「頼りにしていたエンジニアが退職して困っている」「エンジニアが退職する本当の理由を知りたい」と、お悩みではありませんか?
エンジニアは採用が難しい職種の1つで、退職してしまうと技術部門の痛手になるとともに、代わりの人材の採用に苦戦することも珍しくありません。
退職を防ぐには、どのような取り組みをしたら良いのでしょうか。
具体的な改善を進めるために、この記事でまずはエンジニアが退職する理由について知りましょう。
理由を踏まえた上で、解決策や事例を見れば、きっと役に立つはずです。
目次
エンジニアが退職する理由|業務編
エンジニアにとって、今の業務で「どのようなスキルが身につくか」はとても重要。
技術職は知識や経験によって活躍の幅が広がるため、自身の市場価値を高めるためには積極的なスキルアップが必要です。
そのため、退職の理由として「もっとスキルアップをしたいから」というのは非常に多いと言われています。
一方で、業務をこなしていく上で、自身のエンジニアとしての適性に悩む人がいるのも事実です。
まずは、エンジニアが退職する理由について、業務に関わるものから見ていきましょう。
他社でスキルアップしたくなったから
エンジニアの中には、さまざまな分野・工程・業務に携わることで、キャリアの幅を広げたい人たちがいます。
中には「ジョブホッパー」と言われるように、複数の会社を転々とする人もいるのです。
1つの会社に留まっていると、その分野の専門家にはなれるものの、他のスキルを磨くことは難しくなります。
キャリアアップの道筋もある程度見えてしまい、「もうここでは十分働いたかな」「もっと他の開発もしてみたい」と、退職してしまうのです。
スキルアップを主軸として転職して経験を積み上げたほうが、実際にキャリア面ではメリットがあります。
独立したいと思ったから
エンジニアのキャリアの選択肢として、フリーランスになり独立する道があります。
自分で好きな案件を選んで携わり、高い報酬を得て自由な働き方が叶うフリーエンジニアは、近年で人気が高まっている職業です。
会社を辞めてフリーランスを目指すのは、それだけ実力がついたというポジティブな見方もできます。
一方で、会社員という働き方を窮屈に感じてしまったのかもしれません。
やりたい仕事ができないから
エンジニアにとって、やりたい開発ができないのは歯がゆいものです。
退職の理由としてはネガティブな部類にあたり、自分がやりたい業務やプロジェクトにアサインされず、不満を持っています。
具体的なケースについて、以下の2つを見てみましょう。
やりたい開発内容ではない
入社前に説明した仕事の内容と、実際の業務が異なっていた場合は、採用した側に責任があります。
しかし、社内の方針や事情によって、本人の意に沿わないタスクを依頼せざるを得ないケースも少なくありません。
エンジニアが関わる領域は多岐にわたるため、「こんなシステムを作りたい」と本人が強い意向を持っていることがあります。
意欲が満たされないとやりがいを感じられず、退職を考えてしまうのです。
望み通りのキャリアではない
初心者エンジニアは、成長とともにいくつかの方向性を選択できます。
たとえば、以下の通りです。
- 開発職としてスキルを磨き上げた「スペシャリスト」
- チームを統括する立場の「マネージャー」
- 経営にも関与する「ゼネラリスト」
- 後進を育成するための「トレーナー」
どのようなキャリアを歩みたいかは、本人によくヒアリングしないと、ニーズにマッチしない結果となります。
「能力が高いからマネージャーを任せたい」と思っても、本人は「スペシャリストとして技術力を高めたい目的がある」といった場合があり、望まないキャリアは退職の意向を強めてしまいます。
能力に限界を感じたから
中には、エンジニアの業務そのものが苦痛になってしまい、別の道を目指すために退職を選ぶ人もいます。
特に、社会人経験が少ない新卒は、「望んでエンジニアになったけれど、実際にやったら向いていなかった」と仕事をして初めて気づくことも少なくありません。
エンジニアは、自ら言語や構築について学習し、自発的にキャッチアップしていく姿勢が求められる職種。
変化のスピードも早く、常に技術の進歩や革新があるため、社内の教育だけに頼らない自走力も非常に大切なのです。
「難しすぎてついていけない」「自発的に勉強をするのがつらい」と思ってしまうと、エンジニアとして働き続ける意欲は低下します。
エンジニアが退職する理由|環境編
ここまでは、エンジニアが退職する理由について、業務に関連する事柄を解説しました。
ほかに退職の決定打となる要因として、環境面の課題も見過ごせません。
特に、エンジニアは「パソコン1つでいつでも・どこでも柔軟に仕事がしやすい」「労働時間を自由に決めやすい」「専門的なスキルで高い報酬を得られる」といった特徴があるため、エンジニアが働く環境や待遇に求めるものも必然的に大きくなります。
次は、エンジニアが退職する理由について、環境が原因のものを見ていきましょう。
待遇に満足できないから
優秀なエンジニアは、実力に見合わない給与への不満を抱きがちです。
エンジニアリングに特化した人材は需要が高く、転職先も比較的すぐに見つけられます。
転職市場において、「自分にはこれくらいの年収をもらえる市場価値がある」「他社なら、今よりも高い給与で働ける」とわかれば、今の会社の給与で働き続けるメリットはありません。
