採用担当にとって人材を採用する際、避けたいのが「採用のミスマッチ」。これは採用担当に限ったことではなく、採用される求職者側も避けたいものです。本記事では採用のミスマッチが起こる原因とは何か、そして採用のミスマッチを防ぐにはどうしたらよいのかを紹介します。
目次
採用のミスマッチとは
ミスマッチ(mismatch)とは、適合しないもの同士が組み合わさってしまい、組み合わせがうまくいっていない、釣り合っていない状態を意味します。
つまり、「採用のミスマッチ」とは、選考時には適している、合致していると判断した人材が、”入社後に企業側が求めていたスキルと採用者のスキルが合わない、もしくは採用者が会社に対して認識していた仕事内容と合わない”などのギャップが見つかることによって発覚するズレのことを指します。
ミスマッチが起きると早期退職につながるケースがあります。
ミスマッチとアンマッチとの違い
「ミスマッチ(mismatch)」と似た言葉に、「アンマッチ(unmatch)」という言葉があります。「アンマッチ」とは、一致しないこと、合わないことそのものを意味します。
「ミスマッチ」とは、組み合わせようと試みているがなかなかうまくいかない状態です。アンマッチは一致しないことが認識できていて、その原因も分かっているので、どちらかまたは双方が妥協することでマッチできる可能性があります。
ミスマッチは合わないことに気が付いていないので、どちらかまたは双方が不満を抱える可能性が高いです。
採用のミスマッチの種類
採用のミスマッチはその原因によって様々な種類があります。ミスマッチの代表例として
・採用条件
・経営理念や社風
・適性
・仕事内容
などが挙げられます。
これらには、それぞれに原因があり、例えば採用条件によるミスマッチは、企業の提示待遇と求職者の希望が釣り合わず起こるミスマッチです。
また、求職者の想いと、企業の経営理念や社風が合わなければ経営理念や社風とのミスマッチにつながります。
加えて、企業側が求める経験や知識、スキルを求職者が満たしていなければ適正のミスマッチといえるでしょう。
仕事内容のミスマッチは企業側が任せたい仕事内容と、求職者がイメージしていた仕事内容が合わないことで起きるミスマッチとなります。
採用のミスマッチが起こる原因
採用においてミスマッチが起こる原因はいくつかあり、その課題を理解することで改善できます。
代表的な原因として
・採用情報の内容が不足している
・採用情報で良い面のみを伝えている
・採用基準の設定が適切でない
・学生・求職者のことを理解できていない
・入社後のフォローが不足している
などが挙げられます。
それぞれのポイントの具体的な問題点を解説していきます。
採用情報の内容が不足している
求職者は企業が公開する採用情報を見て応募しますが、採用情報の内容が十分でない場合、採用のミスマッチが生じやすくなります。
求職者側が書かれていない条件や記載が曖昧な点は入社後まで疑問に持たない傾向があるからです。
採用活動をする際にはどうしても求職者を獲得することに視点が行きがちですが、結果として本来伝えるべきことが伝わっていないケースがあります。
特に給与や福利厚生などの条件についてはっきり記載されているものの、具体的な仕事の内容や社風、昇給についてなどが詳しく書かれていない場合は、入社後にミスマッチが生じやすくなります。
採用情報で良い面のみを伝えている
優秀な人材に来てもらいたいという思いから、採用情報で良い面のみを伝えてしまうこともミスマッチの原因の1つです。
良い面のみを伝えてしまうと、たとえ優秀な人材を採用できたとしても入社後にギャップを感じ、早期に退職してしまう可能性があります。
そうならないように、現状を正しく捉え、会社として不足しているものや課題、改善したいと考えている部分もきちんと伝えておく必要があります。
良い面以外を書くと応募が来ないかもしれないと思うかもしれませんが、正確な情報は無駄な選考と入社後のミスマッチを減らすために大切な要素です。
採用基準の設定が適切でない
どんな人材を採用したいのかという、採用基準の設定が適切でなければ、当然、自社にマッチする人材を採用することが出来ず、ミスマッチにつながります。
どういった経験や知識、スキル、価値観の人材を採用するのかを明確にしましょう。採用基準を曖昧にしてしまうと、思っていた成果と異なったアウトプットしか出せない人材を採用してしまう可能性が高まります。
また、採用基準が曖昧であれば面接官の解釈によって判断が異なりかねないため、採用基準は細かく設定する必要があります。
また、採用基準は採用時の市況感に合わせて都度、見直す必要があることも忘れないようにし、自社が求める人材像を明確にしていきましょう。
学生・求職者のことを理解できていない
書類選考や面接などの選考活動において求職者のことを適切に理解できなければ、採用のミスマッチが生じてしまいます。
