- 自社でエンジニアの数が明らかに不足している
- 本当に今、エンジニアは不足しているのか? 将来的にはどうなるのか?
- 外国人を採用するメリットやその方法を知りたい
上記のように考えている人は多いのではないでしょうか?結論から言うと現在はエンジニアが不足しており、今後はさらに人手不足へと進むと予測されて、外国人人材の確保がトレンドとなりつつあります。
このままでは自社だけがエンジニアを確保できずに苦しむ、という問題が起こりかねません。そこで本記事では以下について解説します。
- 外国人エンジニアの採用が必要なほどの人材不足になった理由
- 採用するメリットやその手法について
エンジニアの人材不足に不安を感じている担当者はぜひご参考ください。
目次
日本が外国人エンジニアの採用が必要なほど人手不足!その原因は
日本のIT業界は著しいエンジニア不足の状態にあります。経済産業省の調査によれば、2018年時点で22万人もの人材が不足していると報告されています。
加えて2030年には79万人ものエンジニアが足りなくなると予測。つまり現時点でも相当足りていないし、今後はもっと厳しくなるわけです。
視点を変えると、現在エンジニア一人に対して7件の求人がある状態にあると報告されています。”逆”採用倍率は7倍という異常な事態。本記事のテーマである外国人エンジニアの採用を、真剣に検討すべき情勢にあります。
ここまでの人手不足に陥った原因は大きく分けて4つ挙げられるでしょう。
- 少子高齢化で候補となる数が減っている
- STEMやIT教育の遅延や不備
- ITや最先端技術の進歩と市場拡大が早すぎる
- ITやエンジニア業務に対するネガティブイメージ
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
参考:IT人材需給に関する調査
少子高齢化で候補となる数が減っている
外国人エンジニアが必要なほど人材不足になる最大の理由は、少子高齢化です。就職市場に現れる人数が少なくなり、そもそも候補の数が少なくなっています。
日本の人口は、2008年をピークとしてその後は減少傾向。一度も前年比より多くなった年はありません。
ある国の人口が±0で進行するには、出生率は2.0以上、つまり二人っ子の世帯がメインでなければいけません。しかし2020年での出生率は1.34。要するに、このままだと人口が減り続けるわけです。
そもそもの採用対象者が少ないため、どう考えてもエンジニアの数が足りなくなります。さらにその中から自社にフィットしていたり、特段高いスキルを持っていたりする人物を探すのは、単純に確率で考えても難しいものです。
STEMやIT教育の遅延や不備
またSTEMやIT教育が不備や遅延も理由として挙げられます。2010年代前半から、プログラミングを義務教育に組み込む必要性は訴えられていました。
しかし実際に小学校でプログラミングが授業として採用されたのは2020年の話。すでに世界中でSTEM教育が一般化してから、かなり遅れています。
ちなみに中国では2017年の段階では一部小中学校でプログラミンが教育として組み込まれていました。2018年には高等学校でプログラミング教育が”必修科目”に。つまり中国人は高校を出ているなら、かならずプログラミングを学んでいるわけです。
イタリアやドイツの諸外国も同様。日本のSTEM・IT教育はひどく遅れているといえます。
まだプログラミング教育もさほど整備されておらず、不備があるとすら言えるでしょう。プログラミングやエンジニアリングを教えてはいるものの、インフラ・ソフトウェアなど細分化された教育内容ではありません。
そしてもっとも直接的なスキルを学ぶ機会になるであろう高等学校では、プログラミングは必修はできていません。この状況下において、日本人のエンジニアが不足するのは当然だと言えるでしょう。
ITや最先端技術の進歩と市場拡大が早すぎる
ITや最先端技術の進歩と市場拡大が早すぎるのも問題です。IoTやビッグデータなどの新しい技術が登場し、オペレーションスキルが追いついていません。
市場拡大も2008年以降ずっと右肩上がりです。2020年は一度縮小しましたが、コロナ禍の例外でしかありません。2022年以降は再び市場拡大すると見られます。
IT企業にとって市場の発展は歓迎すべきことですが、それにしても進歩も拡大も早すぎます。これについていけるのは、ほんの一部の大企業といったところでしょう。
参考:2020年にマイナス成長だった国内IT市場が緩やかに回復へ─IDC
ITやエンジニア業務に対するネガティブイメージ
ITやエンジニア業務に対するネガティブイメージも一因です。一時期はインターネット上での噂や一部報道で、エンジニアリングの現場で以下のような内容が語られました。
- 長時間労働
- 残業
- 納期前の徹夜
