- 採用ブランディングとは何だろうか?
- どんな効果があるのだろうか?
- なぜ、ここまで注目されているのか?
- 自社で実施するにはどうすればよいか?
上記のように考えている担当者は多いでしょう。採用ブランディングは、近年では優秀な人材を確保できる強力な手段として知られています。
しかし難易度が高い手法でもあり、目的や定義を理解していなければ失敗する可能性が高いもの。
そこで今回は採用ブランディングの目的や定義、メリット・デメリットや自社で実施するポイントなどを解説します。本記事を読めばブランディングの基礎知識が身につくはずです。
目次
採用ブランディングとは?目的や重要なポイントを解説
まずは採用ブランディングの概要を理解しましょう。ポイントとなるのは以下のとおりです。
- 採用ブランディング=必要な人材の獲得
- 注目されている理由
- 施策で重要なポイントは2つ
- 利用する発信手段
- 採用広報との違い
まずはこれらについて理解しておきましょう。
採用ブランディング=魅力的な就職先としてのアピール
採用ブランディングとはわかりやすく言えば自社を魅力的な就職先として適切にアピールすること。
企業としての理念やビジョンを伝えたり、既存社員の働き方を発信したりしてブランドを形成します。
これにより「就職したい」「選考へ参加する価値がある」と思わせるのが主な目的です。
たとえば他の方法では伝えられない企業としての魅力を、自社のWEBサイトやSNSアカウントにて自由度高く存分にアピールします。
注目されている理由は3つ
採用ブランディングが注目される理由は、大きく分けて3つ挙げられます。
- 人材の減少
- 学生の口コミ重視傾向に対応するため
- マッチ率の高い人材を採用できる
最大の理由は人材の減少です。少子高齢化やフリーランス的な働き方が広がり、人材確保がむずかしい時代となりました。
そういった中でも「この会社に入る価値がある」とアピールするため、採用ブランディングは重要視されています。
また口コミを重視する学生に対応する意味合いあります。そして、マッチ率の高い人材を確保するためにも、採用ブランディングは活用されています。
施策で重要なポイントは2つ
採用ブランディングで重要なポイントとして、以下2点が挙げられます。
- 欲しい人材を明らかにする
- 企業に入りたいと思わせること
まず採用ブランディングでは欲しい人材を明らかにするのが重要です。どんなターゲットにアピールを伝えるのか明確にしましょう。
そして、何よりも企業に入りたいと思わせることが重要です。ただ情報を発信するだけでは、読み物で終わってしまいます。
最終的には「この企業にブランドを感じる」と思わせることを目的としましょう。
ブランディングで利用する発信手段
ブランディングでは以下のような発信手段が使われます。
- 採用サイト
- SNS
- プレスリリースサイト
要するにWEBを通してブランディングするのが基本です。しかしそれだけではなく以下のような手法も活用されています。
- インターンシップ
- ミートアップ
- 大学内説明会
つまり従来どおりの実地型イベントも、ブランディングとして活用されるわけです。
面白い例では「VRによる職場体験」までもが活用されています。採用ブランディングにおいて、法律や倫理に適う範囲であれば、使ってはいけない手法はありません。
柔軟な発想で、たとえ不慣れなものでもブランディングの役に立つなら積極的に取り入れる姿勢がひとつのポイントとなるでしょう。
採用広報との違いは「ブランド力アップ」を目指すか否か
採用ブランディングと単なる広報の違いはブランド力アップを目指すか否かです。採用広報では基本的に求人情報を伝えたり、社内情報を公開したりするもの。
採用ブランディングは、ブランド力の向上に重きを置いています。一方求人情報などの事務的な情報は少なく、アピールやコンテンツマーケティングの側面が強く現れています。
採用ブランディングと採用広報では、ミッションが異なるので注意が必要です。
採用ブランディングにおけるメリット
採用ブランディングを実施するには、さまざまなメリットがあります。
- 企業の認知度・好感度が大きく高まる
- 既存社員のモチベーションを高める
- 母集団形成に役立つ
- マッチ率の高い人材を見つけられる
- 採用活動にかかる費用をおさえられる
