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The 15th IEEE TOWERS
「アカリク賞」受賞者インタビュー

根本 大志 さん
根本 大志 さん

東洋大学 総合情報学専攻 M2
「感情の輪に基づくピクトグラム選択UIの提案」

【選評】
アカリクは「知恵の流通の最適化」というミッションを掲げている。根本さんの発表をお伺いして、ITや情報系の知識を活かしつつ、感情というサイエンスでは評価しにくい分野を熱意を持って研究されていることが伝わった。また、独自に研究テーマを設定されていて、これからも続けていきたいということで、アカリクが応援したい発表として選びました。

感情の輪とピクトグラムを組み合わせる

本研究の基になっている「感情の輪」について教えてください

根本さん: 「感情の輪」は情報系とは関係なく、1980年に心理学者が色と感情を対にして表現したもので、デザイン業界で使われています。例えば怒りを赤で表すのは新規性が無いですが、怒りの対比にある喜びは一番遠いところにあって、逆に隣の感情は似通っていて推移しやすい。(感情が)掛け合わさることで複雑な数十通りの感情を作れるので、機能性が高いデザインです。ただこれを情報系で用いることはなかなか無いかなと思って(あえて)取り入れてみました。ちなみに、このデザインはウェブで使われていて、心理学寄りのエモーショナル・デザインというものもあるそうです。

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直感的に絵文字で選択できるということでしょうか?

根本さん: 今までの絵文字を選択するというのは表があってユーザーが1個ずつ選択していくというものなんですけども、その置き方には規則性が無くて、ただ一覧から1個ずつ選択していくので煩わしさがある。規則性が無いのでユーザーも選びにくいと考えられます。感情の輪は直感的に色で分かりやすいと思ったので、それをうまくインターフェイスと組み合わせることによって、感情的な絵文字をより効率的に選択できるようになるかなと考えました。

この研究を始めた何かきっかけについて教えてください

根本さん: この「感情の輪」を取り入れる前に「行動に着目したピクトグラム」っていうものを研究していました。ちなみにピクトグラムというのは標識などのようなアイコン、絵文字などのことです。例えば非常口の棒人間みたいに一瞬で走っていると分かるものがあるので、行動に着目したピクトグラムだけでコミュニケーション取れるんじゃないかと仮定して研究していました。でも、最近はやっているLINEのスタンプとかはキャラクター性や感情性があるからポップで人気なのであって、最低限のコミュニケーションができるからという理由でスタンプを使っているんじゃないんだろうなと思ったんですね。なので(行動だけではなく)感情に今度は着目してみようと考えて、段階的に進んできたという感じです。

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パソコンのキーボードなどには絵文字の入力がありませんね

根本さん: (絵文字が無い)一番の理由は、新規性のあるインターフェイスが見つけられていない、今のままでいいんじゃないかという感覚だからではないでしょうか。例えば数字のテンキーってあるじゃないですか。あれって3x3のデザインですけど、実は昔の計算機は数字の位ごとに0から9が羅列されたデザインだったんです。算盤みたいな感じのデザインですね。絵文字はまだ羅列するデザインの段階で、これをリデザインする新発想がないわけです。

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最終的にどのようなデザインになりそうなのでしょうか?

根本さん: 感情の輪って今は花びらのように円を中心として広がっていくものなので、そのままキーボードの代わりすると、正直打ちにくいと思うんですね。これを四角形に適用することが必要です。一つの感情に対して強さが3段階あって、8つの基本感情があるので、合計24個を四角の中に入れていくというのが今の課題です。この24個を色で選択できるように、感情の輪のデザインを当てはめて、色の濃い薄いで強い弱いを区別する想定です。

他にも頂いた意見の中に「LINEやFacebookなどのコミュニケーションで、要らない感情があるんじゃないか」という指摘がありました。考えてみたんですが、やっぱり「要らない感情」というのは無いのではないかと思います。(感情の輪は)すでに洗練されているので、削ぎ落とすというのも難しいですね。よく使う絵文字や使わない絵文字があっても、全部あることは必要なんじゃないかと思います。

この研究から世界共通のインターフェースができるんでしょうか?

