「苦労して内定を出すものの多くの場合辞退されてしまう」
「辞退者が増えてきており、現場に混乱を招いている」
このような課題を抱えている採用担当者は少なくありません。
特に昨今は求職者に有利な売り手市場が続いているため、求職者が辞退するハードルが低くなっています。
しかし、内定辞退は適切に対策を練ることで大きく減らすことができます。
この記事では、昨今の内定辞退に関する現状から内定辞退が多くなる理由、減らす方法などを紹介致します。
毎年辞退者が多く、人員の整理が上手くいかない企業の社長さんや採用担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
内定辞退とは?
内定とは、将来において正式に採用することに対し合意が得られた状態です。
一般的に「内定承諾書」と呼ばれる書面で契約を交わすことでその効力を発揮します。
内定は一度出してしまうと企業側からは原則破棄できませんが、求職者は内定を承諾後も法的に問題なく辞退可能です。
内定を承諾後に、求職者側が自分の都合で内定を辞退することを内定辞退と呼びます。
企業側は軽い気持ちで内定を出せないので、辞退されることは防がなければなりません。
内々定とどう違う?
内々定という言葉もよく使用されますが、内々定と内定は似て非なる意味を持ちます。
内々定は内定と違い、採用を予定しているという通知であり、法的拘束力はありません。
実際に取り消されるケースはほとんどありませんが、内々定の場合まだ企業側から採用を取り消すことができます。
例えば大学生に内々定を出したとして、単位が足りず卒業が出来ない場合その内々定は取り消した方が良いですよね。
中途採用ではあまり見られませんが、新卒採用では面接から入社までの期間が長くなるケースが多く、内々定が使われます。
内定辞退の現状
内定辞退は、ほとんどの企業で起きている現象です。
2021年卒マイナビ企業新卒内定状況調査によると、新卒採用を実施している約8割の企業は内定辞退を経験しています。
中途採用における内定辞退率は新卒採用に比べて少なくなりますが、それでも全体の約2割の企業は経験しています。
特にサービス業と首都圏での内定辞退率が高いため、条件に当てはまる企業は特に対策が必要でしょう。
内定辞退と無縁の企業はほとんどないので、きちんと対策を打っていくことが求められます。
参考:内定辞退を防ぐには
参考:マイナビ 中途採⽤状況調査2020年版
内定辞退で企業が被る損失
内定を辞退されると企業には多かれ少なかれ損失が発生します。
一般的に新卒1人採用するのに約100万円程かかると言われており、そのかけたコストが無駄になってしまうのは確実です。
また、企業は採用した人材を後からクビにすることはほとんどの場合できません。
そのため、採用辞退者が出るのを見越して多めに採用しておくという戦略も取りづらい現状があります。
例えば、自社に合わず欲しくもない人材に内定を出してその方が入社した場合、コストをかけたくない人材に毎月給料を何年も支払う状況になります。
そうなると、100万円どころではないコストがかかりますよね。
したがって、多くの企業は採用予定人数に合わせて内定を出し、内定辞退が発生しないように努める必要があります。
なぜ内定辞退が多いのか
内定辞退はどうして多くなってしまうのでしょうか。
内定辞退が発生する理由を6つ紹介致します。
売り手市場傾向にあるため
採用市場は売り手市場が続いています。
求職者が内定を複数得やすい状況になっているため、内定を貰っても他企業に流れやすくなっています。
例えば、自分の企業より良い条件の企業からも内定が出ていると、求職者は辞退してしまいますよね。
特にエンジニア市場の売り手は顕著なため、エンジニア採用を狙うなら内定辞退への対策は必須でしょう。
内定者の志望度が低いため
内定者は、志望している企業に受からなかった時のため志望度が低い企業にもエントリーしている可能性があります。
そのため、受けに来ている求職者の志望度が高いかどうかをしっかり見極める必要があります。
特に新卒の就活生の方が中途よりもエントリー数が増える傾向にあります。
求職者は第一志望でなくても「第一志望です」と答えるはずなので、総合的に判断しましょう。
求職者の志望度が分かれば、志望度の低い求職者を予め落とすことで内定辞退率を減らすことができます。
待遇に不満を持っているため
給与や勤務地などの待遇が希望に沿っていないと、内定を辞退されやすくなります。
特に中途採用を目指す場合、新卒採用に比べ求職者は待遇をシビアに見ているため待遇は重要です。
たとえ仕事内容や企業理念に共感を抱いていたとしても、待遇が悪いというだけで辞退を決める内定者も少なくありません。
求職者の前職の待遇と市場での相場を考慮して、不満を持たれない待遇を設定することが必要です。
思っていたイメージと違ったから