- 自社の強みがはっきりしてアピールしやすくなる
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
企業の認知度・好感度が大きく高まる
採用ブランディングにおける最大のメリットは、企業に対する認知度や好感度が高まることです。
認知度が高まれば、著名な企業として安心感が生まれます。そこに特別な好感度があれば、志望者から見ても優先順位の高い志望先となるでしょう。
この結果として、より多くの応募や優秀な人材とのマッチングが期待できるようになります。
既存社員のモチベーションを高める
採用ブランディングには、既存社員のモチベーションを高めるメリットもあります。
ブランドを整備する中で社内環境が向上し、自社への愛着を強めることが可能です。つまり内側に向けてブランディングする側面もあります。
既存社員のモチベーションが向上すれば、業績の成長も期待できるでしょう。
母集団形成に役立つ
採用フローまで落とし込んで考えれば母集団形成に役立つのもポイント。ブランドを感じさせることで応募者が増え、より多くの候補者を抱えた状態で採用フローを始められます。
各シーンでの歩留まり率にも大きな変化が期待できるでしょう。優秀な人材を他社に横取りされるケースも少なくできるはずです。
マッチ率の高い人材を見つけられる
採用ブランディングを実施すれば、マッチ率の高い人材を見つけることにもつながります。企業理念やビジョン、さらには社内の様子を発信し、そのうえで採用するので当然ながらミスマッチは少なくなるはずです。
採用活動にかかる費用をおさえられる
採用ブランディングを実施すれば、採用活動にかかる費用をおさえられます。
ブランディングが成功していれば、求人広告を打つ必要性が薄まります。ブランドによって「選考に参加したい」と考える候補者が、一定数現れるようになるからです。
この状態に持っていくには、相当な時間がかかるでしょう。しかし採用活動にかかる費用をおさえられるのは、多少の苦労があっても追求する価値があるもの。
また広告出稿運用の手間も省けるので、リソースも温存できるようになります。
自社の強みがはっきりしてアピールしやすくなる
自社の強みがはっきりして、各所でアピールしやすくなるのもポイントです。何を発信すべきか、何が自社の強みなのか洗い出すよい機会となるでしょう。
他社との比較がなされるのも、ポイントです。もしかすると、他の企業ではあり得ない自社ならではの強みが見つかるかもしれません。
それをつかめば採用ブランディングで強くプッシュできるし、あるいは企業活動全体を向上させる大きな足がかりになるかもしれません。
採用ブランディングにおけるデメリット
採用ブランディンはよいことばかりではありません。以下のようなデメリットがあることも、理解しておきましょう。
- 即効性はない
- 費用と手間はかかる
- 不祥事があると効果が損なわれる
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
即効性はない
採用ブランディンングにおける最大のデメリットとして、即効性がない点が挙げられます。
じゅうぶんにブランドが伝わるまで、1年以上かかることもしばしば。
実際に採用活動で効果を実感できるまで、あるいは数字として観測できるまでで考えればさらに時間がかかるでしょう。
採用ブランディングは、今すぐに採用活動を好転させる手法でない点に注意してください。
費用と手間はかかる
採用ブランディングにおけるデメリットとして、費用と手間がかかる点も挙げられます。
どのような手法を用いるにしても、相当大きなプロジェクトになることを理解しましょう。
たとえばオウンドメディアを運用する場合は、WEBサイトの開発やコンテンツ維持について費用がかかります。動画コンテンツやインタビュー記事を用意するとなると、さらに費用は上乗せされるでしょう。
さらに、デザインやライティングの時間もかかります。そうすると、かなりの費用と手間がかかることがわかるでしょう。
不祥事があると効果が損なわれる
採用ブランディングをいくら構築しても、たったひとつの不祥事で効果が大きく損なわれる点に注意しましょう。
社員の扱い方や顧客への接し方をひとつ間違えると、万が一SNSなどで流出した場合大騒ぎになります。
