採用活動を行う上で、担当者が決めるべき重要な項目に「採用ペルソナ」が存在します。採用ペルソナは採用活動を円滑に進め、ミスマッチを避け、定着率を高めるために行なう「人物像の定義」です。
自社の求める人材と求職者のニーズを正しく理解し、照らし合わせるために、採用の要件であるペルソナの設計は欠かせません。
ペルソナを設計することにより、自社の求める人物像について具体的にイメージできるようになります。採用活動に重要なペルソナとは何でしょうか。本記事では採用ペルソナについて作り方やメリットを具体例とともに紹介します。
採用ペルソナとは
「ペルソナ」とは、主にマーケティングで使われている概念であり、サービスや商品を利用する典型的な顧客像のことを指します。
他方、採用活動における「ペルソナ」とは自社が採用したい人物像のことを指します。つまり、商品を買ってくれる理想の顧客を、欲しい理想の人物とかけているのです。そこで、採用ペルソナを深く理解するために
・採用ペルソナとは何か
・採用ペルソナの重要性
・採用ペルソナとターゲットの違い
という3つの点について紹介します。
採用ペルソナは「自社が採用したい人物像」のこと
採用活動におけるペルソナとは、「自社が採用したい人物像」を明確にしたものです。
自社が採用したい人物像の明確化で設定すべき項目は、性別や年齢、ライフスタイル、趣味、価値観、スキルなどといった細かな情報であり、実在する人を思い起こさせるくらいに細かいほど価値があります。
この設計した人物像がより自社が採用したい人材をわかりやすくイメージさせ、明確なターゲットをつくります。自社が採用したい人物像をわかりやすくイメージすることができれば、採用に関わる全ての人と”人物像”について共通イメージを持ちやすくなります。
それにより経営者側と採用担当者側の採用する人材についてのイメージのズレといった自社内での認識のズレも生じにくくなります。
採用ペルソナの重要性
採用活動をする上で、ペルソナが重要視される理由は、
・採用活動の効率化
・ミスマッチの軽減
といった点で効果があるからです。曖昧なターゲティングのまま採用活動を行った結果、せっかく採用した人材が内定辞退や早期離職することになれば、採用活動にかけた時間や費用が無駄になってしまいます。
また、採用のミスマッチが起こることにより、社内でも採用や教育に関わった社員のモチベーションが下がってしまい、生産性の低下につながります。
こうした採用のミスマッチを防ぐ方法として、採用ターゲットの解像度をあげるペルソナを設計することが重要となります。
ペルソナの設計は自社の求める人材を明確にし、志望度を高め、採用後の活躍を確実なものへ近づけます。より的確な採用活動をすることができる必要なステップであると言えるでしょう。
採用ペルソナとターゲットの違い
ペルソナと似た言葉で「ターゲット」があります。どちらもマーケティングではよく使われる言葉です。「ペルソナ」と「ターゲット」の違いは設計する人物像の範囲の詳細さです。
採用における「ペルソナ」は一人の人物を想定して設計されます。趣味やライフスタイル、価値観などといった詳細な部分まで想定するためパーソナリティを持っています。
一方、「ターゲット」は性別や年代、居住地などの多くの人に共通する項目を層として絞り込んでいくのでペルソナ程人物像が細かく設計されていません。
ペルソナが個・点だとするとターゲットは層・面というイメージです。そのためターゲットを決めても人によってイメージする人物像に違いがでる可能性があります。ペルソナを設計することにより自社が採用したい人物像を細かくイメージすることができます。
採用ペルソナを設定するメリット
採用活動を行う際、採用ペルソナを設計することで得られるメリットはいくつかあります。その中でも特に恩恵のあるメリットとして以下の3つが挙げられます。
・自社の欲しい人材を効率的に獲得できる
・採用したい人材が明確化できる
・採用後のミスマッチを防止できる
これらのメリットが具体的にどのようなものか、それぞれについて説明していきます。
自社が欲しい人材を効率的に獲得できる
ペルソナを設計することは、採用活動を行う上でのターゲットの明確化を行い、ターゲットに即した情報の発信につながるため、効率的な採用募集を行うことにつながります。
ペルソナでパーソナリティなど細部まで設計する効果の一つに、候補者の求める情報が想定できるという点があります。より適切な候補者に対して訴求を続けることで、自社が求める人材の興味をひくアプローチが可能となり、「人材を探す、訴求する」の流れが円滑になります。もし、ペルソナを設計しなければ、自社の求める人材にどのような情報を届けるべきかわからず、不特定多数の自社の求める人材とマッチしない人へ発信を続ける可能性も高まるため、ペルソナ設計は非常に重要なものであると言えるでしょう。
