- 新卒採用における歩留まり率とは?
- 歩留まり率の平均値は?
- 歩留まり率を計算する方法や改善方法は?
上記の疑問を持っている人事担当者は多いのではないでしょうか?
新卒採用ではとにかく選考を数値で考え、明確に管理することが重要です。
その中でも「歩留まり率」は、もっとも注視すべき数字のひとつ。これを追いかけていなければ、新卒採用で思うような結果は得られないでしょう。そこで本記事では以下の点について解説します。
- 「歩留まり率」の定義や平均値、計算方法
- 低下する原因と改善する方法
目次
新卒採用における歩留まり率とは? 平均値は?
まず新卒採用における歩留まり率が何なのかおさえておきましょう。また割合で示した場合の平均値も知っておくことが重要です。
新卒採用の歩留まり率とは=次の選考へ進んだ人の割合
新卒採用の歩留まり率とは、ある選考から次の選考へ進んだ人の割合を示します。
選考は通常、エントリーシート→一次面接→二次面接→最終面接→内定などといったフローで進められるものです。たとえば一次面接を終えて、落ちたり辞退したりせず二次面接へ進むことが歩留まりとなります。
それが全体に占める割合のことを歩留まり率といい、要するに「選考フローに生き残っている人数の割合」を示すものです。
歩留まり率の数が多ければ選考を通過しやすく、逆であれば通過者が少なくなります。歩留まり率とその点が連動していることは理解しておきましょう。
平均値は50%強
就職白書2019の報告によれば歩留まり率は以下のように報告されています。
従業員規模 |
歩留まり率 |
300人未満 |
56.1% |
301人以上999人未満 |
53.4% |
1,000人以上4,999未満 |
54,8% |
5,000人以上 |
52.8% |
従業員規模にかかわらず歩留まり率は50%強と報告されました。この数値から著しく乖離している場合は、選考フローや採用戦略になんらかの問題があると推測できます。
平均値は自社の課題に気づくひとつのきっかけとして活用しましょう。
歩留まり率は学生が就職先を選ぶうえでの重要指標
歩留まり率は学生が就職先を選ぶうえで重要な指標です。これが高ければ優良な企業、そうでなければ避けるべきだと、基本的には考えられます。
内定してから入社するまでの歩留まり率が、著しく低かったとしましょう。そうすると「いったい入社式までの間に何があったのか?」と推測されます。
だとすればその企業の選考には参加しづらくなるでしょう。歩留まり率は企業だけではなく、就職先を選ぶ学生にとっても重要な指標です。
新卒採用における歩留まり率の計算方法
新卒採用における歩留まり率は、基本的に「選考通過者数」÷「選考参加者数」×100で求めることが可能です。たとえば通過者100人、参加者200人であれば、歩留まり率は50%となります。
また各フェーズにおける歩留まり率は以下のとおり計算することが可能です。
歩留まり率の種別 |
計算式 | 平均的な数値 |
内定率
(選考参加者数に占める内定者数の割合) |
内定者数÷受験者数 |
80%前後 |
選考参加率
(エントリー数に占める選考参加者数の割合) |
応募数÷選考参加者数 |
25%前後 |
途中辞退率 (選考参加者数に占める途中辞退者の割合) |
途中辞退者数÷選考参加者数 |
25%前後 |
内定辞退率 (内定者数に占める内定辞退者数の割合) |
内定辞退人数÷内定到達数 |
20%前後 |
ここで参照すべきは右側の平均的な数値。ここから著しく乖離しているのであれば、その前後のフローにおいて何らかの問題があると推測できます。
新卒採用における歩留まり率低下の原因
歩留まり率は、わかりやすく言えば企業の人気度や採用活動のパフォーマンスを示すものでもあります。
高い歩留まり率が残っているなら多くの志望者から高く評価されていると判断できるでしょう。しかし新卒採用における歩留まり率は、以下のような原因で低下します。
- 自社よりも魅力的な企業から内定が得られた
- 求人広告と面接内容の不一致
- 連絡の不足
- 入社ブロックの発生
これらの現象が起こると、当然ながら選考フローから離脱されることとなります。それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
自社よりも魅力的な企業から内定が得られた
自社よりも魅力的な企業から内定が得られた場合は選考フローから離脱され、歩留まり率は悪化するでしょう。本人の第一志望から内定が得られた場合などは、おそらくこの選択がなされるはずです。
本人の希望がある以上、この問題を解決するのは困難でしょう。しかし採用ブランディングなどを用いて、自社がより魅力的な企業であると発信するなどの解決策で対抗する余地はあります。
求人広告と面接内容の不一致
求人広告と面接内容の不一致があれば歩留まり率は低下するでしょう。入社時同様、選考フローでもギャップを感じさせてはいけないわけです。
