近年では、これまで主流だった新卒採用や中途採用などに加えて、ポテンシャル採用を導入する企業が増えています。
この記事ではポテンシャル採用を行う際に気をつけたいポイントや、メリットデメリットについて解説していきます。
目次
ポテンシャル採用とは
ポテンシャル採用とは、これまでの実績や能力ではなく、求職者の潜在能力(ポテンシャル)や将来的な可能性を重視して採用を行うことです。
英語では「potential adoption」と表記します。
ポテンシャル採用が注目されている理由
それでは、なぜ昨今ポテンシャル採用が注目を浴びているのか、その背景をご紹介します。
人材採用が難航している
まず第一に、どのような業界でも人材採用が難しくなっていることが挙げられます。
近年の採用活動市場では、新卒採用や中途採用の競争率が高くなる、いわゆる売り手市場の状態が続いています。
そのため、応募者が集まらなかったり、内定が決まっても辞退されてしまうといったケースが多く見受けられます。
こうした状況を打開する方法として導入されているのが、ポテンシャル採用です。
新卒や中途という採用区分に関係なく、素質重視で未経験者にアプローチをかけることにより、必要な人材の確保が期待できます。
特に中小企業では、応募者がなかなか集まらないという課題を抱えている会社も多いので、ポテンシャル採用を行う傾向が強くなっています。
優秀な人材採用につながる
そして、優秀な人材を採用できる可能性があることも要因の一つです。
ポテンシャル採用は、多様なキャリアを持った人材を採用するための方法としても有効的です。
例えば第二新卒や、海外大卒者、博士号取得者、海外留学経験者など、さまざまな経験を持った求職者が対象です。
新卒採用や中途採用のケースでは、応募期間に間に合わなかったり、そもそも採用基準に該当しないという課題が生じることもしばしば起きてしまいます。
しかしポテンシャル採用であれば、求職者に広くアプローチをかけることで、潜在能力を持った人材との出会いが期待できるのです。
ポテンシャル採用で失敗しないためのポイント
それでは、ポテンシャル採用を行う際に気をつけたいポイントを、3つに絞って解説します。
ITツールや求人媒体を適切に選定する
ポテンシャル採用を行うにあたり、Webの情報整備や、SNSを駆使することが重要です。
例えば、多くの求職者はWeb上で情報を収集しています。
つまり、Web上に自社の求人情報を見やすく掲載できるかどうかで、求職者からの応募数が大きく左右されます。
また、Web以外にSNSの活用もポイントです。
SNSは求職者と接点を持ちやすいく、採用する側としてもアプローチしやすというメリットがあります。
ニーズに合った情報を更新することで求職者の興味を持ってもらい、実際に入社するまで高いモチベーションを保ってもらえる効果があります。
自社が求めているポテンシャルを明確化する
「求職者のポテンシャルを評価する」とは言っても、実際どのような能力を評価すれば良いのでしょうか。
この点を明確化しておかなければ、なんとなくの判断基準で採用を行なってしまうことになります。そうすると求職者の本質を見抜けず、入社後にミスマッチが起こってしまうことも考えられます。
自社の求めているポテンシャルとは、スキルよりもリーダーシップなのか、論理的思考力なのか、どのような能力が必要であるかを具体化しましょう。
そして、そのポテンシャルを判断するための指標や項目を作成し、客観的な評価で採用を決めることが大切です。
キャリアビジョンの実現ができることをアピールする
求職者は応募を検討する際に、自分が今度どのようなキャリアを送れるかを強く意識します。
高い給与や優れた待遇が提供されても、思い描いているキャリアビジョンのイメージができなければ、求職者の入社は難しくなってしまいます。
したがって、応募者が求めるキャリアビジョンと、そのビジョンを自社で実現可能であるかどうかを擦り合わせる必要があります。
この作業を怠ってしまうと、入社後にミスマッチが生じる可能性があります。
トラブルにつながらないよう、採用プロセスの段階で明確に伝えておくことが重要です。
ポテンシャル採用のメリットとデメリット
ポテンシャル採用を行う際には、メリットだけでなく、デメリットについても知っておくことが大事です。
それでは、ポテンシャル採用のメリットとデメリットをそれぞれ3つずつ紹介します。
メリット:優秀な人材の採用
ポテンシャル採用の大きなメリットは、優秀な人材を採用できることです。
実績や経験ではなく、潜在能力を重視した採用を行うことで、これまでアプローチする機会が少なかった人材を獲得できる可能性が高くなります。
また、近年では働き方の多様化が進んでいることもあり、「自分の強みを活かせる企業に転職をしたい」と考える求職者も増えています。
そのような成長意欲を持った人材を採用できるという意味でも、ポテンシャル採用には大きなメリットがあると言えます。