また、優れた人材なら、ヘッドハンティングや他社からの引き抜きをされた可能性もあります。
退職の理由として正直に言わないケースもありますが、良い人材は他社も欲しがっていることを常に念頭に置かなければなりません。
働く環境に不満を持っているから
快適ではない労働環境は、エンジニアに限らず社員にとっての苦痛です。
とりわけエンジニアは、外回りのある営業職や、顧客対応が主業のカスタマーサポートなどとは異なり、働く時間や曜日を選びやすい特徴があります。
では、満足できる職場環境とは具体的にどのようなものでしょうか。
- リモートワークができる、しやすい
- フレックスタイム制を導入している
- 長時間労働や残業がない
- 有給休暇を取りやすい
これらが満たされておらず、かつ自由度の低い状態が恒常化しているなら要注意です。
特に多い課題として挙がりやすい「リモートワーク」と「長時間労働」について、次の項目もご覧ください。
リモートワークができないことへの不満
働き方改革が広がった今、ワークライフバランスの実現を求めるエンジニアも増加しました。
リモートワークは仕事と家庭を両立させられる点から、子育て世代からも需要がある働き方です。
通勤時間が減り、家族との時間を取りやすい上に、エンジニアはリモートワークでも困難が少ない職種の1つ。
プライベートと仕事のバランスを取れない職場は、敬遠されがちです。
長時間労働への不満
エンジニアは技術職のため、成果物を仕上げるために長時間の労働をしてしまうこともよくあります。
納品を間に合わせるために休日を返上したり、深夜まで働いたりするケースも、残念ながらまだまだ多いのが事実です。
働きすぎて本人が疲弊すれば、体調不良にも繋がります。
周囲のメンバーがフォローしたり、人事が仕組みづくりを推進したりと、対策が必要不可欠です。
人間関係で悩みを抱えていたから
エンジニア以外にも多い退職理由の1つです。
人間関係の問題は、モチベーションにもかかわるもの。
障壁となるコミュニケーションの問題を抱えてしまうと、仕事がしにくいばかりではなく、メンタルヘルス不調の原因にもなりかねません。
開発チーム内の人間関係
エンジニアが働く現場は、チーム単位でプロジェクトを担当するのが一般的です。
メンバーである同僚や上司・部下、クライアントである受注先の担当者など、多くの人と関わるため、円滑で穏やかな人間関係が求められます。
現場内でコミュニケーションやマネジメントの課題は、精神的な負担の原因です。
他部署との人間関係
エンジニアは開発チームだけでなく、営業やマーケティングの担当者、カスタマーサクセスなど他部署との連携が必要です。
やりにくい相手がいると仕事をしにくく、自分らしくのびのびと働けないことがあり、ストレスを感じてしまいます。
エンジニアが退職しない会社にするには?6つの対策
では、エンジニアが退職しない会社を目指すには、どのようにすべきでしょうか。
退職の理由から考えて、正しい対策をすれば離職リスクの低減に繋がります。
今いる社員の定着率が高まれば、実績として社外にもアピールが可能です。
働きやすい環境づくりをしているイメージが高まれば、自社のブランディングにもなり、採用においてもメリットがあります。
6つの対策を見ていきましょう。
1.スキルに見合った給与を支給する
働き手にとって、どれくらいの給与が貰えるかは最重要です。
高い報酬は働き手にとって魅力的である上、「質の高い仕事にしっかりと報酬を払う会社」としてプラスのイメージも強まります。
給与を考える上では、「基本の指針としてどれくらいの報酬を支払うか」「報酬が上がる仕組みとルールは何か」を定めて、社員が納得する形にすることが大切です。
次の2つを参考にしてみてください。
給与のベースを考える
まずは、いわゆる「基本給」と言われる金額や、採用者の初年度年収をどのくらいにするかを見直しましょう。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、全国の平均的な給与をチェックできます。
たとえば、従業員数が100〜999人規模の企業で、勤続年数が10年近い40代前後のエンジニアの給与を見ると、「機械技術者」は月給371,400円、「システムコンサルタント・設計者」は月給411,900円です。
ただし、上記の平均はあくまでも参考値です。
もっと具体的な業務をイメージしつつ、社内のエンジニアのスキルや年齢を踏まえた上で相場を知るには、他社の求人を見てみましょう。
特に、競合の情報はしっかりと把握しておかないと、給与を理由とした転職の原因となります。
給与の仕組みを考える
評価や昇給・昇格の仕組みづくりは人事にとって重要な課題です。
エンジニアは、業務の内容によっては明確な評価をしにくい場合もあります。
何を成果の指標とするのかを明らかにし、人事だけでは決めにくい場合は、現場の責任者とも話をしましょう。
評価のタイミングも、「四半期に1回」のように短いスパンにすれば、「成果を出せば短期間で給与が上がりやすい」といったイメージアップもできます。
2.働きやすさを重視する
社員が働きやすい環境になっているか、「業務の時間」や「業務の量」に注目しながら考えてみてください。
