採用において重要になるのが、母集団形成です。母集団形成を行えば会社に合った人材を計画的に採用できるようになるため、コストを抑えて採用を進めたい企業にピッタリでしょう。
採用における母集団形成とは、会社に興味を持ってくれている候補者を集めておくことです。母集団形成にはさまざまな方法があるため、自社にマッチした方法を選び最適な母集団を形成しましょう。
この記事では、採用における母集団形成の基礎知識に加え母集団形成を行うメリット、母集団形成の手順・方法について解説します。採用に悩んでいる人事の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
採用における母集団形成とは?
母集団とは、もともと統計学の用語で調査を行う対象全体のことを指します。その意味が転じて、「母集団」は、採用において採用者候補となる集団のことを示すようになりました。
母集団には、求人に応募した候補者だけでなく、会社に興味・関心を持ってくれている段階の人材も含みます。「将来会社に入社する可能性のある人材」を母集団とし、早い段階から形成することで計画的に採用が進むでしょう。
母集団形成で大切なのは、質の高い母集団を作ることです。会社のニーズにマッチした人材で母集団を作らなければ、どれだけ人材の数を集めてもミスマッチが起き、最終的に人材不足に陥ってしまいます。
採用競争が激化しているいま、確実に会社のニーズに沿った人材を採用するため、母集団形成は不可欠であると言えるでしょう。
母集団形成を行うメリット
母集団形成には、時間も手間もかかるため「どうして母集団形成が必要なのか」と疑問に思う方は少なくないでしょう。
そこでここからは、母集団形成を行うメリットを3つ、解説します。メリットを理解し、母集団形成を採用に最大限役立てましょう。
採用予算が適正化される
母集団としてどれくらいの人数を確保するか決めておけば、採用予算が追加でかかる可能性を減らせます。母集団形成を行わない場合、会社のニーズに合った人材が確保できず採用期間が長くなり、コストが増大するかもしれません。
一方、母集団形成を行い、会社に興味を持っている質の高い人材を集めていた場合、計画通り採用が進み追加の予算は不要になります。
「毎年想定より採用にコストがかかってしまう」「採用コストはなるべく抑えたい」と悩んでいる場合、母集団形成に力を入れることが大切でしょう。
会社に合った人材を採用できる
母集団形成を意識して採用を進めれば、会社のニーズに沿った人材が採用可能です。母集団形成が不十分な状態だと、会社のカルチャーを理解していない人材や、志望度の低い人材からも応募が来てしまいます。
会社に合わない人材や、志望度の低い人材は、会社に長く定着しないのですぐに離職し、再び人材不足に陥る可能性が高くなるでしょう。
一方、母集団形成をすれば会社に興味を持っている人材だけを集められるので、ミスマッチを防げます。自社に合った人材が長期間定着していてくれれば、さらなる活躍も期待できるでしょう。
計画に沿った採用ができる
母集団形成をする過程では、求める人材像や採用人数を明確に決めて採用活動を進めます。そのため、「想定よりも人が集まらなかった」「ニーズに合致する人材が来なかった」といったトラブルを防ぎ計画的に採用ができるでしょう。
ただし、最適な人数を集めるにはある程度データが必要になります。過去に応募者のなかからどれだけの人数が面接に進み、最終的に何人内定に至ったのか、正しく把握してから母集団形成を行わなければいけません。
母集団の人数は、多すぎても少なすぎても計画に影響が出てしまいます。最適な母集団形成をするため、まずは過去の採用活動を振り返ってみましょう。
採用における母集団形成のポイント
採用において質の高い母集団形成をするには、ポイントを意識して進める必要があります。
ここからは母集団形成で知っておきたいポイントを3つ紹介するので、採用活動の前にぜひチェックしてください。
求める条件を明確にする