根本さん: 絵文字は国によって違うんですが、色については国は関係ないと考えています。絵文字だと日本で使われている「謝っている絵文字」が海外だと「腕立て伏せ」に見えるとか。そういう事例はよくあるんですが、色はそんなにないんじゃないかなって思います。元々「感情の輪」は海外発信のものだからということがあるかもしれないです。

この研究によって何が変わると思いますか?

根本さん: 自分の感情を素直に伝えられるようになるんじゃないかなって思っています。例えば、今の絵文字って、正直なところ意味がわからないものも結構あると思います。意味が不明瞭な絵文字にこれをあてはめることで、相手の感情が逆算的に分かるようになるとか、コミュニケーションを加速させることができれば嬉しいなと考えています。ちょっとしたディスコミュニケーションが解消されるんじゃないかと思います。

国によって違う絵文字を出すなどのカスタマイズはありうるんでしょうか?

根本さん: カスタマイズは可能にするべきだと思っています。感情の輪を用いた色は共通だが、表示のされかたはそれぞれになる。むしろ国ごとではなく、ユーザーごとに分ける必要があるかもしれないですね。微妙な感情が人によって違うので、それをどうあてはめていくか考えないといけない。送った側がどういう感情で送ったのかが受ける側に分かるようにすれば大丈夫かと思います。

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人によっては「感情を捏造する」というか、例えば喜びの表現を強調することがあります。また別の人は、履歴から数個ピックアップして使っていくこともあります。僕自身はどちらかというと後者です。

履歴は履歴でいいところがあると思うんですが、面白みがないですね。エンターテイメント性に欠けるな、と個人的には思います。同じ絵文字を繰り返して使っていると、受ける側も「また同じ絵文字を使ってるな」と感じていると思います。その意味でもレパートリーが豊かなほうが面白いんじゃないかなと思います。

新たなインターフェースに使えそうなデザインは「感情の輪」以外にもありますか?

根本さん: そういうデザインは結構あると思います。ただ、これが人気というか代表的だと思います。博士課程ではデザインに合うインターフェースを作れるかが課題になるんですけど、このデザイン自体を掘り下げて「感情の輪」をバージョンアップさせるのも良いと思います。

この分野を選んだ経緯と将来の展望

この研究にはいつ頃から取り組んでいらっしゃるのでしょうか?

根本さん: 実は修士課程では(前述の通り)違う研究をしていて、ピクトグラムでどのようにコミュニケーションをとっていくかという研究の一環として、「感情をどう表現していくか」に着目しています。2018年の夏に成蹊大学で開催されたドキュメントコミュニケーション学会で発表したので、今回のIEEE TOWERSで2回目です。研究期間は半年とちょっとくらいです。

実はIEEE TOWERSにはM1から発表していました。その時は全然違う内容でしたね。2017年はネガティブな意見が多かったんですが、2018年はポジティブな意見が多くて、発表していた楽しかったです。

今回もらった異分野からのドキっとした系の質問、考えさせられる質問で言うと、「感情の輪を使うって決めた論理的な考えはあるんですか」みたいな質問が核を突いていました。確かに便利なデザインですが、なぜこれにしたんだろうかと。自分としては再発見した感じで用いようと思ったが、知っている人は知っていて「なぜ今更これを使うのか」とか聞かれましたね。

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大学でこの分野に進んだ経緯を教えていただけますか?

根本さん: 最初から情報系に行こうと考えていました。大学受験の時から、これからの社会はITを学んで損はないと考えていました。ただ、ITが既に当たり前になっているので、「情報を使って何か別のことをする時代」だと考えていました。単にプログラミングが出来るとかではなくて、どんな考え方で既存のものをパワーアップされるかが課題になるのかなと考えていました。

今の研究室が正にそれで、新しい革新的なシステムを作るのではなく、既存のものを組み合わせて、「ありそうでなかったもの」を考えていくところなんです。アナログとデジタルの融合というか、アナログの表現をデジタル上で表現するという感じです。例えば、Nintendo Switchのようにデジタルゲームだけど、アナログな工作するキットがあったり、リモコンを分離したりして、アナログな感覚のあるリアルな遊びができますよね。それが「ありそうでなかったもの」です。

今の研究室を選んだ理由も教えていただけますか?