特に、残業や休日出勤が常態化していないかは重要です。
優秀なエンジニアにどんどん仕事を任せてしまい、負担が大きくなっているケースもあります。
納得感のある仕事ができているかどうかは、1on1(ワンオンワン)のような1対1の定期的な面談を通じて、よくヒアリングしてみるのも1つの方法です。
リモートワークの許可やフレックスタイム制の導入など、新しい仕組みづくりは、人事がしっかりと企画して推進していくことが求められます。
現場のリーダーやマネージャーともよく相談しながら、自社にとって最適な形を模索してみてください。
エンジニアにとって働きやすい職場環境は、他の社員にとってもベネフィットがあります。
3.教育の体制を整える
新卒や中途で入ったメンバーも安心して働けるように、オンボーディングをしっかりと行いましょう。
まずは自社の基本的なスタンスや成し遂げたいことについて、理解を示してもらい、その上で業務の具体的な内容や進め方を正しくレクチャーするのが主な流れです。
エンジニアには自走力も大切ですが、仕事を丸投げしすぎていると、業務の負担が大きくなってしまいます。
また、経験の浅いエンジニアには、先輩社員がしっかりとフォローアップしないと離脱リスクが高まります。
4.スキルアップできる環境を整える
一定のレベルになったエンジニアが、さらにスキルアップできる仕組みづくりをしましょう。
エンジニアは業界のトレンドや新しい技術に高い関心があり、スキルアップに意欲的です。
自社で長く働いてもらうためには、社内にいながらスキルを高められる環境づくりが求められます。
- 社内のエンジニア勉強会を企画する
- 社外の研修やセミナーを自由に受けられるようにする
- スキルアップを目的とした休暇を認める
いろいろと試してみて、好評だったものを継続するのも良いかもしれません。
5.人間関係を調整する
人事は、エンジニアを取り巻く人間関係に問題がないかにも、配慮やケアが必要です。
本人たちの気質には気になる点がなくても、相性によっては上手くいかないこともあります。
「新人エンジニアのXさんは、Yさんと一緒なら落ち着いて仕事ができそう」といったように、配置にも気を配ることが大切です。
6.採用時のミスマッチを減らす
そもそも、採用の段階でスキルやニーズの不合致があれば、退職のリスクは高まります。
エンジニア採用の過程では、さまざまな接点を通じて、業務や社風についてしっかりと伝えておきましょう。
雰囲気を伝えるには、オウンドメディアを使って発信したり、実際に現役のエンジニア社員に会ってもらったりと、工夫できる点がさまざまです。
求人の内容は現場のメンバーにも確認して、「実際に任せる仕事とズレがないか」「誤解を招く表現がないか」などにも注意を払ってください。
エンジニアの退職理由にヒントがある!離職を防止できた事例
最後に、エンジニアの退職を防止できた事例を2つ紹介します。
共通する点は、人事に「傾聴」と「采配」が必要だったことです。
自社で同様のケースがあったときの対応に、活用してみてください。
事例① サイボウズ
出典元:cybozuコーポレートサイト
サイボウズは、エンジニアが多く所属する企業の1つです。
以前は「毎週のように送別会がある」と言うほど離職率の高さが課題でしたが、人事制度の改革によって離職率を28%から4%へ低下させることに成功しました。
その仕組みづくりはトップダウンではなく、『選択型人事制度』『在宅勤務制度』などのいろいろな制度を社員とともに作った点に特徴があります。
結果、社員が自分に合った制度を利用できる環境が整ったのです。
どんな人でも気持ちよく働ける環境を作っていこうとあらゆる人事制度をボトムアップ型で社員と一緒になって改めて整えてきました。制度の充実と社員への浸透によって2012年には離職率を4%まで下げることが出来ました。
具体的な制度の内容は、コーポレートサイトの「ワークスタイル」のページでも紹介されています。
事例② 株式会社リファクト
出典元:株式会社リファクト
株式会社リファクトは、エンジニア約20名でシステム開発やコンサルティングなどを受託する企業です。
リモートワークの普及に伴い、社員と顔を合わせる機会が減り、エンジニアの体調面のケアやモチベーション管理がしにくくなったことを課題に感じていました。
また、以前はモチベーション管理の仕組みを内製していたものの、運用が煩雑になり効果が出ていなかったといいます。
そこで、外部ツールを導入して管理体制を変更しました。
結果として社員一人ひとりへのケアが行き届き、社員の状態に応じて適切なアプローチを実施し、退職リスクを回避できたケースもあったといいます。
「モチベーションが上がらない」と言ったコメントがあった場合もヒアリングをしています。すべての要望をかなえることはできませんが、話を聞くことで少しでもストレスが発散できればと考えています。
まとめ:エンジニアが退職する理由を知って、より良い会社づくりを目指そう
エンジニアが退職する理由は「業務面」と「環境面」に大きく2分でき、中でも「スキルアップ」「職場環境」「待遇」が重要事項です。
退職の理由は、より良い職場づくりに役立つヒントと捉えましょう。
エンジニアの不安や不満を解消し、彼らが長期的に成長できる会社を目指してみてください。