- インナーブランディングとは何を意味するのか?
- 実施することでどのような効果があるのか
- 社内にブランディングして何の意味があるのか?
インナーブランディングに興味を持つ担当者は多いでしょう。大企業が積極的に取り入れており、自社でもぜひ実施したいところです。
とはいえインナーブランディングは複雑な施策であり、趣旨や目的を理解していなければ実施できません。そこで本記事では以下について解説します。
- インナーブランディングの定義や目的
- 実施するメリット
- 具体的なインナーブランディングの進め方とポイント
インナーブランディングに興味がある担当者はぜひ本記事では基本的な知識を身につけましょう。
目次
インナーブランディングとは?実施する目的や重要性
まずはインナーブランディングの定義を理解しましょう。そのあとでその重要性、あるいは活用される手法について解説します。
企業としてのブランドを社員に伝えることがインナーブランディング
インナーブランディングは基本的に社員に対するブランディングのことを指します。
企業としてのブランドや理念を社員にアピールするのが、ほとんどの場合は目的となるでしょう。これにより従業員のロイヤリティを高めたり、社員の団結を強めたりすることが可能です。
顧客に対するブランディンは関係なく、あくまでも内側へ限定した施策であることを踏まえておきましょう。
インナーブランディングの重要性
インナーブランディングが重要視されるのは、人材確保の観点で有用だからです。近年では働き方改革(業務効率化)やフリーランス的な働き方の台頭により、人材が流動的になりつつあります。
終身雇用が崩壊して転職するのが当たり前の時代で、人材を定着させるのは以前よりもむずかしいミッションとなりました。しかし一度獲得して教育を施した人材が流出するのは企業にとっては避けたいところです。
そこで注目されたのが、従業員と企業の信頼関係を強く結べるインナーブランディングという手法。これにより自社の魅力をより強く感じさせ、流動的な人材を定着させられる点が有効とされ、多くの企業で重要視されています。
ブランディングにおいて用いられる手法
インナーブランディングには以下の手法が活用されています。
- 社内報
- クレドの発行
- 行動指針の共有
- タウンホールミーティング
- 社内イベント
- ワークショップ
- 福利厚生の充実
手法において基本となるのは「連帯感を高めること」と「直接的なベネフィットが存在すること」です。
たとえば社内イベントは、従業員同士、あるいは企業との関係値を高めるうえで効果的。
またワークショップや福利厚生の充実は社員に対して直接的なベネフィットを提示するものであり、オーソドックスながらインナーブランディングを実施するうえで強力なやり方です。
インナーブランディングを実施するメリット
インナーブランディングを実施するメリットは大きく分けて4つ考えられます。
- 企業のブランドがより深く理解される
- 従業員のロイヤリティを高められる
- 社内での団結が高まる
- 従業員の離職率を低下できる
もちろん他にもさまざまな効果が期待されますが、重要な部分を挙げれば上記4点です。
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
企業のブランドがより深く理解される
インナーブランディングにより企業のブランドがより深く理解されるのは、もっとも大きなメリットです。
企業理念や価値観が正しく伝わることで、自社と社員での意思疎通やビジョン共有が図られます。どのようなブランドがあるのか理解できれば働き方にも変化が出てくるでしょう。
企業が巨大化すると、理念や価値観、あるいは基本的な行動指針は形骸化しがち。その結果求心力を失い、組織体としての強みが損なわれることも少なくありません。
しかしインナーブランディングが達成されれば企業ブランドが維持され、理念や価値観を忘れることなく貫き通すことが可能です。
従業員のロイヤリティを高められる
従業員のロイヤリティも高められるのも、大きなポイントです。ここでいうロイヤリティとは、「帰属意識」や「誇り」、あるいは「連帯感」を意味します。
強いブランドを有する会社は、従業員に対して強い帰属意識を持たせることが可能です。また「自分はこの会社の一員なのだ」という誇りを持たせられます。
社内での団結が高まる
インナーブランディングで社内での団結力が高まるでしょう。「同じ社名・看板の下に集う仲間」として見るようになり、お互いが助け合うような状態が築かれます。
そうすればチームワークが発揮されるようになり、より高いパフォーマンスが期待できます。突き詰めればそれは作業の効率化、あるいは会社への利益につながるでしょう。
従業員の離職率を低下させられる
従業員の離職率を低下させられるのも、インナーブランディングを実施する大きな理由のひとつです。
働いている企業にブランドを感じていたら、社員は少なくとも積極的に転職を考えることはないでしょう。企業理念や価値観に共鳴していたり、あるいは帰属意識や連帯を感じていたりするからです。
