一般社団法人データサイエンス協会の定義するところによると、データサイエンティストとは「データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」であり、統計学、コンピューター科学、機械学習などの手法を用いて、ビッグデータと呼ばれる膨大かつ複雑で、一貫性が無いデータを収集・構造化・分析し、それをビジネスに活用するための知見・情報を引き出す職業を指します。
つまり、データサイエンティストの仕事はデータを分析するだけ、統計解析だけにとどまらず、データを活用し、ビジネス上の問題解決においてあらゆる領域に携わるため、業務内容が多岐にわたります。
データサイエンティストの役割に関してはどの組織にも共通する確たる職務内容が決まっているわけではなく、例えば機械学習のスキルなどを活用し、情報の分析基盤そのものを整えるエンジニア分野の業務に従事する場合もあれば、分析結果をもとに、経営判断に直接関わるようなビジネス戦略上の問題解決・状況改善に向けた施策立案を行うアナリストとしてのキャリアを積んでいくことも考えられます。
参考:データサイエンティスト協会、データサイエンティストのミッション、スキルセット、定義、スキルレベルを発表
目次
データサイエンティストの採用は難しい
ビッグデータ時代の到来に伴い、データサイエンティストなどのIT人材の需要はますます高まってきています。高い技術力・能力が必要とされるデータサイエンティストは、IT業界だけでなく様々な企業や業種からの採用ニーズも増えている一方で、そもそもデータサイエンティスト人材が圧倒的に少ないことから、採用市場に出てくる機会も少なく、採用が非常に難しい状態となっています。
データサイエンティストを求めている企業のうち、6割は採用目標が未達
一般社団法人 データサイエンティスト協会による「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果」にて、日本国内の企業283社を対象としたデータサイエンティストの採用に関するアンケート結果が発表されています。
この調査によると、データサイエンティストが1人以上在籍している会社は全体の29%にとどまっており、その内、直近1年で1人以上の増員があった企業の約62%は社内の異動・育成によるものだといいます。
また、データサイエンティストを採用しようとした企業のうち、「目標としていた人数を確保できなかった」と回答した企業は58%で、過半数を超える企業がデータサイエンティストの採用に苦戦していることが分かります。
参考:一般社団法人データサイエンティスト協会「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果」(2019年11月実施/有効回答数:計283社)
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通信機器の発達やネットサービスの普及などにより、収集・蓄積が可能なデータの種類と量が急激に増大しています。社会の情報化が急速に進行し、膨大なデータに誰もがアクセスできる時代に突入した今、あらゆることがデータから導かれるようになりました。
生産やマーケティングなどさまざまな領域でビッグデータの活用が進んでおり、データ分析/活用は世界中の企業や社会に革新的なメリットをもたらすことが分かっています。
つまり、優秀なデータサイエンティストを採用することは、そのまま企業力の向上に直結すると言えるのではないでしょうか。
一般社団法人データサイエンティスト協会が2019年11月に公表した「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査」によると、すでにデータサイエンティストが在籍している企業で77%、データサイエンティストがいない企業でも11%の企業が今後3年間でさらにデータサイエンティストを増やしたいと思っていると回答しており、企業からの求人数も増加傾向にあることが分かります。
ビッグデータ時代の到来に伴い、データサイエンティストなどのIT人材の需要はますます高まってきています。ただし、このようなデータを活用するには専門的な知識とスキルが必要。高い技術力を持つデータサイエンティストは、IT業界だけでなく様々な企業や業種に求められているのです。
参考:一般社団法人データサイエンティスト協会「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果」(2019年11月実施/有効回答数:計283社)