内定を受けてから企業のことを知っていき、思っていたイメージと違うという理由で、内定後に心変わりするケースがあります。
特に大学生の新卒採用では自らが成長できるかどうかを重視しているため、その成長できるイメージが崩れてしまうと内定を辞退してしまいがちです。
例えば、内定者懇親会で社員の方と出会った結果、自分が思うような人間関係が築けなさそうという理由で辞退することもあります。
自社を過大に良く見せる必要はありませんが、実際に伝えたい自社の魅力を内定者に伝わるよう準備しておきましょう。
内定から入社までの期間が長いため
内定を貰ってから入社までの期間が長いと、内定は辞退されやすくなります。
なぜなら、その長い期間の間に考えが変わることや、他企業の選考を受けてしまう可能性があるからです。
特に新卒の就職活動では1年以上前から内々定という形で内定を出す取り決めをするケースも多いでしょう。
内定後、どのようにして自社を思い続けてもらうかを考えて行動しましょう。
採用担当者への印象が良くないため
採用担当者への印象が悪いと内定辞退につながりやすくなります。
求職者は人間関係を重視しているケースが多く、採用担当者と上手くやっていけそうにないと思うと良い人間関係が築けないと判断しがちです。
選考中は採用担当者の印象が良くても、内定後のフォローが全く無かったり内定者懇親会などで採用担当者の態度が悪かったりすると、入社に不安を覚えてしまいます。
内定を決めた後も、求職者とは丁寧にやり取りをすることを心がけましょう。
内定辞退を減らすための取り組み
ここでは、内定辞退を減らすための取り組みを紹介致します。
内定者と信頼関係を築く
内定者との間に信頼関係を築きましょう。
採用担当者への不信感は、たとえ会社に魅力を感じていても内定辞退に繋がります。
就職先を人で選ぶ人も少なくなく、逆に言えば業務内容に魅力がなくても採用担当者が良い人だったという理由だけで入社する人も少なくありません。
例えば、普段から返信を早くするだけでも内定者からは心象がよくなり信頼を勝ち取れやすくなります。
場合によってはメールや電話よりもLINEやInstagram等のチャットツールを使った方が、内定者と緊密にやり取りでき、信頼関係を築けるでしょう。
内定者の家族にも配慮する
内定者の家族、特に親に配慮することで他企業より一歩リードした内定辞退対策ができます。
近年『オヤカク』と呼ばれる、企業側が就活生の親に内定承諾の確認を取るケースが増えています。
確認のみならず、『親御様説明会』という形で就活生の親に対して企業の説明会を開くケースも。
一見意味のない行為に見えますが、実は2018年の就職活動では、親の意向によって内定辞退があった企業は51.7%。親が就活生の決定に大きく左右していることが伺えます。
特に新卒の就職活動ではその傾向が顕著です。
実際に『オヤカク』が内定辞退対策に必要だと感じている企業も半数以上なっています。
他企業に差をつけられないためにも、まだ『オヤカク』をしていない企業は今からでも取り組みましょう。
社内と内定者間の交流を増やす
内定を出してからも、定期的に内定者と接触することは重要です。
接触回数が多い方が、事前に内定者の不安や悩みを聞く機会も得られ、不安を解消する機会も増えます。
例えば、社内の人間との交流会や社内見学会を定期的に実施しましょう。
内定者も、貴方の企業に興味があるなら大抵の場合進んで参加してくれるはずです。
内定者同士の交流を増やす
内定者同士の交流を増やすことも大切です。
同じ会社の内定者同士だからこそ、採用担当者にはなかなか言えない悩みを話し合えます。
例えば、入社を悩んでいる内定者が入社意欲の高い内定者と会うことで、入社に対して前向きな姿勢に変わることもあります。
採用予算内にはなりますが、内定者を集めた飲み会を開くなど、内定者同士の交流を増やす取り組みを進めてみましょう。
内定を辞退された際の取るべき行動
いくら対策をしても少なからず内定辞退は起きてしまいます。
どうしても入社してほしい場合は、直接面談する機会を丁寧に交渉してみましょう。
基本的には潔く引き下がるのがおすすめです。
なぜなら、内定辞退者から態度が悪いと思われると企業に悪いイメージが付いてしまうからです。
間違っても、内定者を脅すようなことしてはいけません。
怒りのまま内定辞退者を詰めてしまう企業もありますが、お互いにとって得になることは何もないでしょう。
また、可能であれば内定を辞退した理由を聞いておきましょう。
理由が分かれば、次の採用に活かすことができ効率よく内定辞退への対策を打てるようになります。
内定辞退を減らせるサービス
内定辞退を減らせるサービスには大きく分けて以下二つのサービスがあります。
- 採用代行サービス
- 採用管理システム
採用代行サービスを利用すれば、スピーディーに採用業務を進められるため、レスが遅い等の理由で内定者から不信感を抱かせる心配が減ります。
