スタートアップのエンジニア採用課題と成功事例を解説

スタートアップ企業でエンジニアを採用したいけれど採用にかけるコストがない、とお悩みの方は少なくないでしょう。スタートアップは知名度も高くなく、安定志向のエンジニアに敬遠されがちです。エンジニアがなかなか集まらず、事業を進められないことも多いかもしれません。

スタートアップ企業がエンジニアの採用を成功させるには、さまざまな採用チャネルを活用しながら自社の魅力を高めていくことが大切です。

この記事では、スタートアップ企業がエンジニアの採用に苦戦する理由、望むスキルを持つエンジニアを採用するためのコツ、エンジニア採用の成功例について解説します。

エンジニアの採用を成功させ、事業を大きく発展させましょう。

スタートアップ企業のエンジニア採用課題

スタートアップ企業がエンジニアの採用に関して抱えている課題は少なくありません。そこでエンジニアが必要なのになかなか採用できない、という悩みを深く分析し、解決方法を見出すことが大切です。まず、どうしてスタートアップ企業は採用に苦戦しがちなのか知っておきましょう

ここからは、スタートアップ企業の採用課題やエンジニア採用の現状、スタートアップ企業ならではの事情について解説します。採用課題を知り、エンジニア確保に繋げましょう。

エンジニアが不足している

スタートアップ企業は人材が少ない中で業務を回しているため、業務に必要なエンジニアの人数が確保できていないケースがあります。

特に人材が少ないスタートアップ企業の場合、経営陣やエンジニアが人事や経理など別の仕事を兼任しているケースもあり、1人1人の業務量はかなり多いです。その状況下で開発や保守に専念できるエンジニアを確保するのは難しいため、エンジニア不足に陥りやすいと言えるでしょう。

知名度がない

スタートアップ企業は知名度が低いため、求人広告を出してもなかなか優秀なエンジニアに見てもらえません。また、実績も少ない状況なので今後の仕事のビジョンが見えにくく、実績あるエンジニアほどスタートアップ企業を避ける傾向にあります。

安定志向の転職者に敬遠される

コロナ禍で経済的に不安定な現在、安定志向の転職者は少なくありません。スタートアップ企業が良い待遇を提示しても、安定志向の求職者は大手企業に行ってしまう可能性があります。

また、スタートアップ企業は人材が不足しているため、時にはエンジニア以外の仕事にも協力しなければいけません。そのため、エンジニアとしてのスキルを安定した環境で専門的に磨きたいと考えている転職者は、スタートアップ企業を避けエンジニアの仕事に専念できるポジションに応募してしまうのです。

スタートアップがエンジニア採用を成功させるためには

大手企業と比べ不利なスタートアップ企業がエンジニア採用を成功させるには、積極的な採用活動が必要です。採用のポイントを押さえ、人事側からポジティブに働きかけましょう

ここからはエンジニア採用において、スタートアップ企業がやるべきことを6つ解説します。いまの会社に足りないと感じるものは積極的に取り入れ、エンジニア採用成功に繋げてください。

ダイレクトリクルーティングなどを用いた、積極的な採用活動

スタートアップ企業は、求職者からの応募を待つのではなくダイレクトリクリーティングを用いて積極的に採用活動をしましょう。スタートアップ企業にとって大きな採用課題は、知名度の低さです。知名度の低さを克服するため、良い人材には会社側から積極的に声をかけ、会社の名前を知ってもらいましょう。

優秀な人材に声をかける際に使えるのが、ダイレクトリクルーティングです。ダイレクトリクルーティングは、スカウトなど会社側が求職者に声をかける採用方法を指します。採用するときはスカウト機能を持つ求人媒体を活用し、気になる人材には積極的に声をかけていきましょう。

採用チャネルを広げる

さまざまな人材と出会うには、採用チャネルを広げ応募のきっかけを増やすことが大切です。採用チャネルとは、採用を行う方法のことで、以下のようなものがあります。

  • ダイレクトリクルーティング
  • 転職エージェント
  • 転職サイト
  • リファラル採用

転職サイト・転職エージェントは一般的な採用手法なので、すでに取り入れているケースがほとんどでしょう。しかし、求職者に直接スカウトをするダイレクトリクルーティング、社員に知人を紹介してもらうリファラル採用を導入していない企業は多いのではないでしょうか。

優秀な人材との出会いのチャンスを増やすため、複数の採用チャネルを導入してみてください。

広報、ブランディングを強化する

スタートアップ企業の知名度の低さを克服するため、広報・ブランディングの強化も必要でしょう。自社を知ってもらう機会を増やし、会社のカルチャーに合った人材採用に繋げてください