データサイエンティストの経験者数が少ない
前述したように、世界的にデータサイエンティストの需要が高まり、企業の採用ニーズも増えている一方で、そもそもデータサイエンティスト人材が圧倒的に少ないことが問題として挙げられます。
1つ目の理由としては、すでに市場に出ているデータサイエンティストの実務経験者がそもそも少ないという点が挙げられます。ここ数年のビッグデータ時代の到来やAI技術の浸透により、以前に比べ働く人数は増加しているものの、まだまだ実務経験のある人材が不足している状況です。
2つ目の理由として、データサイエンティスト育成の基盤が整っておらず、そもそも市場に出てこないという点が挙げられます。
日本ではこのようなデータサイエンティストの需要増加に応じて、データサイエンティストの育成を目的とした大学学部を新設するなど、政府も育成に力を入れていますが、その教育機関もアメリカなどと違い、年間何万人もの学生を育成するといった体制は整っていない現状です。
こういった理由から、職務経験を積んだ優秀なデータサイエンティストは一度採用した企業が中々手放さず、また、そのような人材にはダイレクトリクルーティングで好待遇のオファーが届くという事もあり、通常の採用市場に出てくる機会が非常に少ないため、企業の採用ニーズに対して、人材の供給が圧倒的に不足しているのです。
企業が提示している採用要件が合わない
では具体的にどのような業界でデータサイエンティストを募集しているかというと、特にマーケティングに注力している広告代理店やそのグループ会社、外資系コンサルティング会社、自社プロダクトを展開しているグローバルカンパニー・上場企業などでの求人ニーズが高い傾向にあるようです。
一般社団法人 データサイエンティスト協会による「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果」によると、企業がデータサイエンティストに求める人物像では「データによるビジネス課題解決を得意とする人材」が41%と最も多く、「データ分析のプロフェッショナルな人材」はわずか10%に収まっています。
また、「今後増員したいDS(データサイエンティスト)のタイプは、マーケタータイプが最も多い」という結果が出ており、データサイエンティストを求める企業の多くは、データ分析の専門的なスキルのみならず、データサイエンスを通じてビジネスの課題を解決できるデータマーケターとしての役割を果たせる人材を求めていることが分かります。
このように、期待されているスキルのレベルは非常に高く、そのためその採用要件を満たすようなデータサイエンティストがごく少数であること、さらに元々の母数が少ないのも相まって、採用の難易度は非常に高くなっています。
参考:一般社団法人データサイエンティスト協会「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果」(2019年11月実施/有効回答数:計283社)
データサイエンティストを募集する前に必要な準備
データサイエンティストは大きく3つのタイプに分けることができ、一括りにデータサイエンティストと言っても、その仕事は多岐にわたります。
そのため、採用活動を行う上では、データサイエンティストとして、自社でどのような仕事をしてもらいたいのかを明確にしておく必要があります。
では、優秀なデータサイエンティストを効率良く採用するためにはどのような準備をすれば良いのでしょうか。
欲しいデータサイエンティストのタイプ及び人物像を明確にする
効率よく採用活動を行う上では、「求める人物像」「採用する目的」を明確にしておくことは非常に重要です。
先述の通り、データサイエンティストは、スペシャリストとジェネラリストの両方を持ち合わせた存在です。
データサイエンティストと一括りに言っても、データを活用し、ビジネス上の問題解決においてあらゆる領域に携わることが求められ、業務内容は多岐にわたります。
そのため、データサイエンティストの採用においてはより一層、自社でどのような仕事をしてもらいたいのかを予め明確にしておくことが必要であると言えるでしょう。
一般社団法人 データサイエンティスト協会による「データサイエンティストの採用に関するアンケート調査結果」によると、データサイエンティストは大きく3つのタイプに分けることができます。
タイプ①データマーケタータイプ
ビジネス課題を抽出し、データを分析・活用して課題を解決できる人材