メリット:研修コストの削減
ポテンシャル採用には、研修コストを抑えられるというメリットもあります。
新卒採用で入社した新入社員には、ビジネスマナーや企業理解、業務に必要な基礎スキルなどを身に付けるために、研修を行うのが一般的です。
しかしポテンシャル採用では、職種に当てはまる経験がなくとも、社会人経験のある人材が集まることが多いので、最低限のビジネススキルや常識が身に付いているケースが多いです。
そのため、研修の回数を少なくできることにより、新卒採用に比べて研修の時間やコスト抑えられる可能性があるのです。
メリット:幹部候補を確保することができる
ポテンシャル採用の対象は、社会人未経験の新入社員だけに限定されたものではありません。
自社が必要としている潜在能力があれば、若手の社会人を中途採用する場合も多々あります。
一度でも社会人経験があれば、基礎的なビジネススキルを有していると考えられます。
専門スキルがまだ身についていないくても、それはむしろメリットに働くこともあります。
前職で業務に凝り固まることなく、新しいノウハウや技術を吸収できることによって、将来的に重要なポジションに就く人材を確保できる可能性があるのです。
デメリット:社員教育コストがかかる
研修コストは抑えられる可能性が高い一方で、充分に業務を遂行できるようになるまでには、ある程度の教育コストがかかります。
特に未経験者の場合は、専門分野に関する知識と経験がありません。
そのため、十分に活躍できる人材へ育てるには、1からスキルを積み重ねていく教育が必要です。
また、離職率をいかに低く抑えるかも重要になります。
入社後にミスマッチを感じてしまうと、早期退職につながる可能性が高くなってしまいます。
ポテンシャル採用を行う際は、対象となる応募者が、これまでに何度も転職を繰り返していないか確認することがおすすめです。
デメリット:早期退職の可能性
上記で説明したミスマッチが起こってしまうと、早期退職につながり、大きなデメリットとなってしまいます。
特にポテンシャル採用で集まる人材は、過去に最低一度は退職を経験しているので、転職という行為に抵抗がないという人もいます。
ミスマッチが起こる可能性を防ぐためには、選考の際に「転職回数」、「退職理由」、「志望動機」などを改めて確認することが重要です。
デメリット:前職の経験が悪影響を及ぼす場合も
前職での勤続期間が長いほど、その習慣やマインドが抜けない場合があります。
就業経験があるぶん、前職で身に付けた仕事に対する考えにこだわりを持ってしまい、新しい環境に順応できないケースも発生します。
それによってモチベーションの低下や人間関係の悪化を引き起こしてしまう可能性が考えられます。
自社の運用に慣れてもらえるためにも、社員教育を徹底したり、担当者が「前職の影響もある」という認識を持っておくことが必要です。
ポテンシャル採用を実施している企業
実際に、どのような企業がポテンシャル採用を導入しているのでしょうか。
ここでは企業の例として、ヤフーとサイボウズのをご紹介します。
ヤフー株式会社
出典:ヤフー株式会社
ヤフー株式会社では、2016年から「新卒一括採用」を廃止し、その代わりにポテンシャル採用を導入しています。
それまでの採用方法では平等な採用選考機会を提供できないことや、就職活動の時期においても多様化が進むことで、より柔軟な採用活動が必要と判断し、ポテンシャル採用へと切り替わりました。
ヤフー株式会社では、新卒・既卒・就業者問わず、応募時の年齢が18歳以上30歳以下であれば誰でも応募できるようになっています。
サイボウズ株式会社
出典:サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は特徴的な採用手法を行っています。
これまでにも、「U-29(ユニーク)採用」という、29歳以下の多様な経歴を持つ人材を募集する枠組みを用意していました。
現在は、年齢や過去の経験を問わず採用を広げるために、U-29(ユニーク)採用を撤廃し、「ポテンシャル採用」と名前も変更して採用活動を行なっています。
これにより、IT業界未経験・職種未経験でも、興味のある人は誰でもチャレンジできる体制を整えています。
まとめ:ポテンシャル採用を正しく知って検討しよう
この記事では、ポテンシャル採用を検討する際の注意点などを解説しました。
ポテンシャル採用は過去の経歴よりも、潜在的な能力(ポテンシャル)に重きを置いて採用を判断するため、求職者にとっても、企業にとっても可能性が広がる採用活動です。
しかし、求める「ポテンシャル」が具体的にどのようなものを指しているか明確化できていないと、入社後にミスマッチが起こってしまう可能性もあります。
ポテンシャル採用を検討する際は、しっかりとメリットデメリットを把握したうえで判断しましょう。