求職者のことを理解するということは、情報を正しく把握し、求める経験や知識、スキルと照らし合わせができることです。
経歴書に書かれている経験や資格など、提示された情報を鵜呑みにして判断せず、具体的に確認することが必要です。
また、選考活動の課程において面接官が「良い」と判断するポイントが思い込みや個人の好みになってしまえば、これも理解不足のミスマッチにつながります。
採用基準や評価基準、そして評価する方法や質問の仕方は面接官をはじめ、採用に関わる全ての人で選考活動を始める前に共通認識を持つ必要があります。
入社後のフォローが不足している
求職者は給与や待遇、休日などについては入社前に知ることができます。しかし実際の仕事の様子や職場の人間関係など、入社後にしか分からないことも少なくありません。
入社してよかったと思うこともあれば不平や不満を抱くこともあります。そのときに大切になのが入社後のフォローです。
入社後に定期的にフォローを行い、採用された人材が感じているギャップや悩みがないかをヒアリングやアンケート調査等で聞き出し対処していくことが大切です。
フォローがないと採用した人材が入社後に会社や仕事にギャップを感じていることを把握できず、早期退職のリスクにつながります。
採用のミスマッチによる弊害
採用のミスマッチは当然、多くの弊害を生じさせてしまいます。具体的な内容としては
・早期退職につながる
・採用した人材が活躍しにくい
・採用コストがあがる
・ほかの社員のモチベーションが下がる
などが挙げられ、採用した人材だけでなく、会社の経営そのものに悪影響を及ぼすこともあります。
ここでは、具体的なミスマッチの弊害について解説していきます。
早期退職につながる
入社前に聞いていた仕事の内容や社風が思っていたものと異なる、職場に馴染めないといった理由で早期離職が発生することもミスマッチが原因で起こる弊害の一つです。
最初に感じた不満が解消できないままの状態が続くと早期退職する人材が増える可能性があります。
早期退職されてしまえば、当然その人材を採用したコストに対して、成果で費用を回収することもできず、さらに、再度採用活動を開始しなければならないなど、非常にコストがかかってしまいます。
選考活動の段階で採用する人材の性格やモチベーションなどを完全に把握することは難しいです。しかし、入社後に早期退職する人材が出てしまうことを防ぐためにも、面接などの段階で採用する人材の性格やモチベーションなどをある程度把握できるように努力することが必要です。
採用した人材が活躍しにくい
経歴や面接の内容などが総合的に良い人材でも、採用時にミスマッチが発生していた場合、活躍しにくい、してもらえない可能性が高まります。
その場合、必要な経験や知識、自社が求めるスキルとズレが生じていた、採用された人材が期待していた業務と実際の業務が異なっていたなど、入社後にフィットしていないことで採用した企業はもちろん、入社した人材も不利益を被ることになります。
早期退職の可能性が高まることももちろんですが、その状態で長く働き続けた場合、もともと期待していた成果が出ないだけでなく、その人材が活躍し、成長するサイクルも生み出せないなど、高いリスクが発生してしまいます。
こうした、ミスマッチを生じさせないためにも、面接時など採用活動においてスキルや仕事内容を企業が定義し、求職者にしっかりとイメージ、把握させた上で入社してもらうことが大切です。
採用コストが上がる
ミスマッチの多くは結果として採用活動の継続、つまりは時間とお金がかかり続けるため採用コストの増大を招きます。
採用の目的は経営目標や事業計画の達成ですので、期待通りの成果が得られなければ終えることはできません。
そして、ミスマッチから早期離職が起き、新たに人材を採用をする場合、採用コストは倍以上になってしまいます。
効率的に人材を獲得したとしても、採用ミスマッチが起きた場合、結果的に採用コストが上がってしまうことを念頭に置きましょう。
他の社員のモチベーションが下がる
ミスマッチにより、入社後に採用した人材が期待した業務を行ってくれない、あるいは早期退職をしてしまった場合、当然、関わった他の社員にも影響が出ます。
同じチームで働いていた社員が上手く馴染めなかったり、辞めていくと周囲で働く社員にとっては気持ちの良いものではありません。
加えて、ミスマッチを感じている社員が社内で不満を漏らすことがあれば、チームのモチベーションが下がる直接的な原因となるでしょう。
また、早期離職によって新しい人材が採用されるまでの時間が長引くことになれば、不足ポジションの仕事をカバーする社員は業務負担が増え、ストレスを抱えることにもつながります。
モチベーションが下がればチームに波及し、他の人のモチベーションも下げるという悪循環が生まれる可能性も高まるため、会社への不信感が既存社員の間で募らないよう、ミスマッチは避ける必要があります。
採用のミスマッチ対策