タイプ② データアナリストタイプ
統計学、人工知能などの情報科学系の知識を理解し、統計ソフトなどを用いた専門的な分析ができる人材
タイプ③データエンジニアタイプ
データ分析を目的とし、プログラミング知識を使ってデータの収集、加工やシステムへの実装、運用ができる人材
データサイエンティストをこの3つの分類に分けた際、自社で必要としているスキルはどこに当てはまるのかを予め整理しておきましょう。
待遇及び仕事環境を見直す
また、前述の通りデータサイエンティスト市場は人手不足という状況が続いているので、ハードルの高い求人に見合うだけの人はなかなか集まらないと言えます。さらに、条件を満たす人材に内定を出したとしても、そのような人材は複数の企業が欲しがる人材です。
よって、最終的な条件交渉や待遇で他社に負けてしまい採用までに至らない、もしくは、たとえ優秀なデータサイエンティストを採用出来たとしても、その人材が自社で働く魅力を感じていなければ長期に渡って働いてもらうことは難しいでしょう。
データサイエンティストは非常に売り手市場で、企業の採用ニーズに対して人材の供給が圧倒的に不足しているため、「この会社で働きたい、働き続けたい」と感じてもらうためには、採用活動前に人材の待遇面について見直しておくことが重要です。
エンジニア職は高度な技術や知識を必要とされる反面、裏方として企業活動を支える業務が多く、その活躍が表立ってスポットライトを浴びる機会が少ない場合も多いため、その業務成果に関して適切に評価が行われるのかというところは一つのポイントとなります。
また、仕事に「やりがい」を感じさせ、働くためのモチベーションを維持させるためにも、業務に集中できる環境作りというところも重要な要素となってきます。
このように、採用したデータサイエンティストが能力を最大限に発揮出来るようにするには、給与体系はもちろん、人材評価制度・キャリアパス・働く環境をしっかり整備しておきましょう。
データサイエンティストを社内で育成することも検討すべき
すでに述べてきたようにデータサイエンティストの実務経験者はそもそも少なく、即戦力としてのデータサイエンティストの採用、ましてや優秀な人材をとなると、非常に難しいことがお分かりいただけるかと思います。
ポテンシャル採用という言葉は特に新卒採用の場ではよく使われる言葉ですが、データサイエンティストなどの比較的新しい職種でこそ、このポテンシャル採用の考えを取り入れるべきです。
つまり、未経験層の採用・自社での育成を視野に入れるということです。
未経験層を採用してデータサイエンティストを育成していく場合は、今までの経験や仕事で培った知識よりも、「将来的な伸びしろ」つまり、ポテンシャルを意識することが最重要となります。
ポテンシャル採用では、その人の仕事に対する想いや熱意、そして併せて重要なのが、新しい環境や新しい仕事にも柔軟に適応していくことができる「素直さ」を持ち合わせているかどうかというところが判断のポイントになります。
もちろんそのポテンシャル枠で入社した人材をデータサイエンティストとして育成するためのプログラム構築ももちろん重要です。
データサイエンティストの採用方法
データサイエンティストを採用する方法としては、以下のような方法が考えられます。
- イベントでの採用
- リファラル採用
- 就職・転職サイトへの求人掲載
- エージェントの活用
- イレクトリクルーティングでのスカウト
ここからは、それぞれの方法について説明していきます。
イベントでの採用
新卒のデータサイエンティスト採用の場合、データサイエンティスト採用に特化した採用イベントを利用するという方法が非常に有効です。
例えば株式会社アカリクが主催するイベント「データサイエンティスト研究フォーラム」では、データ分析職志望の大学院生(博士・修士)、学部生のみを対象としており、さらにイベント自体がデータサイエンティストとしての働き方や、働くイメージをつけてもらえるような内容となっているため、実際の業務内容となるべく齟齬がない状態を作った上で、確度の高い採用を行うことができます。
また、イベントの参加人数も年々急増しており、採用の可能性も広がっています。
参考:アカリクイベント
リファラル採用
データサイエンティストのように、採用市場にあまり人材が流れていない職種を採用する際にはリファラル採用のように、社員の持つ繋がりを利用することも有効な手となります。
