リファラル採用で起こるトラブルとは?必要な準備、対策と成功させる方法を解説

  • リファラル採用はトラブルが多いと聞いたが、やめておいたほうがよいのか?
  • どうすれば、未然にトラブルを防げるのか

このように考えている人事担当者の方は多いのではないでしょうか?

結論から言えば、リファラル採用には無視できないメリットもある一方、トラブルになるリスクを多少受容してでも実施する価値のある採用手法です。また、それを事前に防止する方法もある程度セオリー化されています。

そこで本記事では、リファラル採用を取り入れるにあたって確認すべき以下のポイントを解説します。

  • リファラル採用の概要とメリット
  • 頻発するトラブル
  • リファラル採用のトラブルを防ぐ方法

リファラル採用の導入を検討している担当者の方はぜひご覧ください。

リファラル採用の概要

リファラル採用とは、在籍する社員の知人友人を紹介してもらう人材確保の手法です。日本ではあまり馴染みありませんが、「米国では採用経緯のうち28%がリファラル採用である」と言われています。海外ではメジャーな手法だと言えるでしょう。

日本国内でも採用コストを抑えられるなどのメリットが注目され、活用する企業が増えています。リファラル採用が浸透していない現状で手法として先取りすれば他社との差別化も図れるでしょう。

参考:リクルートワークス研究所ー米国の社員リファラル採用の仕組み

リファラル採用のメリット

リファラル採用には以下のメリットが期待できます。

  • 採用コストを削減できる
  • 転職市場に出ていない人材を採用できる
  • スキルの高い人材を採用できる
  • 採用ミスマッチを減らせる

実のところリファラル採用のメリットは上記以外にもさまざまです。ただ特に重要な点を挙げるなら上記4点。それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。

採用コストを削減できる

採用コストを削減できるのが、リファラル採用における大きなメリットです。本来採用活動では、求人広告費や説明会の会場費など、さまざまな場面でコストが発生します。もちろんこれに関わる人的リソースも必要です。

しかしリファラル採用であれば、これらの費用はかかりません。紹介した社員への特別報酬と、多少の交通費や会食代が経費のすべてです。よってリファラル採用を活用すれば、通常の採用活動と比較して採用コストを削減できるわけです。

転職市場に出ていない人材を採用できる

転職市場に出ていない人材を採用できるのも、リファラル採用ならではのメリット。通常の採用活動では転職サイトやエージェントを利用する転職希望者が対象となります。

しかしリファラル採用では、そもそも転職活動を実施していない他企業で働く人物へアプローチすることが可能です。したがってリファラル採用では、転職市場に出ていない人材を採用できます。うまくいけば転職市場に現れればすぐ奪われるような人材を独占できるかもしれません。

スキルの高い人材を採用できる

リファラル採用にはスキルの高い人材を確保できるメリットもあります。なぜなら、そうではない人物が選考対象となるケースは少ないからです。

リファラル採用は、在籍する社員が友人知人を紹介しますが、わざわざスキルについて水準をクリアしていない者を紹介することはないでしょう。その人物のせいで自分の評価が落ちるかもしれないからです。

さらにインセンティブなどの存在も考えれば、社員はすぐれた人物を優先的に紹介します。だから会社はスキルの高い人材を採用できるわけです。

採用ミスマッチを減らせる

リファラル採用ではミスマッチを減らすことも可能です。これも大きなメリットと言えるでしょう。
リファラル採用では、社員から企業のミッションや現場の様子などをよく聞かされている人物が選考対象となります。だから入社してからギャップに悩まされるケースが少なくなります。

また紹介者と友人知人であることから、紹介した本人と似た人格や価値観の持ち主である可能性が高く、さらに自社とマッチしやすいと考えられます。
ミスマッチが減らせれば離職率が下がり、入社後の定着率を高めることも可能です。

リファラル採用で起こりやすいトラブル

上記の通り、リファラル採用には多くのメリットがあります。うまく機能している場合、会社にとっては強力なやり方です。一方でリファラル採用には以下のようなトラブルもつきもの。