母集団形成を行う際には、まず人材に求める条件を明確にしましょう。ただ応募者を増やすだけでは、会社に合った人材が採用できず最終的に人材不足に陥る可能性があります。
適切な人材が会社に興味を持ってくれるよう誘導し、質の高い母集団を形成しましょう。
求める人物像は、人材が不足している部署と連携を取りながら細かく決めてください。「業務経験は3年」「適性試験で○○点以上」など客観的に分かる項目を定め、求人票にも必須条件をはっきりと書きましょう。
応募者との接点を多く作る
安定した母集団を作るには、応募者との接点を多く作り、継続的にやり取りする必要があるでしょう。母集団形成をするうえで大切なのは、応募者の志望度やスキルを正確に把握することです。
応募者との接点が少ない場合、応募者の状況を正確に把握できず、適切ではない人材に内定を出してしまう可能性があるでしょう。応募者とは直接話す機会を設け、会社に合った人材かどうか見極めるのがおすすめです。
また、せっかく優秀な人材と出会えても、一切連絡をせずそのままにしていた場合、志望度が下がっていしまい内定辞退につながるかもしれません。
手間はかかりますが母集団に含まれる候補者には定期的に連絡し、就職活動の状況などを聞くようにしてください。
採用のターゲットを広げる
母集団を形成する際は、採用のターゲットを広げることも大切になります。もちろん、採用ターゲットを明確に決めた以上、必須のスキルを持たない候補者については母集団から外す選択も必要です。
しかし、入社後に身につけることができるスキルについては、現段階で持っていなくても問題ありません。とくに応募者が少なくなりがちな中小企業の場合、高いスキルを求めすぎると該当する人材がいなくなり、母集団形成ができない可能性があります。
母集団に十分な人材が集まらない場合は採用ターゲットを広げ、より幅広い人材を候補に入れる必要があるでしょう。
採用における母集団形成の手順
採用においては、母集団形成の手順を事前に知っておくことも大切です。ここからは母集団形成の一般的な流れを紹介するので、自社の採用状況に合わせて母集団形成の手順を取り入れてください。
採用人数・求める人物像を決める
まずは採用人数や、求める人物像を明確に決めておきましょう。これからどの事業でどれくらいの利益を出したいか考え、その目標達成に必要な人材を選びます。
採用人数は、未経験者を採用するか、経験者を採用するかによって変わります。即戦力と未経験者、どちらの方が効率的に事業の発展につながるか考え、ターゲットを絞りましょう。
採用スケジュールを決める
次は、採用スケジュールの制定です。新卒採用の場合、学生側のスケジュールも考慮しながら、いつまでに何人の採用をするか決めましょう。
スケジュールを決める際には、内定・面接・募集にかかる時間を踏まえる必要があります。過去、採用活動を行なったときは内定までにどれくらいの時間がかかったか調べ、スケジュール作りに役立てましょう。
採用の方法を選ぶ
会社のニーズに合ったターゲットを確保するため、自社に合った採用方法を選びましょう。採用方法ごとのメリット・デメリットについては、次の見出しで詳しく解説しています。
ターゲットがどのような採用媒体を使っているのか調べ、ターゲットとなる人材が多い媒体を選んでください。
採用活動を実施する
計画を策定したら、計画に沿って採用活動を開始しましょう。想定以外の事態が発生した場合、適宜話し合いの場を設け今後の方針について改めて検討する必要があります。
採用活動中人事以外の社員からも協力を得られるよう、各部門の方に事情を伝えておきましょう。
採用活動の振り返りをする
採用活動後は、次の採用に向けて振り返りをしましょう。どのような人材からどれくらい応募があったかをデータとして残せば、次の採用活動の母集団形成にも役立ちます。
採用についてのデータは、次回担当者が変わっても問題なくチェックできるよう、客観的な視点で残しましょう。
母集団形成を行う方法
母集団形成を行う方法は複数あり、それぞれの方法にメリット・デメリットがあります。ここからは母集団形成をする方法とその特徴をまとめているので、自社に合う方法を選ぶ際に役立ててください。
