オンボーディングとは?エンジニアに対して実施するメリットや方法、取り組み事例

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オンボーディングは、新人エンジニアを迎え入れるときに有効な手法です。多くのIT企業が取り入れており、人材確保や定着率の向上に役立てています。

しかし「オンボーディングが何かわからない」「実施するメリットが見えてこない」といった人も多いのではないでしょうか?そこで本記事では以下について解説します。

  • オンボーディングの概要とエンジニアに対するメリット
  • 具体的なオンボーディングの進め方
  • オンボーディングにおける取り組み事例

現在は深刻なエンジニア不足が問題として顕在化しており、定着させることは重要です。そのうえでオンボーディングを知っておくこともポイントとなります。

オンボーディングとは?エンジニアに対して実行するメリット

オンボーディングとは、新入エンジニアを戦力として教育するための施策です。早期にエンジニアチームの一員として馴染み、不自由なく業務へ打ち込めることを目的とします。

また既存の社員との間で、お互いに欠かせない存在となり、ビジョンを共有するといった狙いも。

オンボーディングの本来の意味は「乗船」、ともに同じ船を操舵するクルーになることに由来しています。

航海に出る船舶の乗船員は、海上では他の団体から支援を受けられません。頼れるのは仲間だけなので、お互いに強い気持ちで結ばれています。そういったメンタリティを持ち込むのが、オンボーディングだと考えましょう。

社員研修と異なり、基本的な内容のレクチャーだけではなく長期的な戦力化や社内への定着まで念頭に置いているのが特徴です。オンボーディングを実施すれば、単なる研修以上の効果が得られるでしょう。

オンボーディングでは主に以下のような取り組みが実施されます。

  • 入社前段階での交流やヴィジョンの共有
  • 社内ルールの説明
  • 先輩社員との交流
  • OJT
  • 研修会

これが基本的な内容として考えておけば、まず問題ありません。

オンボーディングを実施するメリット

オンボーディングを実施するメリットは大きく分けて4つあります。

  • 離職率が低下する
  • エンジニアが早い段階で戦力になる
  • メンター担当者の負担を軽減できる
  • 業務に対する理解と納得感を与えられる

他にも細かいメリットがありますが、特に重要なのは上記4点。それぞれ詳しく解説しますので、ぜひご参考ください。

オンボーディングの実行により離職率が低下する

オンボーディングを実施すればエンジニアの離職率を落とすことが可能です。

もし早い段階で退職するとすれば、多くは業務や人間関係について入社前のギャップが強かった場合。

しかし業務については、目的や意義を正しく共有できていないだけかもしれません。人間関係は、うまく相互理解できておらず不和があると誤解しただけであるケースも多々あります。

つまり、早期離職自体が倒錯した結論で、本来なら避けられた可能性が高いのです。

そういったことを避けるためにもオンボーディングは重要な役割を果たします。本来の業務目的ややりがいを理解させて、新人エンジニアのコミットを引き出すことが可能です。また積極的かつ適切な距離感が保たれた交流により、関係値を構築。

これだけでもオンボーディングは、エンジニアリングの現場で重要だと言えます。

エンジニアが早い段階で戦力になる

オンボーディングを実施することでエンジニアが早い段階で戦力になります。新入社員は入社した直後、会社のルールや規則、重要視される価値観など多くのことを知って実践する必要があります。

また明文化されている部分ではなく暗黙知となっている部分もいち早く理解する必要ことも重要です。しかし目に見えないものを理解して適応するには時間がかかります。それが著しく苦手な新入エンジニアも少なくはありません。

しかしオンボーディングを実施することで、業務から微妙な人間関係のあり方まで、早い段階で理解できます。そうすることでエンジニアが早い段階で戦力としてカウントすることが可能です。

オンボーディングで教育期間を短縮し、チームを早期に強化しましょう。

特にエンジニアは、戦力化されるまで数年かかるケースもあります。そうなると、どうしてもその間にコストやリソースが非合理に消費されるので、待機期間は短いほうがよいというわけです。