  • 人材が同質化してしまう懸念
  • 紹介料報酬に関するトラブル
  • 不採用や退職時の人間関係の問題

いずれも企業にとっては避けたいところです。トラブルを回避しないと、リファラル採用でむしろ人材が離れていくかもしれません。どのようなことが起こり得るのか確認しておきましょう。

人材が同質化してしまう懸念

リファラル採用では人材が同質化するというトラブルが起こりがちです。社員の友人知人ばかりが集まるので、どうしても偏りは生じます。

たとえば上昇志向の強い社員が紹介する人物は、やはり「出世したい」と考えているケースが多いでしょう。だとすると現状を維持して落ち着いて働きたいタイプの社員は肩身の狭い思いをするかもしれません。

もちろん同質化することが悪いわけではありません。ある程度似通った人材が多ければ、統率を取りやすい側面もあるでしょう。しかし偏りが過ぎると人材が同質化し、派閥やグループを形成したうえでそれぞれの衝突を招く可能性があります。

紹介料報酬に関するトラブル

紹介料報酬に関するトラブルも起こりがちです。やはりお金での揉めると、社員から大きな不満を持たれるかもしれません。

たとえば紹介料の金額や支払い条件には注意が必要です。認識の相違があって、「最初の約束と違う」などと思われれば、修復不可能な軋轢が生まれるかもしれません。

しかしリファラル採用の導入初期は、細かくルールや条件を変更する必要があるものです。そこで矛盾が生まれて、トラブルに発展することが多々あります。

不採用や退職時の人間関係の問題

リファラル採用では不採用や退職時の人間関係でトラブルがつきものです。不採用時ですが、やはり紹介者と会社の関係性の悪化が心配されます。

経緯にもよりますが「なぜ彼が採用されないのか」などと思われることもあるでしょう。また紹介者と候補者が気まずくなってしまうこともあります。

退職時も同様で、たとえば紹介された側が先に辞めたら、紹介者は「メンツが潰れてしまった」と考えるかもしれません。とにかく人間関係でデリケートな問題を引き起こし、トラブルに発展しやすいのがリファラル採用の怖いところです。

リファラル採用でトラブルを防ぐための準備

リファラル採用にトラブルはつきものですが、それを未然に防ぐ方法はあります。以下の予防策はぜひ実施しましょう。

  • 面談・試験、スキルテスト等も実施する
  • リファラル採用の業務や紹介報酬について社内規定を設ける
  • 不採用時は社内の紹介者、応募者双方へのフォローを

それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。

面談・試験、スキルテスト等も実施する

リファラル採用でのトラブルを避けるなら、リファラル以外の応募者と同じ選考手法も実施しましょう。なぜなら「紹介者の友人知人」なだけでは、戦力になるとは断定できないからです。つまり面接や入社試験、スキルテストは実施して、本人が本来持っている力を推し量る必要はあります。

またリファレンスチェックなどを用いるのもよいでしょう。紹介者の主観だけでなく、前職関係者からの評価も判断材料に取り入れれば、より冷静に採用を検討できます。リファラル採用では紹介者の友人知人であることを過大評価することなく、他の選考手法も組み合わせましょう。

リファラル採用の業務や紹介報酬について就業規則で明記する

リファラル採用の業務や紹介報酬について就業規則で明記することも大切です。なぜならここに記載がなければ、労働基準法に違反するからです。

会社は従業員へ支払う給与や賞与について、就業規則で明記しますが、リファラル採用の紹介報酬も同様です。少しでもトラブルを避けるため、リファラル採用による報酬は就業規則で明確に記載しましょう。

不採用時は社内の紹介者、応募者双方へのフォローを

不採用時は、社内の紹介者と応募者双方へのフォローを実施しましょう。リファラル採用は、入社する場合はよいものの、不採用時には3者間での関係に悪影響が出やすい部分があります。