いずれにしても会社に対してポジティブな感情があり、離職を遠ざけるうえでインナーブランディングは重要なはたらきを示すものです。
離職率や早期退職の多さに課題を感じている場合は、インナーブランディングが効果的かもしれません。
インナーブランディングを実施する方法
冒頭でも述べたようにインナーブランディングは。複雑なステップと多くのリソース・コストが必要な一大プロジェクト。そう簡単に実現できるものではありません。
ただしインナーブランディングを実施するための基本的なステップは確立されています。
- 企業理念やビジョンをはっきりさせる
- インナーブランディングの施策を具体化
- インナーブランディングの施策を決定
- 進捗度を数字で明確化し、実行に移す
もちろんこれは基本的なフローにすぎず、実際には数多くのタスクが存在します。それでも、全体の流れを把握する作業はインナーブランディングを始めるうえで最初にクリアしておく必要があるでしょう。
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
企業理念やビジョンをはっきりさせる
インナーブランディングは最初が肝心です。ブランドとなる企業理念やビジョンを明確にしておきましょう。
インナーブランディングでは、これが社員が信じるブランドそのものになります。何をブランディングするべきなのか、何だったらブランドを感じさえられるのか慎重に検討しましょう。
そしてその理念やビジョンと社内の現状を見比べて、ブランディング可能か判断します。労働環境や社員の認識、あるいは財政を振り返れば、インナーブランディングで何ができるのかが見えてくるはずです。
インナーブランディングを始めるときは、まず企業理念やビジョンをはっきりさせ、実現可能なブランドを割り出しましょう。
インナーブランディングの施策を具体化
企業理念やビジョンが明確化したなら、続いてインナーブランディングの具体的な施策を考えましょう。手法としては、上記したとおりさまざま考えられます。
- 社内報
- クレドの発行
- 行動指針の共有
- タウンホールミーティング
- 社内イベント
- ワークショップ
- 福利厚生の充実
もちろん、他にも自社において有効な手法はあるはずです。何がインナーブランディングの施策として適切なのか、自社の状況を踏まえて考えてみましょう。
もし施策の決定に迷いが生じたときは、コストとリソースが小さいやり方から選ぶのも手です。効果は限られてしまいますが、インナーブランディングの方向性を探るうえでは役立ちます。
インナーブランディングを計画立てる
施策が決まれば、その準備期間や費用と、最終的な目標を設定しましょう。
どの施策を打ち出すにしても、ある程度の準備期間は必要です。その点も含めてどれくらい時間がかかるのか見通しましょう。
もちろん費用感も重要です。自社で無理なく負担できるコストを意識しましょう。
期間と費用が見通せたなら、いつまでに何を達成するのか最終的な目標について決定します。つまり、KGIを設定するということです。
目標達成までの進捗度を数字で明確化し、実行に移す
インナーブランディング自体の目標が決まったら、その進捗度を数字で明確にし、チェックポイントとしましょう。つまりKPIを設定する、ということです。
インナーブランディング実施中は、このKPIが施策継続と方向転換を決定づけるポイントとなります。これを実現するには、とにかく進捗度を数字で具体的に示すことが重要です。
定性的ではなく定量的に評価すれば、より正確に判断できるようになります。
インナーブランディングにおいては、従業員満足度スコアや離職率などが、具体的なKPI指標として適切でしょう。もしくはアンケートを実施して、そこで得られる数値的な評価を基準にしてもかまいません。
インナーブランディングの取り組み事例
実際にインナーブランディングとしてどのような施策が取られているのか、過去の事例を見てみましょう。
- スターバックス
- USJ
- 富士通株式会社
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
従業員の働きやすさを追求し、自主性を維持するブランディング|スターバックス
(引用:スターバックスコーヒージャパン)
スターバックスは、古くから従業員の働きやすさや満足度を追求している企業です。つまりインナーブランディングについてはもっとも精通してるといえるでしょう。
日本支社では多彩な業務を提供し、従業員が飽きてしまわないように配慮。さらにはシフトメンバーが同じ人ばかりにならないスケジューリングなども実施しています。
またPOP作りを任せるなどして、業務への満足度を高めるための努力も惜しんでいません。
参考記事:店舗でもデジタルでも考え方は同じ。スターバックス コーヒー ジャパンCMOに聞く、心を動かす体験の作り方|Experience Insights #2
「クルー」がパークを楽しめるように|USJ
