- 自社が求める人材を確保したい
- どうすれば採用応募者を増やせるかな?
- 採用広報の戦略って何から手をつければいいの?
上記のように悩んでいる採用担当者も多いのではないでしょうか?
採用広報の戦略で大切な点は、求める人材のターゲットを絞り、自社の魅力を知ってもらう機会を1つでも多く作ることです。
この記事では、5STEPで効果が見込める採用広報の戦略について解説します。採用広報の戦略を立てる手順や事例を具体的に説明するので、ぜひ参考にしてください。
目次
採用広報とは?
採用広報とは、求職者が「仕事を選ぶ判断材料にする」「自社で働いているイメージを持つ」ために情報提供をする活動を指します。
現在、日本では働き手不足によって、人材を確保できない企業が増加傾向にあります。厳しい状況の中、1人でも多くの求職者にエントリーしてもらうため、企業は採用広報の戦略を立てることが大切です。
採用広報で大事なことは、以下の3つです。
- 自社の社風が伝わる
- 自社で働いているイメージができる
- 働いてみたいと思わせる強みをアピールする
つまり企業は、自社の魅力を正しく伝え、求職者が自社で働いているイメージを持てるような情報を発信する必要があるのです。
採用広報が重要な理由
採用広報が重要な理由は、就職活動の背景が大きく変化しているからです。
具体的には以下の理由が挙げられます。
- 就職に対する考え方の変化
- 社会の働き方に対する改善志向
- 情報のデジタル化が発展
それぞれ解説していきましょう。
就職に対する求職者の変化
従来、就職活動している学生は終身雇用で安定的に働き続けたいと思っている人が多い傾向にありました。しかし現在、「自分の学んだ経験を活かして働きたい」「成長できる環境にいたい」と上昇志向の強い人が増えています。
そのような状況では、給与面といった安定性だけでなく、自分たちの理想の働き方と企業の理念がフィットしなければ、優秀な人材の獲得は難しくなっています。さらに現在は売り手市場であるため、企業側は採用広報に注力して具体的な情報を発信し、自社に興味を持ってもらう必要があります。
社会の働き方に対する改善志向
ここ数年で、さまざまな「働き方改革」が実施されています。
- 残業時間の削減
- 女性の働く場の推進
- 男性の育児参加
働き方改革が大きく取り上げられており、ワークライフバランスのとれる企業で働くのを望む人が増えています。
仕事内容や福利厚生に加えて、企業の働き方に対する柔軟性が求められるようになりました。そのため、仕事内容だけではなく、CSR活動やワークライフバランスの取り組みが企業にとっては重要です。
情報のデジタル化が発展
情報のデジタル化が発展しているのも、採用広報に力を入れなければならない要因の1つです。
デジタル化が進む前までは、合同説明会に足を運び、エントリーして対面面接、という採用手順を行う企業がほとんどでした。しかし、今ではオンライン説明会をしてオンライン面接を行う、という採用手順の企業が増えています。
合同説明会や会社訪問が当たり前だった時代から、現在はWeb説明会やWeb面接などにシフトしています。就職未来研究所が発行した「就職白書2022」によると、65.7%の学生は「合同説明会やセミナーはWebのほうがいい」と回答していました。このことからも、求職者の価値観の変化がうかがい知れます。
情報のデジタル化により今やオンラインが主流になっています。そのため、採用広報の戦略を立てる際は、情報のデジタル化に関心を持つようにしましょう。
採用広報の戦略5STEP
採用広報の戦略を立てるからには、成果を上げなければなりません。成果を上げるための採用広報の戦略を5STEPで紹介します。
5STEPは以下のとおりです。
- STEP1:採用したいターゲットを明確化
- STEP2:採用広報の目的・目標の設定
- STEP3:採用広報に使うコンテンツを限定
- STEP4:運用した実績をもとに効果を評価
- STEP5:評価から改善・対策案を立て再実施
ぜひ、実践して効果のある採用広報の戦略を立てましょう。
STEP1:採用したいターゲットの明確化
採用したいターゲットを明確にしましょう。ターゲットを明確にすることで、採用する側も採用される側も認識のずれをなくすことが可能です。企業側が採用したいターゲットを明確にしていなければ、必要な人材にアプローチできなくなるでしょう。
したがって、どのような人材が欲しいか担当部署にヒアリングし、明確に言語化することが大切です。その上で求人情報や採用コンテンツを発信すると、求職者は「自分が当てはまるかもしれない」と考え、応募する可能性が高まるでしょう。
STEP2:採用広報の目的・目標の設定
採用広報の戦略を立てるためには、目的・目標を設定することが大切です。目的・目標を設定することで「何をするべきなのか?」「何が必要になるのか?」が明確になります。