リファラル採用は、一般的にはすでに自社で社員として働いている従業員が知人・友人を自社に推薦し、場合によってはそこに対して何らかの報酬を与えるという社員紹介制度を指し、アメリカでは非常にメジャーな採用手法となっています。
リファラル採用のメリットとしては、ほぼ転職を考えていない転職潜在層の知人・友人にダイレクトにアプローチができるため、採用競合他社とバッティングすることなく採用することができます。
また、自社の現場の社員がスクリーニングをしているという観点もあり、採用のミスマッチを削減・定着率の向上が図れるという点、さらにはエージェントや求人広告と比較して採用コストを抑えることができるという点が挙げられます。
ただし、そもそもデータサイエンティストが社内にいないと施策として機能しない可能性も高くなるため、どの企業にとってもこの方法が有効であるとは言い切れません。
就職・転職サイトへの求人掲載
通常通り、求人広告を多数掲載している就職・転職サイトに求人を出す方法もあります。
ただし、データサイエンティストのように専門性の高い職種を募集する際には、エンジニアに特化した転職サイトを選ぶなど、掲載面に関しては選定が必要です。
求人サイトへの掲載には広告費用が必要になりますが、こちらからプッシュするというよりはあくまで応募者の動きを待つ採用方法となるため、なるべく早く採用したい場合や、必ず採用したいと考えているフェーズにおいては有効な方法とは言えないかもしれません。
また、採用できたとしても、ある程度の期間を要する可能性が高いと言えるため、他の採用方法は並行して行い、こちらの方法には補完の役割を担わせることが望ましいでしょう。
エージェントの活用
転職や就職活動を行う人が利用することの多い就活エージェントや転職エージェント。
採用活動を行う企業にとっては、コストはかかりますが、有効な採用手法の一つであると言えます。
エージェントに採用を一任する形となるので、時間と労力をかけずに採用活動を行うことができます。
一般的にエージェントは、採用が決まった場合に企業が手数料を支払うシステムとなっており、採用ができないまま無駄なコストがかかり続けるということはありません。
エージェントは費用を抑えて採用活動を行う事が出来るというメリットもあります。
ダイレクトリクルーティングでのスカウト
企業が人材へ直接アプローチして採用活動を行う、ダイレクトリクルーティングという方法もあります。
従来のように、応募や紹介を待つ採用方式ではなく、人材データベース、FacebookなどのSNSや企業説明会などのイベントを通じて、企業側から必要な人材にコンタクトをとる方法です。
ダイレクトリクルーティングでは、必要な人材にピンポイントにアプローチできるほか、転職活動を積極的に行っていない潜在的な候補者にもアプローチでき、グローバルな人材など、多様な人材にアプローチできるというメリット、また、経営者や採用担当者が直接アプローチすることで、候補者に高い動機づけができ、直接面談にとりつけられるので、選考のステップが少なく済むというメリットもあります。
特に母集団が少ないデータサイエンティストのような職種の採用には、企業が人材へ直接アプローチを行うというような手法は、非常に効果的な方法となります。
まとめ
・データサイエンティストとは、統計学、コンピューター科学、機械学習などの手法を用いて、ビッグデータと呼ばれる膨大なデータを収集・構造化・分析し、それをビジネスに活用するための知見・情報を引き出す職業。
・データサイエンティストの仕事はビジネス上の問題解決においてあらゆる領域に携わり、業務内容は多岐にわたる。
・データサイエンティストの需要はますます増えている一方、経験者数が少ないこと、また、育成の基盤も整っていないことから、そもそも採用市場に出てこず、採用が難しい。
・データサイエンティストを募集する前に、欲しいデータサイエンティストのタイプ、及び人物像を明確にすることが重要。
・データサイエンティストの採用の競争は激しいので、採用したデータサイエンティストが能力を最大限に発揮することができ、長く働きたいと思ってもらえるように待遇や仕事環境を整える必要がある。
・データサイエンティストの実務経験者は母数が少ないため、採用が難しい。そのため、未経験層の採用・自社での育成も視野に入れる。
データサイエンティストを採用する方法としては
- イベントでの採用
- リファラル採用
- 就職・転職サイトでの採用
- エージェントを活用した採用
- ダイレクトリクルーティングでの採用
が考えられ、目的に沿った方法を選択することが重要。