採用したい人材が明確化できる
採用のペルソナを設計することで、自社が採用したい人材がより明確化されることも大きなメリットの一つです。同じ時期、同じ部署の採用活動であっても時代と共に求めるスキル等も変化します。
また、採用を担当する人によって求める人物像が微妙に異なることもあります。採用部署と採用担当の間で描いている人物像が異なっいては採用のミスマッチに繋がる可能性もあり、不明瞭なターゲットを探すことに繋がり兼ねません。
採用のペルソナを設計することにより今回自社が採用したい人はどんな人かという人物像を明確化することができるので、社内での意思も統一されます。
採用後のミスマッチを防止できる
採用活動を終え、採用者が入社したにも関わらず早期離職をするという採用後のミスマッチは採用担当として時間や労力、費用をかけた分、避けたいものです。
採用後のミスマッチに繋がりやすい要因としては報酬、待遇以外にも仕事に対する意欲や社風が合わないことなども挙げられますが、その人物が何を求める人なのかというペルソナを分析しなかった場合にも起こりやすいものです。
採用のペルソナは求職者の趣味や価値観といった内容まで詳細に設計します。ペルソナを設計することにより求職者が自社の社風や経営戦略、報酬体系に合う人材かどうかを見極めやすくなり、かつ求職者と合意を得やすくなります。
採用ペルソナを設定するうえで必要な3項目
採用活動を円滑にするペルソナの設計において、必要な項目はいくつか存在します。その中でも、抑えるべき基本項目として
・基本情報(年齢、学歴など)
・経験やスキル
・価値観や人柄
という3つの項目があげられます。
これからペルソナを設計する場合、この項目をどうやって取り入れていくべきか、それそれについて説明していきます。
基本情報(年齢、学歴など)
ペルソナの設計で抑えるべき基本情報として、年齢、学歴、年収などがあります。この項目は定量的に設定しやすく、「この偏差値で、この年齢なら、きっとこの年収」といった想定がしやすい項目といえるでしょう。
求職者の経歴や資格などを考慮するだけではなく、社風に合うかどうか、業務の遂行に支障はないか、自社の待遇に見合うかどうかなどしっかり検討しなければいけません。
その際に、一般的な年収や年齢、学歴というデータで表すことができ、一般的な価値基準も決まっていて、イメージのし易い項目はより細かく検討していく必要があります。
経験やスキル
ペルソナを設計する上で、年齢や社会人経験年数を決めたのちに、業務経験やスキルの設定は非常に重要です。
「この年代で、このキャリアであればこういった業務で、実績を上げていて欲しい」など業務経験と業務を遂行する上で必要なスキルを具体化することで選考基準のハードルがわかり、採用活動が効率化されます。自社の社員を参考に、設定するようにしていきましょう。
価値観や人柄
採用したいと思えるスキルや経験の条件が揃っているからといって、その求職者が必ずしも自社の求める人材であるとは限りません。
なぜなら新しく採用された人の評価は過去に積み重ねてきたキャリアと必ずしも一致しないからです。求職者の価値観や人柄が自社とマッチしていなければ、会社の意向に沿って業務をすることは難しくなります。
どのような価値観を持っているか、どのような人柄なのか、具体的な考え方の指標を作成し、欲しい人材のペルソナを設計しましょう。
ペルソナシートにまとめるのがおすすめ
自社の求める人材を採用するために必要な採用ペルソナの設計。そのペルソナを設計する上で必要な項目について検討するためには、ペルソナシートを作成することがオススメです。
ペルソナシートとは、ペルソナを作る上での設計図のようなもので、シート内にどんな人物を採用したいのか、その人物の基本情報、経験やスキル、価値観や人柄などの項目を具体的にまとめたものです。
ペルソナシートを作成することにより、漏れなくペルソナを設計できるとともに、社内でどんな人物を採用したいのかという共通認識を持つことができ、意思を統一することができます。
採用ペルソナの作り方
採用ペルソナを設計することになった場合、ペルソナシートに情報を埋めていくことになりますが、具体的な流れは大きく分けて以下のようになります。
1.採用目的を設計する
2.必要とする人材の要件をヒアリングする
3.自社に必要な人物像をまとめる
4.採用ペルソナを社内で検証する
5.実際の選考に活かす
6.選考が終わったら見直す
各ステップでどのような事柄に気をつけるべきか、それではそれぞれの項目について具体的に説明していきます。
採用目的を設定する
ペルソナ設計の最初のステップは採用目的を明確にすることです。ペルソナは必要な人物像を定義していきますので、どうして人材が必要なのかという採用目的をしっかり考える必要があります。