ここでは具体的に数値で目標を設定すると良いでしょう。例えば、「採用広報で100名の母集団を作り、そこから10名採用する」「オウンドメディアを立ち上げ、毎月1,000PVを目指す」といった数字で示すと戦略を練りやすくなります。
このようにゴールを具体的に設定し、企業全体で目指すべき方向を一致させるのが大切です。
STEP3:採用広報に使うコンテンツを決定
採用広報に使うコンテンツは絞るのが良策です。資金が潤沢にあるならば、いくつものコンテンツを利用して、多くの人の目に留まるようにするのもいいでしょう。
しかし、資金が潤沢にない中小・零細企業などでは厳しいのは必至です。そのため、採用広報は費用対効果の高いコンテンツに絞ると成功する確率が上がります。
例えば、飲食業界で採用活動を行うなら、InstagramなどSNSで写真を投稿する方法があります。飲食関係は文字より写真のほうがイメージが湧きやすくなるからです。
自社の特徴に合ったコンテンツを利用することで、求職者の心に刺さりやすくなります。
STEP4:運用した実績をもとに効果を評価
実際に運用した結果をもとに、「効果があったのか?」それとも「効果がなかったのか」を評価しましょう。戦略を立てて満足していては、採用広報で成功は望めません。戦略はPDCAサイクルを回すことでよりよいものに改善されます。
実績を評価すると以下の成果が得られます。
- 自社の採用広報の強みと弱みを理解できる
- これからの戦略を立て直せる
採用広報の戦略を実行したら終了ではありません。運用した実績を評価してからが始まりと言ってもいいでしょう。ですから、一定期間経ったら評価して、対策を考えるのが重要です。
STEP5:評価から改善・対策案を立て再実施
採用広報の戦略を評価して、「改善するべき点」をまとめましょう。改善するべき点から、採用広報の戦略を立て直して再度実施することで新しい成果が生まれます。
自社が掲げた目的・目標を達成できるまで実行・評価・改善を繰り返しましょう。
成果が出ない理由は、採用広報の戦略に何かしらの問題があるからです。成果が出ない理由の答えはテストのように明確ではありません。成果が出ない理由を一つでも多く挙げて、解決していく必要があります。
求職者に魅力を感じてもらえる企業になる採用広報の戦略を立てるために、試行錯誤を繰り返しましょう。
採用広報の種類
採用広報の種類は大きく分けて3つあります。
- オウンドメディア
- ペイドメディア
- アーンドメディア
採用広報の戦略を立てる際に、「どのコンテンツを用いて発信するのが自社の魅力を求職者に伝えられるか?」を考えましょう。それぞれのメディアの特徴を理解し、自社に適した採用広報の戦略を立てることが重要です。
オウンドメディア
オウンドメディア(owned media)は、自社が保有しているメディアです。
具体的には、以下のメディアがオウンドメディアに該当します。
- 採用サイト
- 採用ブログ
特に最近では、採用ブログと呼ばれる採用活動を主とした「オウンドメディア」を運営する企業が増えています。オウンドメディアのメリットは自社でコンテンツを管理しやすい点と、認知されれば費用耐効果が大きい点です。一方、デメリットは、軌道に乗るまで時間やコストがかかるという点です。
ブログで「社員の働いている様子」や「プロジェクトの会議」などを発信すれば、求職者が働くイメージを持ちやすくなるので効果的でしょう。
ペイドメディア
ペイドメディア(paid media)は、企業がお金を支払って利用するメディアです。
具体的には、以下のメディアがペイドメディアになります。
- 新聞・雑誌・Web広告
- 就職・転職イベント
ペイドメディアのメリットは、多くの人に周知しやすい点と企業の知名度を上げやすい点です。一方デメリットはコストがかかる点とターゲットを絞りにくい点です。
新聞・雑誌・Web広告
新聞や雑誌、Web広告を打ち出して、自社を周知させる方法です。
インターネットが普及していない頃は新聞や雑誌などの紙媒体がメインでした。しかし、インターネットが普及した今では、Webを利用した電子媒体がメインになりつつあります。
費用対効果を考えると、今後は紙媒体より電子媒体を用いた採用広報の戦略を立てるのがおすすめです。
就職・転職イベント
就職・転職イベントは、自社を周知するのには最高の場です。特にアカリクの採用イベントでは、大学院生やポスドクといった優秀な理系の学生と出会えます。ほかにもスカウトができるダイレクトリクルーティングサービスも提供しているので、理系学生の採用を検討しているならぜひご利用ください。
サービスサイト:https://acaric.jp/
企業向けサイト:https://biz.acaric.jp/
アーンドメディア