また、内定者研修をより効果的に運用してくれたり、内定辞退が出た場合は辞退理由を代行して適切にヒアリングしてくれたりするサービスもあります。
採用管理システムでは、内定者個々の特性や事情に合わせたきめ細かな対応が実現可能です。
自社内でできることに限りがある場合、他企業が提供しているサービスの利用も検討してみましょう。
内定辞退を減らすために企業が取り組んでいる事例
ここでは、内定辞退を減らすための取り組み事例を紹介します。
サイボウズ株式会社
出典:サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社では、「サイボウズLive」というグループウェアを利用して内定者やその保護者も参加できるワークショップイベントを実施し増田。
内定者と企業とのコミュニケーションを促進することで、内定者の会社への理解を促進する目的です。
また同期同士の絆を深める効果もあるため、入社前の人間関係に関する不安を取り除き、内定辞退を未然に防ぐ効果が期待できるでしょう。
参考:新卒採用|学生の内定辞退を防止する企業取り組み事例まとめ
国際自動車株式会社
出典:国際自動車株式会社
国際自動車株式会社では、「オープンカンパニー」という内定者の保護者向けのイベントを開くことで内定辞退対策をしました。
新卒採用のみならず中途採用でも実施しており、実際に参加して学生についてはかなり効果を上げています。
最終的に働くか働かないかを決めるのは内定者自身ですが、不人気業界の場合、家族が反対するケースが少なくありません。
保護者の方の意識を変えることで、内定者も安心して企業に入社できるようになるでしょう。
参考:内定辞退対策で効果大の「オープンカンパニー」。中途採用向けでも奏功
株式会社パソナ
出典:株式会社パソナ
パソナでは、プログラミング研修の実施が内定辞退の低下に貢献しています。
多くの内定者は、入社後に問題なく仕事をこなしていけるかに強く不安を感じています。
研修を実施することで、その不安を和らげることができます。
入社後により高いパフォーマンスが期待できるので、まさに一石二鳥の対策と言えるでしょう。
参考:内定辞退を防ぐには?辞退が起こる理由と防止策、企業事例
クックパッド株式会社
出典:クックパッド株式会社
クックパッド株式会社では、内定者研修でトランプカードを使ったワークを実施しました。
内定者だけでなく社内の先輩方も参加しているため、既存社員とのチームワーク育成が期待できます。
研修を通じてお互いのことが分かり合えるため、人間関係に関する不安は入社前から和らぐことが考えられますよね。
他にも、研修により内定者の質を入社前に向上させる効果も期待できます。
参考:内定辞退理由ランキングを紹介 企業がすべき対策や事例を解説
SanSan株式会社
出典:SanSan株式会社
SanSan株式会社では、候補者一人ひとりの志向性に合わせた選考体験を設計することで内定辞退率を大きく改善させました。
比較的採用しにくい新卒のエンジニア市場での成功ともあって、注目を集めています。
同社では、競合他社の内定を理由に内定辞退が相次いでいました。
内定辞退を減らすため、就活生が重視しているポイント、自社に期待している点と今足りていないことを設計した上で、個々へのアクションを実行しました。
結果として内定承諾率が向上し、18卒が4名、19卒が11名、20卒が20名、21卒が20名と順調に採用人数を増やしています。
実際に、旧帝大や大学院の熱量の高い学生を中心に採用できているようです。
参考:内定承諾率を劇的に改善。Sansan流、新卒エンジニア採用の秘訣
内定辞退は対策すれば減らすことができる!
今回の記事の内容を以下にまとめました
- 内定辞退はほとんどの企業で起きている
- 内定辞退は企業側に損失が発生するため、防ぐべき
- 内定辞退を防ぐには内定者と積極的にコミュニケーションを取ることが重要
- 内定辞退が発生しても焦らず大人な対応をすべき
- 採用代行サービスや採用管理システムを利用することで内定辞退を減らせる
売り手市場が続いているため、どうしても内定辞退が増えやすくなっています。
しかし、内定辞退は企業が努力することで大きく減らすことができます。
採用活動に必死で、内定を出した後のフォローがいい加減になっていませんか?
まずは、採用担当者自らが内定者との信頼関係を築くように動いてみましょう。
どうしても社内のリソース不足で内定者へのフォローができない場合、外部の採用代行サービスなどの利用も視野に入れてみましょう。
一時的にコストが掛かりますが、内定辞退はが減ることや採用担当者の負担が下がることにより、長期的なコスト削減につながることもあります。
自社の現状に合わせて、適切に内定辞退を防ぐための対策を打ってみましょう。