求人サイト
求人サイトのメリットは、多くの人に会社の存在を知ってもらえることにあります。応募者の数を増やし母集団を形成するなら、求人サイトが最適な選択肢でしょう。
ただし、応募者がいない場合でも求人情報の掲載にはコストがかかります。採用に割けるコストが少ない場合、求人サイトの利用は短期間のみにしましょう。
ハローワーク
採用コストをかけず、幅広い人材に求人を届けられるのが、ハローワークです。多くの情報量を載せられるため、ターゲットを絞った採用には最適でしょう。
しかし、手続きに時間がかかる点、ハローワークを経由して面接日程などを調整しければいけない点から、手間がかかる採用方法とも言えます。自社で自由に採用活動をしたい場合、他の母集団形成方法を検討しましょう。
人材紹介
エージェントなどを利用する人材紹介なら、ターゲットに合った人材を効率よく探すことができます。また、面接日程の調整などもエージェントが行ってくれるので、コスパ良く採用活動を進められるでしょう。
ただし、人材紹介では採用した人材の年収のうち、30%〜40%ほどの手数料を支払う必要があります。採用した人材の年収が高いほど人材紹介に支払う金額は大きくなるので、注意が必要です。
説明会
来場者の多い説明会なら、たくさんの就職希望者と直接会うことができます。ただし、知名度の低い企業が自社のみで説明会をしても、なかなか人が集まらない可能性が高いです。
また、説明会では大企業ばかり注目され、中小企業には人が来ないことも少なくありません。自社の知名度が低い場合、まずは他の母集団形成方法を使うのが良いでしょう。
採用HP
自社独自の採用HPを作れば、求人票に載せきれない情報まで細かく伝えることができます。会社の情報を詳しく知ってもらい、会社のカルチャーにより適した人材を母種団に加えましょう。
ただし、採用HPを自社のみで作るには時間も手間もかかります。外部に委託することもできますが、費用が発生するため時間とコストに余裕があるときに制作する必要があります。
ダイレクトリクルーティング
会社側が求職者に直接声をかけるダイレクトリクルーティングなら、会社のニーズに沿った人材と的確に出会えます。スカウトをきっかけに会社に興味を持ってくれる求職者も多いため、中小企業の母集団形成にも最適でしょう。
一方、数多くの求職者から自社に合った人材を選び、やり取りするにはコストがかかリます。人事担当者が少ない場合は大きな負担になりかねないので、スカウトで発生するやり取りを外部に委託できる代行サービスの利用も検討してください。
リファラル採用
社員が知人・友人を紹介するリファラル採用なら、採用コストを抑え会社のカルチャーに合った人材を探せます。また、転職・就職活動をしていない潜在層にも早い段階から出会えるので、他社と競合せず優秀な人材を確保できるでしょう。
ただし、リファラル採用は社員の協力なしで成り立ちません。社員が協力してくれなければ、1人も採用できない可能性があります。まずは社員にリファラル採用の存在を知ってもらい、制度を浸透させる必要があるでしょう。
SNS
コストをかけず、幅広い層にアプローチできるのが、SNSです。SNSの拡散力をうまく使えば、全国から候補者を募ることができるでしょう。
ただし、SNSには就職・転職を検討していない人も大勢います。そのため、情報が拡散されても採用につながらない可能性は少なくありません。SNSは母集団形成のサブツールとして活用し、気長に運用を続けてください。
まとめ:母集団形成で会社に合った人材を確保しよう
母集団形成を行うことで、会社のニーズに合った人材を計画的に採用できます。母集団形成をせずに採用を進めると希望通りの人材が集まらず、事業に悪影響が出る可能性があるため、早い段階から母集団形成を意識して採用活動をしましょう。
母集団形成を行う方法には、求人サイトやハローワーク、採用HPなどさまざまな方法があります。
自社に合った採用方法を的確に選び最大限利用することは、効率的な母集団形成のコツです。それぞれの特徴を踏まえ、採用活動に取り入れていきましょう。