アーンドメディア(earned media)は、相手の信頼を獲得するのを目的としたメディアです。以下のメディアがアーンドメディアに該当します。
- 口コミ・レビュー
- SNS(Twitter・Instagramなど)
アーンドメディアのメリットは、求職者のリアルな声を拡散できる点です。しかし、リアルな声の拡散が可能なため、悪評をつけられるリスクがあります。
口コミ
口コミによって企業の評価が高ければ、求職者から注目される存在になります。
飲食店がいい例です。「美味しいものが食べたい」と思ったら、口コミがいいお店に行きませんか?就職・転職活動も同じで、口コミがいい企業であれば、エントリーしたいと思うでしょう。
したがって、企業は採用広報においてブランディングや評判を高めるようなコンテンツを提供する必要があります。
SNS(TwitterやInstagramなど)
活動内容や社風が相手に伝わりやすくするため、企業はSNSを運用しましょう。求職者はSNSを使って就活・転職情報を調べることもあります。
2022年の日本におけるSNS利用者は8,270万人に達する見込みです。
総人口の約8割が何かしらのSNSを利用しているため、企業がSNSを活用すれば、誰かの目に留まる可能性が飛躍的にUPします。さらに求職者が求めている情報を発信していると、自社に興味を抱いてくれるでしょう。
採用広報の戦略を立てるメリット
採用広報の戦略を立てるメリットは大きく分けて4つあります。
- 応募者の企業に対する志望度向上
- エントリーから採用までの効率化
- 入社後のミスマッチング阻止
- 企業の採用に対する意思統一
戦略を立てるメリットは、目的や目標を具体的にすることです。目的や目標が具体的になると、「何をすべきか」「どこを改善するべきか」が明確になります。
応募者の企業に対する志望度向上
採用広報の戦略を立てることで、求職者の企業に対する志望度の向上が見込めます。採用広報に力を入れると、求職者は多くの有益な情報を入手できるからです。
また、企業が求める人材のターゲットが明確化されていると、求職者も自分に合うのか合わないのかの判断材料にすることも可能です。つまり、自社に興味を持ってくれる求職者が増加し、入社に向けたモチベーションも上がるでしょう。
企業側が「こういう人材を求めています!」とペルソナを定めた上で発信することで、求職者が「自分の力が活かせるかも?」と前向きな姿勢につながるのです。
エントリーから採用までの効率化
戦略を立てることで、エントリーから採用までの行程を効率よく回せます。採用広報でターゲットを絞ることにより、「とりあえず受けてみた」「なんとなくエントリーした」という人を減らせます。興味を持ってもらえた求職者を選考するため、時間もコストも削減可能できるでしょう。
また、企業側にとってエントリーから採用までをスムーズに行えると以下のメリットがあります。
- 優秀な人材を早めに確保できる
- 新卒なら入社までに研修を提供できる
エントリーから採用までの効率化を図ると企業側・求職者側の両方にメリットがあるため、採用広報における戦略をしっかり立てましょう。
入社後のミスマッチング防止
採用広報で正しい情報や求める人材像を発信することで、企業と求職者の入社後に起こりやすいミスマッチングを防止できます。
- 企業理念
- 社員に求める仕事
- 仕事スケジュール
- 先輩や上司の取り組み
上記のような内容が入社前から把握できていると、入社前後のギャップが小さくて済みます。自社で働くメリットとデメリットも含めて、はっきり伝えておくといいでしょう。入社してから、「こんなはずじゃなかった」「つまらないから辞めよう」という不満を求職者に抱かせないで済むからです。採用広報の戦略を立てる段階でミスマッチングを減らせるよう工夫しましょう。
企業の採用に対する意思統一
採用広報の戦略を立てると、部署を超えて情報を共有しやすくなります。採用活動は人事部だけでは行えません。例えばリファラル採用なら、担当部署はもちろん、社員全員に呼びかけ優秀な社員を採用するため、一丸となって取り組む必要があるからです。
そのとき、明確なターゲットや戦略を提示しなければ、行動に移してもらえないでしょう。つまり採用広報の戦略を立てるというのは、企業全体で「採用」についての方向性を決めるということです。社内で採用に関する考えのズレをなくすためにも、採用に対する意思統一を社内全体で行うことが大切です。意思統一を図ることで、社内の結束力を高め強い体制づくりが実現できるでしょう。
オウンドメディアを使った採用広報の成功事例
では実際に、オウンドメディアを使った採用広報の成功事例をみていきましょう。
今回紹介する企業は以下5つの企業です。
- LINE(株)
- (株)サイバーエージェント
- (株)Gunosy
- サイボウズ(株)