例えば新規プロジェクトの立ち上げのために人材が必要なのであれば、そのプロジェクトを遂行するために必要な能力や適性などからペルソナを組み立てる必要があります。
また欠員補充で人材を採用する場合、即戦力として人材を採用したいのであれば前任と同等のスキルや経験、コミュニケーション能力を持つ人材という面からペルソナを設計します。
新しい人材に一から仕事を教えてスキルアップさせる場合であれば教育する人の意見も踏まえてペルソナを設計する必要があります。
必要とする人材の要件をヒアリングする
採用目的が決まったら、求める人材の要件をヒアリングしていきましょう。ペルソナは具体的な条件を元に設計することで精度が高まります。
必要な人材の要件を社内の複数の人からヒアリングすることで、より現実的で実務にそったイメージを持つことができます。
仮に採用担当者だけでペルソナを設計した場合、経営層の描く人物像や採用部署の描く人物像との間にズレが生じる可能性があり、採用のミスマッチが発生する可能性があります。
リスクを回避するために、経営層や採用予定の部署の担当者など複数の人にヒアリングを行い、求める人材の人物像について可能な限りたくさん挙げていきましょう。
また、採用した人材が社内で定着してくれるよう、活躍している社員にヒアリングを行い、彼らの価値観や採用するまでの行動パターンを書き出してみることも一つの方法です。
自社に必要な人物像をまとめる
自社に必要な人材の要件がまとまったら、ペルソナの具体的な人物像を詳細に設計します。書き出した条件から性格、仕事に対する価値観、趣味や今までの経験などについてストーリーを組み立てるように人物像の条件を書き出していきます。
例えば採用したい人材が経理の人材であれば、
「経理事務の仕事をして3年以上の経験があり、簿記2級以上の有資格者。他部署との接点も多いので他人とコミュニケーションをとることが得意な人物。繁忙期には残業も多くあるため、残業が苦にならない独身の男性」
そこから趣味や価値観などペルソナを具体的に設計していきます。その際、採用部署でこんな人物が活躍しそうだという人物像を考えていきます。
採用ペルソナを社内で検証する
自社の求める人物像が明確になりペルソナを設計することが出来たら、そのペルソナが正しい人物像か社内で検証を行う必要があります。
設計したペルソナを経営層や関係部署の社員たち、あるいは複数部門の社員に確認してもらい、フィードバックを受けましょう。フィードバックの内容で致命的な認識のズレが生じている場合は、項目にチェックをいれて修正します。
ただし、全ての要望を取り入れようとすると、実際には存在しないような非現実的なペルソナになる可能性があります。現実的な人物像かどうか、社内で検証した人たちの意見を取り入れながら、優先順位をつけてペルソナを設計していくようにしましょう。
実際の選考に活かす
設計したペルソナの検証が終わり、採用ペルソナが確定したら、次は設計したペルソナを実際の選考に活かします。
例えばペルソナに近い人材が応募してくれるように、設計したペルソナに当てはまる人物が魅力を感じるような内容のメッセージを採用広告に記載してみることなどが挙げられます。
また、ペルソナを設計したことにより面接基準が明確となるので、面接官の主観による採用を防ぎ、求める人物像=ペルソナとズレがないかという観点で選考を進めることも可能です。
求職者に刺さる訴求と面接官による求職者の評価のズレを防ぐことが、実際の選考にペルソナを活用する代表的な方法であるといえます。
選考が終わったら見直す
求めるペルソナに応じて採用したとしても、入社後の評価が及第点に留まったり、実際に必要のない人物設定をしてしまっていたケースも存在します。
そこで、採用選考が終わった後、ペルソナが実際の採用した人物と比較してどうであったか、選考時に活かせていたか見直しを行いましょう。
また、募集状況に応じてペルソナの設計基準を見直すことも必要です。その際は、ペルソナ設計のどの分に課題があったかというプロセスの評価と、実際のペルソナが採用した人物とどう異なっているかという結果の評価を行うと良いでしょう。
採用ペルソナは実績と社会情勢の変化や社風の変化などその時々でに柔軟な見直しと運用をすることが重要です。
採用ペルソナを活用するために必要なポイント
採用ペルソナを設計したとしても、実際の採用活動において活用されなければ意味がないといえるでしょう。しかし、どのように活用すべきか悩ましい事柄であることも事実です。より、採用ペルソナを活用するポイントは
・社内で採用ペルソナを共有しておく
・定期的に見直す
・求人票にきちんと反映させる
・設計を細かくしすぎない
という4つが代表的です。それぞれに具体的に説明します。