(引用:合同会社ユー・エス・ジェイ)
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、クルー(アルバイト)がパークを楽しめるように意識し、インナーブランディングを実施しています。
アトラクションが楽しめるように社割を用意し、より強くユニバーサル・スタジオ・ジャパンの世界観を共感できるように配慮。
また関係者しか参加できない「クルーカフェ」を開いているのもユニークな試み。そこでは「マグロの解体ショー」を開くなど、かなり独創的な取り組みを展開しています。
デザイン性の高いオフィス設計で視覚的にインナーブランディング|富士通株式会社沖縄支店
(引用:富士通株式会社)
視覚的にインナーブランディングも、幅広く用いられています。富士通株式会社では社員が気持ちよく誇りを思って働けるように、オフィスを美しく再設計。
熱帯魚のいる水槽やオーシャンビューを用いて、特別な空間であることを意識しています。
沖縄支店であることを意識して、琉球文化を感じさせる壁面アートも設置。地元への愛着を感じさせるとともに、整った環境で働いているというロイヤリティを提供しています。
参考記事:老朽化と働き方を見直すためのリニューアル
インナーブランディングを実施するうえでの注意点
インナーブランディングはそのメリットばかりが注目されていますが、実施するのは決して簡単ではありません。以下のような点に注意して、施策を進める必要があります。
- ブランディングの成果が出るまである程度時間はかかる
- PDCAを周回することが大切
- 一度築いたブランドを失うのは簡単
インナーブランディングは、「簡単に従業員満足度を得られる手法」と勘違いされている部分があります。しかし実際には地道な努力と、相当に真摯な姿勢が求められます。
上記それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
ブランディングの成果が出るまである程度時間はかかる
ブランディングの成果が出るまである程度時間がかかることは理解しておきましょう。外部へのブランディングがそうであるように、インナーブランディングもまたそう簡単に成果を得られるものではありません。
ブランドとして浸透するまで何度も発信活動をおこない、社員の様子を観察しながら根気よくアクションし続ける必要があります。時には逆効果の施策を打ってしまい後戻りしてしまうこともあるでしょう。
しかしブランドを築くというのは、当然ながら試行錯誤がともなうものです。関係者一丸となり、数年かかってもかまわない覚悟でインナーブランディングに挑みましょう。
PDCAを周回することが大切
PDCAを周回することも大切です。
インナーブランディングは、一度打ち出して目標を達成して終わりではありません。築かれたブランドを維持するには、当然ながら引き続きブランディングを続ける必要があります。
そのうえではPDCAを回し続けることが大切です。各施策の効果を測定し、不要なアクションは排除しましょう。そして効果的なアクションのみを継続することが大切です。
一度築いたブランドを失うのは簡単
インナーブランディングで注意したいのは、一度築いたブランドを失うのは驚くほど簡単なことです。
ブランディングはそもそも、「社会通念上、企業が持つべき倫理を持ち、守るべきルールを守る」というのが前提となっています。
つまり不祥事や不義理があれば、インナーブランディングはすぐに崩壊するでしょう。
たとえば仮に「社員を大切にする企業」というブランディングができていたとします。そこで万が一パワハラによる離職者が出て、それがSNSで拡散されたとしましょう。
そうすると「社員を大切にするといっておきながら、実際はこんなものか」と思われ、インナーブランディングが機能しなくなります。
一度築いたブランドを守るため、企業倫理を高く保つようにしましょう。
まとめ:インナーブランディングは企業への求心力を高める重要な施策
本記事ではインナーブランディングの基本的な知識について解説しました。最後に重要なポイントを振り返っておきましょう。
- インナーブランディングとは、社員に企業のブランドを伝えること
- この手法は人材確保に役立つことから注目されている
- ブランディングのためには社内報やイベントなど、あらゆる手法が活用される
- インナーブランディングが実現されれば、企業のブランドは深く理解される
- ロイヤリティが向上し、社内での団結も高まる
- 離職率も低下させられるので、人材確保の手法として成立しうる
- インナーブランディングを実施するのは簡単ではない
- 企業理念やビジョンを明確にし、具体的な施策と計画を見据えて根気よく実施する
インナーブランディングは、簡単に従業員の心を掴む魔法のような手段だと誤解されがち。しかし実際は、複雑な施策と計画、そして根気のよい活動が必要です。
インナーブランディングは一大プロジェクト。社内でも相当に力を入れて、効果が得られるまで何年もかける決意で取り組みましょう。