなら、経験やスキル、どのような業務を任せたいなど、具体的なイメージを形成することが大切です。
加えて、カルチャーフィットについても考えておくと、ミスマッチが起こりにくくなります。
策定した人材ペルソナが、「どのようなセミナーなら自社への関心が高まるか」「どんなメッセージを伝えれば響くのか」を考えましょう。
採用背景を言語化する
そもそも、なぜ採用をしたいのでしょうか?
新たなメンバーが欲しいと思った理由があるはずです。
「事業を拡大したい」「顧客が増えているが、社員が足りていない」「新規事業に挑戦したい」など、希望や課題をしっかりと洗い出して言語化しましょう。
なぜ採用したいかが曖昧なままではなく、言葉で表せていることが大切です。
採用背景を整理すれば求める人材のイメージが湧き、先述したペルソナもより明確になることでしょう。
セミナーを企画する
実際にセミナーの内容を企画するときには、主に以下のことを考えます。
- セミナーのプログラムを作る
- 登壇者の選定や依頼を進める
- 会場を用意する
セミナーを社外で開催するなら、貸し会議室やイベントスペースの予約が必要です。
もちろん、自社内に最適な場所があればそちらがおすすめです。
会場コストを抑えられるだけでなく、職場の雰囲気を伝えやすい利点があります。
参加者を会社に招くことで、通勤・勤務するイメージが湧くこともあるでしょう。
セミナーの告知・集客をする
セミナー開催当日に向けて、告知・集客も適切に進めましょう。
告知タイミングは、およそ1か月前が目安です。
採用セミナーの告知手段には、次のようなものがあります。
- 自社ホームページやオウンドメディア、SNS
- Web広告
- 採用媒体
- セミナー掲載サイト
- メールマガジン
採用媒体を使う方法では、ダイレクトリクルーティングサービスを使って候補者を探し、直接アプローチすると効果的です。
いくつかの告知方法を組み合わせて、採用マーケティングを強化してみてください。
セミナーを開催する
リハーサルや準備をしっかりと行った上で、セミナーを開催しましょう。
セミナーの形式にもいくつかのバリエーションがあります。
- 対面のセミナー
- 対面+リアルタイム配信ありのセミナー
- 完全にオンラインのWebセミナー(ウェビナー)
- セミナー開催後に録画を配信する(オンデマンド配信)
採用セミナーの場合、「参加したかったけど別の予定と重なっていた」という方がいるかもしれません。
採用候補者になりうる人材を取り逃がすのは非常にもったいないことです。
できれば、当日参加できない人にも見てもらえる形式がおすすめです。
参加者へのアフターフォローをする
セミナーをやったらやりっぱなしではく、終わったら参加者のフォローアップを行いましょう。
アフターフォローの方法としては以下の通りです。
- アンケートを回収する
- セミナー資料を配布する
- 次のイベントの案内、採用オファーなど
- セミナーを記事化・動画化して公開または限定公開
具体的には、まず採用セミナーの感想を聞いてみるのが無難です。
アンケートで「もっとこの会社について知りたいですか?」「選考に進みたいですか?」といった質問にYES/NOや5段階形式で回答してもらえれば、参加者に次のアプローチも仕掛けられますし、採用セミナーの成果を測れます。
また、参加者の中で採用したいと思う人材がいたら、より詳細な企業説明会に招待したり、1対1のカジュアル面談を設定したりと、会社側からオファーをするのも手です。
ただし、思ったような成果が得られなくても焦りは禁物です。
採用セミナーに参加してくれた候補者は他社のセミナーにも参加しているとも考えられますし、アプローチとして1対多数になる以上、必ずしも全員が選考につながるものではないのです。
まずは参加してくれたことに感謝し、長期的な目線で取り組みましょう。
セミナーの振り返りをする
自社内でしっかりと振り返りを行うことも大切です。
同じ内容のセミナーを繰り返し開催していても、時期や参加者の雰囲気によって異なる結果になるものです。
「今回はどうだったか」を1つ1つ積み重ねて、質の高い採用セミナーを目指しましょう。
採用セミナーを成功させるポイント
これから初めて採用セミナーを開催するなら、成功させるポイントを少しでも知っておきたいと思いませんか?
セミナーは1人でできるものではありません。
企画段階では人事のスタッフが担当者として進めるかもしれませんが、周囲の協力や外部のリソースも積極的に活用してみてください。
事前の準備をしっかりと行う
採用セミナーは、事前の準備が何よりも大切です。
セミナーの開催はコストや工数がかかり、決して簡単なものではありません。
しかし、手を抜くと低評価に繋がる恐れがあり、会社のイメージダウンや採用効果の減少も懸念されます。
他社がしている採用セミナーのリサーチも行いましょう。
社内の協力を仰ぐ
人事以外のスタッフにも意見を求めると、意外な視点を見出せるかもしれません。
特に、選考に関わることが多い現場マネージャーや経営層の協力は重要です。
企業理念を紹介するときは、できれば社長に登壇してもらいましょう。
また、経営者はトップとしての視座から意見をくれることもありますので、積極的にコミットしてもらうことがおすすめです。
外部の講座でコツ・やり方を学ぶ
「採用セミナーをどのように企画したらいいかわからない」と感じているなら、人事向けの外部セミナーや研修を活用するのも手です。
採用の最新トレンドや情報について学べるため、自身のスキルアップにも繋がります。
オンラインセミナーなど社内から受講できるスタイルなら便利ですし、ウェビナーを開催するときの参考にもなります。
興味のある講座を探してみてください。
採用セミナーを開催する2社の事例
最後に、採用セミナーを開催している2社の事例を見てみましょう。
採用セミナーのやり方や内容は多種多様ですので、自社の訴求したいポイントや狙いたいターゲットによってさまざまな表現の仕方があります。
これから採用セミナーを開こうと考えている人事の方は、他社の事例も踏まえながら検討してみてください。
事例①:ユニリーバ・ジャパン株式会社
出典元:https://www.youtube.com/user/UnileverCareersJapan/videos
ユニリーバ・ジャパン株式会社の公式YouTubeチャンネルでは、会社説明会的なものから一般向けのセミナーまで幅広く揃えています。
現役の社員が多く登場しているため、会社のイメージが湧きやすいことも特徴的です。
事例②:コープ共済連
出典元:https://www.youtube.com/watch?v=5k-Mv1x8Foo
コープ共済連では、新卒向けの会社紹介を動画セミナーにしています。
組織の概要や仕事内容とキャリアステップについて説明し、最後に採用選考について紹介して締めくくっています。
1つ1つのスライドがわかりやすく、メッセージの伝わりやすさが印象的です。
まとめ:採用マーケティングでセミナーを活用しよう!
セミナーの開催は、採用マーケティングにおいて非常に効果的です。
採用セミナーでは、特に以下の項目をわかりやすく、かつ丁寧なコミュニケーションの中で伝えられることがメリットです。
- 会社や事業の概要、具体的な仕事の内容
- 企業理念や組織として大切にしている想い
- 会社の雰囲気やカルチャー、働く人の様子
セミナー後の振り返りや候補者フォローまでしっかり行えれば、効率的に採用に結び付くことが期待できます。
採用セミナーで候補者と対話することを通じて、自社の強みや理念について改めて向き合えるかもしれません。
採用マーケティングを徹底して、人材獲得で勝てる会社を目指しましょう。