もちろん全てのIT企業やエンジニアチームが、上記のような環境にあるわけではありません。しかし一部の事例があまりにも衝撃的だったため、ITやエンジニア業務に対してブラックな印象を持たれています。
これは噂ベースではなく、現実にエンジニアを激務で使い潰すケースがあったため、否定的な見方が出るのは当然です。この衝撃的な印象の悪さを回復するにはしばらくかかるでしょう。
ここでは、「過去にはブラックな企業もあったが、自社はむしろホワイトなエンジニアチームである」とアピールすることが重要だと言えます。
【補足】将来的にはさらにエンジニア不足が起こるのは明らか
補足しておくと、将来的には更なるエンジニア不足が起きるのは明らかです。2030年時点でも79万人が不足すると解説しました。この時点でも相当苦しいデータですが、このままだと将来は更なるエンジニア不足が進行します。
日本の人口は、2055年には1億人以下になると予測されています。ここからプログラミング業界に多数の人材が入り込んで隆盛するイメージは持てないでしょう。よほど政府がプログラミング教育にコミットしない限りは厳しい状態です。
少なくなった人口から、エンジニアになる人がいて、しかも自社を希望して、本人も会社にマッチする可能性は限定的。そう考えるとエンジニアの存在は、今までよりずっと貴重な存在となるでしょう。
少し気の早い話ですが、数年後、数十年後を見越してエンジニア不足に対する超長期的な戦略を立てておいても遅すぎることはありません。
参考:2055年には1億人割れ…日本の人口推移(高齢社会白書)(最新)
外国人エンジニアを採用するメリットは5つある
敬遠されがちな外国人エンジニアの採用ですが、悪いことばかりではありません。例えば以下5つは強力なメリットだといえます。
- 人手不足が解消される
- 企業自体がグローバル化される
- エンジニアチーム自体のモチベーションが高まる
- 外国人エンジニアコミュニティとつながる
- 中国のIT分野の進化に対応できる
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
人手不足が解消される
外国人エンジニアを採用すれば、当然ながら人手不足が解消に向かうでしょう。国内で日本人の人材にこだわっていては頭数が不足するばかりです。
今後はさらに少なくなるので、日本人だけにこだわっていては自ら人手不足を引き起こすようなもの。
外国人エンジニアを採用すれば頭数が揃いやすくなります。もちろん日本語や日本文化への理解、あるいは単純なプログラミングスキルなどは確認したうえで採用しなければいけません。
しかしそれさえクリアできていれば、日本人を採用した場合日比較してさほど大きなカルチャーショックは生まれないでしょう。仮に異文化による違いがあったとしても、それ受け入れるダイバーシティな戦略がこれからは重要になるといえます。
企業自体がグローバル化される
外国人エンジニアがいれば企業自体グローバル化されるでしょう。これは今後、世界中のビジネスネットワークが親密になることが予測されるうえで重要なポイント。グローバルというだけで、対外的な評価や企業価値は高まります。
また外国人エンジニアがいれば、海外顧客を獲得しやすくなる側面も。国内だけではなく世界全体に対して自社のエンジニアリングを提供するチャンスを拡大できます。
エンジニアチーム自体のモチベーションが高まる
外国人エンジニアがいれば、チーム全体のモチベーションも上がるでしょう。なぜなら日本人とはまた違ったやる気や上昇志向を持っているからです。彼らに触発され、大きな成果を残す人材も出てくるでしょう。
特に発展途上国出身者は、キャリアアップに対して強い信念を持ちます。彼らは日本で成功して、帰国後にリッチな生活を送る「ジャパニーズ・ドリーム」を追いかけているわけです。その夢を実現するためなら、彼らは社内において必死で働き続けるでしょう。
そうでなくとも異国の地でエンジニアとして働こうと考えるのは、相当なビジョンと覚悟があってのこと。それだけでも外国人エンジニアの危害は評価できるでしょう。
また、特に東南アジアでよく見られる実力主義の風潮は、エンジニアチーム自体のモチベーションを高める要因となります。ただし年功序列をよしとするスタッフや企業もあるので、この点は一概にメリットだとは言えません。
いずれにせよ、モチベーションの高さがどのように作用するのか、きちんと予測しておく必要があります。
外国人エンジニアコミュニティとつながる
外国人エンジニアを採用すれば新しいコミュニティでつながれる可能性があります。国籍問わず、エンジニアはインターネット上で盛んに交流するのが得意。
あるテクノロジーについてDiscordやSlackなどで語り合うこともしばしばです。このコミュニティに接続することで、自社もナレッジを共有できます。