社内で採用ペルソナを共有しておく
ペルソナを活用するためには、社内で共有され理解されている状態を作るということが重要なポイントの1つといえます。
採用ペルソナは自社が求める人物像ですので、新に人材を採用する部署の意見も必要となるだけでなく、社員全員が違和感のないペルソナである状態が望ましいものです。
採用担当者の頭の中だけでペルソナをイメージしても、本当に欲しい人材を選ぶことはできません。採用に関係する部署や経営層が納得感があり、認識として定着している状態が活用される第一歩であるといえるでしょう。
定期的に見直す
ペルソナを設計したものの応募者が集まらなかったり、思うような人材が見つからない場合もあります。その場合は設計したペルソナの理想像が高すぎる可能性もあり、十分に活用されていない状態であるといえます。
ペルソナを活用するためには、採用活動の進捗を評価し、設計したペルソナの要件で人材を集めることができているのか、ペルソナにあった人材は入社後成果を出したかなど、多角的に評価し、内容を柔軟に見直す必要があります。
求人票にきちんと反映させる
設計したペルソナは、求職者が求める事柄や魅力を感じる要素の定義にも繋がるため、求人票に反映して活用しましょう。具体的に反映すべき項目は
・どのようなスキル経験を持った人に来て欲しいのか
・入社したら何を会社として提供できるのか
・どのようにサポートしていけるのか
などがあります。ペルソナに近い人材が応募してくれるように、求人票の内容に沿って組み立てていく必要があります。
設定を細かくしすぎない
採用ペルソナは項目をしっかり埋めることも重要ですが、希望や要望を細く反映しすぎないことも活用する上で抑えておくポイントの一つです。
自社の求める人材についてペルソナの設計を細かくしすぎた場合、設計したペルソナに該当する人が見つからない場合もあります。
また、あまりにも細かく設計したためにどんな人を採用すれば良いのかわからなくなってしまうこともあります。
どのような人物をイメージするのかということが重要なのであり、ペルソナ設計が目的となってしまってはいけません。最低限どのような条件が必要なのかというポイントを検討した上でペルソナを設計しましょう。
採用ペルソナの具体例
採用ペルソナを設計することによっていろいろなメリットがあることがわかりました。それでは実際にどのようにペルソナを設計するのかについて、今まで述べてきた必要な項目や作り方を参考にしながら具体例を挙げたいと思います。
名前:〇〇 〇〇
年齢:22歳
性別:男性
住所:東京都23区内
学歴:私立大学の情報工学部卒業、偏差値61
経歴:サークルでは部長を務め外交的。卒業研究では赤外線を使用した非接触測定の予測モデルを構築し、実証実験をもとに有効性を証明するなど、仮説と検証を行うことが得意。
家族構成:4人家族の長男、地方から出て一人暮らし
性格:明るくて社交的。誰とでも気軽にコミュニケーションがとれる。常にグループの中心にいるタイプだが、周りをよく見る細かな気配りに優れている。
趣味:キャンプ。アウトドア派なので休みの日は友人と外に出かけることが多い。また、友人は性別問わず多くいる
応募企業に求めるもの:雰囲気が良くてチャレンジができる職場環境。情報工学を通して、自らが立てた仮説の成否を確かめることに楽しみを感じたため、新しい物作りや研究開発に取り組みたい。
エピソード:高校2年生まで勉強に力を入れてこなかったが、一念発起し、偏差値を47→65まで1年間でアップ。1日の勉強計画を綿密に立て、着実に力をつけたことがある。この経験から、事前の準備→実行の大切さを感じ、習慣化している。
具体的なペルソナを設計してみると求職者のキャリアや求めるものが明確になります。そして効果的にアピールすることができます。これはあくまでも一例です。自社のニーズに合わせて設定項目を検討してみて下さい。
まとめ
採用活動において重要なペルソナの設計。本記事では採用ペルソナとは何かまた採用ペルソナとターゲットの違いについて説明しました。そして採用ペルソナを設計するメリットとして
・自社が欲しい人材を効率的に獲得できる
・採用したい人材が明確化できる
・採用後のミスマッチを防止できる
という3つを挙げてそれぞれについて見ていきました。
採用ペルソナを設計する上で必要な項目について確認できたらペルソナシートにまとめることがおすすすめです。
ペルソナシートを利用すると社内での意識を統一する際に役立ちます。更に採用ペルソナの作り方について順を追って説明し、ペルソナの設計をする際に押さえておきたい必要なポイントも説明しました。
最後にこれまでの説明を踏まえて採用ペルソナの具体例を挙げました。本記事を自社の採用ペルソナを設計する際の参考としてお役立て下さい。