メンター担当者の負担を軽減できる

オンボーディングをエンジニアに提供することでメンター担当者の負担を軽減することが可能です。

本来メンターは新入エンジニアに対して会社規則や暗黙知を教えます。しかし教育すべき項目が多すぎて負担となり、本来なら業務に回したい既存社員のリソースが大きく消費されるケースも。

しかしオンボーディングを実施することで新入エンジニアが早い段階でメンターから手離れします。これで既存社員の負担を減らし、リソースを効率的に消費することが可能です。

オンボーディングを活用し、合理的に動いていきましょう。

業務に対する理解と納得感を与えられる

オンボーディングを新入エンジニアに提供すれば、業務に対する理解と納得感を与えられます。

なぜその業務が必要なのか把握させ、やりがいや意味合いを持たせることが可能です。少なくとも「自分のやっていることには意味や価値がない」とは思われないでしょう。

納得感があれば、精力的に業務へ打ち込むようになります。それは自身と自社のエンジニアリングに誇りを持つことにもつながるもの。

オンボーディングを実施し、本人にとっての業務をより意義深いものとしましょう。

オンボーディングをエンジニアに対して実施する際のデメリット

オンボーディングを実施するうえでは以下のデメリットもあります。メリットばかりが注目されますが、よいことばかりではありません。

  • オンボーディングを実施すると既存のエンジニアのタスクがかならず増える
  • 実施するまでに綿密なカリキュラム設計が必要となる
  • 独善的な内容になってむしろ忌避されるケースもある

特に注意したいのは、独善的なオンボーディングになってしまうこと。本人の意思を無視して自社のビジョンや価値観、あるいは報酬のない労働を押し付けてしまうケースがあります。

オンボーディングの本来あるべき姿は、同じ船に乗ったクルーとして手を取り合い、目的地(成果・売り上げ)へ辿り着くことです。

決して新入社員の考え方を無理矢理変えて、自社のために動かすための手段ではないことを、くれぐれも忘れてはいけません。

オンボーディングの具体的な実施方法一例と注意点

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オンボーディングは有効な手段ですが、しかしその方法まだ強固には確立されていません。そもそも企業ごとで、フィットするやり方は異なるものです。それでも基本的なオンボーディングのステップとして、以下が挙げられるでしょう。

  1. 選考・内定段階からオンボーディングで理解を深める
  2. 入社時の研修で方向性を示す
  3. メンターとの1対1での教育を進める
  4. 入社してから1週間後にオンボーディングの再確定する

まずはこの4ステップを基本として考えます。自社とフィットしていない部分は、少しずつカスタマイズしましょう。

ステップについて一つずつ解説するので、参考にしてください。

1.選考・内定段階からオンボーディングで理解を深めよう

エンジニアに対するオンボーディングは選考・内定の段階から始まっています。

このステップの時点で、可能な限り情報を共有しましょう。

  • 会社資料
  • インターンシップ
  • プレ入社
  • ランチタイム
  • 懇親会

入社前の段階で接触して、できるだけ多くの情報を提供することが大切です。

入社してから差をつけたい、スタートダッシュを決めたい新入エンジニアは情報をしっかりと読み込みます。そうすることで、ある程度心構えや準備が整えられた状態から入社後のフローを進めることが可能です。

ただし注意したいのは、頻繁にイベントを開催すると本人の負担となること。たとえば内定直後にプレ入社や懇親会などが数多く開催されると、まだ学生身分を楽しみたい本人の気持ちに相反するケースがあります。

オンボーディングを十分に進めることは重要ですが、それは相手の同意や共感があって成り立つもの。押し付けがましい教育、あるいは「洗脳」にならないように注意しましょう。

2.入社時の研修で方向性を示す

エンジニアに対するオンボーディングでは入社時の研修で、どれだけ企業との共有経験を積めるかが重要です。具体的に以下の点は重点的に伝える必要があるでしょう。

  • ビジョンや理念の解説、共有
  • プロジェクトや業務への理解促進
  • 期待される役割の周知
  • オンボーディングの予定を伝える

これらはオンボーディングにおける重要なポイントです。どのような業務やビジョンがあって、自分自身に何が期待されるのか知ってもらいましょう。

そして今後はどのようにオンボーディングを進めていくのか解説し、本人がやるべきこと、目指すべき方向性を明らかにすることが大切です。

後ほど取り組み事例でも紹介しますが、オンボーディングが上手く回っている企業は、自社と社員の間でのすれ違いが起こらないように相当な注意を払っています。それができていれば誤解されづらく離職や業務上でのミス、不適合を避けることが可能です。