たとえば求人広告では「全国転勤なし」と書かれているのに、いざ面接で「全国への転勤がありうる」と伝えればそれは大きなギャップ。相手からすれば「裏切られた」と感じてもおかしくはありません。
しかし母集団形成を焦るあまり求人広告でオーバートークするケースは多いので、自社でも注意が必要です。求人広告で事実と異なることが記載されていないか、チェックする体制を設ける必要もあるでしょう。
連絡の不足
単純な連絡不足によって、歩留まり率が落ちることもあります。具体的には以下のパターンが考えられるでしょう。
- 説明会や選考の日程を伝えるのが遅く、他社で選考フローが進んでしまった
- 連絡内容に誤りがあったため、スケジュール上の齟齬が生じた
- 連絡内容に不足があった
採用活動期の人事部は多忙ですが、同時に学生も忙しい日々を過ごしています。そこに連絡の不足が絡んでくると、日程などの問題で選考フローを離脱せざるをえないケースも増えるでしょう。
入社ブロックが生じた
入社ブロックが生じたケースも否定できません。要するに家族や友人から「そんな企業はやめておけ」と横槍が入るケースです。
「大手企業に入ることが正しい」と考えている人は多く、特に親世代ではありがち。同時に本人が大手へ入れるだけのポテンシャルを持っている場合は、入社ブロックが生じやすくなります。
新卒採用の歩留まり率を改善するためのアプローチ
新卒採用の歩留まり率が好ましくない場合は、なんとかして改善する必要があります。とはいえ簡単な問題ではなく、あらゆる手を尽くさなければ満足な効果は得られないでしょう。
それでも、以下のようなアプローチである程度の改善は見込まれます。
- 対象者への連絡はスムーズに
- イベントやセミナーの開催で関係値を作る
- アウターブランディングを実施する
- クロージングをかける
ただしこれ以外にも、企業や状況に応じてより多くの施策が必要です。あくまでも最低限必要なタスクとして考えてください。
選考参加者への連絡はスムーズに
大前提として選考参加者への連絡はスムーズにおこないましょう。早めの連絡で、他社の選考フローへ流れることを防止すれば、歩留まり率も自ずと改善します。
特に説明会や面接の案内は他社とバッティングすることも多々あるので、速やかに連絡しましょう。
連絡内容の間違いにも注意が必要です。日程の誤りだけはかならず避けなければいけません。
選考参加者への連絡はスムーズかつ正確に実施しましょう。
イベントやセミナーの開催で関係値を作る
イベントやセミナーの開催で関係値を作ることも重要です。
選考フローや内定後の離脱が発生する原因のひとつは、企業と選考参加者との距離感が縮まっていないこと。何の関係値もないなら、数ある候補の一つとしてあっさりと離脱されてしまいます。
しかし懇親会などを開催すれば、選考参加者は企業に対してある程度の帰属意識を持つようになります。そうすることで選考・採用のフローから離脱されづらくなり、歩留まり率も改善に向かうでしょう。
アウターブランディングを実施する
アウターブランディングを実施することも重要です。これは就職活動している学生に対して「我が社は魅力的な存在である」とアピールする戦略のひとつ。
要するに会社名のブランドを持たせれば入社への熱意が高まり、歩留まりを落とすことが可能です。
具体的な手法やフローについては「採用ブランディングとは?得られる効果と注意点、具体的な手順を解説」で解説しているので、こちらをご参考ください。
クロージングをかける
クロージングをかけることも、歩留まり率を改善するうえで重要です。特に内定辞退率を改善するうえでは意識したいところ。
最終面接やオファー面接などで条件や希望をすり合わせ、間違いなく入社まで至るようにクロージングしましょう。これで確度を高めることが可能です。
先ほど触れた入社ブロックも、クロージングをかければ予防できます。入社ブロックがはたらくとすれば、その多くは「大手企業に入ったほうがよい」という内容です。
つまり「大手企業だけがすべてではない」という趣旨のクロージングをかけていけば、ある程度入社ブロックは予防できるでしょう。
まとめ:新卒採用の歩留まり率はKPIとして追跡しよう
本記事では新卒採用における歩留まり率について解説しました。最後に重要なポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
- 歩留まり=次の選考へ進んだ人の割合
- 歩留まり率の平均値は50%強
- 「選考通過者数」÷「選考参加者数」×100で歩留まり率を求められる
- 歩留まりが悪化する要因として他社内定や連絡不足など、さまざまな要因が考えられる
- 新卒採用の歩留まりを改善するには、スムーズな連絡や関係値の構築などが必要
多くの企業にとって新卒採用の歩留まり率はかなり重要な要素。これが極端に平均から外れているなら、採用フローに何らかの問題が生じていると推測できます。
採用フローが間違えているなら、獲得される人材もまた、自社にとって最適ではありません。歩留まり率をKPIとしてきちんと追跡するようにしましょう。