社員一人一人に「会社名を背負っている」という自覚を持たせ、会社のブランドが守られるように対応しましょう。
採用ブランディングを実施する方法
採用ブランディングを実施するのは、簡単ではありません。企業や部署、取り扱う商材によって、どのように施策が必要か変わってくるからです。
ただ以下のような施策は、どの企業にも共通して必要だといえるでしょう。
- 自社の目的や状態を整理する
- 必要な人材像を明らかにする
- 採用コンセプトや戦略を組み立てる
- 具体的なメディア戦略を考案する
- PDCAサイクルを周回する
まずはこの6STEPについて理解しておきましょう。
自社の目的や状態を整理する
採用ブランディングを始めるうえで最初に着手すべきタスクは、自社の目的や状況を整理すること。
具体的には以下について考えましょう。
- 達成したいビジョン
- 展開したいビジネス
- 構築すべきブランド
- アピールすべきポイント
- 自社が採用ブランディングを実施できるほどの体力を有するか
上記を整理しておかないと、適切な内容でブランディングできません。社内でじゅうぶんに協議して状態を洗い出し、何をすべきなのか検討してみてください。
必要な人材像を明らかにする
採用オウンドメディアをスタートさせる前に、必要な人材像を明らかにすることが大切です。
この人材像が、コンテンツマーケティングにおけるペルソナとなります。
そしてマーケティングやリサーチを踏まえて、どのようなペルソナにブランドを届ければよいのか考案します。
採用オウンドメディアでは求める人材像とペルソナの設定の正確性が重要です。それが採用される人材の理想として設定されるから。
自社の希望とズレがないように、慎重に検討しましょう。
採用コンセプトを組み立てる
続いて、採用ブランディングにフィットする採用コンセプトを考案しましょう。
ターゲットを対象に、自社におけるどのような強みや魅力を伝えるのか考案します。
たとえばクリエイティブな人材を求めるなら、自由なアイデアが重視されていることがコンセプトの中心となるでしょう。
ターゲットがどのようなメッセージに反応するのか、という視点から考えることが大切です。
具体的なメディア戦略を考案する
採用ブランディングを実施するうえでは、ほとんど場合専用サイトやSNSを利用します。
具体的にここで何を発信するのかを考えましょう。
採用ブランディングに使うサイトでは、自社の魅力やメッセージを伝えていくことが大切。具体的なコンテンツとして、以下が挙げられるでしょう。
- 求める人材へのメッセージ
- 働く様子の紹介
- 既存社員へのインタビュー
- 商品・サービスへのこだわりetc.
SNSも活用しましょう。近年ではTwitterやInstagramを利用する学生が多く、ここに露出すればアピールの機会が拡大されます。
PDCAサイクルを周回する
ここまで来たら、いったんは採用ブランディングがスタートできています。ただし、一度準備して終わりではありません。
採用ブランディングを拡大したり、パフォーマンスを高めたりするうえで、分析と改善が必要となります。つまりPDCAを回す必要があると表現できるでしょう。
これを何度も回し続ければ、自社のブランドはしだいに磨かれます。将来的には他の企業とは比較にならないほどの魅力を持つようになるかもしれません。
採用ブランディングでは、最終的にPDCAサイクルに入ることを意識しましょう。
採用ブランディングを成功させるポイント
採用ブランディングを成功させるには、3つのポイントについて理解しておく必要があります。
- 会社が一丸となって取り組む
- 定期的なコンテンツ発信を意識する
- 炎上リスクに注意する
まずはこの3点をおさえておきましょう。
会社が一丸となって取り組む
採用ブランディングでもっとも重要なのは、会社が一丸となって取り組むことです。
そもそもこの施策は、年単位で時間がかかる一大プロジェクト。
よほどの大手企業は別として会社が一丸となって取り組む必要があります。
それでもリソースやコスト、ノウハウが足りないこともあるでしょう。
その場合はブランディングに関するコンサルタントを利用する方法も考えられます。
定期的なコンテンツ発信を意識する
採用ブランディングを実施するなら、WEB上での発信は必須です。
具体的には、オウンドメディアやSNSアカウントを運用することを意味します。