自社と社員の認識を一致させることは、過去の事例から見ても重視したほうがよいと言えるでしょう。

3.メンターとの1対1での教育を進める

入社してからはメンターと1対1での教育を進めましょう。ともに行動して業務への理解や人間関係の構築を図ります。

わからないことはメンターが解決し、速やかにチームへ馴染んでいくのが理想系です。本人との関係が良好だった場合は、あっという間にエンジニアチームの一員として働けるようになります。

毎日対話する時間を設け、理解度や知識量を確認しましょう。まだ社会に出たばかりの新入エンジニアは、社会人や組織人にそぐわない言動や行動を取ることもあります。

そんなときはメンターがきちんと導きを与え、エンジニアとして社員としてふさわしい行動を取るように教育しましょう。

一方で新入りエンジニアとメンターとの相性がさほどでもないことも少なくありません。そういった問題があれば、必要に応じてメンターを交代するといったやり方もあります。

また新入エンジニアはもちろん、メンター側にも多少の負担やプレッシャーはかかるもの。双方に対するケアを忘れないようにしましょう。

4.入社1週間〜1ヶ月後にオンボーディングの方向性を再確定する

入社してから1週間〜1ヶ月経つと、本人とメンター、そして企業の三者間での相互理解が進みます。いったんこれまでの様子を踏まえ、オンボーディングの方向性を再度確定させましょう。

成長の早い社員なら、より実践に近い業務へ投入してもよいかもしれません。まだ人間関係の構築ができていないなら、コミュニケーションの機会を増やすなどの取り組みも必要でしょう。

オンボーディングは、最初に決めたことをかならずしも貫き通す必要はありません。大切なのは現在とこれからの社員と企業にとってベストな方向性を共有すること。

様子をしっかり観察し、どのようにオンボーディングを進めていくか確定しましょう。

オンボーディングを実施するうえでの注意点

オンボーディングを実施するうえでは、以下5つの注意点があります。

  • 入社前の準備を念入りに実施しておこう
  • 人間関係を円滑にしておこう
  • 現場と人事で求めるレベルを一致させよう
  • オンボーディングが実現できるように体制を整える
  • リモート環境であれば、”見える化け”を促進しコミュニケーションの機会を十分に設ける

特に重要なのは、入社前の念入りな準備。この時点でも社員(となる人材)にはたらきかけるチャンスはあります。早めに動き出して、オンボーディングがスムーズ化するようにしましょう。

リモート環境が採用されている場合は、自主性に依存することを避ける必要があります。作業の様子な成果を見える化し、企業と社員での足並みを揃えるようにしましょう。

また、コミュニケーションの機会を十分に設けることが大切です。リモート上での面談はもちろん、コロナウイルス感染対策を実施したうえで、オフラインでの面会も実施しましょう。

オンボーディングの取り組み事例3選

ステップアップ

オンボーディングでは、すでにいくつかの取り組み事例が存在します。その中でも特に目立ったものを紹介しましょう。

  • 日本オラクル株式会社
  • 株式会社キャスター
  • GMOペパボ株式会社

いずれもオンボーディングでは、国内で多くの企業から参照されており、モデルケースとして考えるには十分です。

それぞれについて詳しく解説しますので、参考にしてください。

社員満足度85%を目指す|日本オラクル株式会社

(引用:日本オラクル株式会社

日本オラクル株式会社では、「会社の印象は1ヶ月で決まる」という考えのもと中途社員に対してオンボーディングを強化。入社して初めの1ヶ月間で会社の理念、製品知識を身につけてもらい、従業員とコミュニケーションをとる機会を設けています。