実践的でより進んだナレッジが、エンジニア同士のチャットには潜んでいるものです。外国人を採用したなら、コミュニティでの学びをシェアしてもらいましょう。
中国や東南アジアのIT分野の進化に対応できる
外国人が中華圏、もしくは東南アジア出身なら、各国の進化に遅れず付いていくことが可能です。特に中国のIT分野での成長はすさまじく、アリババやバイドゥなどの中国籍企業がすさまじい勢いで成長。ビッグデータや5Gなどの新しい技術を次々創出しています。
東南アジアも同様、ベトナムやインドあたりは欧米諸国に匹敵するほどIT分野での成長著しいことで有名です。
それらの技術や最新トピックは、当然中国語やベトナム語で書かれていおり、日本人では理解がやや遅れたり、解釈が違ったりします。しかし各国の言語を母国語とする人材を採用することで進化した情報をキャッチアップすることが可能です。
外国人エンジニアを採用するための準備とステップ
外国人エンジニアを確保するには、日本人の採用とはまったく異なる準備とステップが必要です。
- 外国語での求人概要を具体的な内容で発行する
- ホワイト企業であることを強調した情報発信
- 最新技術に触れられることを伝える
- キャリアアップのチャンスが豊富であることを伝える
- 面接では「日本へのこだわり」と「プログラミングへのスタンス」を確認
まず求人票を発行する時点でやり方が違います。そして外国人が抱えそうな不安を相殺するように、自社の魅力を発信しましょう。
日本人向けに採用活動を展開する感覚を流用してもうまくいかないので、注意してください。
外国語での求人概要を発行する
最初に外国語での求人概要を発行しましょう。中国人なら中国語、ドイツ、スイスなどならドイツ語です。英語でも読めるでしょうが、それでは理解が相違するケースも少なくないので注意してください。
そして注意したいのは、とにかく業務内容や責任の範疇、求める人材像やスキル、報酬システムなどを正確かつ詳細に記入すること。
海外は求人票の内容が契約のすべてだと判断する文化があるからです。書いていないことをやらせると、「最初の話と違う」ということで、トラブルになるかもしれません。
できる限り正確で詳細な内容で記入しましょう。
記載については、翻訳ツールを使ってもかまいません。しかし情報の齟齬が起こらないように翻訳者を挟んだほうがよいでしょう。またこの時点で海外の採用や求人に詳しい人物がいれば、アドバイスを受けながら求人票を作成したいところです。
ホワイト企業であることを強調した情報発信
採用活動ではホワイト企業であることを強調して情報発信しましょう。すでに外国人エンジニアは「日本のエンジニアリングの現場は時として過酷だ」と、ネガティブイメージを持っています。
自社はそうではないことアピールし、実際そのとおりである必要があります。自社ではエンジニアがどのように働いているのかきちんとアピールしましょう。
その方法としては、採用サイトでのコンテンツ発信などのマーケティング戦略が考えられます。とにかくオープンに、問題ない企業であることを伝えることが大切です。
最新技術に触れられることを伝える
可能であれば最新技術に触れられることもアピールしましょう。上昇志向の強い外国人エンジニアは最先端であることにこだわります。
ウソをつく必要はありませんが、最新技術について取り扱うことアピールすれば、より優秀な人材確保につながるはずです。
キャリアアップのチャンスが豊富であることを伝える
キャリアアップのチャンスは豊富であることを伝えましょう。最新技術や教育機会が充実し、外国人でも昇進できるとアピールします。
特に外国人エンジニアは、「日本人が優遇されるのでは」という不安を抱えているもの。そうではなくて、国籍・人種関係なく実力や貢献度でキャリアが形成できる、グローバルな姿勢を見せることが重要。
また外国人エンジニアは、「日本で成功してビッグになる」という野望を持っていることもあります。だからこそキャリアアップのチャンスが豊富かどうかは重要な問題です。
大きな成功を掴む足掛かりがあることで、スキルと情熱に満ち溢れた人材を採用しやすくなります。
面接では「日本へのこだわり」を確認しておこう
面接では特に「日本へのこだわり」を確認しておきましょう。
最初に「なぜ数ある国の中で日本を選んだのか」を確認する必要があります。ここで「日本文化と自分の性格がマッチした」「日本語が得意だ」などの根拠のある答えが欲しいところ。
もしこの質問に対する回答が明瞭でないなら、「とにかくなんでもいいからビッグマネーを稼ぎたい」という人物かもしれません。となると、日本文化にフィットしない可能性があります。
外国人エンジニアを採用するうえで役立つ転職エージェント3選
外国人エンジニアを採用するなら、通常の転職サービスはあまりフィットしません。ここは以下のような専門の転職エージェントを利用しましょう。
- G Talent
- Daijob agent