それを未然に防ぐためには、不採用だった場合、その理由を納得する形で伝えましょう。もちろん、言葉を選ぶ必要はありますが、誠実かつフェアに伝えることが大切です。そしてフィードバックがあれば、「参加したことは無駄ではなかった」という形で着地できます。

リファラル採用では、不採用時に遺恨が残らないようにきちんとフォローしましょう。

リファラル採用の成功事例

本記事ではリファラル採用のメリットとトラブル、そしてその対策について解説しました。最後にリファラル採用における顕著な成功事例を3つ紹介します。

  • リファラル採用がうまく機能し採用の3割を占める|株式会社SmartHR
  • 3つのルーリングでリファラル採用を安定して運用|株式会社freee
  • 創業初期から追及したリファラル採用|株式会社メルカリ

リファラル採用がうまく機能し採用の3割を占める|株式会社SmartHR

(引用:株式会社Smart HR

株式会社Smart HRは、同名の人事管理ツールを提供する企業です。同社はかなり早い段階でリファラル採用を活用しており、かなり洗練された手法で運用しています。

同社は「リファラルごはん」と称して会食を実施。ここからフレンドリーな雰囲気を作り出し、円滑な採用フローへとつなげています。

また「ごめんねごはん制度」も用意。これは社員が紹介したものの不採用になってしまった場合、関係性を壊さないためのフォローアップ。食事会を開き、その費用は株式会社SmartHRが負担します。

上記のようにリファラル採用でトラブルが起こりがちな点で適切に対策し、制度が機能しやすいシステムを形成。現在、同社の人材獲得は3割がリファラル採用に由来しています。

参照:常に進化し続けたい!SmartHR式リファラル活用

3つのルーリングでリファラル採用を安定して運用|株式会社freee

(引用:株式会社freee

株式会社freeeは同名の会計クラウドサービスを提供する企業。同社は現在、ほとんどリファラル採用だけで人材を確保、採用活動にかかる費用を大きく低減しています。そのうえで同社は3つのポイントをルーリングしました。

  • 求める人物像を具体的に提示する
  • なぜリファラル採用が求められるのか伝える
  • 紹介者には感謝の意を示す

上記のような取り組みにより、リファラル採用がうまく回しています。といっても3つのポイントは、さほど難しいことではなく、意識さえあれば当たり前にできることです。株式会社freeeは、特別なブランドや高額なインセンティブがなくても、リファラル採用を成功させられる可能性を示唆しています。

参照:freeeのリファラル3カ条|社内で協力体制をつくる秘訣とは

創業初期から追及したリファラル採用|株式会社メルカリ

(引用:株式会社メルカリ

株式会社メルカリは、説明も必要すらないほど有名なフリマアプリを運営する企業です。同社は創業初期からリファラル採用を活用し。現在では内定者のうち60%をリファラル採用で獲得しています。

同社が取り組んだのは、経営層からポジティブにリファラル採用の利用を呼びかけること。徹底した周知が社員にリファラル採用のメリットと必要性を知らしめ、積極的な紹介が行われるようになりました。さらに紹介者と候補者が参加する会食について会社が負担し、また社外との交流イベントも充実させます。

こういった努力が実を結び、株式会社メルカリは内定者のうち60%をリファラル採用から獲得できる状態を構築しました。

参照:メルカリも実践。全社員が『リファラル採用』に取り組む効果とは?

まとめ:リファラル採用を有効活用するためには、トラブルを防ぐ準備が大切

リファラル採用は、うまく回れば会社にも社員にも、そして新しく仲間になる候補者にもメリットがあるやり方です。会社視点から見ればコストはおさえられたり、スキルある人物を採用できたりとにかく魅力的。できるだけリファラル採用を活用していきたいところです。

しかしリファラル採用ではトラブルもつきもの。紹介報酬で揉めたり、関係性が悪化したり、そのリスクは決して無視できるものではありません。できる限りの予防策を講じ、余計なトラブルが起こらないようにしましょう。

それさえ意識できていれば、本記事で紹介した成功事例にも近づくはずです。自社内に合ったリファラル採用の運用方法を上手に構築していきましょう。