広報・ブランディングを通じて知名度をあげるには、次のような方法を試すと良いでしょう。

  • 公式ホームページで企業の魅力を伝える
  • 合同説明会などに積極的に参加する
  • SNSを使い会社の雰囲気や取り組みを発信する

SNSは無料で利用できるので、採用にコストをかけるのが難しいスタートアップ企業でもすぐに導入できます。自社にできる方法で、会社の魅力を発信してください。

リファラル採用の導入

複数ある採用チャネルの中でも、特におすすめなのがリファラル採用の導入でしょう。リファラル採用とは、社員に知人・友人を紹介してもらい選考をする採用方法です。

リファラル採用なら、転職サイトや転職エージェントに報酬を支払う必要もなく、説明会などにかかるコストも不要になります。そのため、採用に使えるお金が少ないスタートアップ企業でも、コスパ良く優秀な人材の採用ができるのです。

ただし、リファラル採用を導入する際は社員に採用制度を理解してもらい、友人・知人を紹介しやすい環境を整える必要があります。まずは社内でリファラル採用チームを組み、数人の採用を目標に動いてみましょう。

フリーランス人材や外国人エンジニアの活用

正社員の採用が難しい場合、フリーランスの人材や外国人エンジニアの活用を考えましょう。現在、エンジニアの働き方は多様になっているため、正社員以外の働き方を希望する人も少なくありません。優秀な人材には働き方に関する希望を聞き、希望に沿ったポジションを用意すると良いでしょう。

また、国内での採用が難しいと感じているなら、外国人エンジニアの採用も検討してください。国内だけでなく、外国にもエンジニアスキルを持った優秀な人材が大勢います。外国人エンジニアの採用サービスなどを活用し、出会いの場を広げましょう。

多様な価値観の尊重、働き方改革の実施

会社の魅力を高めるため、働き方改革を積極的に実施し、多様な価値観を尊重できる環境を整えましょう。さまざまな価値観・働き方が広がっている現在、1つの価値観やルールにこだわる会社に魅力を感じる人は少なくなっています。

とくに、新しい情報のキャッチアップが得意なエンジニアは、新しい働き方、新しい価値観を積極的に受け入れたいと考えていることが多いです。新しい考え方を持つエンジニアに魅力を感じてもらえるよう、まず社内の課題を洗い出し、エンジニアが働きやすい環境を整えてください

スタートアップ企業のエンジニア採用:成功事例8選

スタートアップ企業の多くはエンジニア採用に苦戦していますが、うまく採用方法を工夫し優秀なエンジニアの確保に繋げている会社も存在します。現在、エンジニア採用がうまくいっていないなら、採用に成功している企業を参考にして、自社のシステムや採用方法を見直してみましょう

ここからは、スタートアップ企業でありながらエンジニア採用に成功した8つの会社について解説します。成功のポイントを押さえ、自社の採用に活かしてください。

株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)

出典:株式会社インテリジェンス

株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)はdodaなど人材関連会社としてのイメージが強く、エンジニアの確保に苦戦していた会社です。

株式会社インテリジェンスは自社をテクノロジーで勝てる会社にするため、次のような取り組みを行いました。

  • エンジニアが自由に働ける環境を作る
  • インフラや言語まで最新のものを導入する
  • 採用プロセスを簡略化し面接を1度にする

このなかで特に力を入れたのが、新しいインフラ・言語の導入です。国内ではまだ導入事例の少ない言語であるHackも取り入れ、最新の技術に興味がある優秀なエンジニアを集めることに成功しました。

参考:「採用のために」技術を選ぶ!? 優秀なエンジニアを惹きつけるチーム作りとは

BASE株式会社

出典:BASE株式会社

ネットショップ作成サービスBASEを運営するBASE株式会社は、スクラム採用の実施でエンジニアを確保してきました。スクラム採用とは、人事が中心になるのではなく現場の社員が中心となり採用を行う方法です。

BASE株式会社は、スクラム採用の実施において社員にポジティブな気持ちを持ってもらえるよう、「現場の人間が採用をしたほうが、良い人材に出会える」ことを強調しました。

その結果、現場で働くエンジニアにもチームづくりの意識が芽生え、連帯感の高いチームが作られています。

参考:秘訣は「現場に気付いてもらう」こと。BASEのスクラム採用は地道にじっくりと

freee株式会社

出典:freee株式会社

freee株式会社は、リファラル採用で人材獲得に成功した会社です。freee株式会社は当時知名度が低く、求人を出しても人がなかなか集まらない状況でした。

そうした状況を打開したのが、リファラル採用の導入です。リファラル採用は、社員が知人や友人を紹介して採用する方法になります。freee株式会社はリファラル採用導入において、次の3つの点を意識しました。

  • 友人を呼ぶことのハードルを下げる
  • 採用の重要性を社員に伝える
  • 協力者に感謝の気持ちを示す

こうした取り組みの結果、freee株式会社は一時、約半数の社員をリファラル採用で確保することに成功しています。

参考:リファラル採用成功のため、freeeが実施する3つの取組

株式会社ヒトメディア

出典:株式会社ヒトメディア

教育分野のインキュベーション事業を軸としている株式会社ヒトメディアは、2か月間応募者ゼロだった経験を持つ企業です。応募者を増やすため、株式会社ヒトメディアが選んだのはビズリーチが運営する「キャリアトレック」という採用媒体でした。