- Bridgers engineer
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
G Talent
(引用:G Talent)
G Talentは、外国人エンジニア専用の転職エージェント。日本での勤務を希望する外国人にとってはファーストチョイスとも言える著名なサービスです。自社でもG Talentは定期的にチェックする必要があるでしょう。
G Talentから紹介される人材のほとんどが日本語と母国語のバイリンガル。よって採用してすぐに深いコミュニケーションが取れ、戦力としてカウントできるようになります。
登録国籍は70以上と豊富なのもポイントです。
Daijob agent
(引用:Daijob agent)
Daijob agentも、外国人エンジニアを採用するうえで役立つサービス。バイリンガルのみを対象として紹介しており、IT分野で活躍できる人材を豊富に揃えておいます。
AIやRPA、アドテクノロジーなどの先鋭的な分野に精通した人物が多いのもポイントです。
Bridgers engineer
(引用:Bridgers engineer)
Bridgers engineerも、外国人エンジニアを採用するうえで役立つサービスです。世界80カ国の人材をデータベースとして揃えており、多様性が高いのが特徴。
また候補者の多くが日本での留学や生活を経験しており、チームにもすぐ馴染んで戦力になることが期待できます。
外国人エンジニアを採用するうえでの注意点とハードル
本記事では外国人エンジニアの採用について解説しました。最後に採用時の注意点とハードルについて解説します。
- 文化の違いを理解することが重要
- 日本の文化を理解してもらえるように努力する
- 日本語について学ぶ機会を与える
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
文化の違いを理解することが重要:ベトナム人技術者をモデルケースに解説
外国人エンジニアを採用するうえでは文化の違いを理解することが重要です。たとえばベトナム人の場合は以下のような文化を持っていることが多い傾向にあります。
- 自己主張をすることが強く求められ、意見を持たないことは恥だとされる
- プライドが高く、ミスを共有されるのをひどく嫌う
- 面子や体裁を重要視し、お互いに相手を批判しない
- ランチやディナーは誘った側が会計を持つ
- 時間にはさほど厳しくない
- レディーファーストが浸透している
- 楽観的で、「明日は今日よりも素晴らしいものになる」と構えている
よい、悪いではなく、日本とはずいぶん違う文化を持っています。これらを可能な限り理解し、受け止める必要があります。
日本の文化を理解してもらえるように努力する
外国人エンジニアを採用するうえで、日本の文化を理解してもらうことも大切です。これは食生活やチップの有無にとどまらず、主にビジネス面での考え方や価値観を示します。
特に以下の点はよく理解させる必要があるでしょう。
- 時間に対して非常にシビア
- 品質へのこだわりが強い
- 責任感が強い
- 連帯責任の制度がある
- 実力主義ではなく年功序列が優先される
- 形式的なミーティングが多い
- 協調性が重要視され、自己主張はさほど求められない
- あいまいな指示を出す
日本では当たり前のことが、外国人には驚くようなルールだったりします。私たちがイスラム圏で、男性同士がキスするのが物珍しいことと同様です。
また就業規則や業務のルールにも、文化の違いが反映されるケースも多々あります。だからこそこのあたりは、本人とていねいに読み合わせるなどの工夫が必要です。
日本語について学ぶ機会を与える
外国人エンジニアを採用するうえで日本語について学ぶ機会を与えるのが大切です。もちろん最初から日本語が堪能な人材もいます。最低限、就労ビザを取得できる程度には高度に学習しているでしょう。
しかし外国人エンジニアには、プログラミングの技術や知識があるだけで就労ビザを取得できるケースが多くあります。だから日本語のスキルもさほどではない場合も少なくありません。
本人の日本語力に不安があれば、研修の機会を与えてコミュニケーションロスが起こらないように配慮しましょう。
まとめ:外国人エンジニアとともに多国籍なプロジェクトを
本記事では外国人エンジニアを採用することについて詳しく解説しました。エンジニア不足が顕著になる中、日本人だけにこだわるのは得策ではありません。
グローバル化に準備する意味でも、外国人エンジニアを積極的に採用する姿勢が求められるでしょう。彼らを採用することにはもちろんハードルもありますが、それ以上に日本人にはないメリットを有しています。
ぜひ本記事で紹介した採用方法や注意点を参考に、人材不足の解消をダイバーシティの観点から解決し、外国人エンジニアの確保に動き出しましょう。