根本さん: 一番は教授に惹かれてこの研究室に入りました。話がめっちゃ面白くて。

あとは、もともと海外に興味があって、でも在学中に留学するまでいかなかったんですね。他に海外へ行ける方法ないかなと思っていたら、この研究室では海外学会で年2回は発表するのが恒例になっていて、しかも大学から奨励金も出るので割安で行けるし、学会発表なのでキャリアにつながるという利点があって決めました。

学部生の時から日本のことだけ考えるのは違うと考えていていました。よく「日本ではこうで、海外ではこうで」という対比した記事で出ているけど、日本とか海外とか関係ないのが当たり前になる時代が来ていると思っていたので、海外で学びたいというよりは海外に行ったり、海外に触れたり、海外にいるのが当たり前みたいな感じです。教授の「海外にいるのが当たり前」という考えに影響されています。

日本も高学歴化が進んでいて、修士は持っていて当たり前、博士も持っていたらいいよね、という時代がもう来るんじゃないかなって僕は思っています。今もう情報系ならアメリカとかそんな感じで。日本もそういう社会になっていくんじゃないかと。

研究室の雰囲気はどうでしょうか?

根本さん: 仲良いと思います。いい距離感で、プライベートに踏み込み過ぎず、でも、ご飯を一緒に食べに行かないわけではないです。それから国際会議では絶対に会うので、例えば2018年の夏はラスベガスだったんですけど、皆でずっと行動してましたね。それから論文の締め切りについては、うちの研究室だと「あと3日で論文書いてください」とかあっても、結構みんな間に合わせてくるのでバイタリティはあるのかなって思います。

情報系を活かしつつ「感情」を研究したいと思った理由は?

根本さん: 確かに感情というのは評価しにくいもので、先日のIEEE TOWERSでもご意見いただいたのですが、人間の感情って曖昧さがあって「喜びが絶対これだ」とは限らないよねという意見もいただきました。逆に言えば、個人でカスタマイズしていくことによって、利便性が向上すると思います。難しい分野だからこそ、克服することによって何か新しいものが生まれるんじゃないかなって思っています。

実現の難しさがモチベーションを高めることになっているんですね

根本さん: 博士課程の入学試験で面接があったんですけど、実は先生方に「それってすごい難しいよね、どうやって評価するの?」とかも聞かれたんですけど、それは今後の課題として考えていきたいと前向きになっています。博士課程でも引き続きビジュアルコミュニケーション分野をやりたいと考えています。

博士課程の後のことは考えていますか?

根本さん: 今のところはアカデミックの世界に残るかなと考えています。単純に研究が楽しいですね。「ありそうでなかったもの」を考えるのもそうですが、色々なところへ行って、話を聞いて、IEEE TOWERSにも参加して、自分の研究に活かして公開して、洗練させていく作業が楽しいです。

将来的には論文にまとめて貢献したいというお考えでしょうか?

根本さん: 「考えやコンセプトだけじゃなくて実装が大事」という教授を見習って、基本には実装していって、(サービスやプロダクトを)リリースしていく、社会に見えるようにしていくことを目指しています。

他の大学院生や若手研究者へのメッセージ

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根本さん: 今は研究が楽しくて、博士になったら研究する時間も増えるし、それ以外で働く時間も作れるので良い仕事があれば他分野でもポジティブに取り組んでいきたいです。でも、挫折したことも結構あって、自分がやっていたテーマでどうしてもロジックを立てられないとか、新規性だけしかなくて論文にはならないとか、またゼロから考え出さなきゃいけないって時はネガティブな気持ちにはなります。その一方で、夏に初参加の学会で発表したんですが、行動に着目したインターフェイスの発表について企業の方から「面白いね」って意見もらえて嬉しかったです。

選択肢はたくさんあると思うんです。働きながら学ぶこともできるし、逆に大学院生とかでも学びながら働くとかもできます。博士課程の先輩で遠隔授業の研究をしているんですが、サイバー大学で仕事もしているので、学びながら働くということもできるんじゃないかと思います。色々な選択肢があるので、広がって行けばいいかなと考えています。

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