キャリアトレックは「まずは話だけ聞きたい」といったカジュアルな転職希望者が多い媒体です。そのため、声かけも「興味があったら話を聞きにきてください」などの軽いものに変更しました。

採用媒体の特徴を意識し、スピード感のある採用活動をした結果、株式会社ヒトメディアは1年で6名のエンジニア採用に成功しています。

参考:「媒体特性」がカギ!2ヶ月応募ゼロの企業が、1年で6名のエンジニアを採用した方法

キャディ株式会社

出典:キャディ株式会社

製造業界のDX化を手がけるキャディ株式会社は、約9か月で160名もの短期採用を成功させました。キャディ株式会社が採用のために行ってきた取り組みは、次のとおりです。

  • 公式Webサイトの見直し
  • 必要としているポジションについての詳しい説明
  • 一緒に働くメンバーの紹介
  • プレスリリースでの採用情報掲載

このなかで目新しいのは、プレスリリースにおける採用情報の掲載です。キャディ株式会社は資金調達に成功したタイミングで、プレスリリースに採用情報を掲載。会社の知名度が広がるタイミングで求人を出すことで、人材確保に繋がりました。

参考:ミッション・ビジョン・カルチャーにフィットした人材の採用が未来を変える。従業員数250名のキャディが四半期採用目標160名を達成するための採用戦略。

株式会社スタディスト

出典:株式会社スタディスト

マニュアル作成・共有ツールをクラウドで提供する株式会社スタディストは、離職率を下げることにより人材確保に成功した企業になります。株式会社スタディストが定着率アップのため行った取り組みは、次のとおりです。

  • 会社が提供できる価値を再確認する
  • マッチングインタビューの追加
  • 希望職種の体験制度の導入
  • マネージャー任用プロセスの透明化

このなかで特徴的なのは、マッチングインタビューの導入です。マッチングインタビューでは、面接後に5〜10分程度、希望年収や福利厚生など、面接では質問しにくい部分の説明を行い、会社に入ったあとのミスマッチを防ぎます。

こうした取り組みの結果、現在株式会社スタディストの離職率は5%程度の低い水準を維持しています。

参考:個人のWillと会社のMustを合わせる!入社後の納得度を高める採用プロセスの作り方

株式会社モンスター・ラボ

出典:株式会社モンスター・ラボ

WEBやアプリなどの開発を行う株式会社モンスター・ラボは、1年半で50名以上の正社員採用に成功した会社です。株式会社モンスター・ラボが活用しているのが、求人情報webサイト「Wantedly」でした。

株式会社モンスター・ラボがWantedlyを活用する際に意識しているポイントは、次のとおりです。

  • なるべくたくさんの募集を出す
  • 具体的な職種を指定して応募を出す
  • 社員の顔が見える写真を使う
  • 会社の状況をブログで発信する

採用媒体を活用し応募を集めるうえで大切なのが、キーワードです。マネジメント、ベンチャー、グローバルといった関心の高いキーワードを入れることで、応募が増え人材獲得のチャンスが増加しました。

参考:1年半で60名以上の「会社を一緒につくる仲間」に出会えた!Wantedly運用ノウハウ

株式会社アンドパッド

出典:株式会社アンドパッド

建設業界のDX化を進める株式会社アンドパッドは、事業拡大とともに建設業界について関心・知識のあるエンジニアの不足に悩んでいました。そこで、株式会社アンドパッドは、会社の拡大フェーズに合わせてエンジニアの採用方針を変えています

会社が50人規模となったときに採用で実行したのは次の手法です。

  • 複雑なシステム要件定義の経験がある人の採用
  • 知識やスキルが足りない求職者については自社で育成
  • エンジニアは役割を細かく分担して採用

また、会社が300人規模を超えたときの採用では、次のことを実行しました。

  • マネジメントができる人材を採用
  • 社長室や経営戦略部の作成
  • マネジメントポリシーの制定

実態に沿った採用、社内の改善を行うことで、株式会社アンドパッドは多様な人材確保に成功し、事業拡大を続けています。

参考:建設DX企業が語る「これまで」と「これから」の組織づくり|河合聡一郎氏と考える、スタートアップに必要な採用・組織づくり #1 アンドパッド CEO稲田武夫氏

まとめ:スタートアップのエンジニア採用は、企業から積極的に、複数のチャネルを活用して進める

エンジニアの需要は年々増大しており、エンジニア採用には大手企業でも苦戦します。そのなかでスタートアップ企業がエンジニア採用を成功させるには自社の魅力を高め、数々のチャネルを駆使して自社の存在を知ってもらうことが大切です。

エンジニアの方から声がかかるのを待つのではなく、気になる人材には会社側から積極的に声をかけ、会社の魅力をアピールしましょう。