例えば、営業社員に対して5週間にわたる研修を実施し、社内の人々を関係を構築しながら必要な知識やルールを学んでもらいます。

さらに、社員エンゲージメント室から「サクセスマネージャー」と呼ばれる担当者が、毎週1時間かけて研修生とミーティングを実施。現状をヒアリングし、必要に応じて上司や周囲に働きかけをおこなっています。

日本オラクル株式会社では、以上のようにオンボーディングを強化しながら社員満足度85%を目指しています。

参考:会社の印象は1ヶ月で決まる!?社員エンゲージメント85%に挑む、日本オラクルの挑戦

入社3ヶ月での独り立ちを目指す|株式会社キャスター

キャスター

(引用:株式会社キャスター

株式会社キャスターは、オンライン秘書やアシスタントをサービスとして提供する会社です。同社社長のnoteでは、以下のようなオンボーディングが実施されています。

  • 1人前の基準を決定する
  • いつ、何をできているかKPI・KGIを設定する
  • ドキュメント化による業務の標準化
  • 1on1ミーティングの高頻度実施
  • 責任者・メンターのアサイン
  • オープンな情報の伝達
  • 「言ってはいけないことなどない」というルールの伝達
  • 雑談チャンネルの設定

株式キャスターのオンボーディングはかなり徹底されており、「これで馴染めないはずがない」というレベルで整備されています。再現するには多くのハードルがありますが、一度自社でも取り入れられないか検討してみましょう。

ただし「言ってはいけないことなどない」という取り組みは、ある意味でリスキー。どこまで株式会社キャスターのやっていることが自社で安定して運用できるかどうか、よく考える必要があります。

参考:noteーリモートワークでのオンボーディングノウハウ

ユニークで効果的なオンボーディング|GMOペパボ株式会社

ペバボ

(引用:GMOペパボ株式会社

GMOペバボは、レンタルサーバーなどを提供するIT企業です。同社はユニークで効果的なオンボーディングを実施することで知られています。一般的な手法はもちろんのこと、「ペバボカクテル」という独自の取り組みが注目を引きます。これはチャットグループにて、新入社員を歓迎し、質問に答えるためのチャンネル。

ここではあらゆる質問がなされ、たとえば「セロハンテープがなくなったら、どこから補充すればよいか」といったささいな困りごとでも聞けるような環境になっています。

新しい環境に飛び込んだエンジニアは、多少の質問をするにも遠慮を感じてしまうものです。しかしペバボカクテルが用意されていることで、自分自身が歓迎されていることを知り、業務に必要な知識を次々と吸収できます。

また「ランチワゴン」と称して、異なる部署の新人エンジニア同士がランチに出かける機会も。お互いが社内における気の置けない仲間となることで、心細さを軽減し、定着率の向上へとつなげているわけです。円満で暖かい雰囲気で、新入社員を歓迎するオンボーディングが実施されています。

参考:GMOペパボが実践するオンボーディング|3つの組織課題とその解決策を聞いてみた

まとめ:エンジニアにもオンボーディングを実施しよう

ビル

企業やエンジニアリングチームで注目されるオンボーディング。これが適切に実施できれば、新入エンジニアを暖かく迎え入れつつ、速やかに戦力化し、そして定着率を向上させられます。

早くチームに馴染んでもらえるように、ぜひともオンボーディングを実施していきましょう。

具体的な手段としては、以下が挙げられます。

  • 入社前段階での交流やヴィジョンの共有
  • 社内ルールの説明
  • 先輩社員との交流
  • OJT
  • 研修会

これらの取り組みを通して、会社や既存スタッフとの一体感を深め、業務の目的や企業としての方向性についてシェアしましょう。

上記の手段は、会社における暗黙知を理解したり、円満な人間関係を築いたりするうえでも大切です。メンターは新入エンジニアと誠実に向き合いつつ、企業自体もそこをフォローアップするようにしましょう。

オンボーディングはまだセオリーが確立していません。自社でもやや手探りな部分は出てくるはずです。

しかし毎年オンボーディングを繰り返すことでPDCAサイクルが周回され、少しずつ合理的で効果の高い手段となるでしょう。

エンジニア不足が叫ばれる中、自社でもオンボーディングを取り入れられないか検討してみましょう。