これを実施する場合は、とにかく定期的に高品質なコンテンツ発信を続けること。更新が途絶えるとユーザーが離れ、ブランディングが達成できません。
また「いい加減な管理をしている」と判断され、むしろブランドを損なう可能性もあります。採用ブランディングは、途中で投げ出してはいけないことを理解しておきましょう。
炎上リスクに注意する
炎上リスクにも注意しましょう。もしそのような事態があれば、積み上げられた採用ブランディングの効果は一気に失われます。
たとえば、SNSで自社社員の問題行動が拡散されたとしましょう。そうすると悪質なケースでは、企業に対して苛烈な批判が集中します。
そういったことがあれば、積み上げられた採用ブランディングはむしろ虚構のものとなりかねません。くれぐれも社会的信用を損なう行為で、社会を敵に回さないように注意しましょう。
採用ブランディングの成功事例
採用ブランディングでは、大手企業などですでに多くの成功事例があります。
- 株式会社サイボウズ
- 株式会社SmartHR
- オタフクソース株式会社
特に上記3社は典型的な成功例として知られています。それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
株式会社サイボウズ|脅威の離職率4%を達成するブランド
出典:株式会社サイボウズ
採用ブランディングの成功例として、株式会社サイボウズの事例は大きなヒントとなります。
同社はビジネスWebサービス・ツールの開発・保守を主業とする企業。
かつて課題として、28%という比較的高い離職率がありました。同社はインナーブランディングと並行しつつ、人事活動でも以下のような取り組みを実施します。
- 未経験でも専門職にチャレンジできる「ポテンシャル制度」
- 副業解禁
- 複業解禁(他社との二重在籍容認)
- リモートワーク
このように、既存の働き方に縛られない自由さをアピール。現在のサイボウズのイメージとして定着した「働きやすさ」が浸透しました。
結果として28%だった離職率はわずか4%まで低減されました。
参考:株式会社SmartHR|特色とカルチャーの発信でベンチャーブランディングに成功
出典:株式会社SmartHR
株式会社SmartHRは、労務管理ツールを提供するIT企業。
同社は自社の特色とカルチャーをWEBサイトで積極的に発信することで、採用ブランディングを実施しています。
社員のブログや社外報、インタビュー記事を掲載。人物と働き方をしっかりと伝えて、志望者の疑問にアンサーしました。
魅力的な情報をオープンにしたことで募集者が大きく増加。最終的には3,700人以上のタレントプールが掲載されるに至っています。
参考:ナイル渡邉が気になる、あの会社の採用広報 #1 SmartHR瀧田成紗氏|採用広報のカギは“カルチャー”を発信すること
オタフクソース株式会社|「らしさ」を体感できる情報発信
出典:オタフクソース株式会社
オタフクソース株式会社は、自社の「らしさ」をWEBサイトで発信しています。つまり、ターゲットが望んでいる環境や会社としての理念があることを伝えています。
また採用サイトや動画コンテンツなども用意。あるいはイベントや展覧会なども開催し、オタフクソースがどのような会社なのかありとあらゆる形でアピールしました。
また同社は採用ブランディングについて専門業者へ外注しており、各施策はかなりハイレベルな水準です。
参考文献:オタフクソース 採用ブランディング
まとめ:採用ブランディングはスモールステップで導入
本記事では、採用ブランディングについて解説しました。最後に重要なポイントを解説します。
- 採用ブランディング=魅力的な就職先としてのアピール
- 少子高齢化などによる人材減少を解決する手段として注目
- ブランディングは認知度向上や母集団形成など、あらゆるメリットがある
- 一方で即効性がない、炎上リスクに弱いといった部分も
- 成功させるには自社の状況を洗い出すところからスタート
- PDCAを回してブラッシュアップを続けるのが大切
採用ブランディングは強力な手法ですが、実施するまでには相当なコストとリソースがかかります。
まずは小規模な施策からスタートし、スモールステップで進めていきましょう。次第に採用ブランディングの勘所がわかり、大きな施策として実施できるようになります。