- 日本マクドナルド(株)
どの企業も採用広報の戦略を駆使して、優秀な人材を集めることに成功した企業になります。それぞれの企業がどのような戦略で成功したかについて、具体的に紹介しましょう。
LINE(株)
出典:LINE(株)
コミュニケーションアプリで有名な「LINE」を作り上げたLINE(株)は自社開発した採用システムを導入して採用業務の効率化を図っています。また、インターンシップに参加したエンジニア志望の学生に対して数十万円支払う「エンジニア就業コース」を実施したことでも有名です。
このようにLINE(株)は、常に新しいことに挑戦しながら、現場サイドと人事サイドでよりよい採用方法を生み出しています。
参考:「毎日が文化祭状態」。事業創出が続くLINEを“採用”で支える人事のホンネとは
(株)サイバーエージェント
AbemaTVで有名な(株)サイバーエージェントはYJC戦略のもと、オウンドメディアでの採用に力を入れています。YJC戦略とは「Y(いい人を)J(自分たちで)C(ちゃんと採用する)」の頭文字を取ったものです。
会社全体をあげて取り組む採用広報戦略で数々の魅力的なコンテンツを生み出し、求職者を惹きつけています。
(株)サイバーエージェントは自社サイトによるオウンドメディアを使った採用広報が有名です。これは「本当のサイバーエージェント」を知ってもらうために立ち上げたメディアで、社員の日常や経験談をリアルに伝えています。
参考:サイバーエージェント新採用責任者に聞く、サイバー流オウンドメディアリクルーティング戦略とは?
(株)Gunosy
出典:(株)Gunosy
ニュースアプリで有名なグノシーを提供する(株)Gunosyは、「Gunosiru」という自社のオウンドメディアで採用広報している会社の1つです。Gunosiruを使った採用広報は、社員の仕事や企業カルチャーを紹介し、多角的に知ってもらいたいという目的で誕生しました。
また、外部に向けたメディアのみでなく、社員にも自社をより知ってもらうのも目的のひとつです。自社をより知ることで、会社に愛着を持ってもらいたいという狙いがあります。
参考:ひとり編集長”でも制作に集中できる、Gunosyのオウンドメディア「Gunosiru(グノシル)」のつくりかた
サイボウズ(株)
出典:サイボウズ(株)
ソフトウェア開発で有名なサイボウズ(株)は、サイボウズ式というオウンドメディアを採用広報に活用しています。また、Twitterでの広報活動にも注力しているのが特徴です。
Twitterでは社員がサイボウズについて発信するため、いわゆる全員広報のような役割を担っています。サイボウズの公式アカウントが社員のツイートをリツイートすることで、求職者を含め多くの人の目に留まる工夫をしています。
参考:同じ価値観を持っている人はいない。「100人100通りの働き方」が必要な理由とその実現方法
日本マクドナルド(株)
出典:日本マクドナルド(株)
日本マクドナルド(株)は採用オウンドメディアを利用しています。従来は友人紹介が多い傾向にありましたが、コロナウイルスの感染拡大による自粛期間を機にオウンドメディアからの応募が増加しました。
現在マクドナルドは、オウンドメディアに力を入れた採用広報の戦略を立てています。特にEVP(Employee Value Proposition)を大切にしています。EVPを直訳すると「職場の価値」で、求職者の求めるものと擦り合わせるのが重要である、という考え方です。同社はEVPを採用戦略に取り入れることで、他社と差別化を図っています。
参考:ヤフー・マクドナルド・ユーザベースから学ぶ!採用×オウンドメディアの成功の方程式|HR-Study #9
まとめ:求職者に寄り添った採用広報の戦略を組み立てよう
採用広報の戦略を立てる上で、大切な点は2つあります。
- 求める人材のターゲットを絞る
- 自社の魅力を知ってもらう機会を作る
採用広報で大切な点を押さえて、5STEPで採用広報の戦略を立てれば成功する可能性が上がります。5STEPで成功に導く採用広報の戦略は以下のとおりです。
- STEP1:採用したいターゲットを明確化
- STEP2:採用広報の目的・目標の設定
- STEP3:採用広報に使うコンテンツを限定
- STEP4:運用した実績をもとに効果を評価
- STEP5:評価から改善・対策案を立て再実施
採用広報の最終的な目標は求職者を採用することではありません。大事なのは、入社後もミスマッチングすることなく、満足のいく働き方をしてもらうことです。
採用広報で成功している企業の多くは自社サイトによるオウンドメディアを利用しています。オウンドメディアを上手に使いこなせれば、採用広報として大きな効果を発揮します。
ぜひ、この記事を参考に自社の魅力を発信して、優秀な人材を獲得しましょう。