さまざまながある採用のミスマッチを防ぐにはどうすべきか。代表的な対策としては
・採用コンテンツを見直す
・インターンシップを実施する
・適性検査を導入する
・求職者の情報収集を徹底する
・入社後のフォローを丁寧に行う
などが挙げられるでしょう。
ミスマッチを防ぐ具体的な対策の抑えるべきポイントを紹介してきます。
採用コンテンツを見直す
採用のミスマッチを防ぐ対策の一つに、採用コンテンツを見直すことが挙げられます。
自社が求める人材について、採用情報を正確に求職者に伝えるために、採用サイトやSNS、採用広告に記載する情報の見直しを図っていきましょう。
特に、業務内容についてもは可能な限り詳細を記載することが大切です。例えば扱っている商品について、仕事のスタイルなど、実際の働き方の内容が見えるものを記載しておくことが重要です。
また、会社の現状を正確に記載し、今の課題や目指す姿を書いておくと効果的です。多くの情報が細かく記載されていると求職者も会社の状態をイメージしやすくなります。また近年はワークライフバランスも重視されるようになってきているので、勤務時間や残業時間について、さらに入社後の昇給や昇格の具体的な情報なども記載しておくと良いでしょう。
インターンシップを実施する
採用した人材の入社後のギャップを防ぐ効果的な方法に「インターンシップを実施する」ということが挙げられます。
インターンシップ制度を導入することで、求職者に実際に自社で短期間働いてもらうことができます。そうすることで、説明しただけではわからない社風や仕事内容について求職者もイメージしやすくなります。
また、企業としては実際の働きぶりや人柄をダイレクトに知ることができますので、実際に活躍できるかの評価が可能となります。互いにイメージができることによって採用後のミスマッチは格段に減らすことができるでしょう。
適性検査を導入する
面接の短い時間の中で、求職者の性格や資質などパーソナリティまで把握することは難しく、かつ定性的な評価は基準が設けにくいものです。
そこで、適性検査を導入することがその助けとなります。適性検査ではその人物の性格、行動力、コミュニケーション能力、ストレス耐性、強み、弱みなどの定性情報を定量的に分析することが可能です。
適性検査の結果をもとに面接を行えば、本人が話す情報と適性検査のギャップを見ることができ、採用のミスマッチを防ぐことにもつながります。
また自社の優秀な人材の適性検査の結果を参考に選考活動をすれば活躍する可能性が高い人材が採用できる期待値が高まります。
求職者の情報収集を徹底する
採用のミスマッチを防ぐためには、求職者の情報収集を徹底することも重要です。履歴書や職務経歴書などから求職者の情報を分析することも必要ですが、SNSやリファレンスチェックサービスの活用など、情報を多角的に集め、評価することが大切です。
また、実際の面接時の受け答えなどの情報は面接官の主観が入らない形で共有し、適性検査やインターンシップの実施などを絡めながら、細かい部分まで情報を集めきることが効果的です。
求職者がどのような人物なのか、また、どのような働きぶりをするのかといった情報を得ることは、入社後のミスマッチを防ぐための大きな判断材料となることを意識し、積極的に情報収集を行いましょう。
入社後のフォローを丁寧に行う
入社した人材がなかなか馴染めていなかったり、企業の求める成果と実際の働きぶりにズレがある場合、入社後のフォローによってミスマッチを解消することも可能です。
実は、ある程度マッチしている人材であっても、入社後に立ち上がりよく成果を出していくことは難しいこともあります。
当然、もともとミスマッチの懸念がある人材であれば、その壁は大きなものです。そこで、入社後のフォローとして面談の機会を定期的に設けることが大切です。
入社した人材がどんな悩みや不安を感じているのかを話し合い、解消できる機会を設けていきましょう。
フォローを行うことで離職を防ぐだけでなく、パフォーマンスの向上など、人材育成にもつながります。採用した人材が早く自社の仕事や職場に馴染めるようにフォローを丁寧に行うことは大切であり、ミスマッチであった状況を変えるきっかけにもなると覚えておきましょう。
まとめ
本記事では、採用活動で起こる可能性があるミスマッチの詳細について解説し、その中でも
・採用のミスマッチが起こる原因
・採用のミスマッチによる
・採用のミスマッチを防ぐ方法
というポイントについて細かく紹介してきました。採用のミスマッチとはどういうものなのか、また採用のミスマッチにはどんな種類があるのかをしっかりと把握することは採用活動をする上で重要なことです。
そして、採用のミスマッチによるを考察し、採用のミスマッチが起こる原因と採用のミスマッチを防ぐ方法実施することは、企業の採用戦略を担う人事担当として重要な業務の一つです。
これからの採用活動において、採用のミスマッチを防ぎ自社の採用活動を成功させるために本記事を役立てて下さい。